GLAY

MENU

INTERVIEW

Vol.121 TERU『LIVE at HOME vol.9 in TOKYO GARDEN THEATER』インタビュー

12月9日(火)・12月10日(水)の2日間にわたって開催される、TERU主催のライブイベント「LIVE at HOME vol.9 in TOKYO GARDEN THEATER」。INORAN(LUNA SEA)、TOKIE、GLAYからはHISASHIが出演し、TOSHI NAGAIと村山☆潤も含め6人編成でステージに立つ。 「LIVE at HOME」とは、コロナ禍で有観客ライブを開催できなくなった2020年、TERUが自身の誕生日6月8日に単身ライブ配信を行なったのを初回とし、形を変えながら進化し続けてきたシリーズである。当日ステージに立つだけでなく、TERUは企画・立案・会場選び・デモづくり・映像制作に至るまで、プロデューサーとして全面的に携わり驚異的な手腕を発揮している。今回の「LIVE at HOME」vol.9で予定している内容や、「LIVE at HOME」シリーズの魅力について、プロデューサーとしての想いを語ってもらった。

2025.11.27

まずは、「LIVE at HOME」vol.9をなぜこのタイミングで開催しようと思われたのか、きっかけをお聞かせください。
TERU

30周年イヤーが終わって、TAKUROがお休み宣言をしたのがきっかけです。年内はGLAYの活動を何もしない充電期間を作ろう、ということになって。ただ、ドームツアーが終わった6月以降、今年の後半ずっと喉を休めてしまうと、(声帯は)筋肉と一緒なので衰えてしまうな、と。ヴォーカリストとしては、僕はなるべくそういう期間を減らしたいとは常日頃思っていて。なので「何か企画を立てようかな」というところで、今回の開催に至りました。「LIVE at HOME」は、アート活動とはまた違う僕のソロワークスの一環として続けてきたシリーズなので、それを久々にやりたいな、と思ったのがきっかけです。

「Live at Home」はボーカリストとしてのスキルアップに直結していて。というのもこのシリーズは必ず演奏曲全曲分のDEMOを制作してからリハーサルに入るんです。
当初はコロナ禍でメンバーが集まれずリハーサルができなかったので、DEMOを作って各自自宅でリハーサルするしか手段がなかったんです。苦肉の策ではあったけれど、それが功を奏して、レコーディングを毎日してるような状況になった事で、よりクオリティーの高い歌を歌いたいと思うようになり、スキルアップに繋がったのだと思います。

前回の「LIVE at HOME」vol.8は「The Ballad of GLAY」をテーマに、スモールワールズTOKYOにて2022年6月8日に開催。3年半ぶりになりますね。
TERU

あの時はまだアクリル板がありましたもんね。隣の人に息が吹きかからないように、とか気を付けながら……。コロナがようやく明けて、今回は初めてフルキャパで開催する「LIVE at HOME」になります。

コロナ禍でも諦めずに音楽を届けるんだ、というTERUさんの熱意と行動力によって、様々な形のライブエンターテインメントが生まれてきたシリーズで、今回出演されるのは、LUNA SEAのINORANさん(Gt)、TOKIEさん(Ba)、GLAYからHISASHIさん、そして村山☆潤さん、TOSHIさん。メンバー決定までの経緯を伺えますか?
TERU

基本的に僕が「一緒にやりたい」と思った人なんですが、INORANくんに関しては、今年の1月、GLAYのライブと時期を合わせて函館で開催していた5人展(※「HAKODATE ART EXHIBITION 2025 DREAMY」)に足を運んでくれたんです。2026年に開催するファンクラブ設立30周年記念ライブに向けて、去年、今年とヴェネツィアで会場探しをしていたんですが、INORANくんは去年そこにも遊びに来てくれて。INORANくんも今アートに興味があって自分でもやっているとも聞いたので、いろいろと連絡を取っていくうちに「何か一緒にやりたいよね」という話になって。あと、今年2月にはLUNA SEAとGLAYの対バンもあって。

東京ドームで2月22日に開催された「The Millennium Eve 2025」ですね。
TERU

その時にテナシー(※LUNA SEAとGLAYの混成バンド)でINORANくんとご一緒したんですけど、すごく楽しかったので「またやりたいな」と。お誘いしたら2つ返事でOKをいただいきました。

8月の函館港まつり「ワッショイはこだて」のパレードにサプライズ登場され、盛り上がりましたね。
TERU

INORANくんはLUNA SEAの中でいちばん歳が近くて、一緒にいて飲んでいても楽しいし、気が合うんですよね。SUGIZOさんは「先輩」みたいなイメージありますけど、INORANくんは同期というイメージが強いので。TOKIEさんに関しては、ACE OF SPADESはもちろん、いろいろな場所で観ていましたし、「いつかご一緒したいな」とチャンスを窺っていたんです。今回開催するのは大きな会場で、ロックを奏でるにはピッタリだし、「ベーシストは誰がいいかな?」と思い浮かべた時に最初に出てきたのがTOKIEさんで。オファーしたところ快諾いただいて、そこでまずはバンドの基盤ができたんですよ。Azumiちゃんは、先日、函館でアートな夕べというイベントを開催した時に5日間ぶっ通しで一緒に歌ってもらったんです。その時の2人のアンサンブルが大好評で、以前から何度か一緒に歌う機会はあったんですが、今回ほど一緒に作り込んだ曲もなかなかなくて、今回の「Live at Home」でもみんなに聞いてとほしいと思い、函館のイベントの後に急遽オファーしました。ムラジュンとTOSHIは、GLAYの延長線上でいちばん安心して一緒にバンドができる二人なので、出てもらおう、というのは頭の中にありました。

HISASHIさんのご出演はどのような流れで決まったんでしょうか?
TERU

「Live at Home」は僕もギターを弾くから、最初は「ギター1本(の編成)で行こうかな?」と思っていたんです。でも今回はカバー曲も多いので弾かないでお任せしようと思ったのですが、5人というのは自分の中でちょっと座りが悪くて。デビューしてから30年以上ずっとギター2本でバンドをやっているから、ギター1本は慣れないというか。なのでHISASHIに「ギター弾いてくれない?」と訊いたら、出てくれることになりました(笑)。

カバー曲の数々と、GLAYの楽曲と、両方を楽しめるセットリストだそうですね。
TERU

カバー曲は昭和歌謡というテーマで選びました。ラインナップをTAKUROに教えたら「それは昭和“歌謡”ではない。ポップスだ」と言われてしまいましたが(笑)。そもそも、「昭和のいい時代の音楽をやりたいな」「自分の好きな曲を自分が歌ったらどうなるんだろう?」というところから始まっているんです。

TERUさんがティーンエイジャー期までを過ごされたのが、昭和時代にあたります。
TERU

小、中学生の頃に耳にしていたり、CMソングなどで流れていたりして自分の中に残っている曲たちについて、「僕はこういう音楽を好きなんだよ」と伝える機会はこれまであまりなかったと思うんです。影響を受けたロックの曲を伝えることは多かったけど、そういった生活の中にマッチングしていた曲というのかな? 自然に耳に入ってきた曲で「あ、これ懐かしいな」と思える曲をチョイスして。あとは、「これを自分の声で歌ったらどうなるんだろう?」という興味本位と、「やってみたいな」とシンプルで素直に思える曲、歌える曲をチョイスしました。

TERUさん選曲のカバー曲のラインナップを見ますと、共通して切なさが漂っている印象を受けました。
TERU

僕が選んだカバー曲たちは、前半のアコースティックコーナーで披露するので、それに似合いそうな曲たちを選んでいます。ライブは二部制で前半・後半に分かれていて、前半はアコースティックで、ストリングスを入れたクラシカルなアレンジでお届けします。昔の歌謡曲って、ストリングが入って昭和の匂いがたっぷりするようなアレンジが多いんですよね。

TERUさんだけでなく、INORANさん、TOKIEさん、HISASHIさんも選曲をされたんですよね?
TERU

はい、してもらいました。意外だったのはINORANくんの選曲ですね。沢田研二さんの曲と井上陽水さん(中森明菜さん)の曲を選んでくれたんですけど、意外と合いそう。自分も歌ったことがありますし。カラオケで、ですけども(笑)。

TOKIEさんとHISASHIさんのカバー選曲はまたテイストが違っていて、それぞれの特性が出ていると感じます。
TERU

そうですね。TOKIEさんの選曲のうち1曲は、僕にとって初めて知る曲でしたけども、今ムラジュンがアレンジをしてくれているところです。原曲からはかなり外れたアレンジもあるだろうし、原曲通りやる曲もあるし。沢田研二さんの曲はそのままやりたいな、と自分としては思っています。Azumiちゃんとの曲に関してはアートな夕べで一緒に歌って最高に気持ちよかった4曲を選曲しました。もちろん、Azumiちゃんの曲もあります。

GLAY MOBILEのTERUさんのブログ「G-CONNECT」で拝読したところ、村山さんと一緒にHISASHIさんもアレンジ作業を頑張ってくださっているとか。TERUさんがHISASHIさんに感謝し、優しさを讃えていることに感動しました。
TERU

僕が「アートな夕べ」(※土田康彦氏のライフワーク「アートな夕べ」を、TERUプロデュースで「アートな夕べ in 函館」として11月に開催。場所は金森ホール)で忙し過ぎて、見るに見かねたHISASHIが、ムラジュンと一緒に裏で進めてくれているみたいです。でもHISASHIにそう言ったら、「え、やってないよ?」と焦っていました(笑)。でもさすがで、次の日にはDEMOが送られてきましたw

デモ音源をキャッチボールのようにやり取りし、スタジオでのリハーサル前までにつくり込んでいくわけですね。
TERU

そうですね、それぞれのアプローチを考えながらデータをやり取りして。コロナ禍で培った、そういったリモートでの音楽の構築の仕方を今回またやってみたいなと思って。意外と自分のスキルアップになるんですよ。「LIVE at HOME」過去8回分のデモをつくったので、毎回10数曲あるということは、120~130曲分の労力を費やしたことになりますから。今回はどういうアレンジになるのか、僕自身すごく楽しみにしています。

「LIVE at HOME」はTERUさんが総合プロデュースを手掛けるイベントで、音楽以外の演出、雰囲気づくりも楽しみです。今回はその点はどうでしょう?
TERU

今回は凝った演出で見せるというよりはシンプルにやっていきたいな、と思っていて。前半はアコースティックで、ストリングスも入ってもらってクラシカルに、後半はロックに、世界観を変えて1日のうちで違った楽しみ方ができるようなライブにしたいですね。

今回、TAKUROさんとJIROさんは何か感想をおっしゃっているんですか?
TERU

毎回こういったイベントを僕が考えて進めている段階で、「今どんな感じなの?」という話はしてくれるんです。先日もTAKUROに「どんな感じ?」とやはり訊かれて、「まだデモをつくれてないんだよね」と状況を話しましたし、そういったやり取りはしています。実際イベントに足を運んでくれたりもするし、すごく客観的に見てくれているところはあると思う。

JIROさんからはどうですか?
TERU

「忙しそうだね。大丈夫?」と言われました(笑)。JIROはJIROで、CONTRASTZの活動で結構大変そうですよね。

プロデューサーとしてではなくヴォーカリストとして、昭和の名曲たちをカバーすることは、TERUさんにとってどんな体験になりそうですか?
TERU

最近GLAYの新曲もレコーディングしているんですが、メンバーそれぞれのメロディーの癖だとか、お互いの特徴が分かっているので、新曲でもすぐに馴染むんですよ。長年培ったものだから自然と対応できるんですけども、ことカバーとなるとそれが通用しなくて。慣れない譜割りだったりメロディーだったり、僕が苦手な音域があったり、そういうのをデモをつくりながら歌っていくことによって、やっぱりそれもスキルアップにはなるんですよね。「LIVE at HOME」をコロナ禍の最中にやってきたからこそ、最近では「歌上手いね」みたいなことをよく言ってもらいますし。

TERUさんの歌唱の進化にはもう、圧倒されるばかりです。
TERU

自分ではあまり変わっていないつもりでいたけど、同録のライン(音源)を聴き返すと、やはりすごく安定していますよね。「アートな夕べ」でも5曲歌っていますけどもすごく好評で。コロナ禍の最中に動き出すことができたか、動き出せなかったかで、今大きな差が出ているんじゃないかな?と思います。

カバー曲を歌われている時は、GLAYの歌詞ではあまり出てこないような言葉もありますよね? そこに関してはいかがですか?
TERU

やっぱり昭和時代の言葉なので、全然違いますよね。例えば「ペンダント」とか、カタカナのチョイスがちょっと違うかも。今はあまり言わないですよね。あとは受話器とか。

電話と言えばスマートフォンしか知らない若い世代には、想像しづらいですよね。
TERU

でも、だからこそ「綺麗な言葉だな」と再認識することもあります。「あ、こういうものの譬え方、いいな」とか。昭和の歌詞はドラマティックですし、ロマンティックなんですよね。今は現実的過ぎるというか、夢なんて見ていられないような時代で。昭和は今と違ってものが少なかった分、いろいろな夢を見ている人たちがいたんじゃないかな?と。歌詞にもそういうのが滲み出ていると感じます。1985年の曲でも、もう40年も前ですからね。坂本九さんの曲は更に前だし、そういった長く受け継がれてきた普遍的な曲も歌いたいな、と思っていたので選曲しています。

来場される方には、どんなふうに楽しんでほしいですか?
TERU

そもそも「LIVE at HOME」は家で寛いで聴けるようなライブを目指していたので、今回も寛げる空間をつくりたいな、と思っています。外に出られない状況で始めたシリーズですが、やっとコロナが明けて、外に出て楽しめるような世界が戻ってきて、皆で歌えるようにもなりました。歴史はまだ5年しかないけど、当時は配信でしか観られなかったのが、少しずつ会場でもファンの皆と一緒に体験できるようになっていった変遷があって、今回は初めてフルキャパで開催する有観客の「LIVE at HOME」になります。そういった歴史を感じながら、過去のコロナ時代の辛かった思い出もライブで思い出しながらも、前へと進めるようなライブにしたいと思います。

GLAYファンの皆さんにはお馴染みのシリーズですが、INORANさんやTOKIEさんのご出演を機に、初めて「LIVE at HOME」に触れる方に対して、何かメッセージをお願いします。
TERU

とにかく、「日本の音楽って素晴らしいんだよ」というのは伝えたいですね。60年前の曲、30年前の曲、最近の曲もありますけれども、日本の音楽文化には独特なものもあるし、独特なメロディー、独特の言葉の美しさがあって。そういったものを皆で共有できるような空間にしたいなと思いますので、楽しみにしていてください!

取材・文/大前多恵

BACK