56枚目のシングル「愁いのPrisoner/YOUR SONG」は、ダブルAサイドシングルとして、25周年を前に、TAKUROとTERUがそれぞれ紡いだ、GLAYが“今歌うべき”歌だ。「YOUR SONG」は“スペシャルオリンピックス日本公式応援ソング”として、出場選手を始め、全ての人の背中を押してくれるTERU渾身のメッセージソング。「今のGLAYのTERUが歌って理解してもらえるように」と、心から湧き出た素直な言葉で綴られた歌詞が、ハッピーなリズムと相まって、心に響く。この曲に込めた思いをTERUに聞いた。もちろんTAKUROの言葉とメロディに、改めて「スゲェな~」と思ったという、「愁いのPrisoner」についても、たっぷり聞かせてもらった。
2018.11.16
まずはTERUさんが書かれた「YOUR SONG」(※1)のことからお聞きします。この曲を書くことになったきっかけから教えてください。
- TERU 友人がスペシャルオリンピックス(※2)に関わっていて、彼を通じて中田英寿君(※3)と知り合って、そこでスペシャルオリンピックスの話を色々聞かせていただきました。それまで全然知らない世界だったのですが、知的障害のあるアスリート達が、世界で活躍しているという話を聞いて、すごく興味が湧いてきました。中田君もアンバサダーとして頑張っているけど、歴史ある競技なのに日本ではなかなか浸透しないので、協力してほしいという話をいただいて、それでテーマ曲を作ることになりました。最初は頑張っている選手たちに向けて書こうと思いましたが、色々話を聞いていくうちに、応援している家族やサポーターの思いを歌いたいと思い、テーマ曲として「YOUR SONG」を作りました。
実際に大会を観に行かれたとお聞きしました。実際に競技を観て、いかがでしたか?
- TERU 7月にアメリカ・シカゴで行われた、ユニファイドサッカー(※4)の世界大会に応援に行かせていただきました。凄い選手がたくさんいて、その迫力に圧倒されました。それから9月22日(土)に名古屋市で行われた、『2018年第7回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・愛知』(※5)の開会式にも参加させていただいて、そこで「YOUR SONG」を歌わせていただきました。その時、みんなが自然と手拍子をしてくれたり、中には踊ってくれる子もいて、更には舞台の方へ駆け寄ってきてくれて、最後はステージに全員が上がって、一緒に歌いました。やっぱり自分の言葉で書いた歌詞だからこそ伝わるし、そういう(良い意味での)ハプニングが起きるんだと思いました。スタッフの方にも、アスリートたちがこんなに感情を露にするのは珍しいと言っていただいて、嬉しかったです。
もうライヴでも披露していますが、ファンの方の反応はいかがですか?
- TERU ラジオで数回オンエアしただけという状況だったので、メンバーから掛け合いを練習した方がいいという提案を受けて、その掛け合いを練習して、楽曲に入っていったんですけど、それがあったことで一体感のある曲に仕上がりました。メッセージが前向きなので、GLAYファンの方の中で、日々の生活の中で、色々とうまくいかないことがある人達からも、元気になりましたというメッセージをいただきました。
スペシャルオリンピックスを見て感じたことが、ベースになっていると思いますが、やはりGLAYの25周年というのも意識しましたか?
- TERU 曲を作る時に、どのシーンが合うかというのを考えますね。スタジアムなのかライヴハウスなのか、それともアリーナツアーで、演出を加えての曲なのかを考えます。この曲に関しては、野外でみんなで大合唱というイメージがありましたし、そういうシーンは見えていました。
MUSIC VIDEOはストーリー仕立てで、夢を追いかけている色々な人種の人が出てきて、アップテンポなんですけど、どこかグッとくるというか……TERUさんは楽しそうに、「U.S.A.」(※6)の“いいねダンス”をやっていますが(笑)。
- TERU わかります?(笑)。でも昔からある振り付けで、決してパクリではないですよ(笑)。今回のMVは自分でも熱い思いがあって、ダンサーを夢見ている子たちがオーディションを受けるストーリーを考えました。昔観たショートフィルムのCMがあって、子供がお母さんから叱られている前半の映像があって、それを子供の視点に変えた瞬間に、子供が宇宙を夢見てそういう行動をしていたというのがわかるという内容で、大感動しました。だからMVもメッセージがあるものを作りたかった。夢を追いかける勇気を映像を通して伝えたいと思い、監督に意図を明確にお伝えして作らせて頂きました。
最後の、TERUさんが、ピアノを弾いている後ろ姿で締めるというシーンが印象的でしたが、あれもTERUさんのアイディアですか?
- TERU 最初は、監督にピアノの横に立ってほしいと言われたのですが、やってみるとしっくりこなくて。それで、前にレディ・ガガ(※7)のライヴを観に行った時に、それまでド派手なステージを繰り広げていた彼女が、一転してひとりピアノに向かって歌い始めたシーンが印象に残っていて、動から静へ、内に秘めたものが出る瞬間なのかなぁと思って、そういう感じで締めたいと思いました。
「愁いのPrisoner」(※8)も「YOUR SONG」も海外で撮影していますね。TAKUROさんが「メンバーに広い空を見せたかった」とおっしゃっていました。
- TERU そうなんです。空が広くて、色がまるで違うなという印象があります。
「愁いのPrisoner」はTAKUROさんが人生を語っているGLAYの王道、「YOUR SONG」はTERUさんからの全ての人に勇気を与えるメッセージソングで、全く違うテイストですね。
- TERU 「愁いのPrisoner」はセブンーイレブンのタイアップで決まっていて、この曲をTAKUROが推していたというのは、MVを観てわかりました。誰もが知る、セブンーイレブンという企業とのタイアップなので、本当はもっと前向きな歌詞でもよかったのかもしれないですけど、MVを観たら、やっぱりTAKUROすげぇ!ってなりました。対して「YOUR SONG」はスペシャルオリンピックス日本の公式応援ソングに決まっています。
あのロケ地の空気感はいいですよね。
- TERU 監督が隠し球的なロケ地を提供してくれて、こんなに素晴らしい場所を、よくぞGLAYで出してくれたなって感じです(笑)。
あの街にもGLAYのファンがいたとお聞きしました。
- TERU 嬉しいですよね。長年やってると、自分たちが知らないところにまで音楽が届いているんだなぁということを実感しました。
「愁いのPrisoner」を渡された時の第一印象を教えてください。
- TERU 最初は、あまり音が重なっていない中、TAKUROの仮歌がのっていたので、完成形がどうなるのか全く想像がつかなくて。自分で初めて歌った時は、彼の言葉の使い方やメロディに対しての言葉の当て方はさすがだなと思いました。彼の長年の経験の凄さを感じながら歌っていましたね。
結成して30年経ってもリスペクトし合える関係って、いいですよね。
- TERU TAKUROから「TERUのボーカリストの孤独を知りたくて、ソロで歌ってみたりしている」と聞いたことがありますが、僕も以前はアルバムの中の一曲を自由に書いていたんですが、4年ほど前からシングル曲を任せてもらうことも多くなって初めてソングライターの苦悩を感じるようになりました。連続してシングル曲を作ることになった時には、「あ、また「空」って言葉使っちゃった」という感じで、同じ言葉を使ってしまったりと、それまでは経験したことのない様々な悩みを感じるようになりました。シングル曲を作るのって、こんなにストレスが溜まるんだと、シングルという重責を背負う苦悩をその時初めて実感しました。今回歌詞を書く時に、きれいにまとめようとか、感動してもらえるような歌詞を書こうと思ったりもしましたが、ファンの人たちは、僕の生き方をずっと見て来てくれているので、今の僕が歌って、みんなが理解してくれるような歌を歌いたいと思い、「YOUR SONG」は普段僕が使っているような言葉を使って、自分が経験したことをわかりやすい表現、普通の言葉でメッセージとして書きました。スペシャルオリンピックスを観たり、被災地を訪れて感じたこと、普段接することができない人たちと接して感じたことを、歌にしたいと思いました。
対照的な二曲だと思います。
- TERU 文学的に培ったものがTAKUROの曲だと思います。
「愁いのPrisoner」では、最後かなり高いところにいきますよね?相変わらず高いところまで出ますよね。
- TERU 出ますね。もっと突き詰めたいと思いますよね(笑)。
その変わらないハイトーンが、GLAYの代名詞です。
- TERU プレッシャーですよ(笑)。
このシングルのカップリングには、夏の楽しそうな思い出がつまっていますね。
- TERU ネスミス(EXILE NESMITH)君(※9)は、普通にフェスを観にきていただけなのに、ステージに出てもらって「彼女の“Modern…”」(※10)を一緒に歌って(笑)、よく音源化の許可を頂いたなという感じです(笑)。
「YOUR SONG」は、地元・函館での野外ライヴ『GLAY×HOKKAIDO 150 GLORIOS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.3』(※11)からの音源も収録されていますが、大きなイベントが終わって、落ち着いた感じはありましたか?
- TERU いえ、個人の仕事が多すぎて、毎週イベントが入っていました(笑)。GLAYの自由度が見えてきてるんだと思います。メンバーそれぞれが、今までだったら一歩引いて見ているところが、楽しいことをやってもいいんじゃない、という感じにどんどんなってきていると思います。
25周年が近づいてきました。
- TERU 来年の5月からその活動が始まっていくと思うので、メンバー全員が意識し始めているのは感じています。でも人に言われたりするともう25周年かと実感するんですけど、根本的なものは何も変わっていないし、関係性も変わっていないし、これから25周年を迎えるけどすでに30周年も見えているという感覚はあります。
次に作る曲の歌詞に、どういうメッセージが込められているのか、楽しみにしているファンも多いと思います。
- TERU 特にTAKUROは歌詞を練って、練って、仕上げていると思います。僕が作る曲の歌詞も、より自分の生活に密着した言葉を選んでいます。
先ほど「空」という言葉を使いがちとおっしゃってましたが、やはり函館の空がいつも心の中にあるからでしょうか?
- TERU 色々な場所で色々なものを見るときに、最初に空を見て、その違いを感じることを大切にしています。空が好きだし、雲が流れていくのを見るのも好きだし。
函館の二日間は、あの空の下でライヴができて、やはり幸せでしたか?
- TERU あの2日間を目指して、5年前から動いていたのでグッときました。曲中に雲が割れて、日差しが出た瞬間は感動したとメンバーと言ってました。晴れて欲しいという思いがあって、様々な感情が曲の世界を盛り上げてくれました。
25周年も色々な企画がスタンバイしていると思いますが、青い空の下でのライヴも期待しています。
- TERU オリンピック前なので、ライヴ会場の減少もあって、なかなか思い通りにことが進みませんが、最善を尽くします。最近の野外ライヴは延期や中止になるものをたくさん見ているので、夏に野外がいいのかどうかは、考えなければいけないですよね。ここ最近は秋にも台風がやってくるので、判断が難しいです。
その前に11月には『GLAY MOBILE Presents 10th Anniv.Tour「平成最後のGLAYとChristmas2018~SURVIVAL~」』(※12)がありますね。
- TERU 平成最後ということで、その直前に何を思い、過ごしているかを、お互いにぶつけ合うようならライヴができたらなと思っています。
元号も変わり、25周年を迎え、色々と考えを思い巡らせる時間にもなる年ですね。
- TERU 知り合いが言っていたのですが、地球が変わり始めているから、生き抜くためには自分も変わらなきゃいけないよって。これからますます、確固たる自分の気持ちを持って、何事もやっていかなければいけないと思いました。表現をしている人間として、やはり発信する側が、日ごろから色々と気をつけなければいけないですよね。例えば仲の悪いバンドが、愛の歌を歌っても、全く響かないと思うので、この人達が歌う愛の歌が、本当の愛なんだなって思ってもらえるバンドになりたいですね。
- ※1:YOUR SONG
- 2018年11月14日(水)に発売するGLAYの56thシングルの収録曲。TERUが作詞作曲を担当し、スペシャルオリンピックス日本公式応援ソングとなっている。
- ※2:スペシャルオリンピックス
- 知的障害のある方々に、スポーツトレーニングやその成果の発表の場となる競技会を提供する、国際的なスポーツ組織。公式応援ソングとしてGLAYが新曲「YOUR SONG」を書き下ろした。
- ※3:中田英寿
- 元サッカー選手。1996年には、アトランタオリンピックに日本代表のチーム最年少で選出され、出場。その後、イタリアセリエAのA.C.ペルージャやA.S.ローマなど海外でも活躍した。現在は、国際サッカー評議会(IFAB)の諮問委員を務めるなど、幅広く活動している。
- ※4:ユニファイドサッカー
- 知的障害のある選手(アスリート)と障害のない選手(パートナー)が同じチームでプレーをすることで、お互いの理解を深めることを目的とした競技。
- ※5:2018年第7回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・愛知
- 2019年にアラブ首長国連邦のアブダビで開催されるスペシャルオリンピックス世界大会への日本選手団選考を兼ねて、2018年9月22日(土)~24日(月・祝)の3日間、愛知県で開催された。
- ※6:U.S.A.
- 7人組男性グループ・DA PUMPの約3年半ぶりのSingle。“ダサかっこいい”と話題を呼び、ミュージックビデオの再生回数が1億回を突破。
- ※7:レディ・ガガ
- アメリカ合衆国出身のシンガーソングライター。2008年、1stアルバム「ザ・フェイム」で、全世界で1500万枚以上のセールスを記録する衝撃的なデビューを飾った。奇抜なファッションやスタイルでも注目を集めている。
- ※8:愁いのPrisoner
- 2018年11月14日(水)に発売するGLAYの56thシングル収録曲。TAKUROが作詞作曲を担当し、大手コンビニチェーン「セブン-イレブン」のタイアップ曲になっている。
- ※9:ネスミス(EXILE NESMITH)
- EXILE、EXILE THE SECONDのメンバー。2018年11月14日(水)に発売する「愁いのPrisoner/YOUR SONG」では、カップリングとしてLUNATIC FEST. 2018でコラボした「彼女の“Modern…” feat.EXILE NESMITH (from LUNATIC FEST. 2018)」が収録される。
- ※10:彼女の“Modern…”
- 1994年11月16日に発売されたGLAYの3rdシングル。ライブでも定番のGLAYの代表曲で、2011年3月9日に発売されたアルバム「rare collectives vol.4」では再録ver.が収録されている。
- ※11:GLAY×HOKKAIDO 150 GLORIOS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.3
- 2018年8月25日(土)、26日(日)に、GLAYの地元・函館、緑の島にて5年ぶりに開催された野外ライブ。
- ※12:GLAY MOBILE Presents 10th Anniv.Tour「平成最後のGLAYとChristmas2018~SURVIVAL~」
- 2018年11月27日(火)よりスタートする、今年で10周年を迎えたGLAY MOBILEの会員限定ライブ。2013年のGLAY MOBILE会員限定ライブツアーから、5年ぶりの開催となる。