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INTERVIEW

Vol.87 TERU WEBインタビュー

10月3日(土)、TERUが企画立案する配信ライヴイベントシリーズの第四弾、『GLAY app Presents PREMIUM ACOUSTIC LIVE Vol.04 LIVE at HOME』が開催される。この企画の立ち上げに至るまでの心の動き、回を重ねるごとに変化した気持ち、そしてコロナ禍においてアーティストとして思うこととは? TERUの想いに迫るロングインタビュー!

2020.9.30

2月26日(水)、ライヴやイベント等の自粛要請が政府から出され、GLAYの皆さんが5月開催予定だった名古屋ドーム、東京ドーム公演2DAYSの中止を発表なさったのが4月3日(金)。配信ライヴイベント「LIVE at HOME」の企画を立案され、6月8日(月)のVol.01開催に至るまで、TERUさんの心の中ではどういったお気持ちの流れがあったのでしょうか?

TERU
新型コロナウイルスの影響を直接受けたのが2月24日(月)、ヴェネツィアのサンマルコ広場でライヴをするため現地に着いた瞬間のことでした。土田(康彦/ヴェネツィアンガラスデザイナー)さんから連絡があって、「お祭りが途中で中止になりました」と。世界的な状況としてコロナが蔓延し始めていた時期でしたし、ヴェネツィア市からの通達だということで、世界中から集まってくれていたファンの皆には申し訳なかったんですが、止む無く僕らのライヴも中止ということに……。そこで「どうしようか?」と考えていた時、HISASHIのほうから、「せっかく機材も持ってきてるし、配信しようよ」という案が出まして。その2日後には、ヴェネツィアにある土田さんの工場をお借りして、配信という形で演奏を届けさせてもらいました。初の無観客ライヴですよね。その時に自分の中で「あ、こういうやり方もアリだな」と感じていたんです。

その段階で、早くも配信ライヴの手応えを得ておられたのですね。

TERU
それで、東京に戻ってきてからメンバー間で「5月のドームどうしよう?」という話し合いをしていく中で、やっぱりファンの子たちの安全を第一に考えて中止にしよう、と。せめて2か月前に発表すれば、ファンの子たちが予約しているホテルや移動手段のキャンセル料が発生しないようにもできますし、早目に対応していこう、と決めて。だからもう『ミュージックステーション』の生放送(4月3日)の当日楽屋での打合せの時に決断を下し、『Mステ』のオンエア前にTAKUROがYouTubeを通して発表する、という形にしました。その流れの中で、僕としては「どういう状況になろうとも、歌うことはやめちゃいけないな」と思ったんですね。自分の性格は自分が一番良く知っているので、2か月、3か月休みになったらダラけた生活になってしまうんだろうな、と危機感を抱いて(笑)。それに歌というのは、1か月休んでしまうと本当に声が出なくなってしまうものなのです。アスリートと同じで、日々の訓練や努力が実を結ぶパートなので。そこで、「じゃあ、49歳の誕生日を迎える6月8日に何かしよう」と。40代最後の誕生日なのに何もしないで終わるのは嫌だなとも思いまして、そこで初めてライヴ配信を具体的に考えて、まずはマネージャーに相談した、という流れだったんです。

配信の場としては、元々はライブラリ機能に特化していたGLAY app(※2018年2月1日にリリースした公式アプリ)という自前のプラットフォームを有効活用なさっています。

TERU
当初GLAY appには配信のコンテンツがなかったので、是非ともつくってほしい、とお願いして一から開発をしてもらいました。そう思い立ったのは、やっぱりGLAYの体質ですかね。これまでにいろいろなことを経験してきて、独立した時に"全て自分たちでやる"という形が意外とGLAYには合っている、と気付いたんですね。G-DIRECT(※通販システム)もGLAY MOBILE(※オリジナルコンテンツ満載のモバイルサイト)もそうなんですけども、"自分たちのものは自分たちで管理する"というか。なので、ライヴ配信の媒体はたくさんあるんですが、そこと組むというよりは、「じゃあ、全部自分でやっちゃおう」と。そのほうが自分のやりたいタイミングで自由にできるし、気も遣わなくて済むし。それに、リスクヘッジの意味合いもあって、もし問題が起きた時には、自分たちの会社のコンテンツだったらキャンセルもしやすいな、みたいな(笑)。

こういう先が見えない状況下、そういった柔軟性も重要ですし、無視できませんよね(笑)。

TERU
それでまずは第1回目に向けて、ノープランの状態から自分の中で一から計画していきました。最初は「弾き語りをすればいいかな」と思っていたんですけども……自粛期間中、3月、4月の2か月ぐらいの間、いろいろな人たちがインスタライヴで配信していましたよね? "歌を繋げよう"というリレーだとか、いろいろとやっているのを僕も観ていて、不安に思っている人たちの心を少し和らげるような、そういった気軽に音楽を届ける活動も楽しいし、すごく素晴らしいな、とは思ったんですけども……でも、やっぱり自分の中には、プロ意識があって。25年間活動し続けてきた自分たちが培ったものを、もっともっとちゃんとクオリティーの高いものとして届けないといけないんじゃないか?と。ここで自らクオリティーを下げてしまったら、それがずっと尾を引くような気がしたんです。「あ、これでいいんだ」と思ってしまったらダメだな、と。だから、とにかくクオリティーの高い映像と演出で音楽を届けたい、という想いを抱えながら「じゃあ、どうしたらいいのか?」といろいろと悩んでいた時に、『Mステ』を観ていたら[Alexandros]が出ていたんですね。メンバー一人一人がプロジェクターを使い、その映像を上手く取り入れて演奏しているのを観て、ヴォーカルの(川上)洋平くんにすぐ連絡して、「あれはどうやってつくったの?」と訊いて相談し、彼らの演出チームを紹介してもらったんです。ご協力を快諾いただきまして、よりクオリティーの高い映像演出が可能になり、「LIVE at HOME」の第一回目配信に漕ぎつけることができました。

「LIVE at HOME」を、しっかりとつくり込んだプロフェッショナルな作品として発信なさったところが素晴らしいと思いますし、それはバンド単体ではなく音楽業界全体の未来を見据えてのプランだったとも感じます。Vol.1から順に詳しく伺っていきたいのですが、拝見していて、当時多かったラフな自宅弾き語り映像とは一線を画すクオリティーだな、と衝撃を受けまして。音楽の世界観と映像・照明が美しくシンクロし、画面内の見え方がキッチリと計算されていてさすがだな、という印象だったんですよね。演出チームとTERUさんは具体的にはどうコラボレーションしていかれたのでしょうか?

TERU
曲をどういった感じで演奏するか?が先決だな、と思っていたので、まずは弾き語りで演奏する7曲のデモをつくり、それを聴いてもらうところから始めました。1曲1曲に対する映像のイメージが僕の中にあったので、それをお伝えして。全体的にネイチャー系というか、自然を舞台に、例えば海の中で歌っているとか、そういったイメージがあったんですが、あとはデモに合わせて自由に映像をつくってもらった、という形です。

Vol.1~3すべてですが、通常のライヴさながらに、オープニング、エンディング映像も凝っていて見応えがあります。特にエンドロールは感動的ですよね。

TERU
「LIVE at HOME」はシリーズ化していけたらいいな、と先を見据えていたので、エンドロールは必ず凝りたいと思っていたんです。だから、ライヴに向けて仕込んでいる間の映像を撮っておいてほしい、と前もって伝えておきました。それに合わせて流している「はじまりのうた」は、函館のスタジオをつくって一からまた音楽人として歩き出す、という僕にとっての決意表明的な音楽としてつくった曲。「LIVE at HOME」も自分にとって新しい第一歩だなと思うので、必ず流すことにしたんです。また、仕込みの時の映像は、「ソーシャルディスタンスを保ちながら、三密回避を守ってちゃんとやっていますよ」という証明にもなると思ったし。観てくれているファンの子たちにとっても安心できるような、無理のないやり方でライヴアットホームを開催していこう、というのが、自分の中で決めたルールでもありました。それもあって、スタッフが最初は全員で7人かな? Vol.3までに少しずつ増えてはいきましたけど、主要メンバー7人は変わらずずっといてもらって、そのお手伝いという感じで他の方にも加わってもらい、今は10人ぐらいでやっています。音響に関しては、ライヴ、ツアーを回る時の音響のスタッフチームに手伝ってもらっていて、そのセクションに関しては4人とか、ちょっと多くはあるんですけども。でも、普通のコンサートになると、アリーナツアーとかだと100人ぐらいになるし、ホールツアーでも30人ぐらいにはなってしまうので、そういう規模感とは全く違います。そのように、「LIVE at HOME」としてミニマムに活動はするんだけども、届けるのはもっと広い範囲で、世界中に向けて発信できるようなコンテンツをつくっていきたいな、とは最初から思っていましたね。

セットリストにも深い意味を感じました。1曲目が「月の夜に」で、<当たり前な事が特別に思える>という歌詞が今の状況にリンクして響きましたし、2曲目の「逢いたい気持ち」にも共鳴しました。歌詞のメッセージ、セットリスト全体を通しての物語性は、やはり意識されたのでしょうか?

TERU
そうですね。なかなか外に出られない自粛期間中の配信ということで、詞の内容も皆に届けられるメッセージになりますし、内容、そしてドラマ、ストーリーをちゃんと考えながら組み立てていきました。エンドロールでは、1曲ごとに選曲した理由も文章にして観てもらっているんですけども、その一言一言が全て、コロナで不安に感じている人たちに対してのメッセージでもあると思っています。

お話を伺いながら改めて感じますが、もう、本当に丁寧なお仕事ですよね!

TERU
結構時間が掛かっていて、見えないところにいろんな努力があるっていうね(笑)。

それほど隅々まで配慮を行き届かせてつくり込んでいかれるのは、なぜなんでしょうか?

TERU
何ていうか……観てくれている人たちの立場をすごく考えるようになりまして。というのも、乙武(洋匡)くんが、「コロナの影響で外に出るのも怖くて、家でずっとじっと一人で過ごしてる人たちは、きっと今、障害を持つ人たちの気持ちをやっと分かってくれているんじゃないか? 僕らはコロナに関係なく、こういう生活をずっと送っています」といった内容のことを言っていて。「エンターテイメントのコンテンツは今後もこうやって家にいる人たちに届けられるようなアプローチのものでもあってほしいし、コロナが収束した後も忘れないでください」と。その言葉がすごく胸に響いたんですね。自分たちが思っているような、「コロナが収束したら万歳!」ではなくて、収束してからも、家から出られずにいる方たちにも届けられるコンテンツであるべきなんだろうな、と思ったんです。だからこそ、一つ一つ丁寧につくっていこう、という気持ちにもなりましたね。

Vol.1は、アーカイヴを残さない、とアナウンスしてスタートされましたが、そこにはどんな想いがあったのでしょうか?

TERU
アーカイヴを残さないようにしたのは、ライヴに行く楽しさや緊張感、その日のために仕事を休むなどして、その時間に合わせて観ることも大事だな、と思っていたからなんですね。家の中にずっといてなかなか外に出られない人たちにとっても、「これが特別な夜になるんだ」という想いを味わってほしかったし。「アーカイヴがあるからいつでも観られるや」ではなくて、「この瞬間しか観られないんだ」という、その時間を大切に思う気持ちになってくれればいいな、という考えがあってのことでした。ただ、電波の状況というのは観てくださる方の環境によってまちまちなので、「せっかくお金を払って時間をつくったのに観られなかった」という人たちがいることも、だんだん分かってきて……。Vol.3はアーカイヴを丸1日残したところ、ファンの子たちはすごく喜んでくれました。「その時間を大切にする」という意識はきっとVol.1で皆さんに伝わったと思うので、Vol.4に関してはアーカイヴをもう少し長い期間残そうかなと考えていますし、「その時間は家にいるようにします」と言ってくれる人もいれば、仕事の都合などで観られない人は、「アーカイヴを残してくれてありがとうございます」と喜んでもくれています。日々どんどん状況が変わっていきますし、毎回改善点を見つけてアップデートしていきながら、観てくれている人たちのことを思いながらやっていけたら、と思っています。

Vol.2はお家から飛び出して、7月25日(土)、函館のTERUさんのスタジオでTAKUROさんをゲストにアコースティックライヴをされました。幼馴染であるお2人の長い歴史をしみじみと感じつつ、まるでホームパーティーに招き入れられたようなリラックスムードの中、GLAY黎明期の超レア曲を聴くこともできて、非常に貴重な時間でした。Vol.1の配信中に「次はTAKUROを呼びます」とご発言されていましたが、企画はトントン拍子で進んだのですか?

TERU
いや、Vol.2は函館で、というプランはありましたけども、その時点ではまだTAKUROに参加してもらうことは考えていなくて。Vol.1で演奏していくうちに、「あ、これはギターしんどいな。誰かもう一人必要だな」みたいな感じになって(笑)。それでライヴ中に、「次はTAKUROも参加してもらいます」みたいなことを言ったんですけども、「TAKUROは観てくれてるだろうな」と思っていたのに、観てなかったというオチもあり(笑)。でも、ヴェネツィアのライヴもそうですけども、まずは僕が自分一人で経験してみて、やってみて楽しかったらそれをちゃんと伝えてメンバーを誘うという流れは、自分のスタイルなのかな?とは思っています。TAKUROに「2回目に参加してよ」と言った時、もう既にイメージが膨らんでいたみたいで、「やりたい曲いっぱいあるんだよね」と言っていて。リハーサルに入る前に「デモをつくろう」ということで、選曲するにあたってTAKUROから「高校時代の曲をやりたいんだけど」という案が出てきたんです。あとは、「Mijuの『サマーシェイクス』もやってみたいんだけど、いいかな?」と相談されて、僕も「もちろん、もちろん!」と答えて話を進めていきました。

MijuはTAKUROさんがプロデュースされた女性シンガーで、‘98年の2ndシングルを最後に、事実上の活動休止状態となっていますね。

TERU
そうなんです。リハーサルでTAKUROが、「いやぁ~、『サマーシェイクス』をまさか今できるとは思わなかったよ」とうれしそうに話していたのが印象に残っていますね。エンドロールで流す"選曲した理由"コメントをTAKUROからもらって、それも読んだんですけども、やっぱり、シンガーが活動していないと当時の音楽をもう二度と聴けなくなってしまうんですよね。「こういう機会がなければできなかったから、本当に感謝するよ」という一言から、TAKUROの想いもすごく伝わってきて……。ライヴの最中にも言っていましたけど、「LIVE at HOME」に関しては、GLAYの普段のライヴではなかなかできない曲だったり、「サマーシェイクス」のように、もう聴けないと思っていた曲を再び演奏できたりする、そういう機会を設けられる場所なのかな?って。TAKUROとも「またやりたいな」という話をしていて、お蔵入りした曲や未発表曲もまだまだたくさんあるし、次なる機会にはそういうのをやっていきたいね!と。このVol.2があったからこそ、3回目、4回目、ひょっとしたら10回目、20回目という未来が具体的に見えてきた感はあります。そういう意味でも、Vol.2の存在はすごく大きかったですね。あと、場所を変えた理由は、Vol.1を家の地下スタジオでやったら歌声が2区画先まで聞こえてた、というのもあって……(笑)。

さすがの声量ですね(笑)。

TERU
いやいや(笑)。それを言われて、「もうここじゃできないな」ということで函館に移動したんですけども、函館へ行ったら行ったで問題がありまして。バラシ(撤収)作業が夜10時半ぐらいまで掛かってしまうんですが、函館のスタジオの近隣の方たちはもう8時半とか9時には寝てしまうので(笑)、「ガチャガチャうるさかった」という苦情が来てしまって……。じゃあ次はどこで?ということで、Vol.3の場所探しが始まっていくんですけども。やっぱり、家でやるのはなかなか大変ですよ~。

Vol.2の時に思ったんですけど、GLAYの皆さんが揃った4人のライヴが完成形だとして、そこから"2人足りないライヴ"ではなく、"この場所で、この2人だからできること"という特別なコンテンツになっているのが魅力的です。

TERU
特別感というか、「LIVE at HOME」じゃないとなかなかできないだろうな、という企画を目指したいな、とは思っていて。GLAY以外の曲でもいいんですけども、GLAYの楽曲自体、"アコースティックギター1本でも歌える曲"というテーマが昔からありますし、それを今改めてたしかめる、というか。本当にそういう想いでつくっているんだなぁと僕自身再確認するライヴにもなっています。Vol.4に関しては今、JIROとリハーサルに入ろうとしているところで、デモをつくっているんですけど、やっぱりアコギ1本でも本当にいい曲が多いなと感じているんです。2人でアコースティックギターで弾き語りしたVol.2の経験は、今後に大きく影響していくな、と思っています。

Vol.3は湘南のヨットハーバーを舞台に、HISASHIさんを迎えての企画でした。1、2回ともまた全く違った趣でしたが、HISASHIさんと相談しながらつくり上げて行かれたんですか?

TERU
元々はHISASHIにオファーする前に、(DJ) MASSくんと一緒にやろうかな?と思っていたんです。MASSくんといろいろとイメージを膨らませていく中で、「やっぱりギターが欲しいな」と。HISASHIとMASSくんはHSMSというユニットを一緒にやっていますし、「HSMSがゲストという形もアリだな」と思ったんですけども、欲をかいて「全曲弾いて」とHISASHIにオファーしました(笑)。

「Little Lovebirds」をTERUさん自らダンスミュージックとして再構築なさり、MASSさんが仕上げられたヴァージョンですとか、新鮮なアレンジが盛りだくさんでした。Vol.3の選曲やデモづくりに関してはいかがでしたか?

TERU
「LIVE at HOME」は自分のスキルアップをテーマに掲げているので、冒頭で言ったように"歌を休ませない"というところで、なかなか普段お披露目できない曲であり、かつ、「MASSくんアレンジでやってみたら絶対面白いだろうな」と思うような選曲をしていきました。これは毎回どのメンバーに対してもそうなんですが、HISASHIにもセットリストの半分、「5曲ぐらいは選曲してほしい」と伝えたら、Billie Eilishの「bad guy」を「やりたい!」という希望が出て、カバーしたんですけども。HISASHIは「ベースを弾きたい!」とも言い出して、それもまた面白かったですね。「LIVE at HOME」に関しては本当に自由自在で、一緒にやるメンバー同士が話し合いながら面白く、自分たちでも楽しめるようなイベントにしていけたらな、と思っています。あと、恵山でのライヴ配信もありましたけども、自分の中ではシングルのお披露目としてちゃんと生で歌いたいな、という想いがあって、Vol.3では「流星のHowl」と「ROCK ACADEMIA」を選曲しました。まぁ、プロモーションも兼ねて、ということですけども(笑)。

それもすごく大事なことですよね! コロナ禍で夏らしい思い出をつくれないまま季節が変わりそうだった方々にも、リモートではあっても湘南の空気感が伝わり、良い夜になったのではないでしょうか?

TERU
そうなんです。"夏を満喫したいな"という想いは強くあったので、4か所ぐらい会場の候補があった中、海が近いという理由で湘南のヨットハーバーを僕が選んでオファーしてもらい、快諾いただきました。ただ、夜10時には完全撤収ということが後で分かって、「どうする?!」という話になったんですけども(笑)。金曜日の夜だったので、やっぱり遅めの時間のほうが、ファンの子たちは仕事が終わってからでも間に合うだろうな、ということで元々は9時スタートでアナウンスしていて。それが後で「8時スタートになりました」と訂正させてもらうことになって、申し訳なかったんですが……。会場の方々が本当に協力的で、無事にライヴができて良かったです。ヨットハーバーの売店のお母さん、お姉さんたちも、僕がTシャツをファンクラブ用に買いにいったら、「GLAYが来てくれた!」という感じで、すごく喜んでくださっているのが伝わってきたんですね。僕はそういう繋がりが好きなので、ライヴ自体も楽しかったけども、関わってくれた方々とのやり取りという面でもすごくいい関係を築くことができ、本当にいいイベントになりました。

そういえば、演出面ではミラーボールの存在感もすごかったですよね。

TERU
ミラーボールね~。あれは、Vol.2ではスタッフさんが手で持っていたんですけど、やっと少しずつグレードアップして(笑)。

手作り感に溢れたエピソードですね(笑)。

TERU
本当に手作りですよ! 少ない人数で、手作業でやってくれて……本来だったら什器を入れて上に吊るしたり、いろいろと方法があると思うんですけども。ムービングライトも自動じゃなくて外に照明のスタッフさんが立って全部ムービングしてたっていうね(笑)。

人力だったんですか!?

TERU
はい、全部人力でした(笑)。Vol.3をやってみて、「『LIVE at HOME』ってこういうことなんだ」と初めて気付いたことがあって。それは、自分の"家から"発信するのが「LIVE at HOME」のスタートだったんですけども、ファンの子たちが"家で"観るライヴが「LIVE at HOME」なのかな?ということなんです。皆が家などで寛ぎながら、お酒を飲んだりお菓子を食べたりしながら観られるライヴですよね。Vol.3以降、"at HOME"の意味合いが僕の中で少し変わってきたのを感じます。

そして、進化していく「LIVE at HOME」は10月3日(土)、Vol.4を迎えます。JIROさんが参加、更に、TOSHIさんのドラミング姿を久しぶりに拝見できるのも楽しみです。

TERU
TOSHIさん、久しぶりで張り切り過ぎてるかも(笑)。

今ごろ武者震いされているのではないでしょうか(笑)。そしてムラジュンこと村山☆潤(FLOWER FLOWER)さん、ストリングスカルテットの皆さんも加わる豪華布陣です。人選や内容はどのように考案されたのでしょうか?

TERU
元々のコンセプトとしてはクラシックをやりたくて、ムラジュンにすぐ連絡して、「この時間、空いてるかな?」と個人的に訊くところからスタートしました。ムラジュンは「LIVE at HOME」を観て知ってくれていて、すぐに話がまとまって、かつストリングスカルテットにも加わってもらいたいということを伝えて。それプラス、この順番で行くとメンバーはJIROしかいないだろう、ということでJIROを呼んで。そうなった時、JIROはすごくリズムを気にする人でもあり、僕とJIROだけだとやっぱり不安だろうなぁと思ったので、永井(TOSHI NAGAI)さんにも声を掛けたんです。TAKUROやHISASHIの時もそうでしたが、そうやってメンバーごとの性格もちゃんと把握した上で、一つ一つのコンセプトを変えていっています。「LIVE at HOME」というイベントは、そうやって出演する人によってコンセプトも変わるし、元々自分が「これやりたい」と思っていることに対して賛同してくれるようなメンバーを選ぶというのもあるし、柔軟なスタンスでやっていけたらな、と思っています。ここ3か月ぐらいずっとGLAYでリモートレコーディングをしていたんですけども、その中でもJIROはすごく楽しみながらやっている印象があったんですね。「LIVE at HOME」のデモづくりに関しても、「こういうリモートの形でやっているんだよ」という話をしたら、「じゃあ、俺もやるよ!」と言ってくれて。データのやり取りを1か月間ぐらいずっとしながらデモをつくり上げてきました。

具体的には、どのようにやり取りされているのですか?

TERU
僕がアコギ1本で歌ったデモのデータに、ムラジュンがピアノを重ねてくれたり、あとは逆に、ムラジュンがつくってくれたデモにまず僕が歌を入れ、そこにJIROにベースを入れてもらって、最後に永井さんにドラムを入れてもらったり。または、仮のドラムを付けてもらって、それを永井さんに「叩いてください」とお願いしたり。そういった変則的なレコーディングの仕方はすごく新鮮だったし、自分の中では「あ、こういうやり方でもキッチリまとまっていくものなんだなぁ」と、勉強になりました。コロナに影響される・されないに関わらず、今後普通にスタジオでレコーディングできる状況になっても、こういうデモづくりのスタイルは自分なりに続けていきたいな、と。GLAYの本体でも今プリプロをしていますが、仮歌は家でキッチリつくって、それをスタジオに持って行って直しがあれば直す、というスタイルになってきています。今までのレコーディングスタイルにコロナ禍で経験したものを加え、アップデートしていく形で今はレコーディングに挑めているんですよね。この状況もマイナスなことばかりではないんだな、というのはこの半年間で学びました。もちろん、本当に大変な想いをしている方々はたくさんいらっしゃるんですが……その中でも協力し合い、支え合う、ということを色濃く感じたこの2か月、3か月ではあります。

Vol.4のセットリストは、聞くところによりますとJIROさんは、TERUさんからオファーされた2時間後には選曲、すぐにご提案されたのだとか。

TERU
そうなんです。Vol.3の時にはもう既に「次は自分の番が来るだろうな」と思っていたようで、早かったですね(笑)。JIROには実際、2か月ぐらい前にはもうオファーしていました。Vol.1の最中にVol.2の準備をし始めて、2の最中に3の準備をして、3のまだデモをつくっている段階で既に4のデモをつくり始めて、というふうに、同時進行なんですよ。参加してくれるメンバーにも焦らずにゆったりと楽しんでもらおうという想いもありますし、前もってちゃんと準備をしていこう、と。それは自分なりに心掛けていることではあります。JIROにオファーする時、元々僕はある曲をやりたいと思っていたんですよ。JIROの作詞作曲で、クラシカルにアレンジしたらめちゃくちゃいい曲になるだろうな、と思う曲があったので。それでJIROに「俺、『〇〇』 を絶対やりたいんだよね」と伝えて。かつ、「今回はTERUの曲とJIROの曲だけで構成しようよ」という話をしつつ、「JIROの作詞作曲した曲、作曲だけでもいいから、5曲用意して」と伝えたら、「これとこれとこれで!」という返事がすぐに来ました。エンドロールで流れる"選曲した理由"コメントも既に書いてもらっているんだけど、また素晴らしいんですよ、JIROの一言が。皆さんにはそれにも期待して、楽しみにしていてほしいなと思います。

演出面ではプロジェクションマッピングを行うと発表されていますけども、そちらのご準備は今、いかがですか?

TERU
Vol.4は会場が大学のキャンパスで、プロジェクションマッピングだとか、そういう映像系を学べる学校だというのもあって、学生さんたちに演出を手伝ってもらうことにしました。会場の方たちと一緒につくろうという、新しい試みです。ヴェネツィアでライヴする時はヴェネツィアのミュージシャンと一緒にやりたい、ということで、現地のカルテットの方たちや、ピアノの先生に協力していただく、というコラボもしてきたので、そういう流れも少しできつつあるな?と思っていて。ステージの装飾も学生さんがやってくださることになっていたりするので、楽しみにしています。まだどうなるか分かりませんが、「LIVE at HOME」の新しい可能性が何か一つ見出せるんじゃないか?と思うんですよね。上手くいけば、次なる会場は"コラボができる場所"を一つの条件として考えながら選んでいくんじゃないかな?と。例えばもし4つ候補があって、その中にコラボができそうな場所が一つあったら、そこに積極的にオファーしてみる、という方向になりつつあります。

ヴォーカリストとしてだけではない、人と人とを繋ぐお力ですとか、プロデュース力、おもてなし力、そしてメンバーのみなさんの特性を知った上で企画を練り上げていく適材適所の見極め力……TERUさんにしか成し得ない企画になっているな、と改めて思います。

TERU
全員に「無茶振りしすぎだよ!」って言われますけどね(笑)。

(笑)。でも、皆さん楽しんで取り組んでいらっしゃるのではないですか?

TERU
そうですね、楽しんではいるようなので、良かったです(笑)。人と人とを繋げるというのは、まさしく自分の人生のテーマなんですよね。よく行くイタリアンのお店に、もう亡くなってしまったんですけども、看板女将がいたんですよ。その方も人と人とを繋げるのが本当に好きで、そのお陰で常連さんたちの友だちがいっぱいできて、その人たちと僕は今楽しく過ごすことができていて。50歳を迎える直前ですけども、大人になってから友だちが増えるのがすごく楽しくて……そういったことを僕も、自分が中心となってできればいいな、と考えているんです。函館にスタジオをつくってからは、そのスタジオに友だちが集まって、その友だちがまた友だちと交流して、という繋がりができていくのを楽しく感じていますし、そういうふうに繋ぐのがやっぱり好きなんですね。それを音楽の面でもできれば、誰かと誰かが繋がって、きっと何か化学変化が起きてすごいことになるんじゃないかな?と。あとは、ファンの子たちにも"いろんな出会いがあってほしいな"ということで、ハイコミという言葉を前から使っていて、それをテーマに皆さん動いてくれていますし。人と人との繋がりが生まれることによって安心したり、幸せな瞬間が訪れたりする、というのが自分の生きてきた中での経験なので、そういうものをいっぱいつくりたいな、と思いますね。

「LIVE at HOME」はTERUさんの人生哲学そのものの反映であり、ライフワークの一つになりそうですね。最後の質問に移りますが、もう半年以上コロナ禍という前代未聞の状況が続いており、音楽の持つ大きな力が再認識される一方で、ライヴが思うように開催できず、エンターテインメント産業が危機に瀕している実情もあります。そういった両面ある中で、アーティストとしてTERUさんはどんな想いを抱かれていますか?

TERU
コロナの中で、誰もが不安を抱えながら生きていますし、自分の両親ももう高年齢なので、本当に気を付けながら生活している、という意味においては、音楽は人々の心をすごく安らがせてくれるものなんだな、と思います。外に出られない時期だからこそ、家の中で楽しむ音楽の良さが再確認できた時期なんじゃないかな?とも感じますし。音楽をつくるスタイルも変わっていくし、発信の仕方も変わってきてはいるんですけども、根本にある、「人に届けたい」とか、「今の想いをちゃんと伝えたい」という、ミュージシャンとしての根本的な部分は全然変わらないんですよね。アーティストとしての役割に関しては、音楽の力が、それによって皆が前に進むことができるようなものであってほしいな、と本当に思っています。それが新曲であっても、過去の楽曲であっても。だから、(活動を)休まず、動けるということが大切かな?と思っていて、自分なりに「LIVE at HOME」を企画してはいるんですけども。この先まだまだ、もしかすると来年末まで、あと1年以上もコロナが収束しないという噂も聞きます。ワクチンの開発を急いでいる多くの国がありますけども、ワクチンができてこその安心感だとは思うので、それまでは本当に長い期間、油断できない状況ではありますが……その中でも少しずつ状況は良くなってきていて。演劇に関してはもう100%の集客で開催できたりとか、音楽に関しても、定員の半数の人たちを入れられるようになったりとか、少しずつ緩和はされていってはいるので、諦めずに音楽を発信していけたらな、と思います。年末の札幌ドーム公演(12月19日・土)に関しても、諦めずに。先日レコーディングの時にもメンバーと話していたんですが、現状「やろう!」という選択をしています。そう決めるだけで「頑張ろう!」という想いが湧きますし、どんな状況であろうとも、ひょっとしたら無観客になろうとも、「やりたいね」という話をしていて、メンバー同士の結束はしっかりと固いです。夢を見ることだったり、信じられるものだったり……そういうものを今後もGLAYが届けられたらいいな、と思っていますね。

結束と言えば、GLAY appでのリモートトーク企画を拝見した時、皆さんの会話の間合いがピッタリなことに驚いたんです。長年の積み重ねが生んだ4人の呼吸感は、リモートでも崩れないんですね。

TERU
うん、やり方が変わってリモートになっても、変わらないですね。やっぱり、僕たちのやりたいことは、ステージで歌いたい・演奏したいということですし、ファンの子たちにより良いものを届けたいという、その想いだけでやっているようなバンドなので。この4人のチームワークというか結束力、そして絆というものは、コロナ禍の中でまた強くなったんじゃないかな? そして、ファンの子たちもその4人のバランスをすごく楽しみにしていると思うので、また4人で皆に会える日は必ず来る!ということをちゃんとお伝えしたいな、と思います。今後の展開としては、10月31日(土)には「LIVE at HOME」Vol.5の開催が決定していて、こちらはまたHISASHIとDJ MASSくんの参加が決定しています。あと、TOKIさん(C4)も出演してくれて、お誕生日ライヴになります(笑)。ちょうど土曜日ですしハロウィンでもあるので、在宅ハロウィンパーティーですね。皆には仮装しながら観てほしいな、という想いもあります。長渕剛さんとかがされていたような、ZOOMで皆の姿がこちらに見えるようなシステムもできたら面白いな、と思っているので、今いろいろとスタッフと相談していて。相互にコミュニケーションを取れるようなハロウィンライヴをやってみたいな、と。あと、「LIVE at HOME」の1週間前~3日前ぐらいには、"テルキャス"(TERU CASTING)という番組を(GLAY MOBILEで)必ず生配信していて、見どころなどをお伝えしているので、連動して楽しんでもらえたらな、と思います!

文・大前多恵

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