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INTERVIEW

Vol.114 TERU インタビュー

10月にリリースを控えるGLAYのニューアルバム『Back To The Pops』について、メンバーへの個別取材をおこなった、オフィシャルWEBインタビュー。各曲メンバー2人ずつに詳しく語ってもらい、誕生秘話や各自のこだわりを解き明かしていく。
今回のアルバムは、TERUは全曲のヴォーカル・レコーディングを函館に構えた自身のスタジオでおこなった。緻密なコーラスワークも含め、TERUがヴォーカリストとして積み重ねてきた30年超の経験値を存分に活かした、至高の歌がひしめくアルバムとなっている。TAKUROのインタビューで“30年目のデビューアルバム”というキーワードが飛び出したように、成熟と瑞々しさとが共存した奇跡的な名盤は、いかにして生まれたのか? TERUの視点と想いを尋ねた。

2024.9.6

アルバムが完成した現在、率直な手応えをお聞かせいただけますか?
TERU

長い期間にわたって制作してきたアルバムで、「海峡の街にて」に関しては出来てからもう6年ぐらい経っていますよね。この取材に向けて改めて昨日全曲聴いてみたんですが、すごくいいアルバムだな、と。30年間やってきて実験的なこともたくさんしてきたけれども、今回はストレートなGLAYのアルバムだな、と思いました。代表曲と言われるシングル曲たちのように、「より多くの人たちに聴いてほしい」と思うような曲調の曲が揃えられたアルバム、というのかな。だから、「CRAZY DANCE」みたいな曲が無い(笑)。本当にポップでシンプルなアルバムです。

ファンの皆さんが聴きたいような、求められている“GLAYらしさ”に応えた、という部分もありますか?
TERU

どうなんでしょうね? ライブで楽しむ曲というよりも、デビュー30周年という記念すべき年に、「今聴いてほしい」と思う曲たちが揃っていて。“皆が聴きたい”曲ではなくて、むしろ一方的にGLAYから「これを聴いてください」という意識を感じられる曲が集まっている気がしますね。ヴォーカルは今回、函館のスタジオで全曲レコーディングしてきました。

ここからは、各曲について詳しく伺います。TERUさんには6曲分お訊きしたく、まずはM4「さよならはやさしく」について。ミディアムの名バラードが新たに誕生しましたね。TERUさんの歌唱は柔らかさ、優しさが際立っています。
TERU

このアルバムは歌から始まる曲も多いですし、歌い方については、自分なりにいろいろと考えることがありました。これから60歳、70歳になっていく中で、「どういう歌い方をするのが、今後この曲にとって幸せなことなのか?」を見据えてレコーディングしたので。60歳、 70歳の僕が歌っても違和感なく聴いてもらえるような歌い方を選んできた、というのかな。ファルセットやミックスヴォイスを上手く使いながら表現して、曲全体の優しいイメージを歌声で届けたいな、という想いはありました。

広い音域を自在に行き来する歌唱は圧巻で、TERUさんの凄みを感じました。
TERU

コロナ禍でライブができないような状況でも『LIVE at HOME』(※TERU企画・立案による配信ライブシリーズ)を立ち上げて歌い続けていたので、その成果が表れているのかもしれません。より自分で上手く声をコントロールできるようになってきたので、今までにない表現力を出せている気がしますね。

テクニックの面だけでなく、心情もより豊かに込められるようになった、ということでしょうか?
TERU

聴いてくれる人をより引き込む、というかね。コロナ禍の状況下では、広いライブ空間でファンの皆の声を聴くことができない中で、「どうしたら皆によりちゃんと伝えられるかな?」ということを、改めて考え直しながら歌ってきたので。そういう経験がどんどん歌力(うたぢから)になっていったと思うしね。函館スタジオで歌うことによって、親との関係性、友だちとの関係性を故郷で感じながら、「愛情をどう伝えていくか?」ということをより考えながら歌えた気がしますね。

歌詞には、出会いと別れについてのTAKUROさんの現在の考え方、人生観が色濃く刻まれていると感じます。TERUさんはどう受け止められましたか?
TERU

もともとTAKUROは、「今回のアルバムは難しいことは一切言わずに、好きだ・嫌いだ、みたいな純粋な気持ちを歌にしたい」と言っていたので、まさしくその言葉の通りだな、と感じました。TAKUROが今の年代で書く言葉として、達観というか、大人になって「これからまた歩んでいこう」としている作詞家としての言葉のチョイスも見受けられるし。TAKUROとは生活を共にすることが多くて、函館スタジオにいる時も、うちの両親と一緒にご飯を食べながらいろいろな話をするんです。そういった日常生活の中で聞く言葉一つ一つからもTAKUROの想いを感じられるので、TAKUROの書く今の歌詞は、本当に純粋にTAKUROの心の内を伝えている言葉なんじゃないかな?と思いますね。

「さよならはやさしく」の歌録りはいつ頃でしたか? レコーディングはスムーズだったのでしょうか?
TERU

今年に入ってから3,4,5月ぐらいの3期に分けて3、4曲ずつレコーディングしてきたんですけど、時期としてはその中盤辺りだったと思います。函館だからこそ出せる声であり、歌なのかな?と改めて感じます。いつも僕は、メインの歌に関してはデモの段階で何回も歌い込んでいるので、レコーディングでデモから大きく変わることは無くて。なので、時間にしたら1時間も歌ってないことが多いんです。でも、コーラスにはすごく時間が掛かりますし、本編の歌よりも悩みを感じたりしますね。

TERUさんご自身が、コーラスのメロディーや「ここに入れたい」「こういうふうに歌いたい」と積極的に提案なさるのですか?
TERU

まずは自分で母体となるコーラスを全部つくって、TAKUROや亀田(誠治/プロデューサー)さんに聴いてもらって「こんな感じなんですけど」「あ、いいね」というやり取りをして決まっていきます。レコーディングで歌っている現場でTAKUROから「もう少しこういうふうにしてほしい」とリクエストされることもあるし、コーラスのアイディアが送られてくることもあるし。今回はTAKUROのコーラスのアイディアは結構多かったですよ。

『北海道道』(NHK北海道)のテーマ曲としてもオンエアされているんですよね。
TERU

そうですね。最近、GLAYの曲が北海道で自然に受け入れられている、と感じるんです。北海道で聴くとより沁みる、というか。北海道出身のバンドで、北海道だからこそ出せるものを出していきたいという意識が、おそらく僕とTAKUROは特に強くて。言葉一つにしても「歌を全部函館で録りたい」という想いにしてもそうだし、だからこそ、GLAYの曲が北海道に鳴り響いているのは納得が行く、というかね。大好きな曲ですし、本当にいい歌が歌えたと思うので、こうしてタイアップのいいお話をいただいて、より広くたくさんの方たちに届いてくれたらうれしいです。北海道の方たちが、「札幌でGLAYが公演するんだったら、この曲をやってほしい」という曲になっていくんじゃないかな?と思いますね。

続いては、TVアニメ『グレンダイザーU』(永井豪原作)のオープニングテーマに起用された、M5「会心ノ一撃」です。作詞作曲はHISASHIさんです。
TERU

言葉のチョイスがTAKUROの歌詞とまるで違うので、辞書を引きながら(笑)。HISASHIの楽曲はそれが毎回の課題になっていますね。

ヴォーカル・レコーディングで特に心掛けた点をお聞かせください。
TERU

先ほどの話とも繋がるのですが、2、3年前から、自然に出てきたものをそのままレコーディングしていく、という形ではなくなっているんですね。いろいろな歌い方を試してみたり、声を変えてみたりして、その楽曲に合う歌い方を自分なりに考えてデモの段階からつくり込むようになっていて。この曲に関しては、『グレンダイザーU』とのコラボレーションのお話をいただいて、アニメの世界観に寄り添う形でよりポップに、アニソン好きの方たちにも「いいね!」と言ってもらえるような楽曲にしたいな、と心掛けて歌いました。30年もキャリアを積んできたので、「試しにやってみよう」みたいな遊び心も出てきて。 間奏のYOW-ROW(GARI/この曲のアレンジも担当)くんのシャウトもすごく刺激的だったんです。ノリでHISASHIが「YOW-ROWくん、ちょっとシャウトやってみて」と言って、YOW-ROWくんがいきなりブースに入って叫びながらその場で歌詞を書き始めて。函館スタジオのブースで、皆でワイワイしながらつくり込んでいったのは、今までにない新しい風を感じましたし、新鮮でした。

YOW-ROWさんは、TERUさんが作詞作曲された「限界突破」でもコラボレーションされていましたが、制作プロセスで何か前回との違いはありましたか?
TERU

何回か歌い直した仮歌をYOW-ROWくんに送ってやり取りしたんですけれども、コーラスに関しては、「メロディーラインをこうしたら絶対面白いと思うので、やってみてもらっていいですか?」というアイディアをもらいました。同じメロディーを繰り返すところを、2回目のメロディーをちょっと変えてみてほしい、ということで。亀田さんとはいつも一緒につくり込んでいくんですが、僕のつくったコーラスのメロディーラインに関しては、「自分が思うのと違うラインが来るから面白い」と言ってくれて、意外と僕がつくったままになることが多いんです。でも今回、自分の中にはないメロディーを歌うことができたのは興味深かったです。

ラップとTERUさんの歌が、一瞬ツインヴォーカルのようになるパートはカッコ良かったです。
TERU

HISASHIが困ってましたよ、「あれを俺がやるのか?」って(笑)。

ライブでの再現性という意味では、たしかにそうですね(笑)。
TERU

7月31日にオンエアされる佐渡島での海上ライブ(※『GLAY DAY SPECIAL“LIVE BY THE SEA”』/LINE VOOMにて配信)では、HISASHIがやっていましたので、楽しみにしてください。(※こちらのライブはBack To The Popsに収録されます)

では続いて、M6「海峡の街にて」についてお聞かせください。
TERU

「The light of my life」というタイトルで2018年にライブで披露して、ファンの子たちから「あの曲をもう1回聴きたい」という声が上がっていたんですよね。いつシングルになるのな?と思っていたら、「海峡の街にて」というタイトルに変わってEP(『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』/2023年2月)に収録されて。長い時間を経てリリースに至ったのは、やっぱりTAKUROの想いが強かったんだな、と感じます。函館スタジオでレコーディングをしている時に、「タイトルをどうしようかな?」という話をしていて、その時点でTAKUROは「海峡の“町”にて」という字で考えていたんですよね。その後、僕がLINEのやり取りか何かで“街”と書いて送ったら、「あ、こっちの“街”もいいね」となって変わった、という逸話もあります。

そうだったんですね。TERUさんは、なぜ“街”のほうが合うと思われたのでしょうか? 
TERU

僕の感覚では、“町”は町内会のような小さなコミュニティーで、函館ぐらいの規模のまちを思う時は“街”というイメージがあるんです。海峡と言うとやっぱり函館だし、函館の海を見ながらレコーディングしていたので、「海峡の“街”にて」かな?って。そういう経緯もあって、函館を思う曲へとどんどん成長してきて。上京してくる時の切ない想いが思い出される曲になりましたね。

18歳で上京した時とはまた違った、今だからこそ感じる切なさもあるのでしょうか?
TERU

上京や、街を離れていくという曲はGLAYの中に結構ありますけども、この歳になって、こうしてまた新たに函館の街を思う曲が誕生して。今の気持ちで僕が歌ったり、今の気持ちでTAKUROが歌詞を書いたりしたことで、想いの深さもやっぱり当時とは変わってきただろうと思いますね。それだけの年月が経って、函館に残してきた大好きな友だち、家族のことを思うし、函館への想いがどんどん積み重なってきている、と感じます。函館でレコーディングするようになってもう6年目ぐらいになって、TAKUROもレコーディングのたびに函館に帰ってくることが楽しくなってきているみたいですし。以前のTAKUROはたぶん、歌詞を書きに来たり、お母さんや友だちに会いに来る以外には、あまり函館に来なかったと思うんですけども。今となってはレコーディングしに来るという要素が追加されて、その合間に釣りに行ったり、スキーをしたり、ザリガニを獲りに行ったり、散歩したり。函館の街を見ては「あ、こんなものがあるんだ!」と探検するのが、ここ2年ぐらい僕らの中で流行っています。

TERUさんとTAKUROさんの関係性というか、お2人の世界を感じる作品だ、とHISASHIさんが以前インタビュー(オフィシャルWEBインタビューVol.101)でお話されていましたが、ピンと来ますか? 
TERU

来ないですね(笑)。でも僕とTAKUROに関しては、函館という街を改めて見つめ直すというか、同じような気持ちで今函館を見ていると思うので。そういう想いがHISASHIに伝わったんじゃないかな? 僕もスタジオができるまでは、函館に帰ってきてゆっくりすることもなかったんですよ。長くても3日とかで、1週間いることは滅多になかった。でも長く滞在すると時間の使い方も変わってくるし、TAKUROにとっても、改めて函館を見つめ直すいい機会になったんじゃないかな?と思います。

M9「Beautiful like you」も既にライブで親しまれている曲で、待望の初音源化です。 
TERU

本当に大好きな曲で、老若男女、幅広い世代のたくさんの人たちに愛される曲だな、と。今後ライブで披露し続けていき、新たなGLAYの代表曲になっていくんじゃないかな?と思っています。

ツアーの中でアレンジが変化していき、TERUさんの歌も絶えず進化・深化していき、毎回鳥肌が立ちました。 
TERU

自分でもライブで鳥肌が立ちながら歌っていますからね(笑)。かなり(気持ちが)入りますよ、この曲は。

公演を重ねていく中で、歌の完成形が見えた瞬間はあったのでしょうか? 
TERU

どうでしょうね?  仮歌の時点ですごく良かったのでそのまま使っている部分がいっぱいあって、例えばサビの♪Beautiful beautiful~に関してもいいところは残していて、長い時間を掛けてつくり込んだ楽曲なんです。レコーディングが終わった今も、「もっともっと行けたな」という想いも実はまだ自分の中であるような、珍しいパターンの曲でもあります。

TERUさんとしては、更に歌が良くなる余地があるのですね。
TERU

「Satellite of love」もそうなんですけれども、10年に1回レコーディングしたい、歌い続けていきたい、みたいな曲なんです。その時その時で歌い方が変わるだろうし、自分の中では10年後、60歳になった時にこの曲を歌ったら、 ボノ(U2)みたいな声になっているんじゃないかな?って。もっと声が太くなって、もっと男の色気が出てくる曲なんじゃないかな?と感じているんですよね。男が歌う歌というか、更に熱を帯びた曲に成長していく気がしています。

定点観測的に、TERUさんの歌声の変化が記録されていく曲になれば、素敵ですね。
TERU

そうですね。毎回のツアーでは難しいと思うけれども、大事な時にこの曲は歌っていきたいなと思います。

川村ケンさんのアレンジも素晴らしく、聖なるコーラスに包み込まれていくような感動があります。
TERU

コーラスに合わせてストリングス・アレンジをしてくれたみたいです。最初「コーラスはどうしよう?」という話をしていた時、TAKUROは「絶対に有ったほうがいい」と言っていて。4名のコーラスの方に参加してもらうことになったんですが、ちょっと豪華になり過ぎているかもしれない、という気も実はしたんです。ライブではコーラスをあまり入れずにシンプルに披露してきたので、それに馴染み過ぎていて。でも、コーラスが入っているヴァージョンを改めて聴き直してみたら、やっぱりすごく良かったです。

神秘的な賛美歌のような響きがあり、温かな光を感じます。
TERU

美しいですよね。工藤(雅史/レコーディングエンジニア)さんの技術もすごいですね。バランスも本当に良くて。

では、続きましてM11「その恋は綺麗な形をしていない」。突き抜けたポップさに驚かされました。
TERU

この曲を聴くと毎回思い出すのは、高校時代にカバーしていたデランジェの「LULLABY」なんです。当時よく聴いていた曲で、あの雰囲気を感じる。サビでファルセットを使っていて、歌い方は「LULLABY」とは全く違うんですけども、青々しさとでもいうのかな? 共通したものを感じますね。

ご自身の青春時代を思い出す感覚ですか?
TERU

そう、聴くたびにあの時代にタイムリープするような錯覚を感じます。 昨日聴き返しながら、こういう曲こそ『SUMMER SONIC』で披露すればめちゃくちゃ刺さるんじゃないかな?と思ったんですけどね。リハーサルを重ねる必要があるので、まだ演奏には至らないですが。なので、アリーナツアーで披露するのが楽しみですね。

最初にTAKUROさんから届いたデモを聴いた第一印象は、ご記憶にありますか?
TERU

「こう来たか!」と思いましたね。サビは結構前からあったので聴き覚えがあったんですけども、A、Bメロの言葉遊びというか、リズム遊びをするあの感じ。小気味のいいテンポ、リズムに合った言葉の絡み方をしているメロディーラインが気持ち良くて。そこに「LULLABY」っぽさを感じるのかも。今回、永井(利光/サポートドラマー)さんとJIROのアンサンブルに寄り添って歌ったので、ちょっとしたリズムのズレが気になった部分は、徹底的にやり直しました。(音の)空間とか、リズムの心地良さを大事にした曲でもあります。

そういえば、『D'ERLANGER TRIBUTE ALBUM ~Stairway to Heaven~』(2017年)でカバーなさっていたのも、「LULLABY」でしたね。
TERU

そうでした。なんとも言えずキュンと来る曲ですね。『Back To The Pops』というタイトルもそうですが、 自分たちが高校、中学時代にポップから受けてきた刺激、ときめきを、デビューから30年経った今また新たに自分たちの手でつくり直す……そういうアルバムなんじゃないかな?と思います。中でもこの曲は特に、GLAYがまだ何者でもなかった当時の“あの感じ”を特に思い出させてくれますね。

初心に帰らせてくれる曲でもあるんでしょうね。M1「Romance Rose」もそうですけが、90年代前半のムードを湛えた曲を、今のGLAYが鳴らすのはグッと来ます。
TERU

「Romance Rose」もまた、小気味よくリズムに言葉が絡んだメロディーラインですよね。近年のGLAYはそういうところではなく、詞の内容にこだわったり、実験的なことをしてみたり、コード進行に対するメロディーラインの美しさを探求してみたり。そういうことを追い求めていた気がするんですけども。こういった小気味よい青さを感じる曲を今やるのは、自分としてもすごく新鮮で気持ちいいですね。

この曲の歌録りはいつ頃でしたか?
TERU

「これは後期で、4月だったんじゃないかな? 最後に歌ったのが「Back Home With Mrs.Snowman」なんですけども。

では、この流れでM14「Back Home With Mrs.Snowman」についてお聞かせください。
TERU

ちょうど山ちゃん(山里亮太/南海キャンディーズ)とHIDE(Gre4N BOYZ)くんが函館遊びに来てくれていて、勢いで「皆で歌おう」と言って録ることになりました。最初に聴いた時は「ビートルズだな」という印象で、でも歌は(井上)陽水さん、みたいな(笑)。どこかに(奥田)民生さんのイメージもあるから、「民生さんの感じが降りてくるんだけど?」とTAKUROに言ったら、「バレた?」と笑っていました(笑)。

ビートルズというキーワードについて、もう少し詳しく伺えますか?
TERU

まず、TAKUROの仮歌がすごく良くて。TAKUROは曲のイメージや雰囲気を全部歌によって固めてくるんですね。歌の印象が曲全体を引っ張るので、それを崩すのが難しくて。

仮歌がヴォーカルのイメージだけでなく、曲全体のディレクションを担っているわけですね。
TERU

そうなんです。だから、TAKUROの仮歌に寄せていくだけだと、歌が自分じゃないものになってくるんですよ。GLAYでもなくなってくる、と感じるし。難しくはあったんですが、函館でのデモづくりがすごく楽しくて。とにかくバキバキにコーラスを入れようと思って、自分の中では、ポール(・マッカートニー)とジョン(・レノン)が2人で歌っているようなニュアンスの曲にしたいな、と心掛けていました。曲全体で3人ぐらいのキャラクターがいるんですけども、プラスして山ちゃんとHIDEくんが入ってきてくれて、ゴチャゴチャになっています(笑)。

賑やかで平和な世界でした。元々の3人のキャラクター設定は、どのようなものだったのですか?
TERU

ソウルフルな楽曲ではたまに、自分の中からもう一人の別キャラクターを出してきてコーラスすることがあるんですね。そのキャラクターを“ゴスペルおばさん”と呼んでいるんですけども(笑)。でも今回は珍しく3人いて。1人はメインの自分、もう1人はハイトーンのおじさんがいて、更に別のコーラスの人がいる、みたいなイメージで。

初めて聞くお話で興味深いです。
TERU

そうですよね。コーラスによって音の厚みが変わってくるけれども、同じキャラクターで歌うと馴染みやすいんですよね。過去の楽曲で何曲か、メインよりもコーラスが目立つ時は、違うキャラクターが歌っている時で。「SEVEN DAYS FANTASY」(『HC 2023 episode 2-GHOST TRACK E.P-』/2023年9月)のサビの裏メロも、ビートパンク寄りの、がなるような歌い方をする元気なキャラクターに変えて歌っていました。僕自身はビブラートをあまり使わないんですけども、たまに使う時は、やっぱり別のキャラクターを自分の中から出してきて歌うようにしています。

TERUさんが演じ分ける3人のキャラクターに加え、賑やかな仲間たちの声、そして花火の音も鳴り響いています。
TERU

あれは工藤さんが最後に入れてくれたんですが、函館の花火大会の音なんです。歌を函館で録っているから、函館の花火の音も腑に落ちますよね。東京で録っていたら入っていなかったんじゃないかな? HIDEくんの声も山ちゃんの声もそうですが、いろいろな偶然が重なって、函館レコーディングだったからこそ収録された声、音なんじゃないかな?と思いますね。

HIDEさんと山里さんは、レコーディングのために函館に来られたのではないんですよね?
TERU

山ちゃんは『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)のロケで来ていたんです。

拝見しました。TERUさんが函館のおすすめスポットを案内なさっていましたね。
TERU

そう、僕が馬に乗って登場した番組です(笑)。収録が終わってから、遊びに来ていたHIDEくんも一緒にスタジオで飲みながら、「そういえば、今日こんな曲できたんだよね」という話になって。TAKUROがいきなり「コーラス入れてみる?」と言い出して、酔った勢いで録りました。でも、この曲を象徴しているコーラスになったんじゃないかな?と。聴くたびに、僕らはあの日を思い出しますね。

くじ引きで曲順を決めたそうですね。ラストがこの曲なのは、温かな余韻が残りますし、偶然が最高の結果を生んでいますね。
TERU

くじ引きで決めていく中で、ミラクルが起きたんですよ。大富豪でいう「革命」のような、一回だけ順番を入れ替えられるカードをHISASHIのアイディアで入れたんです。本当だったらこの曲は後ろから2番目の位置だったんですけど、最後にそのカードを引いた亀田さんがめちゃくちゃ悩んでいたから、メンバーは皆「亀田さん、分かるよね? 入れ替えてこの曲を最後にするに決まってんだろ!」と(笑)。でも、ズルは一切無しのミラクルな選曲なんです。この曲順でずっと聴いていたらめちゃくちゃ良くて。自分たちで決めるよりもいい曲順なんじゃないかな?とすら思いました(笑)。この曲順の流れで是非、函館で聴いてほしいですね。夜景を見ながら聴いていたら、僕も切なくて泣きそうになりましたもん。

そういった運すら、GLAYには味方するんでしょうね。最後に、11月からスタートするアリーナツアーについて、TERUさんの現時点での想いをお聞かせください。
TERU

まず、ここ2、3年で自分なりに培ってきた歌唱力は、どんどんクオリティと精度も上げていきたいと思っています。ライブに来た人たちを全員泣かせるぐらいの勢いで行きたいですね。今回のアルバムの中にもすごくいい楽曲がたくさんあるので、その曲たちによって、ライブに来なければ感じられないような感動を体感してほしいし、一体感もそうだし。より精度の高い歌と演奏力でもって、パッションをぶつけられるようなツアーにしたいです。デビュー30周年はまだまだ始まったばかり。来年の5月末まで続くので、その中間地点、臍の部分として、良いアリーナツアーにしたいなと思っています。

ファンの皆さんとの掛け合いもしたい、とラジオでお話しされていましたよね。
TERU

そうですね、楽曲の中で、間奏を活かしていろいろな掛け合いをする場面も増やしていきたいな、と。「こういうの、どう?」というアイディアを僕からメンバーの皆にこれから伝えていくつもりです。

取材・文/大前多恵

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