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INTERVIEW

Vol.103 TERU インタビュー

3月2日、まだ雪が残る北海道・帯広で開幕した『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY』は、4月29・30日の沖縄2DAYSをもって前半戦22公演を無事完走。2週間余りの小休止を経て、5月17日の福島公演から後半戦がスタートする。丸3年間に及んだ新型コロナウイルスの感染防止対策ガイドラインはようやく緩和され、マスク着用の上ではあるが、ツアー初日からオーディエンスの声出しが解禁。熱い歓声やコール&レスポンス、メンバーコールがついに復活、全国各地で心揺さぶるライヴが繰り広げられている。本ツアーで絶好調の艶やかなヴォーカルを響かせているTERUに、ツアー前半の手応えと現在の心境、後半への意気込みを尋ねるロングインタビュー。ネタバレをふんだんに含んでいるため、各自ご判断の上お読みいただければ幸いである。

2023.5.16

――全32公演のうち22本が無事に終わり、ツアーの前半戦を完走なさいました。率直に、今どのような手応えがありますか?
TERU

本来は、デビュー25周年を記念したドームツアー(※2020年、コロナ禍で惜しくも中止)に向けて、勢いを付けるために予定されていた全国ホールツアーだったんです。だから、32公演という本数は「お祝いごとだから」という理由で、気持ち的に受け入れてはいたんですけども。結局、周年でも何でもないこのタイミングになってしまい……正直、しんどかったです(笑)。自分自身の体調管理もそうなんですが、誰か一人でもコロナで高熱を出してしまうと、その先の1週間分ぐらいのライヴができなくなってしまう、という緊張感もありつつ。規制が緩和されてせっかく声出し解禁になったとはいえ、どうオーディエンスの方々と対峙していけばいいのか、最初は悩みながらのライヴではありました。でも徐々に皆さんの声も出始めて、今では、マスクこそ着用した上ではあるんですけれども、盛り上がりとしてはコロナ前の勢いになってきていて。すごく刺激の多いツアーだと感じていますね。

ツアー開始前には、主にTAKUROさんから、「今回はクールでソリッドな大人のGLAYを見せたい、いつものようにワチャワチャしない!」というコンセプトが語られていました。でも蓋を開けてみればフレンドリーな場面もあり(笑)、GLAYの皆さんの硬軟両面の魅力を味わえる、充実したツアーという印象を個人的には受けています。TERUさんは、想定と違った部分はあるのでしょうか?
TERU

最初はTAKUROが、「今回はMC無しでクールに決めたい」「“THE GHOST”をキーワードに、これからの新たなGLAYを皆に分かってもらえるようなツアーにしたい」と言っていたんですよね。来てくれている方々との駆け引きというか、緊張感を求めたいというのもあってクールな選曲で固めましたし、本編は思い描いていた通りの、とにかく音楽を聴かせるライヴになっていると思うんです。22本終えて、それは一貫しているんですけども……まぁ、アンコールのMCですよね(笑)。あと、本編でTAKUROとJIROが最後に向き合って締める曲があるんですが、TAKUROが胸元に昔のJIROの写真を仕込んでいて、本人に見せて笑わせようとしたり(笑)。

(笑)。
TERU

JIROもMCでTAKUROに、「最初に思い描いていたツアーとまるで違うものにしてるのはお前だ!」みたいなことを言っていましたけどね(笑)。1本目の帯広の時点では、ツアースタッフから「皆で歌おうぜ!」と煽るような言葉は使えないかもしれないとか、ステージ側から「一緒に歌ってください」という言葉は掛けられないかもしれないとか言われていたんですが、ライヴ直前に全てクリアにはなったんです。ただ、声出しが解禁されて間もない頃だったのでやっぱり緊張感もあったし、オーディエンスの皆さんがどう反応するか分からなかったんですよね。だから、「本当に煽っていいのか?」と半信半疑のまま序盤はステージに立っていたけど、オーディエンスの反応を見て声が聴こえれば、それに対してやっぱり僕らも煽りはするし。1本目と22本目とでは、そういった緊張感だとか、オーディエンスとのやり取りはまるで変わったんじゃないかな?と思いますね。

コール&レスポンスで盛り上がれることを期待して、TERUさんは『FAME IS DEAD』を選曲なさっていましたよね。声出しが解禁されたことで、フロントマンとして昂ったり、ヴォーカリストとして何かが引き出されたりするのでしょうか?
TERU

オーディエンスが声を出せなかった3年間は、自分たちの歌と演奏が会場に鳴り響いているのが鮮明に聴こえるライヴだったので、中には「そちらのほうがうれしい」というお客さんもいて。「コロナ以前は『HOWEVER』を大声で歌う男性がいて嫌だった」という声も聞きましたし(笑)、それが無くなって「声を出せないライヴもいいなと思っています」という声も多かったんですけども。『FAME IS DEAD』もそうだし、マイクを向けてコール&レスポンスできる曲では音の“圧”みたいなものを身体で実際に感じることができるので、それによって僕もより一層「返そう」と力が入ったりはしますね。

『SOUL LOVE』は、コロナ突入期にHISASHIさんが「今は耐え忍ぶ時期、でもエンターテインメントの可能性を信じよう。そして『SOUL LOVE』をドームで一緒に歌おう」とYouTubeで発信。今回のツアーでようやく“一緒に歌う”という約束が果たされました。2020年のさいたまスーパーアリーナ公演では“心の声”による合唱でしたから、感慨深いものがあります。
TERU

HISASHIからそういった夢や目標を掲げることは少なかったので、あの時は「珍しいな」と思っていたんですけども。“エンターテインメントの逆襲(※『THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK』と命名したライヴシリーズで、メンバー各自プロデュースの4公演を2021年に実施)という言葉を掲げるぐらいだったから、HISASHIなりに、コロナで状況がガラッと変わってしまったエンターテインメントに対して思うことがあったんでしょうね。『SOUL LOVE』での大合唱は、最初にその光景を思い描いていたHISASHI自身、すごく思うところはあるだろうな、と。僕も、「小さな夢だけど、夢を一緒に叶えようぜ!」というMCをしてから『SOUL LOVE』を最初は歌い始めていたけど、ライヴを重ねて22本目になる頃には、もうそういう言葉すら必要なくなってきたな、と感じています。

JIROさん作曲の『THE GHOST』は、クールでスリリングなムード、視覚演出も含めてGLAYの新機軸を感じます。そして、TERUさん作詞・作曲の『限界突破』はライヴでの起爆力が想像以上で、圧倒されました。
TERU

『THE GHOST』は、演出に関してJIROにアイディアがあって、まさしくツアー『THE GHOST of GLAY』の世界観を集約した曲になっていますよね。映像もそうだし、漂っている緊張感もそうだし。それに対して、ツアーが始まって最初の2、3公演は、僕がいまいち捉えきれていなかったんです。だから、サビを皆で歌おうと思って「カモーン!」とか煽っていたんですけども、「“カモーン!”じゃねぇな」とすぐに気付きまして(笑)。それ以降は淡々とパフォーマンスする方向性に変わりましたね。『限界突破』に関しては、元々ドラムはYOW-ROW(GARI)くんの打ち込みで、それはそれで良いんですけども、ツアーに向けたリハーサルが始まる段階で永井(利光/TOSHI NAGAI)さんのほうから「これって打ち込みもあったほうがいいのかな?」という確認と提案があったんです。でも僕らとしては「いや、生ドラムでやりたいです。全く別物として考えてください」と。アレンジも「あのまま叩かなくて良いので、よりライヴ感が出るドラムにしてください」とリクエストしていたんですね。だから、ライヴでは生ドラムで表現するバンド感がすごく出ていて、CDとはまた違ったすごく勢いのある曲になっていると思います。しかも、直前が『pure soul』で、静けさから急に『限界突破』に入っていくので、場面展開としては第二部のオープニングみたいな意味合いがあるんですよね。僕としても、『限界突破』の世界観がより一層皆にちゃんと伝わるようになってきたな、と。「限界突破しようぜ!」というMCも、最初は「ちょっとカッコ悪いかな」と思っていたんですけど(笑)、ライヴを重ねるうちに「限界突破しようぜ!」で入るのが一番自然な流れでいい言葉だな、と思うようになってきています。

TERUさんの歌声がいつにも増して驚異的で、今回のツアーでは異次元に突入しているように感じております。ご自身ではどう評価なさっていますか?
TERU

また更に一歩、違う世界に突入したな、とは自分でも感じています。ツアーに帯同してくださっている鍼の先生に、「声の出し方が変わって、今は身体全体で鳴っているから、喉にはあまり負担掛かってないですよね?」と言われたんですけど、やっぱりいろいろなヴォーカリストを見て来ている方なので、的を射ている言葉だなと思うんですよ。これまでだったら喉が疲れたり、ライヴ後はカサカサになったりしていたんですけども、今は呼吸するかのように歌うことができていて。それほど疲労度も激しくないし、2日連続の公演でも喉の調子が全然衰えないという状況です。コロナ禍の3年間ずっと休まずに歌ってきて、リモートトレーニングもずっと続けてきたお陰で今の歌声になっているのかな?と思いますね。これを引き続きやっていけば、60代になっても今と変わらない歌声でいられるんじゃないのかな?という自信は持てました。

先生の「身体全体で鳴っている」という言葉もそうですし、TERUさん自身も「胸で声が鳴る時がある」とG-CONNECT(※GLAY MOBILE内でTERUがプロデュースするコミュニケーションサイト)に書かれていました。発声法は自然に変わっていったのですか?
TERU

身体づくりをずっと継続してきているんですが、筋肉を増やすことを心掛けている影響で変わってきたんだと思います。4年前ぐらいのライヴ映像を観ると腕がムキムキだったりして筋肉が目立っていたんですけども、今は自重でトレーニングをしたり、持つとしても重くて5㎏ぐらいのバーベルを使ってトレーニングしているので、身体そのものは大きくならないんですよね。その変化が、声が身体で響く要因になっているんじゃないかな?と。声帯も筋肉なので、全身が硬い筋肉よりもしなやかな筋肉になってきていて、それが歌声にも反映されているんじゃないのかな?と思います。

ツアー中は打ち上げには参加しないなど、ストイックな生活は今も続けていらっしゃるんですよね?
TERU

いや、でもコロナ前に比べると緩くなっていますね。以前はライヴの1週間前からお酒を断っていたんですけども、今はたとえ2日前に飲んでいても声が枯れるイメージは全く無いので。飲んで騒ぐのはさすがに声に影響しますけど、普通に皆でご飯を食べるぐらいなら全く。精神的にも強くなっているし、これまでの実体験を基に培ってきた情報量があるので、変な不安も無いし。「あ、これ以上飲まなければ大丈夫なんだ」という経験値が自信に繋がって、安心材料にはなっているのかな?と思います。

GLAYの皆さんの場合、常にバンド内の雰囲気は良好だと思うのですが、ロングツアーで共に過ごす時間が長くなると何かしら変化は生じるのでしょうか?
TERU

僕らはそのあたり上手くやっていると思うんですけど、一緒に旅はしていても、行動はバラバラだったりするんですよ。ライヴとライヴの間が2、3日空いたら、僕も1人でだったりマネージャーと一緒にだったり、好きなように行動しますしね。他のメンバーも皆そうだけど行動は別々ですし、普段の生活スタイルをそのままツアーでも続けていられるのがいいんでしょうね。TAKUROとHISASHIは、久々に飲み部屋(※ツアーの宿泊先で設けられる、集いの一室)で喧嘩したと言っていましたけども、まぁ、それもまた通常通りというか(笑)。メンバー間はいたって変わらず、今までの延長線上で楽しくやっていますね。あ、でも4人で飲むことは多くなったかな? 次のライヴまで3日空いている、という状況であれば僕も打ち上げに出るようになったので、皆でワイワイしながら飲んでいます。変化ということで言うと、これまでだったらほぼ毎日飲み部屋に参加していたTAKUROが、「卒業した」と言っていましたね(笑)。今はTOSHIとHISASHIしかいないみたいです(笑)。

ツアーに帯同する期間限定イベント『GHOST GLAY CITY』の会場にTERUさんは赴き、サインとメッセージを足跡として残しファンの方たちを喜ばせています。TERU散歩と称して街を歩き、そういった旅の様子をG-CONNECTやSNSでアップするなど、こまめな情報発信をなさっていますね。
TERU

コロナ禍の3年間で学んだこととして、「ファンの子の目線でGLAYを観てみたいな」という気持ちになったのが一つあって。ずっと休みなく活動してきたGLAYなので、自分たちのことだけで精一杯という時期もあったし、なかなかそこに目が届かなかったんですけども、「ファンの子たちは今どんな心境なんだろう?」という視点を持つことができたんですね。G-CONNECTでも僕は毎日ファンの皆の声を聴いているんですけども、やっぱりコロナ禍で辛い思いをしていた人たちがいて、今やっと解放されて今回ライヴに参加する……そんな状況だというのは伝わって来ていて。全国のロフト系列、イオン系列の店舗さん、函館空港と一緒にやらせてもらっている今回の帯同イベントは、ライヴに参加する方々の多くはそこへ寄ってからライヴに来るということで、距離感も含めてその感触を実際に僕も味わってみよう、と。車で移動している時に「この会場は駅から近いの?」「ファンの子たちはどうやって来るの? バス? タクシーじゃないと来られないんじゃない?」みたいなことを毎回スタッフに訊きながら、その状況を詳しく把握して。「ちょっと遠かった」とか「そんなに大変じゃないよ」という体感をG-CONNECTに書いて伝えたり。ライヴ前後の時間の使い方として、ファンの子たちも「TERUさんと同じような足取りで私も旅してみようかな」とか、思ってもらえるかな?と。サインとメッセージを会場のパネルに書くことによって、遊びに行くにもより楽しみが増えていいんじゃないかな?とも思うしね。本当は全個所に行けたら良かったんですけど、初日の帯広とその後の札幌はそこまで気が回らなくて、残念ながらできなかったんですが。

TERUさんがメンバー御三方の分のサインとメッセージも書いていらっしゃるんですよね。
TERU

そうそう、“ゴーストサイン”とは上手いこと言ったなぁと(笑)。オープン前に行って書かせてもらっているんですけど、鳥栖ではスケジュール的にどうしても営業時間中に行くしかなかったんですね。そうするとやっぱり一般の方もいらっしゃるので、「あ、全部TERUが書いてるんだ」という声が聴こえてきて、「そう思う人もいるよな~」と後悔しました(笑)。G-CONNECTを見てくれているファンの子たちは理解してくれているんだけど、「ちょっと夢を壊してしまうことをやってしまったかな?」と(笑)。

誤解を生まないように注釈が必要ではありますね(笑)。今回のツアーは、鳥栖は初でしたし佐賀県は16年6か月ぶり、というように長い間隔が空いて訪れる街も多く、感極まって泣いているファンの方の姿も多く見掛けます。“待ってました!”感はステージにも伝わっているのでしょうか?
TERU

ファンの人たちの目線で考えると、16年ぶりに自分が住んでいる街に来たらやっぱりうれしいよな、とは思いますよね。「よく16年もGLAYの音楽を聴き続けてきてくれたなぁ」という感謝の気持ちもありますし。だから毎回、会場のポスターやG-CONNECTのトップ画像には、ちゃんと調べて「〇年ぶり」と書くようにしていて。自分なりに「あぁ、〇年ぶりなんだ。前回はこのツアーだったんだ」ということを理解してからステージに立ちますし、「ファンの子も絶対喜んでくれている」という確信はありますね。あと、ファンの子たちからライヴの感想も届くんですけれども、若い男の子がめちゃくちゃ増えたという話を聞くんですよ。これだけ「チケットが取れない」と言われている中、頑張ってチケットを取ってくれた労力、その情熱が本当にうれしくて。昔はファンの方々の9割5分は女性という状況があって、「もっと男性にも聴いてほしい。ライヴに来てほしい」という想いで男ナイト、BOYS ONLY NIGHTを企画していましたけども、今はまた少し変わってきているみたいです。どういう想いで来てくれているのか、男の子たちに訊く機会はあまりないですけども、もし自分だったら“生き様に憧れて”だろうし、「カッコいいバンドだな」と思って「ライヴを体験したい」という情熱で会場に来てくれているんだろうと思うんですけどね。男性から観てもカッコいいバンドではいたいな、という気持ちがより一層増してきています。

有言実行で約束を必ず守り、行動力に満ちた、TERUさんを筆頭とするGLAYの皆さんの存在は、同性のファンの方々にとってお手本なのではないでしょうか?
TERU

背中を見てくれている、という感じだといいんですけどね。もう僕らも50代でもあるし、「こんな大人になりたい」というふうに見てもらえる存在ではありたいな、と思います。

ツアー後半戦が5月17日の福島・郡山からスタートします。ライヴの内容は前半戦と変わるのですか?
TERU

そんなにガラッとは変わりませんけども、2曲追加される予定ですね。たぶん、メンバーと皆で飲んでいる時だったと思うんですが、HISASHI発信で「やりたい」という話になって、曲が増えます。3カ月という長い期間にわたって廻るツアーなので、季節も影響して入れ替えた曲もありますしね。ツアー開始当初は北海道で雪が降っていたので、その時は『Winter,again』をやっていたし、春先になった瞬間『春を愛する人』に変わり、今後夏に近付けば「次はこれをやりたい」ということでまた新たな曲が増えたり。あと、まだお披露目してない新曲も加わりそうです。ライヴで披露した曲が後に音源化される、というのは憧れの形だし、GLAYはそういうことを重んじているバンドなので。

それは楽しみです。5月4日にGLAY MOBILEで公開されたHISASHI TV AFTER TALKによると、順調過ぎて当日のリハーサルが6分で終わったそうですね(笑)。
TERU

あはは! ライヴの回数を重ねてくると「別にリハーサル要らないよね」という状況になってくるんですよ。でも、スタッフが音響やイヤモニを調整する必要があるので、「じゃあ、1曲だけでもやるか」みたいな。それもあって、たぶんHISASHIは「違う曲をやりたい」と言い出したんだと思うんですけど。

現状維持ではなく、更なる挑戦を組み込んでいくわけですね。
TERU

15本目ぐらいからは、1曲分のリハーサルと、新しく加えたい2曲の練習が2回ずつで、トータル30分ぐらいで済むリハーサルになっていましたね。長いツアー“あるある”の状況なんですけども。

ツアーパンフレット用のインタビューで、昨今の世界情勢を鑑み、ロックバンドのマナーとして『CHILDREN IN THE WAR』を必ず入れたい、とTAKUROさんは力強くおっしゃっていました。メッセージ性の強い曲ですが、実際にツアーが始まって、TERUさんはどういうお気持ちで歌っておられますか?
TERU

今も日々ウクライナとロシアの戦争のニュースは目にするし、新聞やネットニュースを観ていると情報は入って来ますよね。20代だったらそこまで関心を持たなかったかもしれないですけど、40代、50代になってくると、世界情勢もそうだし、日本の社会で起きていることもすごく気になって来ていて。『CHILDREN IN THE WAR』は、人と人との争いの中で生まれるもの、死とは? 生きるとはなんぞや?という永遠のテーマが描かれていて、その想いをずっと抱えながら今も生活しているし、「少しでもいい状況になってほしい」という想いで歌っていますね。

「戦争反対」とMCで語るのではなく、あくまでもエンターテインメントとして、音楽表現を通して痛みに寄り添い、人の心を癒していく祈りのような……それがTERUさんの歌でありGLAYの音楽、ライヴの力だと痛感しています。
TERU

ストレートな言葉で言うことも大事ですけど、やっぱり継続することが一番大事だな、と思っていて。HIVの問題もそうだし、戦争もそうだし。これはGLAYが長く続けているバンドだからこそ感じることでもあるんでしょうけれども、いろいろな啓発運動に参加していると、その時その時で盛り上がっていても、継続しないでいることがどれほど虚しいことか? 続けてこそなんじゃないかな?とつくづく思うんですよね。ただ、ファンの子たちに伝えたいのは、「大事なのは、“毎日それを考えていること”ではないんだよ」ってことなんです。自分の生活スタイルに合わせて、できる時に行動する、というスタンスで関わっていかないと心が疲弊してしまうし、結局は続かないことも多いと思うので。僕らも四六時中戦争に心を痛めているわけではないし、一緒に仲間とご飯を食べている時はすごく楽しいし。「世界では困った人がいっぱいいるんだから我慢しよう」ではないと思うんですよね。今回のツアーでも、MCではあえてそこに触れずに。直接ではないけども日々言葉の節々に想いは表れているだろうし、分かってくれていると思うので、今の僕の歌に乗せる想いは皆にちゃんと感じてもらえているのかな?と思います。

声出し解禁の盛り上がりと、深化した表現に触れられる素晴らしいツアーで、チケットは凄まじい争奪戦。函館公演とタイミングを合わせて、TERUさん初の個展「音の可視化」があうん堂で開催されるのも大きな話題となっています。後半戦に向けてのTERUさんの意気込み、来られる方へのメッセージをお願いします。
TERU

残り10本ということで、参加する方も、「ツアーが終わったら次は何があるんだろう?」という期待を寄せながらのライヴになると思います。来年の30周年に向けて、「引き続きGLAYは動きますよ!」ということは伝えたいですね。最終公演で何か発表があるかもしれないので、楽しみにしていてください。

今回のツアーに関して、TERUさんはどのような意義を感じていらっしゃいますか?
TERU

ファンの子たちにいつも伝えている「10年後も、20年後もGLAYを続けていく」という言葉を実現するためには、TAKUROとも話しているんですけれども、「ということは、売れ続けてなきゃいけないんだぞ?」ってことなんですよね(笑)。それなりの覚悟で日々音楽と、そしてGLAYと関わっていかなければいけない。そのスタートラインとしては、「今のこのクオリティーを持続させていきたい」という気持ちになるようなツアーですね。YOSHIKIさんが昔、より一層追い込んで高いところを目指して登らなければ、平行線を保って進むことはできない、と言っていたのが印象に残っていて。

現状維持できればいいや、という心持ちでは、現状維持すら不可能だということですね。
TERU

今まで以上に高みを望んで一歩一歩活動していきたいなと思っているし、歌のクオリティーも、バンドのクオリティーも上げていきたいので、もっともっと向上心を持ってやっていきたいと思っています!

文・大前多恵

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