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INTERVIEW

Vol.99 JIRO & TOSHI インタビュー

2月5日(土)・6日(日)でさいたまスーパーアリーナ2DAYSを終え、アリーナツアーのゴールテープを切ったGLAY。余韻冷めやらぬ数日後、JIRO、そして長年サポートドラムを務めるTOSHI NAGAI(永井利光 ※以下TOSHIと記載)をオンラインで繋ぎ、対談取材を行った。ツアーを終えた直後の感想、リズム隊としてのチャレンジ、JIROが中心となって組み上げたセットリストのコンセプト、TAKUROのコロナ感染というアクシデントについて、ファンに対して芽生えた想いなど、ツアーを振り返るロングインタビューをお届けする。

2022.2.22

さいたまスーパーアリーナ2DAYSが終わったばかりですが、率直に今どのようなお気持ちでしょうか?
JIRO

ホッとしていますね。今年に入ってからオミクロンだ第六波だと騒がれていて、誰が感染してもおかしくないだろうなと思っていたところで、リーダーが罹ったという……。それが自分だったとしても全くおかしくない話だったので。さいたま公演前はさすがに人混みには全く行きたくなくて、外に出ることが恐怖ですらありました。そういう中で無事ツアーを終えられたので、良かったなと感じています。

やはり、かなり張り詰めた気持ちで生活されていた、ということですよね。
JIRO

そうですね。飼っている犬の散歩とかで気晴らしに外には出ていましたけども。ただ家にいるだけ、というのも精神衛生上良くないので、上手く人混みを避けて散歩ルートを探したりはしていましたね。

改めまして、完走おめでとうございます。
JIRO

ありがとうございます。

TOSHIさんはいかがですか?
TOSHI

今回のツアーは長い期間でしたけど、ライヴとライヴの間が2週間とか空いたりもして本数は多くなかったので、テンションをキープすること、曲を忘れないようにしようとか、そういうことはずっと意識していましたね。それプラス、やっぱりコロナ禍という状況があったので、終わってみて「ずっと緊張してたんだな」というのは感じました。やっぱり終わってホッとしましたね。

1月8日(土)・9日(日)の神戸公演後は、静岡公演が中止となったことで4週間空きましたけれども、改めてのリハーサルは設けなかったと伺っています。リズム隊として、さいたまスーパーアリーナに向けた事前の打ち合わせ等はあったのですか?
JIRO

いや、ないですね(笑)。4週間空いて、「リハーサルやる? どうする?」という話にはなったんです。でも、TERUがコンディション管理の関係で、「リハーサルをして誰かに接触して感染するほうがリスキーだ」という意識でどうやらいたみたいなので。その気持ちも分かるし、コロナだけじゃなくヴォーカリストとして風邪も引きたくなかっただろうし。そういうことも関係して、まぁ既に10数本このツアーでライヴをやっているし、リハーサルはなくても大丈夫かな、と。家では毎日ベースを練習するようにはしていたんですけど、NetflixやYouTubeを観ながら、気付くとそっちのほうに集中してしまっていたり(笑)。でも、映像を観ながらでも勝手にフレーズが出てくるというのは、「身体には染み込んでいるんだろうな」と思っていて。永井さんとのコンビネーションに関しては全然気にしていなかったです。気になる個所はツアー前のリハーサルの段階でもう確認は済んでいたので、それ以降、本番に入ってからは特に「ここをこうしましょうか?」と言ったことは一度もないぐらい、お互いに信頼があるから。

TOSHI

僕も一緒で、心配なことはなかったですね。コロナの影響で1年近く一緒にセッションできなかった頃、久々に音を出した時もやっぱり、GLAYというバンドの暗黙の了解的なグルーヴがあったので。JIROくん以外もメンバー全員、「これだよね!」っていう。今回はもう長くツアーを廻ってきていたし、そういう不安は全くなかったです。ライヴの時のステージ上のテンションってやっぱりあるじゃないですか? それを自分の中でキープしないといけない、というのがこのツアー中一番意識したことで、家ではドラムを練習できないのでスタジオへ行って一人で(セットリストを)通して演奏してはいました。まぁ、一人なのでテンションは上がらないんですけど(笑)、皆と一緒にやったつもりで。コンビネーション的には全然メンバー含め、JIROくんはもちろん、何の不安もなかったです。

11月5日(金)に大阪からスタートした、3か月にわたるツアーでした。アルバム『FREEDOM ONLY』の世界観を中心としながら、「こんな曲が加わってくるんだ?」という驚きもある、充実したセットリストでしたよね。JIROさんはセットリストマスターとして、今回はどのようなプランを思い描いていたのですか?
JIRO

元々『FREEDOM ONLY』というアルバムは、TAKUROにすごく明確なヴィジョンがある作品だったんです。TAKUROのつくってきたデモテープが13曲ぐらいあったんですけど、「これを皆に渡すから、もし何か『自分の曲が入ったらもっと良くなる』という案があれば、曲を出してみてくれない?」という感じで。ミディアム曲が多かったので、その時は「実際、(このアルバムを引っ提げての)ツアーはどうなるんだろうな?」と思ったんですけど、アルバム自体はすごく楽曲も良かったので、「とりあえずつくろう」という感じで。その中から「SHINING MAN」などの楽曲がアルバムから漏れていくことになるんですけど。TAKUROはセットリストについて、2DAYS公演の1日目、2日目で『FREEDOM ONLY』の曲を半分ずつぐらいに分けてもいいよ、という話をしていたんですよ。僕もそのつもりでつくっていったんですけど、やっぱり、「うーん、この曲をどちらかの日に振り分けるのは、何か違うな」と思って。だったら思い切って、今回はコロナ禍でのライヴだし、お客さんは声を出せないし、「アリーナツアーではあるけど“聴かせるモード”に行ったらどうなのかな?」と。それで、いつもよりはミディアム曲が多いセットリストになったんです。

なるほど。
JIRO

ただ、元々「永遠を名乗る一秒」は本編の中に入っていたんですよ。でも、そこの流れがモタッとしていたので、思い切ってアンコールに持っていって。中盤の「BAD APPLE」と「Tiny Soldier」と「Holy Knight」、あのミディアム3曲でかなり世界観をつくれたから、そこに「永遠を名乗る一秒」も入っているとやっぱり違ったな、と。そういう空気感も感じ取りながら、セットリストをマイナーチェンジしていった感じですね。

今回、寓話的なストーリー仕立ての映像が合間で挟まれていたのも印象的でしたが、あのアイディアはどなたが出されたのですか?
JIRO

あれはTAKUROのアイディアじゃないですかね? 『FREEDOM ONLY』の世界観を感じさせるステージセットと、映像があって。今回はまず最初に「MCを極力少なくしよう」というのは決めていて、そこからスタートしたのもあり、ああいった場面転換で映像を挟んでいったんです。僕自身はそれほど気にはしていなかったことなんですが、TAKURO、TERUは、過去の有観客ライヴで(歓声自粛の状況なので)お客さんのリアクションがないと、「どうなんだろう…?」とすごく戸惑っていたんですよ。「だったらMCを無くそうよ」という話になって、そこからセットリストも考えていきましたね。

TOSHIさんにとって、今回のセットリストはいかがでしたか?
TOSHI

ドラマーとしてはすごく面白いタイプのツアーだったと思います。新曲はレコーディングで僕が叩いていない曲が結構多くて、例えば「Tiny Soldier」とか、叩いてはいてもドラムのケースだったりして、音が加工されているんですね。普通のドラムセットではできないので、それを再現するために、電子ドラムのトリガー(※引き金/生ドラムに電子ドラムの音色をプラスする装置)というものを使ったりして。普段とは全く違うアプローチで臨みましたね。

JIRO

「BAD APPLE」とかもそうですね。TOMI YOさんの打ち込み曲なので、それを永井さんに再現してもらうにあたって「ちょっと生っぽ過ぎる」とか、トリガーという電子のものを入れることによって、若干タイムが後ろノリになったりとか。なので、それを「もうちょっと早めにツッコんで叩いてくれたらちょうどいいかもしれない」というのは、ツアー前のリハーサルでもう、ガッツリやりましたね。永井さんには大変な想いをさせて…(笑)。

TOSHI

いえいえ(笑)。トリガーを使うとどんな音色でも出せるので幅も広がるんだけど、どうしても音がちょっとだけ遅れてしまうんですよね。技術が進化すれば改善されるとは思うんですけど。その部分だけが少し大変でしたが、今回取り組んでみて、これをきっかけにもっといろいろなことできると思ったし。GLAYとか僕だけに限った話ではなくて、世の中的にドラムってそういうふうに進化していくのかな?とも思いながらツアーを廻っていました。今後の可能性をすごく感じましたね。

JIROさんのベーシストとしての想いも伺います。『FREEDOM ONLY』の楽曲は、ハイポジションで豊かに歌っているようなフレージングが多いですよね。歓声の無い静かな会場に、それが際立って響き渡っている印象を受けたのですが。
 
JIRO

そうですね。ライヴだと、派手な曲をやってお客さんを盛り上げるほうを優先して、演奏はまぁ、変な言い方をすると「間違っても気が付かないだろうな」という感じで取り組むこともあるんですよ。でも、今回のセットリストに関してはやっぱり、ベースがハイポジションから入ってくる曲が多かったので、すごく集中していましたね。

「Holy Knight」の始まり方は特にカッコ良かったです。ゾクゾクしました。
JIRO

いやぁ、もうホントに……どれもこれも気が抜けなくて。自分で仕掛けたことではあるんですけど、アンコール1曲目の「永遠を名乗る一秒」とか、「アンコールなのにまだこの緊張感を味わわなきゃいけないのか?!」と毎回思っていました(笑)。

TOSHI

あはは!

JIRO

今回は指弾きを積極的にやっていて、例えば「漂えど沈まず」とかは、最初はピックで弾いていたんですけど、指で弾いたほうが低音のズドーン!とした感じが出せたんですね。それで永井さんに「今、指で弾いてみたんですけど、どうですか?」ってリハーサルの時に訊いたら、「すごく感触が良かったよ」と言ってくれて。「じゃあこれは、何が何でも指で弾こう!」と決めてから、ちゃんと自分のグルーヴにすることができたし。気が付けば半分以上の曲を指弾きで弾き切ることができたんです。そういった意味でも、『FREEDOM ONLY』というアルバムは自分にとってすごくナーバスで、演奏するのは毎回ストレスではあったんですけど(笑)。いい勉強になったな、と感じています。

JIROさんのベーシストとしての進化を、TOSHIさんはどうご覧になっていましたか?
TOSHI

「漂えど沈まず」は、ミディアムの本当にゆったりとしたビートの曲なので、僕もゆったり叩くんですけど、ベースが指弾きになったことで音の太さが出るというか。そういうもので包み込むような感じが僕の中ではしていて。二人のグルーヴがすごく安定するんですね。それで、TERUくんの歌がその中でものすごく生きる感じがするので、「これ、なんかすごくいいね!」という話をしていて。新曲に関してはJIROくんは大変そうだったとは思います。ベースがグルーヴをつくって歌っている、そういう瞬間がたくさんありますからね。逆に僕はシンプルにドン!ドン!ッてプレイしているだけなんですけど。

JIROさんはそういったグルーヴを紡ぐ中で、TERUさんの歌との関係性が変わった部分はありましたか?
JIRO

うーん、意識しているところは変わらないんですけどもね。でも、よりTAKUROとHISASHIのギターを聴きながら取り組むようにはしていました。今までって……僕は“縦のライン”と呼んでいるんですけど、TERU・僕・永井さんの3人の縦のグルーヴがしっかりと合っていたら、TAKUROとHISASHIはそれぞれのグルーヴ感を持っているので、二人にはある程度自由にやってもらってもいいと思っていたんです。でも今回はもっと、ギタリスト二人の音を聴くようにはしていました。

ハジメタル(Key)さんも含め、全体で編み上げるグルーヴ感になったんですね。ライヴの1曲目は元々「BETTY BLUE」だったのが、終盤で「GALAXY」に変わったんですよね。どういう意図があったのですか?
JIRO

2022年になって、やっぱり何か変化を付けたいなと思っていて。あとは、PORINちゃん(Awesome City Club)がさいたまスーパーアリーナ(DAY2)にゲスト出演してくれるにあたって、じゃあ「BETTY BLUE」(※PORINがゲストヴォーカルを務めている)は1曲目じゃないだろうな、というのもあったし。じゃあどこに持って来ようか?といろいろ考えていて、真ん中あたりがいいのかな?とかも思いつつ、本編の流れが良いので、やっぱりアンコールで登場してもらうのがいいんじゃないかな?と。WOWOWテニス2022シーズンの新イメージソングとしてちょうどレコーディングしていた「GALAXY」を、新年一発目に披露しよう、と。曲調もそれにふさわしいものだったので、TAKUROに相談したら「いいんじゃない?」ということだったので、他のメンバーにもプレゼンした、という感じですね。

「GALAXY」はサウンドが煌めいていて、幕開け感もあり、鮮烈なインパクトでした。どのように生まれて来た曲だったんでしょうか?
JIRO

元々TAKUROが2曲ぐらい候補を挙げていたうちの1曲で。あまりベースのフレーズでグイグイッと行くんじゃなくて、80KIDZがつくってきたオケが4分打ちのキックだったから、そのボトムに乗ればリズムは成立してるなと僕は感じていました。そこで、自分の中で取り組んでいた指弾きを、あのぐらいのアッパーテンポの曲で弾いたらどうなるんだろうな?ということで、自宅で練習し始めて。「あ、これ行けるな」と思ったので、レコーディングでも指で弾いていましたけども。面白いのが、やっぱりああいった打ち込み系のアーティストの人たちって、リズムが食ったりしないんです(※シンコペーションにならない)。

ああ、“ドン!ドン!ドン!ドン!”とジャストなんですね。
JIRO

そう。“ドン!ドン!ドン! ッツターン!”みたいなことをしないんですよ。どうしてもその要素が必要だったんですけど、僕らがそういうアプローチをしても80KIDZは頑なにその“食い”を入れてこなかったので(笑)。永井さん、叩いてて新鮮じゃなかったです?

TOSHI

うん、面白かったですね。キメの部分とか。

JIRO

面白いですよね? 「こういうのもアリなんだ?」という新しい発見でした。

TOSHI

「GALAXY」も全部打ち込みだったので、再現する時に、その打ち込みでつくった音色を全部ドラムにトリガーして演奏したんです。僕的には‘80年代のニューウェーヴというか、懐かしいドラムの音色で、アレンジは今時というか。やっていて楽しかったです。カッコいいですよね。

最新の楽曲もありながら、「SHUTTER SPEEDSのテ-マ」や「彼女の“Modern・・・”」など、ライヴを盛り上げる定番曲も盛り込んでファンの皆さんが喜ばれていましたよね。「SHUTTER~」の前にJIROさんがMCでやや噛み、「人生で初めて噛んだ」と(笑)。あのくだりは盛り上がりましたが、今どう振り返っていますか?
JIRO

いやぁ、MCの内容を僕は事前に決めて行かないので、その瞬間にバッと思いついたことを言ったから、たぶん噛んだと思うんですけど(笑)。でも、昔から僕はカッコ付けきれないというか。だから、逆にああいうシーンがあって、「俺らしいな」とは思いましたけどね。

そんな笑いがあった一方で、JIROさんは、前方エリアにも空席があることに対して、複雑な心境をMCで語っておられました。コロナの感染拡大状況を鑑み、チケットを持っていても会場に来るのを断念した方もいたのだろうと想像されて、胸が痛みましたが……。
JIRO

神戸のライヴが終わって、僕は毎回アンケートを全部見るんですけど、「なぜやることを決断したんだ?」という、ライヴ開催に対して批判的な人もいたんですよ。「自分は参加したけど、周りがすごくうるさくて、すごく嫌な気分になった」と書いている人もいたし。そのことについてはすごく考えました。「だったら何故この人は来ることを選択したんだろうな?」とか、「俺たちがどういう対応をしたらこの人は一番ハッピーだったんだろうな?」とか……いろいろと考えたんですけどもね。生活している環境とかも、僕ら(エンターテインメント業界に身を置く立場)とは違うと思うので、その人の立場に必ずしもなれるわけではないから、答えは見つけられなかったんですけど。でも、その人の言葉はやっぱり自分の中で響いていて。さいたまスーパーアリーナ公演の時も、更に感染拡大の状況が悪くなってきてはいたので、チケットを持っているけれども払い戻しをできない中で、「“来ない”という決断・選択をする人もいるんだろうな」と考えていて、ステージに立ったので。なので、よくこんなにたくさん集まってくれたなという気持ちと、僕の目の前とかに結構な人数が空席になっているのをステージ上から見て、「この人たちは決断を迫られて、もう本当に泣きながら、今の時間を過ごしてるんだろうな」という気持ちと。いろいろなことを考えましたよね。

そうですよね……神席が当選して、本当なら喜び勇んで来たかったところですもんね。
JIRO

加えて、今はオンラインチケットになったことで、席が寸前まで分からないというのがあるみたいで。その辺りのシステムに関しては、僕は今回初めて知ったことだったんです。それを否定しているわけではもちろんなくて。ただ、その人たちは「来ない」という決断をして、座席が出てきたらアリーナのすごく前のほうだったということで、「うわ! やっぱり行けば良かったのかな……?」という感じでもあったと思うんですよね。だからこそ余計に、その人たちの「悔しいだろうな」っていう気持ちを考えてしまって。

そのように想いを馳せることは、JIROさんのパフォーマンスに何か影響を及ぼしましたか? 例えば、プレイに気持ちがより一層こもるとか。そういった変化はあったのでしょうか?
JIRO

ありますよね、やっぱり。自分たちだけが良ければ、というふうには思えないというか。一人でも多くの人が幸せを掴んで帰ってほしいな、という想いはあるから。僕はキャラメル(リターンズ/GLAY MOBILEの連載)でも毎回「俺たちより楽しんでくれ!」ということを言っているんですよね。せっかく機会に恵まれて、コンサートとかに来られる状況であるんだったら、何も考えないで俺たちより楽しんでほしいっていう。「俺は少なくとも、君たちより楽しんでるよ!」という、すごくシンプルなことなんですけども。なかなか、今それを出来る人が減っているんだな、というのを今回のツアーでは特に感じましたよね。

TOSHIさんはいかがですか? お客様の様子、雰囲気をご覧になって思うことはありましたか?
TOSHI

このコロナになって、キャパシティーの半分の観客数というのが通常になって。前回のさいたま(2020年12月)では、交互に(一席置きの配置で)入っていたので、自分が想像しているよりは埋まっている印象で、ライヴをしていても違和感がなかったんです。でも今回の空席は、その時とはやっぱり意味が違う空席だと思うので。国に定められてではなく、自分で(来ないことを)選択しなきゃいけない、とか。いろいろな状況の人がいるので平等にはいかないと思うので、空席を見ると……その人が決断した想いを感じて、グッときましたね。

それがTOSHIさんのパフォーマンスに影響した部分もありましたか?
TOSHI

影響されないように気を付けますけど、どうしてもそういう気持ちになって叩いてしまう時もありましたね。やっぱり考えてしまうので。

JIROさんのMCの中で、「コロナ、1年前より良くなってきてるよね?」というポジティヴな発言もありましたよね。
JIRO

うん、そうですね。

今現在は感染拡大している渦中ですが、コロナ禍に突入した2020年初頭に比べて、“良くなってきている”状況でもある、と。
JIRO

まず、コンサートができているということがすごくありがたい状況で。「今俺たちはコンサートを決行するけれども、様々な事情で今観られない人を蔑ろにしているわけではないですよ」という話だと思うんですよね。「また必ず笑顔で再会しようよ」っていう。今は集まれる人だけ集まって、とりあえず動かないと共倒れしてしまいそうな気もするし。

TOSHI

うん、そうだね。

JIRO

なので、「置いてけぼりを食らった」とはあまり思ってほしくない、というか。

「また会えるよ」と、来られなかった人への伝言もお願いしていましたね。
JIRO

うん。しかも、僕らGLAYは、永井さんもそうですけど、大都市からは離れた街の出身で。今回のアリーナツアーでは大都市でしかやってないじゃないですか? そもそも自分たちの住む街から出られない人、出ることを許されない人たちってたくさんいると思うんですよね。なので、その人たちにも早く、こちらから出向いてあげたいし。でも、もしかしたらその街から、俺たちが行くことを歓迎されていないかもしれないから、それはタイミングの問題ではあると思うんだけど。今回は大都市で、許されるから俺たちはツアーをやったわけで。できるんだったら少しずつエンジンを掛けていかないとすぐ錆付いちゃうと思うから。なので「皆さん、時間は掛かるかもしれないけど待っててね!」ということなんですよね。

TOSHI

以前HISASHIくんが言っていた「ピンチをチャンスに」という言葉が面白かったんですけども。このコロナ禍で、全然ライヴできなくて動けなくて、生ドラムを叩けない時間もたくさんありましたけど、いろいろと勉強することができたんですよね。打ち込みとかも学べたし、自分の中の音楽の広がりはすごく持てたような気がしますね。

『FREEDOM ONLY』ツアーを完走したことで、例えばメンバー間の絆が深まるですとか、何か関係性に変化はありましたか?
JIRO

どうだろうな? そんなに変わってない気がするけど。でも、TAKUROがコロナになった時、「JIRO、どうしよう?」と相談されたのは、正直僕はビックリしたんですね。

真っ先にJIROさんにお電話されたんですよね?
JIRO

そうそう。それで「JIRO、俺コロナに罹っちゃった。静岡のライヴ、俺無しでやって。JIROが欠席した時のパターン(※2017年の金沢公演。体調不良でドクターストップが掛かったため、JIROの紙パネルとリハーサルで事前収録したベース音源を活用した)でやってもらってもいいと思うんだけど」と言ってきたんですよ。僕は「いやいや、それはダメでしょ」という話をして。TAKUROがコロナに感染して、それが発表になったらファンの人たちも動揺するだろうし。その中で、“TAKUROパネル”みたいなのを出してライヴをするのはちょっと、あまりにも「笑えないよ、それ」って感じになるんじゃないかな?と。真っ先にそれを思ったので。「いや、それはないんじゃないか? 中止にしたほうがいいんじゃない?」という話をしたんです。

ライヴの中止という決断は、ものすごく大きなことですよね。即断は難しくなかったですか?
JIRO

僕たちメンバーは決断するだけなので、大変なのはスタッフなんですけどね。神戸から静岡まで2週間あったけど、それまでにも日に日に感染拡大が騒がれていた状況だったので、メンバーの誰がなってもおかしくないと僕は思っていたし。ファンの人たちもある程度は覚悟を決めている部分があったんじゃないかな? 中止の決断は間違ってなかったと思います。TAKUROがコロナになって、グループLINEとかでメンバー、スタッフ間でやり取りしている時に、「そういう状況になると人が燃える気持ちがようやく分かった」って僕、書いたんです。僕が金沢のライヴを欠席した時、TAKUROはすごく張り切っていたんですよ。「立て看板つくるぞ! 任せろJIRO!」って。謎の空元気な感じで(笑)。その燃える感じが、TAKUROがコロナになったことによって僕にも分かった。

JIROさんはじゃあ、いつも以上に燃えていたわけですね。
JIRO

うん、燃えてたね(笑)。

静岡公演中止を経て、さいたまスーパーアリーナでのJIROさんのパフォーマンスはたしかに燃えていましたね。ステップも激しく、動きが全て大きかった気がします。
JIRO

どうなんでしょうね? 今回のツアーは僕、初っ端からすごくはしゃぎまくっていたので、恥ずかしくて映像を一切観ていないんですよ(笑)。なので、どんなパフォーマンスをしていたのか分からないんだけど。ただ、僕が楽しそうにしているとファンの人たちとかメンバーも喜んでくれるので、「俺の役割はそこかな?」とは改めて感じていましたけど。

TOSHIさんは、TAKUROさんの感染、ライヴの中止を知らされた時、どのように受け止められましたか?
TOSHI

メールで結果しか来なかったので(笑)、「そうですか、分かりました」と受け入れるしかなかったんですけども。そこからすぐTAKUROくんにはLINEをして、「大丈夫なのかな?」というのを確認しました。症状が軽いと聞いて、それだと逆に元気で退屈かもしれないけど、「できれば症状は無いほうがいいな」と思って。後遺症とかもあるらしいし、さいたままでには元気になっていてほしいな、とも願っていましたね。

心配しましたし、復活されて本当に良かったです。今回のツアーを終えて得たものを、今後に向けて、GLAYにどう生かしていきたいですか?
JIRO

いろいろといっぱいやりたいんですけどね。TAKUROが今ロスに戻っているので、それ次第かな?という感じはします。ツアーを終えてからすぐミーティングしたんですよ。状況がまだ定まらなくて、日々変わっていくじゃないですか? 政府が「これはダメです」「これはいいです」とか言っている段階で、やっぱり長期的なツアーはリスキーだよね、という話もあるし。だったらどうしようか? 考えるべきことはいろいろあるね、という話はしていました。具体的に今年はどうなるか?という話はまだしてないですけども、在宅でプリプロはやります。TAKUROがデモテープをつくって、それを元にメンバーが各自フレーズとかをつくって。そういうデモづくりはやっていこう、という話はしましたね。

では、ツアーが終わってもお休みはできない感じなんですね。
JIRO

いや、でも長期的な休みは無いんじゃないですか? そうじゃないと僕たちも不安になると思うので(笑)。

TAKUROさんがロスに戻られた後も、定期的にメンバーの皆さんでZOOM会議などされるのですか?
JIRO

あまりないですね。

グループLINEでのやり取りはあるのでしょうか?
JIRO

はい、それはちょこちょこあります。何かの「チェックお願いします!」みたいな連絡がマネージャーから来て、それに対して「お任せします!」とか「ここをこうして」とか。で、HISASHIは無視、みたいな(笑)。

スタンプだけ来るんですかね(笑)?
JIRO

いや、スタンプもない(笑)。「HISASHIさんどうでしょう?」ってマネージャーから訊かれたらようやくスタンプ。

TOSHI

あはは!

皆さんに全幅の信頼を寄せる、白紙の委任状なんですね。
JIRO

そうなんですよ。「これ嫌だ」とかも言わないし、お任せパターンが多いですね。

TOSHIさんは今後のGLAYのサポートに対して、意気込みはいかがですか?
TOSHI

このツアーを廻っていろいろなドラムのアプローチ、新しい世界が見えてきて。新曲だけではなく今までの楽曲も、例えば「HIGHCOMMUNICATIONS」をバリバリの打ち込みでやるのもカッコいいかな?とか。新しいシステムを使って新しいアプローチでこれまでの曲もやってみたいな、という気持ちがあります。これまでは「レコーディングとライヴは違うもの」という前提でやってきたんですけど、レコーディングの音そのものを再現できる環境が今回のツアーで見えてきたので、楽しみです。

さいたまスーパーアリーナのDAY2は、2月27日(日)、WOWOWなど各種プラットフォームで配信されますね。そのタイミングではJIROさんもご覧になって、振り返るんでしょうか?
JIRO

振り返るというか、映像をチェックしなきゃいけないので(笑)。そこで初めて観る、という感じになりますね。

早く観たいですし、今後のGLAYの皆さんのご活動を楽しみにしております。ありがとうございました!
JIRO&TOSHI

ありがとうございました!

文・大前多恵

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