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INTERVIEW

Vol.100 TAKURO インタビュー

今夏、大阪・仙台・幕張の三都市でファンクラブ「HAPPY SWING」の発足25周年を記念したツアー「GLAY LIVE TOUR 〜We ♡ Happy Swing〜Vol.3 Presented by HAPPY SWING 25th Anniv.」を大盛況のうちに終えたGLAYが、9月21日、通算60枚目となるシングル「Only One,Only You」をリリースする。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて書き下ろされた表題曲「Only One,Only You」を中心に全4曲の収録曲に込めた思いをTAKUROに聞いた。

2022.9.22

まずは今回の表題曲「Only One,Only You」について。この曲のリリックは言うまでもなく時勢にリンクしているというか、ロシアによるウクライナ侵攻を想起させます。
TAKURO

今回の侵攻が始まった頃、ロサンゼルスの自宅でニュースを観て、心底から憤りを覚えました。元々9月に何かしらの作品をリリースするつもりだったんですが、すぐに「今この問題を歌わずして何を歌うんだ?」と思いました。願わくはリリースの頃に戦争も終わってくれていたらと曲を仕上げていきましたが、残念ながら日々酷い状態になってしまって……毎朝起きる度に「頼むから何かいいニュースがないかな?」と、今も思いながら暮らしている日々です。

ということは、リリックに着手したのも侵攻が始まってすぐに?
TAKURO

まさに2月の末でした。さいたまスーパーアリーナ公演(2月5日、6日)の千秋楽の楽屋ですでに幾つかのメロディが浮かんでいたので、そこからリリックの視点を、被害者なのか、加害者なのか、はたまた傍観する第三者のものにするのかと考えて。今回のロシアのウクライナ侵攻は、やはり過去の事件との類似点も多い。独裁者のやり方というのは千年経っても変わらないんだな、とか、改めて自分なりに歴史を見直しながら。

リリックにはかなり生々しい描写もあります。また近年のTAKUROさんのリリックとはやや異なる筆致も感じられます。
TAKURO

それは若い兵士、特にロシアの若い兵士という具体的なモチーフをイメージしたからだと思います。ロシアの若い兵隊さんたちは、自分たちがやっていることを一体どう思っているのだろうかと。このインターネットの時代、恐らく情報統制も北朝鮮ほどではないのだとすると、例えば20代の兵士なら20年間洗脳されていて自分の行為を全て正当化できる時代でもないだろうし。自分が撃った銃やミサイルの一発がどういう結果を招くのかということに対して、実は苦悩や躊躇といった自問自答の中で喘いでいるんじゃないのかな、と思うんです。

ある意味、情報社会になったこの21世紀における戦争行為と、例えばアメリカ独立戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦における戦争行為とでは、若者の心構えも異なるのではないか? 国や軍隊、部隊への忠誠心はあれども、気持ちとしてはどの国の若者ももっと平均化しているというか、本心ではもっと善悪が分かっているんじゃないか? そんな仮説のもとに曲を書いてみようと。今って敵のことも簡単に分かるし、被害状況もいくらロシア政府が規制したところできっと分かるじゃないですか。そんな21世紀の戦争における若者たちをテーマにリリックを描きました。

今も酷い状況だけど、それこそベトナム戦争後の兵士の精神的な負担や病の重さが証明している通り、これからももっと恐ろしいことが待っていると思うし。最終的に引き金を引き、ボタンを押すのは人間ですからね。

今後、例えば何十年後か先にかつての『プラトーン』(1987年)や『7月4日に生まれて』(1990年)のような映画が作られるような状況も想像できます。
TAKURO

そうですね。僕は92年のロス暴動にも近年の暴動にも似たような構図を感じてしまうんですが、マクロな人類の話も大事だけど、やっぱり人一人が怪我をするとか死ぬということは、誰かの子であり夫かも妻かも兄弟かも大切な人かもしれない人が傷つき亡くなるということじゃないですか。極めて自分の身近に関係する痛ましい出来事になる。人は決してそこに鈍感であってはならない。

ウクライナ、ロシアへの関心については?
TAKURO

以前から一度行ってみたかったんです。僕の故郷の函館はロシアというか旧ソ連南部と縁(ゆかり)があって。僕らの函館の仕事場の周りにも、ロシア料理やウクライナ料理の店や領事館がありました。向こうへ行ったことのある知人から、実はロシアの音楽シーンが結構熱いという話も10年ほど前から聞いていたので興味がありました。結局、こんなことになってしまいましたが。

これまでもGLAYでありTAKUROさんは世界平和や時事に対するアクションや曲の発表を行ってきました。
TAKURO

政治手段で人の命が失われていいのか? 失われた命は戻るのか? 子どもでも分かる問いに対して、未だ人類は明確な答えを共有出来ないままでいる。その愚かさに憤りを覚えて、僕はこうした曲を書くのだと思います。メロディだのリリックだのはあくまでもテクニックの話。何より、自分の「覚悟」がどれほどきっちりと曲に落とし込めるか。今回は自分自身と向き合う時間が最大の勝負でした。

改めて1971年生まれのTAKUROさんにとって、平和への思いについてのルーツというと何が思い起こされますか?
TAKURO

本当に幼い時分だと、小学生の頃、自転車で豪快にすっ転んで地面に顔をこすりつけてしまった時、初めてリアルに「痛み」を感じた記憶をよく思い出します。その瞬間、何か圧倒的な肉体的な「痛み」についての恐怖とリアリティが自分に刷り込まれたというか。僕の世代は、大体20歳頃まではあまり大きな社会的事件に直面せずに来られた気がします。コロナ禍にしてもウクライナ侵攻にしても「自分が生きている間にこんなことが起こるなんて」と口にする人は多いですが、僕も全く同じです。湾岸戦争、地下鉄サリン事件、阪神・淡路大震災、9.11、東日本大震災と、大きな出来事が起こるなかで、その都度、自分のなかで眠っていた何かに気付かされてきた気がします。

あとは人への興味ですね。3分のパーティソングではどうしても描ききれない、極めて不合理で全く説明のつかない、可視化や数値化の出来ない人間の業みたいなものを思う時、今回のような曲が出てきます。日本語という不自由な言語を使って、分かり合えない人たちを何とか結び付けたいと思ってしまう。難しい仕事だけど、きっと自分には何かしらの役目があってこの音楽の世界に居させてもらえているのだろうから、そこには常にトライしていたい。

たぶん9月21日にリリースされる作品で、戦争を扱った曲なんてほとんどないと思います。でも、誰も歌わないからこそ、ロックバンドの原点に立って、声を大にして言いたいことも、小さな思いも、全てを大きな音で歌いたい。GLAYにはいろんなタイプの曲があります。ジェンダーの歌もあれば道ならぬ愛の歌も恥ずかしくなるほど真っ直ぐ過ぎるラヴソングもある。けど、時には見たいものしか見ない、聴きたいものしか受け付けないという、ある種の幸せな感受性の防衛本能というドアをノックしておきたい。もしもGLAYの曲が誰かの心の殻を破ったり、誰かの勇気を後押しすることが出来たなら、巡り巡って、いつかその先にあるかもしれない何らかの悲劇を食い止められる行為に繋がるかもしれない。そう期待しているし、そんな期待を僕はきっと死ぬまで持ち続けると思う。

僅かな力でも議題を机に上げる役を担いたいというのは、GLAY結成以来の一つの大きな課題でもある。よく有事があると「音楽は無力だ」と言うミュージシャンの声が聞こえてくるけど、僕はあれが本当に好きじゃなくて。だって大変なのは有事のど真ん中にいる人たちじゃないですか。あなたが落ち込んでどうするんだ?と。「音楽は無力だ」なんて膝ついてないで、いいから立てよ!と(笑)。鍬で畑を耕してもいいし曲を書いてもいいじゃないかと思ってしまいます。

「Only One,Only You」もカップリングの「クロムノワール」もリリックがとても戯曲的です。だからこそ、それを圧倒的な説得力で歌い上げるTERUさんのヴォーカルの説得力に改めて感心させられました。
TAKURO

この間、本人もラジオで「俺、歌上手くなった!」と言っていましたが(笑)、実際、その通りだと思います。ここ2、3年のTERUの歌唱力は圧倒的ですよ。この2曲については完全にTERUという役者に対する当て書きで書いた脚本でしたね。TERUの歌声は僕の言葉に生命力を与えてくれる。10行で100行分もの意味を物語ってくれる。彼にリリックに込めた思想を突き詰めて話すこともほぼないし、彼もどんな歌詞だろうが「あいよ」という感じですっと歌うんだけど。

そのTERUさんの様子もどこか役者っぽい気がするし、TAKUROさんも言わばGLAYという一座の座付きの戯曲家というスタンスなんですね。
TAKURO

そうですね。僕自身、舞台を観るのが好きだし、自分が書いた言葉に役者がより生命力を与えてくれるという感覚についても似ている気がします。TERUとは40年近い付き合いですが、今でもたまに何を考えてるのか何も考えてないのかちょっと測りかねる時がある(笑)。でも、彼が寄り添えないような言葉は絶対に並べないよう心掛けています。

「Only One,Only You」はラストのコーラスも圧巻です。
TAKURO

亀田(誠治。同曲のプロデューサー)さん肝入りのコーラス隊です。本当に圧巻でした。まさに僕の中では舞台のエンディングで演者たちが客席とその先に広がる世界に向かって、一日も早い戦争の終息を願ってエネルギーを放つようなイメージでした。同時代を生きる全ての人々がこの戦争の当事者であって、加害者にも被害者にもそれぞれに名前や人生がある。このコーラスではそれを表現しています。

この曲は、TERUは函館から、僕は東京からリモートでレコーディングしたんですが、TERUが歌い終えた時、僕は涙が溢れて止まらなかった。デビューした頃、「ずっと2人で…」(95年)のレコーディングでも泣きましたが、今回はまたそれとは違った悲しみや祈りや願いが相まったような感情で泣けてきてしまって……50のプロのおじさんがわんわん泣く現場、結構見ものですよ?(笑)。こんな浪花節なレコーディングもなかなかない。

僭越ですが、GLAYのキャリアで今もそうした瞬間に恵まれるというのは、非常に尊いことだと感じられますね。
TAKURO

本当にそう思います。「俺、まだレコーディングで泣けるんだな」という奇妙な喜びも感じましたね。

他の3曲についても聞かせてください。WOWOWグランドスラムテーマソングに抜擢された「GALAXY」では、アレンジに亀田さんと80KIDZさんが参加されています。
TAKURO

GLAYに新しい風を吹かせる試みは大抵TERUとHISASHIが旗を振ってくれます。コロナ禍で、まだスタジオで顔を合わせるのも憚られた時期でしたが、「こんな時代だし、世を憂いだ曲だけじゃなく、元気でアッパーな曲もほしいよね」ということで、やはりリモートで作りました。いつかコロナ禍が明けてライブで声が出せるようになったら、みんなで歌えるような曲にしようと。80KIDZとは過去に関係性もあったし、僕も80KIDZの2人が一番盛り上がる状態にしてくれたら、そこに乗っかりますというくらいのフリーハンドでした。

よく聴けば気付いてもらえると思うけど、この曲には80KIDZの面白い音選びが凝縮されています。ロックバンドだけじゃまず生まれないアイデアがたくさん詰まっている。サポートメンバー然り、GLAYは4人以外の才能のある方々に助けられてここまでこられた。曲が面白くなればどんなアイデアも大歓迎だし、何が来ても今更GLAYはびくともしないという余裕もあれば、もはや自分のパートの音数や聴こえ方にさえこだわらないというある種の緩さもある(笑)。とにかくGLAYはTERUさえノッて歌ってくれたらちゃんと様になるんです。それぐらい、僕は彼の歌声を信じているので。

亀田さんとのコラボレーションも定着してきました。改めてTAKUROさんにとってプロデューサー/アレンジャー・亀田誠治とはどういう存在ですか?
TAKURO

GLAYは長い間プロデューサーの佐久間正英さんと二人三脚でやってきて、その後、自力でやるようになったんですが、佐久間さんを失った後、JIROが一人で思い悩んでフレーズを作るよりも、誰か鏡になるような存在がいたほうがいいと思ったんですね。不思議なもので、日本って昔からいいプロデューサーにはベーシストの方が多いんですよね。JIROとウマが合いそうで、彼の想いを掬ってくれる人は誰かと考えた時、亀田さんしかいないと思いました。

幸運なことに、ぶっちゃけGLAYは4人各々の方向性も明確だし、全員で目指す道にもズレがない。その点から言えば、正直、自力でも十分にやれます。でも、GLAY特有の文化祭感というか夏休み感って、不思議なことに関わる人が多ければ多いほど圧倒的に面白くなる(笑)。4人よりも6人や7人で山に登ったほうが、道中の楽しさも達成感も倍以上になるんです。だから亀田さんのような素晴らしい技術と経験を持った方がいてくれるほうがGLAYにとって絶対にいい。しかも亀田さんがいてくれると、とにかくスタジオの空気が明るく楽しい(笑)。俺たち以上に「これいい曲だなあー!」と盛り上がってくれる。太陽みたいな人ですよ。これからも一緒に音楽を作っていきたいですね。

先程も話題に上った「クロムノワール」はニュース番組「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のエンディングテーマとして書き下ろされました。
TAKURO

番組側のスタッフとお話しして、「経済を通して世界を見る」というコンセプトを共有した時、男女問わず、日々世界と繋がってアンテナを張り続けている人が、自宅に帰った時、疲れた身体をソファに沈める。その5分間を切り取れないか?と思い付きました。「今日は大変な日だったなあ……」と思って、ひと時ソファで物思いに耽けた後、「あ、明日の資料もやらなきゃ」ともうひと頑張りする。そんな人の姿が浮かびました。仕事以外にも、個人の悔恨や楽しい出来事、悲しい出来事を思い出すような5分間を歌にしてみようと。自分自身にもそうした時間があるので。

それは具体的にどんな時間ですか?
TAKURO

デビュー以来続けているんですが、寝る前に5分か10分程度、その日思い付いたアイデアを書き留める時間を設けています。いつかアイデアが枯れ果てたとしても、その蓄積が助けてくれるかもしれないと信じて(笑)。

個人的にミュージシャンの方々にとってのニュース番組のテーマというのは勝負球を投げるステージというか、そのアーティスト独自の視点や筆致が如実になる機会だと思うのですが、その意味でもTAKUROさんの「5分間を切り取る描写」というのは非常に興味深いアプローチでした。
TAKURO

案外、その5分間には、人の本質が表れるのかもしれないなって。6分後にはもう忘れているかもしれない、ある種のマジックタイムみたいなもの。自分に向けて歌った部分も割と多いですね。マーケットの中心に向けて書いたわけでもなければ、そもそもそういう姿勢も十代から一度も取ったことがないし。それはもしかしたらGLAYを強くした理由の一つかもしれません。

背伸びをせず、自分が分かることだけを、極力分かりやすく歌に落とし込む。そこでも大きく機能してくれるのもTERUの歌声。多少難しい言葉を使っても、彼が歌うことでポップにキャッチーになる。「クロムノワール」のサビも5パターンのメロディを用意しましたが、最終的にはTERUの声が最もよく乗るメロディに落ち着きました。

「クロムノワール」と「Only One,Only You」の平歌部分は、言わば引き算のアレンジですね。音数を削ぎ落とすだけ削ぎ落としてあるというか。
TAKURO

そこは僕が10年程前からジャズを始めたことにも因ると思います。先程もお話ししましたが、僕は近年、人間の内なるドアをノックすることに興味があって。明快な起承転結やヒットの法則もいいけれど、社会を、人間を知るにつれ、より深い表現というのは、行間と言うか音の間にこそあるのでは?と考えるようになって。そこに音を入れていいか悪いかを迷ったら、むしろ要らないのではないかと考えるようになりました。「GALAXY」のようなタイプの曲の一方で、音の隙間や目に見えないものを信じる強さを大切にしたい自分がいるんです。

「WE♡HAPPY SWING」は今夏に行われたファンクラブ限定ツアー「We ♡ Happy Swing Vol.3」のために書き下ろされた曲です。
TAKURO

ツアーの最終日に初めて完成を迎えた曲。まさにGLAYの文化祭っぽさが形になった一曲です。ビートは80年代ジャパニーズインディーズロックシーンに代表される縦ノリです。

正直、他の3曲に混ざってこの曲が入っていることに思わずゲタゲタと笑ってしまいました。で、「ああ、これがGLAYなんだなあ」と。
TAKURO

まさにその通り(笑)。アレンジのコンセプトはHISASHIが高校時代に持っていたどっかのメーカーの安い白のレスポール(笑)。GLAYをGLAYたらしめている何かって、たぶんそういうことなんじゃないのかなって。他の3人にはちゃんと聞いてないけど、俺はとにかく「カッコ悪っ!」とか思いながらこの曲をやるのが楽しくてしょうがない!(笑)。「Only One,Only You」や「クロムノワール」にはない、譜面や数値では測れない楽しさがあるんですよ。

GLAYのファンクラブ「Happy Swing」は、昨年、発足25周年を迎えました。
TAKURO

僕はHAPPY SWINGの会員との絆を疑ったことは一度もない。テレビの中の呼び掛けだけで集めた票じゃないし、自分たちが真摯に音楽を作ってきた証でもありますから。アメリカでスコーピオンズ、TOTO、ジャーニーといったレジェンドのライブを観に行くと、服の全身にバンドロゴのワッペンを縫い付けた爺さんが盛り上がっている。今時、ロックなんてもうアメリカのラジオではほとんどかかりません。ロックを支えているのは40代以上の白人ばかりだとか、ギターソロなんて飛ばして聴くなんて言われる昨今だけれど、あの姿に僕はアメリカン・ロックの底力を感じます。その信頼感は僕にとってHAPPY SWINGの会員のみなさんに対する感情と近い。「Only One,Only You」もギターソロが2回もありますから(笑)。

たしかに(笑)。
TAKURO

「WE♡HAPPY SWING」についてはもうひとつエピソードがあって。HISASHIがドラムの永井(利光)さんの誕生日ライヴでUP−BEATの広石武彦さんとご一緒したのを知ってから、僕の中で第何次かのUP−BEATブームがきて。ちょうど映像で改めて岩永凡(Gt)さんのストロークを観直したりしていた(笑)。大人になった一方で、誰に認められなくても、これをやってる時のGLAYっていいじゃん?と思える時間も大事というか。失ったものへの郷愁だって大いにいいじゃないかと。あとは、シリアスだけじゃなくて、どこかにユーモアを一滴垂らしてあるのが、俺の好きなロックバンドの佇まいだから。今時そんなことを考えているバンドなんて、もしかしたら再結成したユニコーンと俺らぐらいかもしれないけど(笑)。

最高じゃないですか(笑)。さて、GLAYは今回のリリースでシングル通算60枚目を迎えました。
TAKURO

昔も今もアーティストがシングルを切る時って、ついどこかで「シングル級の曲でなくては」とか「キャッチーでなくては」と考えがちになる。でも僕は、そこにはあまり拘らない。さっき登山に譬えてお話しをしましたが、頂上までの道のりでは休憩も大事だし、いい景色もあれば厳しい坂もある。だから時にはただ楽しくおにぎりをパクつくような時間も必要だし、そうした時間のメンタルがバンドを長生きさせるんだと僕は思う。

そもそも人生なんてしょうもない場面だらけでしょ? いつもシリアスな顔をして気障な台詞ばかりを言ってはいられないし、僕自身、作家としてそんな重圧は耐えられない。GLAYはそういう人間らしさをシングルやアルバムに隠さず出していきたい。郷ひろみさんは2015年に100枚目のシングルをリリースされた。僕らも力が続く限り、リスナーがいてくれる限り、それを目指したいですね。シングルはショートムービー、アルバムは長編大作みたいなもの。そこに歌いたい思いがある以上、テーマの大小に関わらずシングルを切り続けていきたい。バンドらしい営みとしても、ずっと続けていけたらと思います。

文・内田正樹

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