GLAY

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INTERVIEW

Vol.75 TAKURO WEBインタビュー

56枚目のシングル「愁いのPrisoner/YOUR SONG」(※1)は、ダブルAサイドシングルとして、TAKUROとTERUがそれぞれ紡いだ、今GLAYが伝えたい2つのメッセージがパッケージされている。来るべく25 周年を前に、リーダー・TAKUROの胸をよぎる思いとは? GLAYの現在地と未来は? ロングインタビューで、たっぷりと語ってもらいました。

2018.10.30

約1年ぶりのシングル「愁いのPrisoner/YOUR SONG」はダブルAサイドシングルで、それぞれTAKUROさん、TERUさんが手がけていますが、まずは「愁いのPrisoner」についてお伺いします。この曲はどんな思いで書かれたのでしょうか?

TAKURO
もちろん今自分が一番考えていること、気持ちに従ったもので、それは、戦略とか世の中がどうとかではなく、25年間戦ってきたバンドに対して今自分にできることは、真っすぐな気持ちを書くことだと。ここ何年かは、GLAYの幅を広げる意味で他のメンバーにシングル曲を書いてもらったり、それを武器に戦って、僕もソロをやらせてもらったり、GLAYの中では(作曲で)遊ばせてもらった中で、改めて自分が作りたい曲を考えたときに、素直にこういう曲になりました。

より純度を求めたというか、素直に“今”と向き合った。

TAKURO
そうですね、どうしても時代感とか考えなければいけないけど、シングルを意識したわけではなくてアルバムの一曲として作って、その中でGLAYがGLAYらしくあるために、一番気をつけることはTERUのボーカルがせつなく活きることです。TERUがシンガーだから、HISASHIの曲でも何でも歌えるじゃないですか。でも俺とTERUが組んだ時の、それぞれのパーソナルが消えて、よりGLAYらしくなるというか、4人の共同体としてのGLAYであってほしいという願いが込められています。

駆けあがっていくようなギターの音色で始まって、最後はTERUさんの声が一番高いところにいって終わるという、“幕開け感”に満ちた一曲になっています。

TAKURO
90年代のGLAYの曲は、とにかく最後は上がっとけみたいな感じでした(笑)。 でもそれが、結果的にらしさに繋がったし、後々個性になっていきました。キャリアを重ねると、ガムシャラな感じとは、また違ったところで曲が作れたりするんです。大人になって、父親になったり、夫という肩書きがついたりしてくると、世の中を背負うというか、大人としての嗜みとして、自分に余力があるときは人を応援することができる。そういう側面が、いいところでもあり、悪いところでもあると思うんですよね。人のために動くことと、自分のために動くことの割合が大体同じくらいだと、人としては正しいと思うけど、音楽家としては少し違うと思っていて。勇気を与えるとか、夢をGLAYの音楽に感じて、誰かの力になるということは、とっても尊いことだけど、ちょっと大人の嗜みを外して、10代の頃のような、これがいいんだと信じてやっていたようなガムシャラさが、今こそ必要だなと。それはメンバーとも話をしました。ここ何年かは、自分の気持ち、フィーリングを後回しにしたような、曲の作り方が続いているなと。もちろんいつも120%の力でやってきたし、そういうクリエイティブも自分たちの糧になったし、経験として素晴らしかったけれど、経験云々が関係ない曲を、率先して出していこうと思って。

GLAYとしてGLAYのメンバーとして、そしてメロディメーカー、ソングライターとしての原点に戻るというか、対峙してみようと。

TAKURO
そうですね、音楽以前のことですよね。「愁いのPrisoner」は、誰かと恋に落ちて、素晴らしい日々があるけれど、出会いと別れの繰り返しの中で、少しずつ成長していく、そのことにフォーカスしたいというか。誰も応援していないし、誰のためにもならない曲かもしれないけれど、確かにこういう時代があって、その経験から今の自分が形成されて、別れの後の苦味みたいな、そういう人生を歌いたい。

「Prisoner」という言葉が深いし、色々と想像できる言葉です。

TAKURO
例えばGLAYのメンバーの一員として、メンバーと共に自分の持っている力を出し合って、何かひとつのことを成し遂げるのは素晴らしいことだし、それは家庭においても社会においてもそうで。でもたまに疲れたり、嫌気がさしたりもするんだけど、それも自分の心の持ちようひとつで変わる。恋愛ひとつとっても、人を好きになって自分の思い通りにならない、描いていた感じと違う方向に行ってしまっても、それを自分のこれからにどう活かすかは、自分の心の持ちようで。GLAYとしてもひとりの大人としても、その場所には留まらないし、自分の意思で扉を開けていくしかないんです。GLAYとしては特に25周年を前にしたときに、もう一度自分の気持ちを洗い流して、本来ついてはいけない泥とか垢のようなものを、時々クリーニングしていかないと、重たくて次の一歩が踏み出せないですよね。

その時々のクリーニングが、バンドを楽しく、長くやっていく秘密なのかもしれませんね。

TAKURO
今、エアロスミス(※2)のギタリスト、ジョー・ペリー(※3)の自伝を読んでいて、バンドって大変だなって思う(笑)。でもGLAYは4人共ひたすら純粋にバンドを楽しんでいます。エアロスミスやローリングストーンズ(※4)のように、エゴが理由で活動が止まったりすることもないし、でもやっぱり、自分たちが心の底からやりたいこと、素直に心の中で燃え上がっている炎を、正しく録音することを時々やらないといけないと思うし、もしかしたらそれは普段より少し強い俺のエゴかもしれないですね。いつもはみんなが楽しくやってさえくれれば、それが俺の幸せだと心から感じているけれど、それでもどこかで流されたり、ぬるま湯に浸かりそうなときに、もう一回俺たちってなんだっけって立ち止まる必要はあると思う。ただバンドが好きで、音楽が好きで、それが仕事になって、仕事にまつわるしがらみはあるけれど、やっぱりスタジオの中での音楽創りは、あまりそういうところに捉われないほうがいいんじゃないかなって。メンバーにしてみると、「TAKURO、やたらテンション高いな、別に好きにやってくれていいのに、何でそんなに力説しているんだろう」って思っているかもしれない(笑)。人生を語った内省色が濃い『UNITY ROOTS&FAMILY AWAY』(※5)(2002年)や、自分達が作ったレーベルから初めて出した、バンド名を冠したアルバム『GLAY』(※6)(2010年)の時のような空気感を、メンバーは感じているかもしれない。これからもそうですが、本当に自分たちの音楽が誰かの役に立つとしたら、自分たちが素直にこれがいいんだと信じて、これが自分の人生だとデザインすること、描き切ることなんだと信じて、もう一度、まあ何度でもですよね、新たな気持ちでスタートしたい25周年だなと。

GLAYとしての正論というか、GLAYのど真ん中を、あるタイミングで声高に叫ばなければいけない瞬間を、リーダーとして敏感に感じ取って、これまでやってきたんですよね。

TAKURO
今、話をしていて気づきましたが、この5年間くらいは、メンバーのソングライターとしてのそれぞれの才能を、世の中に対してアピールしていこうってなって、『MUSIC LIFE』(※7)(2014年)や『SUMMERDELICS』(※8)(2018年)を作りましたけど、いまはパーソナルの部分というよりは、よき声、よき歌、よきアンサンブルがより求められている気がする。『SUMMERDELICS』は、今しかできない挑戦という感覚もあったし、それで自分の納得する目標、当てたい的に当たったと思うし、一定の達成感もあって。それもあって、今の自分の気持ちにちゃんと戻ってこれるような、そのとっかかりが「愁いのPrisoner」だったりするんですよね。今は、4人でひとつのメッセージになるような、誰が書いたかわからないけど、でもGLAYらしいという、そのさじ加減が大切。俺は、例えば意識して泥臭い、芋くさい曲を、GLAYにぶつけたとしても、きっちりみんなが水加減とか火加減とか調味料の加減で、ちゃんと臭みを消してくれるんです。でも最初からGLAYらしいものを書いていくと、当たり前だけどみんな得意だから、それなりの感じに仕上がる。やっぱり、難しいもの、やり甲斐があることに取り組んで、「TAKUROは次なる場所に行きたいらしいんだけど、目的地は3人はわからないけど、なんかテンション高いからついていってみるか」みたいな(笑)。ピンチになったら、進む方角がわからなくなったら、地図が読めるJIROが軌道修正してくれるみたいな、そういう感じのときが、俺が一番好きなGLAYなんですよね。

「愁いのPrisoner」のMUSIC VIDEOは、アメリカの青く広い空が印象的です。今、お話を聞いて、TAKUROさんがMVの中で街を歩くシーンがあって、色々思いにふけりながら、考えながら歩いている感じに見えました。

TAKURO
この写真(紙資料の、スタジオで撮影した、前作時のアーティスト写真)が、ある意味きっかけなんですけど、メンバーを、もっと広い空の下に連れて行きたいと思いました。CGとか便利なものだらけの世の中だけど、俺たちはいまだにバンドで、スタジオに入ってああでもない、こうでもないってやる、その自由さが大切。GLAYはメンバー4人のテンションや絆がすごく音に左右するし、影響するから、ジャケ写に関しては、とにかく広いところに行こうよと。室内から飛び出して、遮るものがない場所に行ったときに交わす会話が、音にものすごく影響するんですよね。今だったら写真だって別々に撮って合成もできるけど、でも25年間厳しい世界でやってきたご褒美じゃないけれど、撮影がてら、広い空を求めて旅に出ようよと。その合間合間に、しょうもない話をして、盛り上がるっていうことの方が、いい洋服を着せてもらって、カッコいいメイクをしてもらって、いい写真家に撮ってもらい、いいデザイナーに仕上げてもらうことよりも大切だと思い、ロスにMVとジャケ写を撮りに行きました。弾丸でしたけど(笑)。

強行スケジュールでも、今あの空の下に行くべきだと。

TAKURO
みんな4泊6日くらいで、何千キロと移動して撮ったけど、ずっと楽しそうだし、それはPrisonerという、囲われたところからの脱出じゃないけれど、俺たちだってそんな景気がいいわけじゃないけれど(笑)、だからといって節約ばかりして心まで貧しくなったら、ミュージシャンお終いじゃないのと。ミュージシャンとしてデカいことをやって、アホなことにお金使って、バカみたいに叫んでっていう方が、魅力的に感じるから、あまりズル賢くなっても嫌だなって。やっぱり大自然の前に佇んだとき、自分のちっぽけさとか、小さな悩みが「ま、いっか」ってなるし、みんなが楽しそうだからいいかってなるし。やっぱり「愁いのPrisoner」の歌詞にあるような、ああいった思いから成長して、また一歩を踏み出すために旅って必要だと思いました。

ゴールドフィールド(※9)は、昔ゴールドラッシュに沸いた街で、でもイメージとしては取り残された街という感じで、絶対に作りものでは出せない雰囲気、空気を感じます。

TAKURO
MVの大喜多監督が、いつかここで撮りたいと温めていた場所だとお聞きしました。今回初めて一緒にお仕事をさせていただいたのですが、GLAYの音楽や、佇まいに感じるものがあったのか、ここを提案してくれました。ゴールドフィールドは見捨てられた街なんですけど、正しく廃れていって、どこか人の一生に似ているなって思いました。でもそこに住んでいる人達は、みなさんポジティブで元気だし、逆に大切なものをたくさんもらいました。パワフルで街のテンションも高いし、そういう意味でもGLAYに似ているのかも。長くやってきて、新しい素晴らしいアーティストもいて、世の中の主役はどんどん変わっていって、氷室京介(※10)さんも安室奈美恵(※11)さんもひと段落して、俺たちはさて、どうしようかと。まだ世の中に、お前らはいらないって言われていないのなら、自分たちが信じたことを突きつめて、日本や世界の音楽業界へ貢献しながら、自分たちをアピールし続けていこうよという、4人で新たな決意をするには、充分な旅でした。

MVでは広い空と共に、地面に車やバスが突き刺さっている、カーフォレストの画もインパクトがありました。

TAKURO
その言葉が欲しいからっていうのに尽きる、そこに理由をつけるのは難しくて、今言った理由が主だけれど、それでいいんじゃないかな。そんなに難しく25周年だからとか考えすぎないで、GLAYの本来のよさってそういうものだと思う。なんかわからないけどいいなとか、楽しそうとか、涙が出るとか。大人になって知恵とかついてしまうと、そういった感動にいちいち名前を付けたくなりますけど、そうじゃない。車が地面に刺さっているのに、意味なんか求めなくていいと思う。そんな自由さを、ファンの人にもバンドにも感じてほしい。

同じくロスでMVを撮影した、TERUさん作のスペシャルオリンピックス日本(※12)公式ソングになっている「YOUR SONG」についてもお聞きします。ダブルAサイドシングルのこの曲、TAKUROさんはどうのように捉えていますか?

TAKURO
この曲はイコールTERUでありGLAYなんだけど、歌として世の中に伝えたいという側面の方が大きいです。メッセージありきというか、個人としての。TERUが言っていた、夢に向かって頑張っている人を応援する応援ソングという、アーティストとしてひとつ正しい部分で。もう一方の「愁いのPrisoner」は、もうひとつの真実である自分の魂に従うという部分で、それはとてもいいコンビだと思うし、陰と陽とまでは言わないけど、間逆なベクトルが、同じパワーで引かれあっているから、バランスを保っている。

「YOUR SONG」のMVは、みなさんというか、特にTERUさんが弾けていました(笑)。

TAKURO
いきなり「U.S.A.」(※13)のあのダンスを踊り出す、そういうところが本当にスゲエなと思うんですよね(笑)。彼は生まれながらの表現者で、自分と誰かを比べないし、過去とも未来とも比べないから「YOUR SONG」のような曲ができるのだと思う。底抜けに明るい、人の中に眠っている勇気や元気を100倍にする、アンパンマンのような人(笑)。俺にはその要素がないんですよね(笑)。人の勇気を100倍にしたいとか思わないもん(笑)。

撮影地のゴールドフィールドに、現地のGLAYファンがいて、CDを持って撮影を観に来ていたとお聞きしました。GLAYの音楽がきちんと世界に届いていることがわかりますね。

TAKURO
撮影しているときに、訪ねてきてくれたらしいんですよね。でも食事を作ってくれていた現地のおばちゃんたちが、彼らは仕事中だからって、追い返したらしくて(笑)。それで夜、撮影後お酒を飲んでいたとき、女の子が覗いているから誰かお客さんかなって、そしたら店のおばさんが、「あの子だよ。あの子GLAYのファンで、はるばる隣町から来たんだよ」って言うから、一緒にご飯食べようよって招き入れて。そうしたら『HEAVY GAUGE』(※14)(1999年)のCDを2枚持ってきてくれていて、しかも5年前に買ったって言っていました。彼女27歳で、高校時代の友達が日本、アジアの音楽が好きで、その影響でGLAYを好きになって、アメリカから当時のCDはなかなか手に入らないものだから、5~6年前にようやく手に入れて、それを本当にボロボロになるまで聴いてくれていて。やっぱりいくつになっても、何年やっていても嬉しいですね、ファンの人たちにそうやって言われるのは。

彼女のGLAYの音楽に対する想いを聞くことはできたんですか?

TAKURO
いっぱいあるけれど震えて話せないって言っていました。さっき出てきた同じような理由で、好きだって言ってくれればそれでいいです。俺たちのどこが好きだとか、分析めいたことは野暮かなと思うんですね。だって言葉がわからないのに、なんで俺たちの音楽が好きなのっていうのは、子供の頃に俺たちが洋楽聴いていたのと同じですよね。ビートルズ(※15)の「Yesterday」(※16)のよさに理由をつけるのが難しいのと同じです。なので、俺たちができることは、彼女に酒をつぐことだけだと(笑)。でも彼女飲めないって(笑)、じゃあ食べてけと(笑)。

表題曲の他に、「LUNATIC FEST.2018」(※17)と「GLAY×HOKKAIDO 150 GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.3」(※18)の時のライヴ音源が収録されていますね。これもファンは嬉しいですよね。

TAKURO
他のみんながなんて言うかわからないけれど、「ルナフェス」を隅から隅まで楽しんだのは、俺たちですからねきっと(笑)。2回目だと吹っ切れて、あと、厚かましくなって(笑)。怒られたら謝ればいっか、みたいな(笑)

GLAYに憧れている若手ミュージシャンも多いので、色々コラボとか楽しめますよね。

TAKURO
でも俺が強く言えるのは、ネス(EXILE NESMITH)(※19)くらいですけどね(笑)。シド(※20)の明希(※21)とのコラボも楽しかった。俺なりのフェスの解釈じゃないですけど、対バンの客を取るぞとか、そういうところでない、キャリアがある人たちならではのフェスでの表現ってないのかなと。こんなにフェスが多くて、みんなそれぞれ持ち時間の中でベストを尽くしているけれど、もう一歩先って何だろうということは、いつも人のフェスを観ながら考えますね。でも答えが出ていないから、フェスにはあまり出ないですね。俺が消極的なんですけど、カタログ的なGLAYだったら「HOWEVER」(※22)、 それの先ってないのかな、お客さんを取るとか存在感を示すとか、そういうレベルでない何かないものかっていうのは、いつも考えています。その結果「ルナフェス」、「VISUAL JAPAN SUMMIT」(※23)、チャリティものはテーマが違うので、参加させていただいていますが。

11月27日からは『GLAY MOBILE Presents 10th Anniv.Tour「平成最後のGLAYとChristmas2018~SURVIVAL~」』(※24)と題したZeppツアーを予定しています。“平成最後の”という言葉が使われていますが、やはり時代の変わり目という部分には、触発されている部分も大きいですか?

TAKURO
俺たちとしては平成にデビューして、自分の人生のほとんどを捧げてきた時代に対して、何かしら記念碑を建てたいというか。気にしない人もいますよね、催事毎を気にしない、墓もいらないという人も増えているけど、ある時は俺たちもそうだったんですよ。でもある時は、ちょっとそこに拘ることで、それぞれのスタンスが見えて、それが音楽づくりにすごく反映されることがあるから。例えばJIROは過去を全く気にしないし、これからのことにしか興味がない。それもいい。俺もクリスマスくらいは浮かれるけど、その他のイベント事に興味があるわけじゃないけれど。激動の平成が終わる時代に、表現する仕事についているもののひとりとしては、何か作品作りはしたいという欲求にはかられます。来年、くしくも25周年を迎える1か月前に、平成が終わってしまいます。そういった世の中の大きなうねりの中で、自分たちがどう舵を取るかいう、流されるままも悪くないけれど、そこを楽しんでもいいんじゃないか、振り返ったときにあの時の俺たちこうだったよねって明確にわかるもの、ランドマークなものを立ててもいいのかもって思いました。

それがオリジナルアルバム、ということですよね。

TAKURO
そうです。自分自身を歌うのではなく、自分の魂を歌う感じのもの、それをTERU、HISASHI、JIROと作っていくっていう『BEAT out!』(※25)(1996年)とか、7月にアンソロジー盤を出した『pure soul』(1998年)のときの、制作姿勢に近い気がする。心の中の掘り下げ方が違うというか。さっきの話でいうと、平成から新しい元号を迎える激動の変化の時代に、自分たちのメッセージをどう書くか、実際に「元号」という仮タイトルの曲もあって。全く無関係ではないと思うけれど、この平成が終わるときに色々と自分にとっても世の中にとっても、すごく様々な変化があって、俺はもっと大きな視点で小さく歌を作るというか、グローバルな視点で、小さな心の襞を切り取るような感覚を求めている。その感覚を、ようやく言葉にできるようになって、それは間違いなく90年代の曲作りに近いというか。

聴き手はTAKUROさんのソングライターとしての心の移り変わりが気になるというか、歌が鏡になっていると思いますが、25周年の次、30周年に向けてまたどういう作品を提示してくれるのかが、早くも楽しみです。

TAKURO
この前、ポルノグラフィティ(※26)の新藤晴一(※27)君と作詞家トークになったときに、例えば日本の音楽マーケットの中心はいまだに10代、20代だとしても、どこに向けて音楽を描くのかを、いつも悩みながら作詞家たちは日々作品を生み出していると。でもやっぱり俺は、自分の心に正直であって、バンドのメンバーの力を借りながら、誰かの人生の役に立つような品質のいいものを発信したい。申し訳ないけれど、10代とか20代の人の悩みを歌った歌に、感動はできない。それは自分たちもそうだったし、自分たちも悩みながら答えを見つけたんだと。今10代、20代の人たちの歌を理解できない、そこに共感を覚えないとしても、共感はできないけれど、自分がかつて歩いた道として見守ることもできるし、子供たちの成長を見守るような形で、それに参戦するもよしですよね。でも俺は、時間の流れは同じだと感じているので、やっぱり老いというものに対しての自分なりの解釈と定義は、きっちり作品の中で表現していきたいし、20年後、30年後もその時の自分の佇まいを、ちゃんと俯瞰で見て描きたいなと。それはイコール楽しみでもあり、常に瑞々しい歌を作り続けるということにつながると思う。自分の心に忠実に、それが古いと言われようが、新しいと言われようが、時代遅れと言われても、何と言われても、自分は自分の信じた道を進みたい。今、自分と同じ年齢、もしくは年上の男性と、何かを共通し合うことにすごく興味があって。同世代の人たちとこれからをどう生きていくか意見交換して、何をどう後世に残していくかとか、さっき言ったように俺たちは20代の曲を聴いてどうこう言うように、俺たちは先人が通った道をまた通るときに、どう感じて、先人たちはどう思っていたのかということには、とっても興味がある。それがイコール日本の音楽業界が広がるキッカケになるんじゃないかなと。青臭い歌を歌ったって構わないし、弱さ満載の曲を歌ったっていいし、そこは自由だけれど、そこにその人の人生の何の嘘もないもの、そういう音とか詞とか曲に興味があります。

文・田中久勝
※1:「愁いのPrisoner/YOUR SONG」
2018年11月14日(水)に発売するGLAYの56thシングル。「愁いのPrisoner」はTAKURO、「YOUR SONG」はTERUが作詞作曲をした作品。
※2:エアロスミス
1970年代初めに結成された、スティーヴン・タイラー(Vocal)ジョー・ペリー(Guitar)ブラッド・ウィットフォード(Guitar)トム・ハミルソン(Bass)ジョーイ・クレイマー(Drum)からなるアメリカ合衆国出身のロックバンド。グラミー賞を4回受賞するなど、数多くの実績を残している。
※3:ジョー・ペリー
エアロスミスのメンバーで、ギターを担当。2018年9月17日(月・祝)に大阪、18日(火)に東京で、初のソロ来日公演を行った。
※4:ローリングストーンズ
ロックの代名詞とも言える世界的バンド。1962年にイギリス・ロンドンで結成され、以来、半世紀以上にわたって、一度も解散することなく活動を続ける。
※5:『UNITY ROOTS&FAMILY AWAY』
2002年9月19日にリリースされたGLAYの7thアルバム。「またここであいましょう」(日本航空「JAL NEW CHINA」CMソング)、「Way of Difference」(フジテレビ系「あいのり」主題歌)などを含む全13曲を収録。
※6:『GLAY』
2010年10月13日にリリースされたGLAYの10thアルバム。自主レーベルから発売した初めてのアルバムで、押井守監督短編アニメーション映画「Je t'aime」の挿入曲「Satellite of love」などが収録されている。
※7:『MUSIC LIFE』
2014年11月5日リリースの13thアルバム。デビュー20周年となるGLAYの歩みを象徴するタイトルがつけられた。「DARK RIVER」(NHKドラマ10「激流」主題歌)、「BLEEZE」(コンタクトのアイシティーCMタイアップ曲)、「百花繚乱」(テレビ東京系番組「ヨソで言わんとい亭」エンディングテーマ)、「疾走れ!ミライ」(テレビ東京系アニメ「ダイヤのA」オープニングテーマ)などバラエティに富んだ楽曲を収録。
※8:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)リリース。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。
※9:ゴールドフィールド
アメリカ合衆国のネバダ州にある街。ゴールドラッシュの時期に栄え、現在はゴーストタウン化しているが、古い鉱山の歴史や建物があり観光客も訪れる。
※10:氷室京介
1982年にBOØWYのヴォーカリストとしてデビュー。1987年に解散し、同年にソロデビュー。2016年のドームツアー後、ライブ活動を無期限休止。
※11:安室奈美恵
沖縄県出身の日本のトップアーティスト。90年代には、彼女の服装やメイクを真似する女子「アムラー」が溢れ、社会現象になった。2018年9月16日に、芸能界を引退。
※12:スペシャルオリンピックス日本
知的障害のある方々に、スポーツトレーニングやその成果の発表の場のなる競技会を提供する、国際的なスポーツ組織。公式応援ソングとしてGLAYが新曲「YOUR SONG」を書き下ろした。
※13:「U.S.A.」
7人組男性グループ・DA PUMPの約3年半ぶりのSingle。“ダサかっこいい”と話題を呼び、ミュージックビデオの再生回数が1億回を突破。
※14:『HEAVY GAUGE』
1999年10月20日にリリースされたGLAYの5thアルバム。収録曲すべてをTAKUROが作詞作曲。
※15:ビートルズ
1962年にデビューした、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターからなるイギリス・リヴァプール出身のロックバンド。「LET IT BE」や「Hey Jude」など数多くのヒット曲を残す。ソロ活動が多くなった影響もあり、1970年に解散。
※16:「Yesterday」
ビートルズによる楽曲。「世界で最も多くカヴァーされた曲」として、ギネス・ワールド・レコーズに認定されている。
※17:「LUNATIC FEST.2018」
日本のロックバンド、LUNA SEAが2018年6月23日(土)、24日(日)に幕張メッセで開催したロック・フェスティバル。GLAYは、23日(土)の公演に出演。
※18:「GLAY×HOKKAIDO 150 GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.3」
2018年8月25日(土)、26日(日)に、GLAYの地元・函館、緑の島にて開催された5年ぶり5万人を動員した野外ライブ。
※19:ネス(EXILE NESMITH)
EXILE、EXILE THE SECONDのメンバー。2018年11月14日(水)に発売する「愁いのPrisoner/YOUR SONG」では、カップリングとしてLUNATIC FEST. 2018でコラボした「彼女の“Modern…” feat.EXILE NESMITH (from LUNATIC FEST. 2018)」が収録される。
※20:シド
マオ(vocal)Shinji(Guitar)明希(Bass)ゆうや(Drum)からなる、4人組ヴィジュアル系ロックバンド。
※21:明希
シドのメンバーで、ベースを担当。2016年には、ソロ名義「Aki」としてソロシングル「STORY」をリリース。
※22:「HOWEVER」
1997年8月6日リリース、12thシングルにしてGLAYにとっては初のミリオンセラーとなった代表曲。
※23:「VISUAL JAPAN SUMMIT」
2016年10月14日(金)、15(土)、16(日)の3日間幕張メッセで開催された、10万人規模の日本最大のヴィジュアル系・音楽フェスティバル。
※24:『GLAY MOBILE Presents 10th Anniv.Tour「平成最後のGLAYとChristmas2018~SURVIVAL~」』
2018年11月27日(火)よりスタートする、今年で10周年を迎えたGLAY MOBILEの会員限定ライブ。2013年のGLAY MOBILE会員限定ライブツアーから、5年ぶりの開催となる。
※25:『BEAT out!』
1996年2月7日にリリースされたGLAYの2ndアルバム。初のオリコン週間CDアルバムランキング1位を獲得し、ブレイクのきっかけとなった作品。
※26:ポルノグラフィティ
1999年にデビューした、岡野昭仁(vocal)新藤晴一(Guitar)からなる2人組ロックバンド。
※27:新藤晴一
ポルノグラフィティのメンバー。2011年には、湘南乃風のSHOCK EYE、アレンジャーの篤志とともに、THE 野党としてもデビューしている。

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