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INTERVIEW

Vol.126 HISASHI インタビュー

メンバー個別インタビュー、続いてレコーダーを向けたのはHISASHIである。ニューアルバム『旅する理由を待ちながら』に先行してリリースされたシングル曲『汚れた英雄』は、HISASHI流のアグレッシヴなロックサウンドが全開。アルバムはこの曲を起爆剤にするように、ダイナミックなスタートを切る構成になっている。
このように音楽面でとりわけシャープな感性を持つHISASHI。彼はまた、バンドにおいてはヒューマンなロックを唄うGLAYの一員として、最高のギターを奏でる才能を発揮し続けている。いつもその鋭利なセンスや批評的ですらある見方を語ってくれるHISASHIだが、ここでは『汚れた英雄』の話とともに、自身の変化について感じること、それでも内側で燃え続けるパッションや音楽への尽きない興味について話してくれた。そしてTAKURO同様、HISASHIもAIについて強く語っていることが、今の時代性を反映していると感じた。

2026.10.30

今日はツアーパンフレットの撮影中にお邪魔していますが、ヴィジュアルの仕上がりはどんなものになりそうですか?
HISASHI

最近のGLAYが出したいイメージが、わりと60年代、70年代みたいなところなんです。まあ『汚れた英雄』も(インスパイア元が)古い映画なんですけど、「ちょっとモダンなものに仕上げたいね」という会話を(メンバー間で)よく聞くので。ヴィジュアルもそういったモダンなものになるのではないかな、と思っています。

となると、21世紀に入っての感じとは違うんですね。
HISASHI

うん。『007』みたいな、スタイリッシュなものですよね。ポップアートみたいなところもあるような。

今日の撮影では、そういう衣裳も着ているわけですか。
HISASHI

そうですね。ライブの中だと、やっぱり動きメインになっちゃうんですよ。動きやすいとか、パフォーマンスしやすいとか。今回はそういうものより、もうちょっとかしこまった形(の衣裳)で表現したいね、という話はしています。

わかりました。そのツアーが始まるにあたり、HISASHIさんはどんなことをイメージしていますか?
HISASHI

振り返ると、1月のローソンプレゼンツのKアリーナでのライブ(LAWSON 50th Anniversary presents GLAY Special LIVE)を皮切りに、2026年は30周年を終えた新たなGLAYのフェーズというイメージがあるので。ニューアルバムを引っさげてのこのツアーは、32年目以降のGLAYのサウンドであふれています。2026年から2027年は、そういうイメージですね。

そこに、何か新たな始まりのような感じもありますか?
HISASHI

うん、ここまで来て、さらに好きなことを突き詰めたいなと思っていて。4人それぞれのパーソナルな武器だったり、音楽的指向だったりが、より浮き彫りになるようなものをね……まあ最終的にTERUが唄えば、どんな曲でもGLAYになるっていうところはあるんですけど。

それはお決まりの言葉ですね。
HISASHI

(笑)そうなんですよ。これはでも、良くも悪くもなんですけどね。今も新たなシーンが台頭してきていて……AIの音楽が、世間に垣間見えてきましたけど。そんな世の中においてもGLAYは、どんなにあがいてもGLAYらしい音楽を表現する、ということです。まあ、ちょっとした諦めにも近いんですけど。

(笑)「良くも悪くも」とか「諦め」とか、そのニュアンスはものすごくわかります。でもそこはGLAYの長所であり、また魅力だと思いますよ。ファンにとっては、GLAYが遠くへ飛んでいかない安心感でもあるし。
HISASHI

そうなんですよね。だから、おかげで相当、冒険できるんです。その最終的な仕上がりで、TERUが担っているところは大きいんですよね。だから大きく振りかぶってもGLAYは大丈夫だ、ということはずいぶん前から知っていました。『汚れた英雄』に関しても、2000年代……ゼロ年代のミクスチャー、デジロックみたいなところに僕はすごく影響を受けていて。そういうことって最近あまりやっていなかったなと思ったので、敬意とともに表現しました。

はい。僕、この曲、すごく好きなんですよ。このサウンド、そして歌詞の詰め込みようはすごいなと思いました。
HISASHI

あはははは。だからほんとに平歌というか、A→B→サビって、もう付け合わせみたいな感じですね(笑)。言いたいことを全部……言いたかったんでしょうね。この32年間の長い旅というか……その中でぶち当たる壁もあったりして。「ちょっと自分のパフォーマンスが、自分の思っているラインに達してないな」っていう時が、何度もあるんですけど。

そうなんですか?
HISASHI

そういう時はいろいろなエンタメだったりとか、歌とか、そういったものに助けられるんですけど、その中のひとつが『汚れた英雄』という草刈正雄さん主演の角川映画だったんです。じゃあパフォーマンスが自分のラインに達さなかったって歌を書こう、と思ったんですよ(笑)。

へえー! 逆に、というか。
HISASHI

逆に。そうですね……この前、10年ぶりにファンクラブライブ(HAPPY SWING 30th Anniversary SPECIAL LIVE We♡Happy Swing Vol.4 ~Promise The Venezia~)を、長いランウェイがある幕張のステージでやってきたんですけど。やっぱり10年経つと疲れ方も違うな、と思うところがあるんですね。

疲れ方が、ですか?
HISASHI

うん。ライブの後にいろいろ話したんですけど、全方向から集中されて、ファンの気持ちを受け止めることと、3時間のパフォーマンスをすること自体に、非常に体力を奪われるんです。みんなが持っている、10年だったり30年だったりっていう(時間で培われた)エネルギーは強いんだなと、あらためて感じて。で、僕らのほうもちゃんと10年経っているわけだから、疲労度が変わってきているなということを(『汚れた英雄』に)正直に書きました。

かなりリアルに受け止めているわけですね。
HISASHI

うん。やっぱり楽器とかも重く感じるし(笑)。ギタリスト、竿系(の楽器)の人は来ますよね、身体に。だって、めちゃくちゃ不思議な運動を3時間するわけですから(笑)。

そうですね。普通に生活していたら、やらないであろう動きですからね。
HISASHI

そうそう、両手で超細かい運動をしながら全身でパフォーマンスをするのは、すごく変わったことですよね。そういうことを32年間やってきましたけど、でも、まだまだ表現したいことはたくさんあって。今回のアリーナツアーの演出プランも徐々に固まりつつあって、この『旅する理由を待ちながら』というアルバムを表現するのに最適な演出プランはどんなものだろう?と考えたりしています。で、そこには、立ち止まっていられない感じがあって……まあ全部込みで『汚れた英雄』っていうことなのかなぁ。

それだけ時間の経過だったり、年齢の積み重ねということが、ご自身には響いているんですね。
HISASHI

それはもう! どんなに映像で修正したり写真をカッコ良くしても、10年は確実に経ってるんですよ、お互いに(笑)。で、AIは進化するし、世界の緊張も相変わらずだし、という。

そうしてみると、いろんな面でハードルが高いまま走らなきゃいけない状況ですね。
HISASHI

うん、明らかに。時間が刻々と過ぎるってことは、技術がその分、「今」でとどまらないということですからね。たしかにそうですね……クオリティというのは、どんどん重要視されると思いますね。

なるほど。そんな中で、HISASHIさん個人として、ライブに臨む心構えって、昔に比べて変わってきている部分はありますか? すごく古い話で申し訳ないですけど、1998年でしたっけ? ツアーの序盤のあたりで客席に飛び込んで、脚を骨折したことがありましたよね。今はああいうムチャはやらないですよね?
HISASHI

うん(笑)、さすがに50過ぎてからはね。あの頃はまあ……表現すること自体がヘタだったんだと思うんですよね。今は、2027年までツアーが続くから、体調面はもちろん、しっかり整えておかないといけないと考えるし。昨今では、風邪や感染症でライブができなくなるような状況も多々ありますから、そういうことはちゃんと考えられるようになりましたね(笑)。

はい。自分の体調面を気にしながら。
HISASHI

うん。あと思うのは、GLAYの音楽には、なんか同窓会みたいな感じも、ちょっとあったりして……。

同窓会。どういう意味ですか?
HISASHI

たとえばドームもそうですよね。ほんとに、情熱だけでは(大会場は)埋まらないと思う。だから(ライブの場は)ファンの人が交流するようなスペースの提供、ということでもあると思うんですよね。そこに来たら、10年前の友達と10年前みたいに楽しめる。それが、ライブはもちろんだけど、その前後だったり、うちに帰るまでとか。あの頃の甘酸っぱさが残っている会場、みたいな。そういうあり方であってもいいと思うんですよね、GLAYのライブは。

なるほど。個々人では、そういうところを楽しんでいるお客さんたちも多いだろうということですね。
HISASHI

で、どんなにとんがった演出をしても、GLAYの4人はあったかい空間を作ってしまうので、そういう雰囲気には絶対になると思うし。今いろんなアーティストがいる中で、そんなふうにGLAYがやらなければならないことっていうのは、言葉にはできないけど、なんとなく僕らで理解しているんですよ。GLAYの会場のあったかい雰囲気とかね。「昔の曲はあんまり聴けなかったけど、やっぱりGLAYのライブってこういう雰囲気になるよなぁ」みたいな。そういうものを持っていると、僕らは自負しております。

なるほど。そのあったかい空間とかに対して、過去に抗おうとしたこともありました? 安心できる場って、若い頃なら「いやいや違うよ」みたいな思いもある気がするんですけど。
HISASHI

そうですね。だから……意地ではないけど、ずっと「僕らはドームやってもアリーナやっても、ライブハウスでできるバンドです」みたいなのがあったんですね。ライブハウスには、すごくこだわっていたと思います。そういうところはあるけど、ただ、今はなんかね。そんな小さなこととかは、もう関係ないんじゃないかなぁ。

ああー。それを小さなことだと思うようになったんですか。
HISASHI

そうですね。だってライブハウスと言っても、GLAYの場合は3,000人ぐらいのキャパでやることがありますから(笑)。それにこのバンドは、メンバーの関係性も変わらないし。ほんとに音楽を作っている時でも、亀田誠治さん(プロデューサー)を含めて、みんな、すごく楽しんでやっているんですよ。個々がそれぞれ、ほんとに今一番やりたくて、表現したくて、伝えたいメッセージを、音楽を、真摯にやっている。インタビューとしてはつまらない答えなんだけど(笑)、それをいまだにできている関係性というかね。

いや、わかりますし、つまらなくはないですよ。たぶん「そういうことなのか」と気づくファンはいると思うし、「やっぱりそうなんだ」と再確認してくださる方もいると思います。
HISASHI

うん。だから毎年、年始に僕のYouTubeチャンネルで「カタカナ禁止飲み」っていうやつをやるんだけど。あれ、別に音楽ではないじゃない? まったく。それでも楽しんでくれてる人がいるというのは、そういった側面があると思うんですよね。

そうですね。メンバーたちの人間的なところまでを楽しんでもらえているというか。
HISASHI

だから、いろんなファンの人がいますよね。新しい曲はそんなに興味ないけどライブは行く、とか。そういうYouTubeの4人が楽しいから好きだ、とか(笑)。いろんな聴き方だったり、GLAYの感じ方をしてくれたらいいと思います。

わかりました。次にアルバムについてなんですけど、今作はGLAYらしさがしっかりと多方面に提示されている作品だと思うんです。HISASHIさんはどんなふうに思っていますか?
HISASHI

そうだな。どうなんだろうな……うーん。今まで言ったみたいに、現在のGLAYが好きなことを詰め込んだ感じになっていると思います。でもまだ俯瞰から見れないので、これがどういう作品なのか、よくわかっていないですね。

そうですか。序盤はHISASHIさんが本領を発揮しているわけですよね? 『汚れた英雄』につながっていく流れのあたりは。
HISASHI

そうですね、去年から今年を印象づけるような始まり方が適切だなとは思っていました。今回レコーディングした中でも、わりとハード系のアプローチのものから、すごく丁寧に扱われるような楽曲まで、いろいろあったんだけど。今回新たにGLAYと亀田さんのワークスが混ざり合って。それが、ひとつ結果として出た感じがしますね。

ええ、混ざり合っている感じがありますね。GLAYと亀田さん、両者の感覚や価値観が。
HISASHI

そうそう。だから本当に80年代からこの2000年代までの音楽を詰め込んで取り出した一滴、みたいな。体験してきたエンターテインメントからの影響を真剣に受け取った僕らが音楽として表現する、というか。80年代、メタルとかハードコアとかがあったり、2000年代のミクスチャーもあったり。TAKUROに至ってはシティポップまでも遡るのかもしれないですけど、そういうふうに本当に音楽を好きな4人の歩みが見えるような作品なんじゃないかな。ただ、マスタリングで曲間を決めている時に、「今こうやってちゃんと聴く人、いるのかな」みたいな話になって。

ああー! アルバムとして。
HISASHI

アルバムとして。でも僕らはけっこう盤にこだわるタイプのバンドだと思うので。

そうですね、僕もそのことを感じたんですよ。GLAYは毎回、フルアルバムの形態で作品を出すじゃないですか。でも今の若い世代には、フルではなく、ミニアルバムしか出さないようなアーティストもいるんですね。6曲とか7曲で1枚にして、それを1年置きぐらいで出したりして。
HISASHI

マジか……(フルの)アルバムとしてまとめないんですか? まあ、まとめる意味もないですもんね、今だったら(笑)。

そう、フルアルバムにこだわらないバンドもいます。で、考えてみたらGLAYって、ミニアルバムみたいな形態ではほとんど出していないですよね。
HISASHI

うん、『G4』とか、そういうのぐらいですかね。

そう、でもあれはEPじゃないですか。リリースの基準としては、やはりフルアルバムを節目にしていますよね。
HISASHI

そう。あのね、GLAYの場合、昔だとけっこうVHS(ビデオテープ)が売れていたんですよ。そのことはMV集をDVDで出した時に思ったんだけど……だから、そういう意識もまだあるのかな。ちゃんとCDを買って家で聴く、みたいな人たちもいるだろうと。

そうですね。GLAYのファンには、もちろん新しい世代の皆さんもいるけど、昔ながらの方も多いわけで、そうするとやっぱりフルアルバムを待っているのかなという気がします。
HISASHI

僕らの年代がそうですからね(笑)。レコードで聴く、A面B面の時代だったしね。

そのレコードがCDになっても、アルバム1枚をトータルで聴くのが当たり前でしたもんね。今回のアルバムも、最初はアグレッシヴに始まりながら、中盤から後半にかけて曲がうねっていくようになって、深みが出ていきますよね。こうしたアルバムトータルとしての作りは、GLAYとしてのあり方を守っているなと思いました。
HISASHI

そうですね、『RADIO STAR』とか、GLAYがやらなかったら誰がやるんだろう?ぐらいの、すごくオーソドックスな曲を真剣にやるんですよね、俺ら(笑)。真剣にスタジオに入って、「ここをこうしよう」とかアレンジしながら。世が世ならもう笑ってしまうような事象があるという(笑)。そこらへんが、またいいですよね。タイムスリップした感じがして。

ああ、でもそれは……これもよく出る話だし、さっきもありましたけど、メンバー同士の仲がいいですよね。それも根っこにある気がします。
HISASHI

うん、いいですね。でもバンドってそういうふうになるのかな?って、周りを見ていても思います。細かいことを気にせずに、「バンドが楽しめればいいや」「バンドを楽しむためにはやっぱり新曲が必要だよね」みたいな。そこで曲をまたスタジオに集まって作ったりしている感覚かな。まあ僕らは特殊ですけどね。

特殊だと思います?
HISASHI

はい、特殊だと思います(笑)。

そうですか。でも裏を返すと、そういう関係性が築けているから続いていってるところもある気がします。もちろん仲がいいだけでバンドは続かないでしょうけど、続く上でのポジティヴな理由のひとつになっているんじゃないですか。
HISASHI

うん。それにやっぱり音楽には、まだまだ飽きることがないです……音楽って、生き物ですね。まあ今回のレコーディングでも、「あのフレーズはこっちのギターで弾いたほうが良かったかな」とか考えたり、いろんなことに気づいたりもして。もう(制作作業は)終わりましたけど、時間が経って気づくことってすごいたくさんあるんだなと思っていて。

それは過去の作品だったり、楽曲に対してもあるわけですか?
HISASHI

表現の仕方というかね。たとえば、ヘヴィなリフは絶対にレスポールカスタムで弾いたほうがいい、と思い込んでる自分がいたんだけど。今回、54年のストラトキャスターがすごくいい仕事をしていて、「あ、リフもいけるんだ、これ!」「こっちのほうが力強い!」みたいな。

そうなんですね。そのストラトは、どの曲で使いました?
HISASHI

えっとね、ほとんどなんですけど……(収録曲を確認して)……『EXOFIRE』とか、そうですね。

ふむふむ。そんなふうにいろいろと経験を重ねながら、試行錯誤することがずっと続いてるんですね。
HISASHI

たぶん僕ら、ほんとに……さっき言ったような、「これぐらいでいいや」みたいなことじゃない、常に取り組み方が、すべてにおいて真剣だと思うんですよ。それはGLAYだけじゃなくて、今のミュージシャンだったり表現する方々って、それが当たり前だと思うんですよね。そういったことじゃないと、もうほんとにAIに負けてしまうかもしれない。

ああ、そう思ってます?
HISASHI

いや、まあ、負けることはないんだけどね。人間が表現する素晴らしさっていうのが、より浮き彫りになってきたというか。熱いものには、もうさらに熱く関わっていったりね。そういうことに気づきやすくなってきている時代なんじゃないかな、というか。

そこは今のHISASHIさんらしさを感じられる話ですね。
HISASHI

うん、たしかにそうですね。いや、いろいろなAIがすごくたくさん出たけど、やっぱりAIなんですよね。今の時代は。それがちょっと、枷になってるというか。

枷? AIの存在が足枷になっている、ということですか?
HISASHI

うん、足枷。そうですね……たぶん今が一番そういう時だと思うんですけど。

そのへん、自分の中でせめぎ合うところもあるわけですか。
HISASHI

そう! AIって結局、めちゃくちゃ便利なんですよね。だからすごい不便なことをやってるんですよ、GLAYは(笑)。それが形として、より見えやすくなってきた感じがありますね。

わかりました。じゃあツアーでは、その不便さに立ち向かいながら音楽を鳴らしている、人間くさいGLAYを楽しんでもらえたら、ということでしょうか(笑)。
HISASHI

うん。不便さに(笑)……そうですね。ありがとうございます!

取材・文/青木優

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