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INTERVIEW

Vol.90 TERU WEBインタビュー

10月31日(土)に生配信された『GLAY app Presents PREMIUM HALLOWEEN LIVE Vol.05 LIVE at HOME』。6月8日(月)、TERUが自身の誕生日に弾き語りで単身スタートした配信ライヴイベントシリーズ「LIVE at HOME」は、これを以って2020年内は最終回。毎回趣向を凝らし、積み重ねて来た数々の挑戦・実験が結実した、シリーズ集大成にふさわしい充実したエンターテインメント作品となった。このインタビューは、興奮冷めやらぬ本番2日後に実施。制作秘話や手応え、シリーズの総括、Vol.5を終えて芽生えた新たな展望などを尋ねると、TERUは疲れを感じさせず、エネルギーに満ちた言葉の数々を聴かせてくれた。

2020.11.11

Vol.5は、ハロウィンらしい楽しさはもちろんありながら、つくり込まれた世界観に引き込まれる配信ライヴでした。終えてみてのご感想はいかがですか?

TERU
2020年を締め括るライヴとしては、Vol.5にして「LIVE at HOME」史上最高のものになったと思います。ダンサーを入れるのは「LIVE at HOME」初の試みになるんですけども、「双子のかわいいダンサーを入れたい」という元々のイメージ通り、バッチリはまったライヴになりました。

TERUさんも一緒に踊っていらっしゃいましたよね?

TERU
リハーサルで、ANKANのふたりが振り付けをしているのを鏡越しに観ていたら、すごくかわいらしいダンスだったので、合わせて踊ってみたんですよ。そうしたらふたりがニコッとしてくれたので、「あ、これはアリなんだな」と(笑)。

いえいえ、アリどころか素敵でした(笑)。ダンスなど演出面については後ほど詳しくまた伺いたいのですが、まず音楽面についてお尋ねします。ハロウィンムードを前提としつつ、全編ダンスミュージック・アレンジが施されていましたね。

TERU
DJ Mass(MAD Izm*)くんには、″’80年代のディスコミュージック″というオファーをしてあって、ステージ上の美術装飾などもそのイメージでつくってもらっていたんですね。なぜ’80年代のディスコにしたかったか?というと、ハロウィン仕様でおどろおどろしくするのもアリだけど、もう少し音楽的にもちゃんとしたことをやってみたいな、と思ったからなんです。元々2016年にリリースした『Welcome To The Halloween Town』(ハロウィンアレンジアルバム)のために、MASSくんが20曲ぐらいつくっていたハロウィンアレンジがあって、それを聴き返したり、長居スタジアム(2012年7月の『HOTEL GLAY』)の時にもMASSくんにつくってもらったオープニングのアレンジを聴き直していくうちに、″’80年代のディスコミュージック″の匂いをキーワードとして感じて。MASSくんとその方面で今回はガッチリやってみたいな、というのがそもそもの発想だったんです。MASSくんにそうオファーしたらすごくよく理解してくれて。なので、ハロウィンミックスといえど、’80年代のディスコミュージック、ダンスミュージックが背景にあるので、すごく聴きやすくてノリやすい12曲になったんじゃないかな?と思います。

セットリストはこれまでのように、ゲストであるHISASHIさんの意見も取り入れながらTERUさんが決められる形だったのですか?

TERU
今回は僕の独断でした。ハロウィンアレンジ曲を全部聴き直した中で、コンセプトであるダンスミュージック、’80年代のディスコというテーマに合いそうな楽曲を予め20曲ぐらい自分でピックアップして、15曲ぐらい用意したんですけども、HISASHIに「多い。これひとりでやるの?!」と言われて(笑)。そこから削ってあの形になりました。

他のギタリストの方に声を掛ける説もあったそうですね?

TERU
そうなんですよ。元々HISASHIはゲストミュージシャンとしての参加だったので。2017年のハロウィンライヴ(TERU主催の『HALLOWEENDELICS』/ZeppDiverCity)にHISASHIは恵比寿最速(仮)というバンドとして登場してくれていて、そのイメージもあって「たぶん5、6曲だろう」と思っていたらしく(笑)。12曲もあるなら他にギターも入れなきゃな……と僕も思っていろいろ探したんですけども、なかなか声を掛けづらいというか(笑)。なので、HISASHIに全部お願いしました。ギターのフレーズを考えるのが大変だっただろうなと思うし、後奏をゲームの音楽にしたり、いろいろなところに遊び心がいっぱいあったので、相当考えてくれたんだなと思いますね。

「HEAVY GAUGE」ではTERUさんもエレキギターを弾かれるとは、新鮮で驚きました。

TERU
HISASHIひとりで全曲のギターフレーズを考えてくれていたんですけども、さすがに「HEAVY GAUGE」に関しては、イントロで印象的なTAKUROのギターサウンドが鳴っている上に、HISASHIのいろいろなエレクトリックな音が入っているので、「TAKUROのフレーズは弾いてほしい」とリクエストされて、ギターを持ってみました。「デストピア」の時にエレキギターを全編弾きながら歌ったこともあったので、弾くこと自体には抵抗はなかったんですけども、持つ位置の高さって言うんですかね? 最初に持った時HISASHIから「それは高過ぎる。もっと下げたほうがいい」というアドバイスをもらいました。

低い位置で持つのはカッコいいですが、「弾きづらい」とアフターパーティーでおっしゃっていましたね。

TERU
低くなれば低くなるほど手首を反らなければいけなくて、結構負担が掛かるので、皆そういう大変さと闘いながら見た目のカッコ良さも追及して頑張ってるんだなぁというのは実感しました。それがロックの象徴、みたいなのがあるんですね。参加してくれたベースのCHIYUも、普段だったらもっと低い位置で弾くみたいなんですけど、今回だけは「ミスタッチしたくないから」ということで、高い位置に上げて演奏したと言っていました。

今お名前が出ましたCHIYUさんは、TERUさんを尊敬していると公言されている後輩アーティスト。2017年の『HALLOWEENDELICS』ではGREMLINSとして対バンされましたが、今回の参加はそれともまた違った気合を感じるプレイ、コーラスでした。

TERU
CHIYUはもともとSuGというバンドをやっていたんですけども、解散して、今はソロで頑張っているんですね。ベースを弾くだけではなく歌も歌っているんですけども、アルバムが完成した時にすぐデータを送ってくれて、それを聴いて感想を伝えるなどのやり取りをしていて。ご飯に誘っていろいろと音楽の話をしている時、このVol.5の構想があったので、「もしタイミングが合えば、声を掛けるかもしれない」という話をしたらすごく喜んでくれて。ディスコミュージックというところでは、ベースレスのほうが音楽的にはひょっとしたら正しいのかもしれないんです。でも、コロナ禍で大変な想いをしているファンの子たちへメッセージを届けていたりする、CHIYUの気持ちがすごく滲み出ていたのを感じて……ここでCHIYUにも参加してもらって、CHIYUのファンの子たちにもライヴしてる姿を見せることで、皆頑張ってくれるんじゃないかな?という想いもあって、オファーしました。

さすがTERUさん! CHIYUさんのファンの方たちのことまで思いやっていらっしゃるなんて……CHIYUさんは完コピして綿密な準備して臨まれたそうで、強い愛とリスペクトを感じました。

TERU
やはりベースということで、JIROのプレイがすごく参考になったと言っていましたね。JIROはシンプルに弾いているようであっても、意外と難しいフレーズをたくさん弾いているんです。CHIYUはそれをコピーして吸収して、更に自分のフィルターを通して弾く時に、その難しさと、「シンプルに弾いているように見えて、ベースラインが本当に考えられているんだな」と学んだようで、すごくいい勉強になったと言っていました。

前回のオフィシャルインタビューを振り返ると、ANKANのおふたりについて、オープニングの映像以外には本編でどういう形で絡んでもらうか「まだ決まっていない」とお話されていましたが、ふたを開けてみると大フィーチャーされていましたね。

TERU
そうですね。元々はオープニングの映像と、あとはアンコールに出てもらえたらいいかな?と思っていたんですけども、オープニング映像の構想を考えていくうちにどんどん夢が広がって。そこで、演出家の方やキャスティングの方に相談して、踊らなくてもいいからなるべくステージにずっといてもらって、立っているだけでも存在感のあるような感じで参加してもらうのってアリですか?という相談をしたところ、本編中でも何曲か躍ってくださるという話に発展していきました。後半はTOKI(C4)さんが登場するので、あまり(画面内が)ゴチャゴチャとし過ぎでも良くないからバランスを考えて、TOKIさんのところはTOKIさんに任せつつ、自分の中での「ここからここまではいてほしい」というのをお伝えして。考えてきていただいたダンスをリハーサルで見せてもらったところ、キレッキレで曲の雰囲気にバッチリ合ったので、そこからまたイメージが膨らみ、追加で「電気イルカ奇妙ナ嗜好」で赤い傘を持ってもらったりもしました。

「電気イルカ奇妙ナ嗜好」は、赤い傘がインパクト大で、ダークなメリーポピンズみたいな雰囲気がハロウィン感を高めていましたね。

TERU
リハーサルをやっている時に、頭の中ですぐそういうイメージができて。「真っ赤な傘を持って立っていてもらっていいですか?」という話から、ああいうフリを付けてくれたんです。ANKANのふたりが躍っているのを見ていろんな演出をイメージすることができたし、そのダンスを見て僕も一緒に踊ったりするのも決まっていきました。新しい世界の人たちとの出会いによってエンターテインメントって膨らんでいくなぁというのを今回はすごく学べました。

素朴な疑問としてお尋ねするのですが、至近距離にダンサーの方がいるというのは、ヴォーカリストとしてやりづらさはないのでしょうか?

TERU
これは自分のヴォーカルスタイルだと思うんですけど、周りに何があるからということでやりづらい、ということがあまりなくて、意外としっくり来たんですよ。過去には南流石さんとご一緒して大人数の方々に踊ってもらったこともあるし、拒絶反応もなくすんなり一緒にステージに立てました。僕の中では「あ、こういう感覚なんだな」と気付けたし、やっぱり実際にライヴをすると新たな可能性が見えてくるんですよね。ダンスにもジャンルがたくさんあるので、いろいろな人たちとコラボレーションするともっともっと可能性を広げてくれるんじゃないかな?とも思いましたね。

「ALL STANDARD IS YOU」は2019年のドリームフェスティバルの1曲目で披露されたのが、久しぶりの披露だったんですよね。今回はまた全く違ったアレンジに生まれ変わっていて。魂の絶唱のような、狂気すら感じさせるTERUさんのシャウトは迫力に満ちていました。

TERU
HISASHIがドリームフェスティバルの時、「この曲でアカペラで登場してほしい」というアイディアを出してきた時、僕としては恥ずかしさのあまり「ちょっとどうかな?」という拒絶反応が出たんですけども(笑)、実際にやってみたらすごくインパクトのある演出で。ヴォーカルがひとりで歌うアカペラ始まりというのは、どんな花火よりも大きな特効になりうるんだなと学んだんですね。「ALL STANDARD IS YOU」の新しい見せ方、聴かせ方をその時に経験できたので、今回はそれともまた違った形に挑戦することができました。コード感もまるで変ってしまって、ハロウィンだからこそのアレンジだったので、メロディーを合わせるのも実はすごく難しかったんです。でも、大サビの<あなたの幸せ願わない日はない>と連呼するところ、あそこも最初はおどろおどろしいコード感だったんですけど、そこだけは原曲通りに戻してもらいました。「その部分だけは救いがあってほしい」と思ったので、MASSくんに相談して。

大切にしたい特別な想いがあったのですね。

TERU
歌詞もそうなんですけども、聴いてくれている人たちが気持ちを込められる瞬間だと思って。MASSくんも本当に懐の広い人で、そういう相談にもすぐ対応してくれるんです。今回は、アレンジ力もそうですけど、MASSくんのそういった対応力に助けられました。InstagramでMASSくんを「匠なサウンドメイクとバンドマスター的な存在感」と書いたら、MASSくんのおじいちゃんが大工さんだったそうで、「匠という言葉が自分にとって一番の褒め言葉です」とすごく喜んでくれて。大工さんが木にかんなを掛けるようにMASSくんも本当に細かい作業をしてくれたし、「ちょっと釘が曲がったから、もう1回抜くわ」みたいな(笑)、本当に細部まで気を使った丁寧なサウンドだからこそ、皆に気に入ってもらえてるんじゃないかな?と思います。

職人さんのような緻密なお仕事ぶりですね。そして、ゲストのTOKIさん。アフターパーティーではお誕生日祝いの場面もありました。TOKIさんはカッコ良くもあり、お人柄が面白くもあり(笑)、イベントの盛り上げ役となっていましたね。30年来の長いお付き合いで、これまでも共演はしてこられましたが、今回はいかがでしたか?

TERU
こうしてしっかりと4曲も一緒に歌うのは初めてでしたし、ふたりで並んで歌う姿をお見せすることもなかったので、ファンの子たちにとっても新鮮だったみたいですね。氷室京介さんと吉川晃司さんみたいな(笑)。そんな感じで楽しめたんじゃないかな?と思います。’80年代、’90年代の日本のロックに憧れて音楽をしてこられた人で、その堂々としたパフォーマンスがカッコいいんですよ。だんだん皆がTOKIさんに目を奪われていき、TOKIさんが映っていないとなんだか寂しくなってしまうという(笑)。

たしかに、ついつい探してしまっていました(笑)。

TERU
そうそう(笑)。「LIVE at HOME」において、2020年の最高の締めになったなと思うし、TOKIさんも久々にパフォーマンスできたことをすごく喜んでくださったので、本当に良かったなと思います。

「UNITE」はC4の曲ですが、どういった選曲理由があったのですか?

TERU
TOKIさんが選んだんですけども、元々HISASHIがメインでギターを弾いている曲だというのもあって。実際に歌ってみたらすごく軽快で、MASSくんのアレンジがまたいいんですよ。’80年代の疾走感あるダンスビートみたいな感じで、すごくカッコよくて。’80年代のあの時代を蘇らせたようなサウンドになりましたね。

そして「BURST」。GLAYのライヴでは近年あまりセットリストに入らないので、レアに感じました。

TERU
「BURST」をなぜやらなくなったか?というと、元々はあんなに短い曲なのに、<Let me BURST>というくだりだけで下手したら30分ぐらいになってしまうので(笑)。「30分あれば6曲できるよ」という話から『「BURST」はコスパが悪いな』となりまして(笑)。逆手にとってではないですけども、久々に、しかもTOKIさんも交えて一緒にやったらファンの子たちも喜ぶだろうなと思って、僕が選曲しましたね。

なるほど。今回のライヴにおいて、TOKIさんとの歌い分けは何を基準に決められたのですか?

TERU
低いところはTOKIさんも歌えるだろうし、という音程的なところと、あとはカメラに映った時の見栄えというか、僕が歌ってTOKIさんが歌ってという″代わる代わる感″があるとコラボ感があっていいな、と。そういうことをポイントに考えました。「TILL KINGDOM COME」のBメロは僕がメインで歌うところだったんですけども、「このキーだったらTOKIさんも歌えるかな?」と思って、リハーサルの時に急遽TOKIさんにお願いしました。元々自分が考えていたところからの変更点としては、その部分ぐらいかな? 「TILL KINGDOM COME」といえば、TAKUROのコーラスパートをTOKIさんとCHIYUも歌ってくれて、一緒に歌っていてオリジナリティを感じましたね。GLAYの楽曲ではあるんですけども、ステージに立っている皆でつくりあげた、GLAYという枠から切り離したものとして観られたんじゃないかな?と思います。

TOKIさんは、リハーサルで垣間見たTERUさんの真剣さ、この「LIVE at HOME」に向き合う姿勢に触れて意識が変わった、とアフターパーティーで話されていましたね。「ちょっと弾いてみようかな」と軽く考えていたギターを厳かに置いた、と(笑)。

TERU
あはは! ギターを弾こうとしていたのは必死に止めましたね(笑)。たしかに、実際これまでGLAYのライヴにTOKIさんに登場してもらった場面というは、ほんの1、2曲だったし、お祭り的な感じだったんですよ。でも「LIVE at HOME」に関しては自分の中で、今後のエンターテインメントの基盤ができればいいな、という想いで取り組んでいるから、意識が違うんですよね。配信というものに関して、今後のライヴスタイル、エンターテインメントの形としては重要だと思っているし、「じゃあ、配信するにあたってどういう見せ方が一番いいんだろうか?」ということを真剣にいろいろと考えていて。会場選び一つ取っても、客席がある場所だと″お客さんがいない″ということをパフォーマンスする側は意識し過ぎてしまうので、「むしろ、客席の無い場所から配信をしていこう」と発想を変えたり。そうやって考えることがたくさんあるから、中途半端なところが一つでも出てくるとスタッフの人たちの気持ちを惑わせてしまう、というか。「TERUさんはどっちなんだろう? 真剣にやりたいのかな?」と思わせてしまったら、スタッフの人たちの意識にも関わってくるし。だから、「まぁ、これはこんなぐらいでいいか」ではなくて、″究極のエンターテインメント″をつくっていこうという想いで一つ一つ取り組んできているんです。そういう真剣さが、一番身近にいたTOKIさんにも伝わって良かったな、と思いましたね。

おっしゃる通り、Vol.5を拝見していても、ハロウィンのお祭り騒ぎ感というよりは、すごく引き込まれたんですよね。集中して観たくなるような、毎回そうなのですが、しっかりとつくりこまれたエンターテインメントだと感じました。

TERU
メンバー全員ひとりひとりが本当に高い意識の中でライヴをやっていたと思うので、観てくれたファンの子たちも「引き込まれる」と言ってくれたり、「ハロウィンというのを忘れてしまいました」というコメントもあったりして、″ライヴ″という感覚で観てくれていると感じました。こういう真剣と真剣のぶつかり合いというか、ライヴに元々あったそういうヒリヒリした感覚を今後、画面を通してですけれども、伝えていけるようなライヴをつくっていきたいですね。

Vol.2、3に続き今回で3度目、「LIVE at HOME」最多出演となるREOさんのキーボードも効いていて、存在感が光っていました。

TERU
そうでしたよね。元々はクラシックの方で、音色的にも今回はピアノだけではなくチェンバロとか、曲に合わせたサウンドでやってくれていて、フレーズも練り込まれていて。本人に話を聞いたら「今回はむちゃくちゃ練習しました」と言っていました。「TERUさんの脚を引っ張りたくない」と皆が思ってくれてたようで(笑)。当然、僕も僕なりに真剣にやっていたので、そういう想いはちゃんと伝わっていっているんだな、とうれしかったですね。

19時の開演から1時間、無観客のフロアでDJをなさったユニットOWNCEAN(UNA+MATCHA)も、ライヴの世界観をつくりだす重要な役割を担っていましたね。

TERU
オープニングでもまた違った空気を入れたい、新鮮さを感じたいなというのもあって、MASSくんに「今イケてる、オシャレなDJの子がもしいたら探してほしい」とお願いして、出演してもらったのがOWNCEANのふたりだったんです。決まった後で資料を見たらアソビシステム所属で、しかもマネージャーがあのAzumi(「氷の翼 feat. Azumi(Wyolica)」で共演)ちゃんと一緒なんですよ。しかもそのマネージャーさんもGLAYを大好きだそうで。後々聞いたら、OWNCEANのふたりはファッションの分野にも繋がりがあるので、10代の時からCandy Stripperの(板橋)よしえちゃんと仲がいいみたいで、いろいろなところで繋がっていたのも面白くて。沖縄出身のふたりが穏やかな空気を漂わせながら、’80年代のディスコサウンドというテーマもちゃんと分かってくれて、全体的には洒落たムードの中、当時の懐かしい曲も今風にアレンジして流してくれて。「ゴーストバスターズ」の主題歌が出て来た時には皆で「うわぉ~!」って盛り上がりましたからね(笑)。

’80年代が一瞬で蘇りますよね。

TERU
’84年とかの曲ですからね~。あと、ふたりは幼馴染みだというところにも、僕とTAKUROみたいな関係性のようで共感もしたし。そういうあったかさって自ずと音にも出ていくだろうし、このコロナ禍の中で今、最も必要とされているものなんじゃないかな?って。本当にいろいろな人たちに助けられてこのイベントは成り立っているんだなと思ったのが、OWNCEANのふたりが参加すると決定した時、M.A.Cのアーティスティックコスメを担当している方が協力してくださることになって、オープニングのふたりのメイクを担当してくださったんです。その方も毎日GLAYを聴いてくださっているみたいで、わざわざお手紙をいただいたりもして。そういう繋がりの中で醸し出されるあったかみが、画面を通してですけども、少しでも伝わってくれたらな、と思いました。

様々なご縁を感じるライヴだったのですね。また、ユニカヴィジョンでライヴの一部が生中継されたのも「LIVE at HOME」史上初の試みでした。どんな経緯で決まったのですか?

TERU
デモ音源をつくっている段階でもう完成度の高いライヴになることが見えて来ていたので、マネージャーに「これってユニカヴィジョンで流したりできるのかな?」と相談したところ、ちょっと聞いてみます、と。そうしたらご快諾をいただきまして。短い時間ではありますけども、カップルなんかが街でその音楽に触れて少しでも楽しんでもらえたらな、という想いで話をさせてもらい、実現しました。何人かが街を歩いている時に偶然見掛けて、「観ましたよ」というメッセージをくれたりもして。今は外出自粛期間ではないですけれども、三密を避けたりソーシャルディスタンスを保ったりするために、街に出てもあまり騒ぎ過ぎないように気を付ける、そういう寂しいハロウィンではあったので。映像で少しだけでも盛り上げて、ワクワクしてもらえたらなという想いで配信をしたんですけどね。観てもらえてよかったなと思います。

改めてセットリストの楽曲群の歌詞を読み返してみると、全体を貫くメッセージがあるように思いました。醒めない悪夢のようなコロナ禍の日々を過ごしながらも、楽しみを見つけたり、幸せになろうとする気持ちを大切にする、と言いますか……選曲にあたり、それを意識された部分もありますか?

TERU
「HEROES」に関しては意識していました。この時代だからこそ、自分が思うヒーローのように頑張ってほしいな、という想いもあったし。「百花繚乱」のようなYAVAI!世情なので(笑)。ちょっとしたキーワードとなるものに関しては、今回のみならずVol.1から、今のこのコロナ禍に引っ張られた選曲にはなっていると思います。

「週末のBaby talk」は、選曲のポイントは何だったんですか?

TERU
MASSくんのハロウィンミックスを聴き直していった時に、「週末のBaby talk」がすごく軽快で、楽しく感じたんですよ。最近そういえばこういう楽しいサウンドの音楽ってなかなかやってなかったなぁと思って。アコースティックで表現したり、ストリングスでより高尚な空間を提供したりしてきた流れがあったけど、ハロウィンを軽快に楽しく過ごしたいという想いもあって、オープニングに抜擢しました。<晴れた週末に また会おうよ>というところを、<晴れたハロウィンに また会おうよ>と変えて歌おうと思ったんですけど、間違えたら嫌だからできなかったんです(笑)。もう少しリハーサル期間が長ければね~。そういうアイディアはリハーサルを何日も積み重ねていくからできるのであって、突然思い浮かんだからってすぐできるようなものでもなくて。なので、恐れをなしてできませんでしたけども(笑)。なぜ選んだかというと、こういう時じゃないとYUKIちゃんの声を出せないから、というのもあります。流しちゃおう!と思って(笑)。

ここぞとばかりに、だったんですね(笑)。アフターパーティーは残念ながらGLAY appでの生配信は中止となってしまいましたが、新鮮な試みでしたね。

TERU
ライヴ直後にアフターパーティーとして配信するのは初めてだったので、すごく楽しみにしていたんですけどね。配信システムのトラブルで生配信はできなくなりましたけど、急遽『HISASHI TV』でYouTube配信をしたり、最後は僕のインスタライヴでも中継して締めたり。トラブルは本当はあってはならないことなんですけれども、そうなったらなったで仕方がないということで、あまり考え過ぎず、応用力を発揮してやれることはやっていこうと。そういう火事場の馬鹿力は、過去25年間、僕たちが培った経験値があるからこそ湧いてくるんじゃないかな?と思いました。逆にファンの子たちは、収録してちゃんと編集された番組も後日観られるということで、「二度おいしい」「楽しみにしてます」とは言ってくれましたけどね。申し訳なかったですし、残念ではありましたけども。

ご本人としては悔しさはあったと思いますが、臨機応変なご対応も含め、さすがでした。Vo.1からTERUさんが毎回手塩に掛けてつくりあげ、大きな進化を遂げてきた「LIVE at HOME」シリーズ。ここまでをどう総括なさいますか?

TERU
今ちょうどVol.1を自分で編集して、ライヴ部分だけを切り取った40分ぐらいの映像をつくったところなんです。振り返ってみると、スタートラインでは機材も揃っていなかったし、サウンドの調節もスタッフがいないから自分でやっていたので、ちょっとマイクの音が割れていたり、息の吹き掛かる音が気になったり、いろいろと問題はあるんですけども。でもそれはそれで「コロナ禍の自粛期間中、不自由な生活を強いられている中でやれることをやったんだな、良くやったな」と。自分で自分を褒めてあげたいぐらい頑張ってるなぁというのが見られたんですね。そこからスタートして、次のVol.2でTAKUROの協力を得て函館でライヴをした時も、″函館で開催する意味″を考えながら高校時代の音楽を選曲したり、TAKUROが楽曲提供して今は活動休止している女性ミュージシャンの曲をカヴァーしたりとか、″その時にしかできないこと″をできたのが良かったし。8月に開催したVol.3に関しては、普通に使用されているヨットハーバーを会場としてお借りしたことで、吹っ切れたというか。ライヴをできるかどうか分からないような場所ではあったけど、実際にやってみるとすごく雰囲気も良くて。Vol.3の前、7月31日の「GLAYの日」に函館・恵山で、コロナ禍の中ではあるけどスケールの大きなことをやろう、映像的に″観て気持ちいい・楽しい″ものを提供しようということで配信ライヴをした時、「こうやって普段なかなか見られない場所、行けない場所で演奏することによって、今までにない感覚になれるんだな」と気付いたんですよね。『あ、これが「LIVE at HOME」の原点なのかな?』と思って。

「LIVE at HOME」の定義が変化し、どんどん自由に広がっていってきていますよね。

TERU
Vol.4に関しても、スタッフや演出の方と話をしていく中で、「じゃあ、大学でやるのはどうでしょう?」というご意見をいただいて、会場候補の中にあった工学院大学の校舎を観た時に、「これはすごいね」と。大学生の皆さんはまだまだ自粛生活を強いられていて学校に通えず、オンラインで授業を受けていた時期でもあったので、すごくハードルが高いスタートラインではあったんです。でも、学長さんと理事長さんのご協力の下、理解をいただいて開催することができて。文化祭が2年連続で中止になっていたことも知らずにコラボをさせてもらったんですが、当日、大学生の皆さんの想いも受け取って、それも乗せてしっかりと届けようという気持ちにもなったし。「こうしていろんな人たちと関わりを持ってやっていくのも「LIVE at HOME」のいいところなんだな」と学べる大きな経験とさせてもらうことができました。そして今回のVol.5に関しては、会場はアニヴェルセル東京ベイという結婚式場だったんですけども、コロナの影響などで年内に締めてしまうかもしれない、というお話を伺って。スタッフの方々もいたたまれない気持ちでこの会場を後にするんだろうなぁ……と想像すると、GLAYと関わることによって一つでもいい思い出ができてほしいな、とも思いました。総支配人の方が来てくださって少しお話させてもらったところ、GLAYとコラボできることがうれしいとおっしゃってくださって。GLAYが25年間すごく真面目に、真剣に音楽に向き合ってきたからこそ、こうしてたくさんの方たちが協力してくれてるんだな、と。そう考えるとやっぱりGLAYに感謝というか。いろいろなことを経験できたのも全てGLAYという名前が僕らを支えてくれているからだな、とすごく感じましたね。

このシリーズ5回を通じてTERUさんが得られた、一番大きなものは何ですか?

TERU
得たのは、いろいろな人たちの協力の下で僕たちは活動できているんだなぁということを改めて感じた、ということですね。ひとりだとできないことも、たくさんの人たちに協力してもらうことによって、どんどん実現していくんですよね。Vol.1とVol.5のスケールの違いを観てもらえば分かる通り、大きなことをやるにはそれだけ関わる人も増えていくし、そうやってプロの方たちと一緒に仕事をするというのはすごいことなんだ、というのを実感しています。今後いろいろな大きなライヴをやる時に、リハーサルの仕方とかが変わってくるかな、とも思っていて。今までは2、3週間ずっとリハーサルを続けてきましたけども、「LIVE at HOME」で学んだやり方を提案しようかな?と。家で各自がしっかりと予習復習する期間というのはすごく大事なんじゃないかな?と思うようになってきたんです。スタジオで集まって皆で音を出すのは楽しいし、もちろんすごく大事なことではあるんですけども、もっと細かいところを各自が集中して見つめ直す時間も必要だなぁと。「LIVE at HOME」でデモをつくることによって、それはすごく学びましたね。今後そういったところでも、無駄な時間はあまり過ごさないような形でやっていけたらな、と思います。

「LIVE at HOME」によって、より密度の高い時間の使い方をするヒントを得た、ということですかね?

TERU
そうですね。短期間にまとめることによって集中力も高まるし、「やればできるんだな」という気付きはありました。Vol.5も1回しかリハーサルはできていないんですけども、事前の準備がしっかりできていれば1日で12曲できる。ということは、(通常のGLAYのライヴ用のリハーサルでも)3日でもできるということですからね。ただ、演出面に関しては、1日しかリハができないというのは不安ですし、もちろん大変な作業ではあると思うんですけども。でも、今後コロナの影響で会場にお客さんを半分しか入れられない状況が続くようであれば、そういうところでも予算の削減をしなければいけないと思うしね。いろいろと先を見据えて、考えていかないとなって思っています。

前回のインタビューで「LIVE at HOME」の展望を伺いましたら、たんぽぽのように(笑)、GLAYの活動が落ち着いた時に頭角を現すプロジェクトとして続けていきたい、とお話しされていました。5回目まで終えられた今、想いが変わられた部分はありますか?

TERU
展望としては、いろいろな人たちとやってみたいな、と思い始めていて。Vol.4まではGLAY内でできることだったんですけども、今回CHIYUとやってみて、OWNCEANやANKANにも手伝ってもらった時、『あ、こういう″GLAYじゃできないこと″をするのがひょっとしたら「LIVE at HOME」なのかな?』と気付き始めているんです。GLAYだからできることもあるし、GLAYじゃなくてもできることもあって、自分の中でその垣根をつくって分けて考えていきたいなと。「LIVE at HOME」は「LIVE at HOME」、GLAYの活動はGLAYの活動という棲み分けをしていきたいな、と思っています。なので、GLAYの活動の間を縫うのは変わらずですけども、今後はいろいろなミュージシャンとやってみたいな、という想いがあります。ひょっとしたらピアノ1本とゲストヴォーカルと僕の3人だったり、ヴォーカル2人だけだったりの回もアリだなと思うし。仲のいいミュージシャンからゲストヴォーカルを何人か呼んで歌唱力の勝負ができる、そういうヒリヒリした場所になってもいいだろうし。そういう部分では、GLAYとは真逆の活動もやっていけたらな、と思います。

音楽家としてだけではなく、アートディレクションにも長けていらっしゃり、シアトリカルな見せ方もできるTERUさんの強みが活かされるシリーズだと改めて思います。ソロ活動をしてこられなかったTERUさんにとって、ソロプロジェクト的な位置付けにもなりうる、と言いますか。

TERU
そう、それが見え始めてきているんです。だからいろんな人とやってみたいな、と思い出して。そういうところではいろんな実験はしながらやっていきたいな、と。

今後どうなるのか、すごく楽しみです。

TERU
楽しみにしていてください。ヘタするとミュージカルとかやってるかもね(笑)。

俳優さんたちとのコラボレーションでロックオペラとか、良さそうです。

TERU
それも面白いですよね。学芸会みたいになったらどうしよう(笑)?!

いえいえ(笑)。あとは、リモートの利点を活かし、海外アーティストとのコラボレーションも可能かもしれないですよね。

TERU
そうなんですよね。今後Maydayが協力してくれたら、一緒にできたらいいですよね。リモートだからできることだし、5Gが普及したらそういうのも楽しめるかなと思います。いろいろな考え方ができますよね。

「LIVE at HOME」が終わったばかりですが、GLAYのさいたまスーパーアリーナ2DAYSに向けての準備が本格化しそうですね。

TERU
11月の半ばからリハーサルが始まります。「LIVE at HOME」を続けてきたからこそテンションがずっと保たれている感があるし、そのまま突入できるので自分的にはすごく良かったな、と。「LIVE at HOME」の5本を経験してきた中で、歌を歌い続けるというのが自分のテーマでもあり、スキルアップもテーマにしていました。GLAYという名前に支えられてこのシリーズはいろいろな方からの協力を得ることができ、進化もしてきました。Vol.5が終わって、今度はGLAYに還す時だな、と。さいたまスーパーアリーナでの歌に関しては、『「LIVE at HOME」を続けてきたからこそ、これだけの熱がこもった歌が歌えるんだ』というのを知らしめたいな、と思います!

文・大前多恵

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