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Vol.73 TAKURO WEBインタビュー

GLAYが2月1日に公式アプリをスタートさせ、約3ヶ月が経った。常に、“ファンファースト”のスタンスで活動を続けてきた、GLAYの“理想”を形にしたものが、このアプリともいえる。音楽オーディオとしての役割を果たし、これまでの音源はもちろんの事、MUSIC VIDEOやライヴ映像、書籍に至るまで、まさにGLAYの全てがストレスなくチェックできる。ファンとの距離をより“近く”するこのアプリに、並々ならぬ思いを持っているのがGLAYのリーダーTAKUROだ。求められる側と求める側の関係を、少しでもよくしたいというバンドの考えを具現化し、ファンの手元に届ける事ができた今、改めてこのアプリに対する思い、ファンへの思い、そして来年の25周年についても語ってもらった。

2018.6.1

自主レーベルで、ここまでのアプリを作るというのは、アーティストとしては、ある意味理想的な形だと思います。

TAKURO
TAKURO 2006年に、GLAYの版権、原盤、映像の権利、そしてファンクラブなどを前事務所から僕の個人会社が全ての権利関係を買収できたという事が、一番大きいです。やっぱりそれまでの業界の形、慣習という人間が作ったシステムを改善、改革していかなければいけないのに、そのスピードの遅さにGLAYは合っていませんでした。テクノロジーの進化に敏感なHISASHIは「メンバーのリクエストに応えられないバンドなんて嫌だ」と当時から言っていて、自分達がいつまでもコンテンツでいてはダメで、コンテンツホルダーないし、今回のアプリのような、プラットホームになるしかないと思っていました。それがメンバーの期待にも応えられて、かつユーザーのためになると思いました。俺は24時間GLAYの事と、自分の人生をどうデザインするかを考えていて、それは第三者にはわからないし、そこまで考えるように求められないし、無理な事で。メンバー同士の関係はメンバー同士にしかわからないし、いくら言葉で説明しても100%理解してもらえない。だから人に任せるのも限界だと思ったし、俺らを取り巻く環境という名の制度も疲弊していたので、自分達で全ての権利を持ち、活動した方が、それが一番ファンの人たちが好きなGLAYの形になると思いました。その思いの最新形がこのアプリです。やっぱりメンバーが一番大切にしているのは、GLAYとファンの人たちが活発に交流できる場だと思うし、それに対して組織やシステムに望むのは、アーティストとしての自由な発想を遮られることなく、それはお金という意味でも、時間という意味でも、好きなだけGLAYというものを謳歌したいという事です。レコード会社の都合に翻弄されないバンドでありたいし、もうそういう時代ではない気もしていて。音楽を取り巻く状況が厳しくなっていく中で、このままではミュージシャンは食えないと悲観しているだけではなくて、顕微鏡で見たときに、道はもっともっと無数にあるんだということを、次の世代の人たちに伝えたい。

色々時代が変わってきて、そこに取り残される事なく、自らが道を切り拓いて進んでいるGLAYの姿は、他のアーティスには眩しく映っていたと思います。

TAKURO
そんなに難しい話ではないと思っていて。このあいだ、TERUが若手バンドから相談に乗ってくれと言われ、俺も一緒に行きましたが、最終的にTERUはベロベロに酔っ払って(笑)、「いい活動がしたければ、いい歌を歌って、お客さんに喜んでもらえて、■▼〇※◎@~以上!」って、最後は何を言っているのかわからなかったのですが(笑)、でも結構真理をついているなと思って。ミュージシャンが本当に迷った時やるべきことは、いい曲を書いて、いい歌を歌って、いいパフォーマンスをすれば何の問題もない。それが世界にひとつしかないものであれば、必ず誰かがそれを手にとって、大切にしてくれる。それをマッチングさせるのは難しい仕事かもしれないけど、この広い世界の中で、諦めなければその出会いは必ずある。この20年間くらいは、色々なところからとにかく不安の声が聞こえてくるけど、俺は一度も不安に思ったことがないです。あの天才的なボーカルと才能あふれるメンバーがいるバンドを預かっていて、これで食えないって言ったら、音楽の神様に怒られます(笑)。だから聴きたい人と、聴かせたい人をくっつければいいんだと。すごくシンプルな事で、このアプリもそうです。例えば昨日ファンになったから、会報の第1号を見たいと言われたら、見せたいだけで、もう廃盤になってしまったアルバムを、ブックオフやメルカリではなく、こっちできちんといい音で提供できるなら、やりますよね。

内容も含め、このアプリの構想は、どれくらい前から練っていたのでしょうか?

TAKURO
話が出たのは2年以上前で、その前からファンの人たちから、昔の作品の再販のリクエストがあって、でも在庫を抱えるリスクを考えると、作る数が読めなかったり、そこで躊躇する部分を、なんとか解消できないかと考えたのが最初でした。だったらいっそのこと、出版社、レコード会社、チケットサイトを一本化することができたら、それが一番の時間の短縮と経費の削減になるし、かつファンの人たちの思いも、このアプリ内でタグ付けできれば、クレーム対応もすぐできるだろうと思いました。

このアプリに関してのミーティングにはメンバーも積極的に参加して…。

TAKURO
ミーティングという感じではなかったです(笑)。メールにわけのわからないURLが貼ってあって、「こんな感じ」みたいな(笑)。そんなメンバーの色々な意見、現実的なところから、途方もないアイディアまで一つずつ吟味していって、落とし込んだら本当にシンプルになりました。巷では、本屋さんやレコード店が大変だという声がある中で、やっぱり今を生きる人たちが、手に取りやすいのは本当にスマホやタブレットなんだという現実を、まざまざと見せつけられ、感じながら作業を進めていきました。今またアナログレコードが人気という話も聞きます。確かにレコードは温かい音がする、でも子供たちの世代がスマホを置いて、レコードに戻るということは多分ないと思う。それをまず認めるところから始めました。

来年は25周年ですが、それまでにこのアプリをリリースしたかったという思いは強かったですか?

TAKURO
そこにはこだわっていませんでしたが、でも1日も早くという気持ちはありました。ファンの人たちの声に応えられない歯がゆさは、常々感じています。このアプリの中には2つテーマがあって、まずデビューから応援してくれている人にとって楽しいものである、そして新しくファンになってくれた人たちにとっては、最高の入口である事という、一見矛盾しているかのような2つテーマを、ひとつのアプリにどう落とし込めるかという部分が一番難しかった。そして大体のサイトはGLAYのある部分しか欲しがらないけど、でもここに来ると、GLAYの、もしかしたら今まで手軽に見せられなかった部分、例えばアコギ一本で作ったデモ音源が聴けたり、GLAYのより深いところを知りたい人たちにとっては、たまらないものにしたかった。でもライトなファンの人たちにとっても、ここでGLAYの全ての歴史を知る事ができますよという、この二つを一つにするデリケートな作業が大変でした。つまり、昔からファンでいてくれている人達にとっては、音源、映像ともにすでに持っているものです。ライフスタイルが変わっていく中、その便利さはさらに進化して、昔のものをどこからか引っ張り出してきて、開けて、プレイヤーに入れて、という行為はしなくなると思いました。さっきも言いました、その便利さに人は勝てないと思い、映像も音源も全てここに詰め込みました。

一度便利さを経験すると、不便なことは避けたいと思うのが、人ですよね。

TAKURO
だからこのアプリには全部入れないといけないんです。それが命題です。なぜなら、入っていないのであれば「じゃあ聴かなくていいや、観なくていいや」ってなります。でも俺たちにとっては、どの作品もその時々に全力を尽くしたものだから、愛して欲しいんです。その作品たちが聴きたい時、観たい時にそこにないと、「じゃあいいや」という選択をされてしまう事が、作り手にとっては一番怖いことです。その恐怖を克服するには、ここに来たらGLAYの全てがありますという状態にしなければいけません。

いかにストレスを取り除き、快適さを提供できるかが大事ですよね。

TAKURO
プレイボタンさえ押してくれれば、作ったものに関しては自信があるので、そこにたどり着くまでのストレスを、失くし続けるのがテーマですよね。これから色々なものがもっと便利に、手軽になるだろうし、問題も立ちはだかるとは思いますが、ライヴに来てくれれば、聴いてくれれば、好きになってもらえるはずだし、この音楽表現が、あなたの人生にとって、とても豊かなものになるはずなのに、という自信を持ってステージに立っています。だからそこまでの道をいかにスムーズにするかというのが、一番大切です。

スタンプ式電子チケット機能というのも、チケット不正転売の防止につながりますね。

TAKURO
電子チケットという選択肢もあるけど、今ここで新しいメディアと俺たちはケンカはしません。無視もしない、でも競争はしたい、それは自分たちが鍛えられるから。電子チケットももちろんやりますが、でも長年ファンクラブに入っている人たちは、写真入りのチケットが欲しいんです。そこにも応えたいので、チョイスは示します。俺たちは両方ともいいと思っていて、電子チケットと紙のチケットって同一線上に見えるかもしれないけど、俺にとっては、俺はローリングストーンズ(※1)も好きだけど、ラーメンも好きですって言ってるような感覚に近いです。電子でも紙でも、それを使ってライヴ会場に入って、席に着くという行為自体は同じでも、全然別のものだから、両方丁寧にやりましょうと。世の中がどんどん電子チケット化していくからといって、紙のチケットをなくしたりはしません。例えば、チケットを持っている人が、どうしても都合が悪くなったので、友達にチケットを譲りたいという、人として当たり前の行動も無視できません。買った本人しか入れません、というのはあまりにも乱暴すぎる。俺は息子に「久保家の男子たるもの紳士であれ」って教えてるので、それは紳士的じゃない。だから自分が紳士でいなければ、息子にも胸を張って言えないんです(笑)。今は不寛容社会すぎるので、俺は可能性をたくさん示したいと思います。人生の答えはひとつじゃないという事を、ここまで大げさに話すつもりはないけど、アプリも含めてGLAYの活動全般で、それはメッセージとしてあります。あなたのライフスタイルはあなたのものですよっていう。配信で聴くもよし、でも俺たちはCDも丁寧に作ります。歌詞カードを見ながら聴きたいというライフスタイルに、俺達は最大限リスペクトを払いますという、GLAYという生き物の、生き様の一部のようなものです。

メンバーが情熱を傾けたGLAYの音楽、ライヴを、いかに気持ちよくファンに届ける事ができるか、ですよね。

TAKURO
その一点です。このアプリは最小のチームでやっているので、ユーザーからのクレームも含めての声が、すぐにメンバーまで上がってくるので、そこでまた改善のスピード感が90年代とは全然違うのがいいと思います。

そういう部分でも、ファンとGLAYは今までも近かったけど、より近くに感じるという事ですよね。

TAKURO
そうです。すごくビジネス的になっているかもしれませんが、結局GLAYが素晴らしい音楽を作り出せる環境をキープする事と、ファンの人たちの声に最大限耳を傾けて、それに応えていきたいという気持ちと、両方を実現できる究極の形がこのアプリなんです。

スタートして約3か月が経ちました。ファンの方の反応は届いていますか?

TAKURO
届いています。例えば、去年出した曲を聴いて、ファンになりましたという人にとっては、GLAYの過去の曲を聴く事は大変な労力が必要になります。でも聴くシングル、アルバムの順番なんて関係ないんですよね。自分たちが24年というキャリアを積んだおかげで、その体験を新しいファンの人たちにもしてもらえる。今まで一緒に歩んで来たファンの人たちとの感覚とは全く違う表現で、俺たちに俺達の音楽を聴いた感想を伝えてくれます。デビューからファンになってくれた人たちが、結婚や出産、育児などでGLAYの音楽から離れている時期がある。それで少し時間に余裕ができた時、もう一回聴いてみようかなと思っても、押し入れからCDやDVDを引っ張り出してくる必要がない(笑)。ポチッとやるだけで、離れていた時期の映像も音楽も流れるし、場所もとらない。面白いのが、一緒に歩んできたファンの人たちの中には、俺達が20代の時に出した音楽の意味が、その時はいまひとつ理解できなかったけど、40歳を過ぎて本当の意味がわかったし、自分なりの解釈ができました、という声もいただいています。ある意味、とても幸せな音楽体験だけど、今の10代の人たちが、昔の曲の感想を書いて送ってくれたり、このアプリに限らず、YouTubeなどのメディアや新しいテクノロジーによって、逆に俺らの方が、新しいファンに近づかせてもらっているという感覚です。

応援してくれている人との距離が縮まって、新しいファンも増えて、来年の25周年が賑やかになりそうですね。

TAKURO
盛大になりそうなんですよ。メンバーともミーティングを重ねていて、ライヴハウスから大きいハコ(※2)まで、1年半くらいかけて、応援してくれた人たちみんなに届くような、一番ファンの人たちが望んでいるライヴの形を、実現させたいと思っています。それと10年前くらいから取り組んでいる、コンサートの前後も楽しんでもらえる施策をやりたいです。例えば北海道物産展やイベントがあるとか、どこかでGLAY展があったり、カフェがあったり。 GLAYの東京でのライヴに行こうって、地方から来た人たちが、旅自体がGLAYを通じて楽しめるようなものにしたい。考え方はこのアプリと一緒ですよね、ひとつのもので色々と楽しめるという部分では。土、日がライヴなら、金曜日から月曜日までも楽しんでほしい、それでまた気持ちよく日常に戻ってほしい、という事を考えて25周年にやるべき事を 練っています。ひとつ面白い事を考えていて、アルバム『HEAVY GAUGE』が来年発売から20周年なので、その完全再現ツアーをやったらいいんじゃないかという話があって。 他のツアーはちょっと…という人でも、『HEAVY GAUGE』ツアーなら行ってみたいと思ってくれる人も多いのでは、と思いました。

このアプリによって、自主レーベルでのひとつの完成形を提示したGLAYのミュージシャンとしてのスタンスには、これからますます注目が集まりそうですね。

TAKURO
今の「ラバーソウル」とGLAYの関係というのは、あくまでもエージェントとプレイヤーで、事務所と所属バンドではないんです。エージェントとしてラバーソウルが提案する、GLAYの音楽が広がっていくためのアイディアを受け、それに対して100%応えるバントであり、あらゆる表現を受け止め、世に伝えるという事です。この関係は並走状態というか、上下関係では決してない。活動に悩んでいるアーティストは、疑問解消のために自分達から色々な人に聞かないのも悪いし、どこかに所属しているのであれば、そこの人たちが説明しないのも悪い。自分達が作った楽曲なのに、その権利を明確にしないというのは、もう時代遅れだと思う。今はネットを検索すれば法律関係の事も、わかりやすく出ているし、アーティストが自分で勉強できる時代です。昭和の時代とは価値観も変わってきているので、いつまでも旧態依然としたシステムの中で悩んでいる時間がもったいないです。俺達はメンバーと30年近くGLAYというバンドをやってきて、人がやる気になるスイッチって、そんなに多くない事がわかりました。自分のため、誰かのため、あとは世の中のため、これ以外の事に対しては、なかなか頑張れない。誰かのためというのも、よほど信頼をおいてる人や家族のためなら力が出るけど、やっぱり組織のために頑張るミュージシャン、若者は、今はいないと思います。組織が頑張れば、世の中の改善につながると言われたら、頑張ろうと思う若者はいるかもしれない。出世の意味が、昭和の時とは違ってきていると思う。自分の夢の実現のためなら、いくらでも頑張れる、信頼がおける人たちのため、世の中がよくなるなら頑張れる、でもレコード会社のためには頑張れない、事務所のためには無理です、という感じになっているのではないでしょうか。俺達も、これからもどんどん自分達とファンのために色々な事にチャレンジしていきたい。

文・田中久勝
※1:ローリングストーンズ
ロックの代名詞とも言える世界的バンド。1962年にイギリス・ロンドンで結成され、以来、半世紀以上にわたって、一度も解散することなく活動を続ける。
※2:大きいハコ
1万人規模のアリーナから数万人規模のドーム球場やスタジアムまで含むスケール感の会場。
※3:『HEAVY GAUGE』
GLAY、メジャー5作目のアルバム。1999年10月リリース。「GLAY EXPO '99 SURVIVAL」の前後に収録されたこともあり重厚な作風が際立ったアルバム。売上枚数は235万枚でGLAYのアルバムでは歴代2位。

Vol.72 HISASHI WEBインタビュー

昨年リリースしたアルバム『SUMMERDELICS』(※1)についてTAKUROにインタビューした時に、アルバムの大きな柱のひとつとして挙げたのが「HISASHIが持っている非常にニッチな世界や、ダークな世界を、今度はGLAYとしてきちんとフォーカスして世の中に伝えていく」事だった。確かに『SUMMERDELICS』とそれを引っ提げたツアーでは、HISASHIワールド全開で、GLAYが今在るべき姿、次に進むべきステージをファンに提示した。そんなHISASHIはGLAYの活動と並行して、これまで声優アーティストやアニソンシンガーへの楽曲提供やプロデュースを積極的に行ってきた。またネット界隈でも一目置かれる存在でもあり、さらには『関ジャム』(※2)のギタリスト特集に何度も呼ばれたり、先日も『タモリ倶楽部』(※3)の『デアゴスティーニ(※4)特集』に出演したりと、テレビ界でも注目されている。そんなHISASHIという“才能”の頭の中を、改めてのぞいてみたいという衝動に駆られ、インタビューした。

2018.3.16

今日は“HISASHI脳”を明らかにする、解体新書的なインタビューです。まずGLAYの曲を書く時と、他のアーティストに楽曲提供する時は、使う感性は全く違うのでしょうか?

HISASHI
全く違いますね。GLAYの曲を書く時は、自分たちのことだったり、取り巻く環境だったり、流れ行く世相を吐き出せる場所という感覚でやっています。他の方に書く時は、やっぱり俺が作るという事には意味があると思っていて。例えばアニメの主題歌や、ツアーのタイトルソングを書く時は、すでに“側”が決まっているので、そのフィールドの中での制作なので、非常にやりやすいです。逆に「好きに作ってください」と言われると困ります。自分が思っている事や過去のこと、これからのこと、そういうものを言葉にするのは難しいなっていう。相手が決まっている場合は、その人の持つ雰囲気を音にすればいいと考えています。

例えばバンドじゃないもん!の曲を書くとなると、彼女たちのことを想像するとHISASHIさんの頭の中で、何となく曲が響いてくる感じですか?

HISASHI
時代の中での、彼女たちの生き生きとしたキャラクターというか、そういうものは音になりやすいです。それが今度書いた「BORN TO BE IDOL」(※5)(5月9日発売)で、その真逆の感じの曲が「恋する完全犯罪」(※6)です。先日彼女達のコンサートを観に行きました。飽きずに最後まで楽しめるんですよ。どれもリード曲のような感じで、やはり作家陣に恵まれているなと思いました。みんなに観て欲しいコンサートだなって思いました。やっぱりバンドサウンドは気持ちいいですね。

「BORN TO BE IDOL」と「恋する完全犯罪」は両A面シングルですけど、確かに全く雰囲気が違う2曲ですね。

HISASHI
最初に「恋する~」方を書いて、明るく見えるけど、実は秘めた狂気を持っているんじゃないかなとか、無邪気な女の子同士のイタズラが犯罪に繋がっちゃったみたいな、そういうテーマで歌ったら、雰囲気が違っていいんじゃないかと思いました。

「恋する完全犯罪」、名曲だと思います。

HISASHI
やっぱり俺が聴いて育ったポップスとか歌謡曲の影響は、すごく大きいなと再認識しました。

HISASHIさんがはじめて手がけたアニソン、遠藤ゆりかさんの「モノクローム・オーバー・ドライブ」(※7)(2014年)も名曲だなと思いますが、「恋する完全犯罪」もいいですよね。今おっしゃったように歌謡曲、ポップスのフレーバーがふんだんに使われていて、疾走感があってたまらないですよね。海外の人にもウケそうです。

HISASHI
そうですね。ヨーロッパ的なマイナーメロディアスみたいな感じが好きだったんですよね。

アイドルシーンは気になりますか?

HISASHI
アイドルは最近携わることがよくあって、好きなグループもいますし、色々と掘り下げたりしますけど、やっぱりプロデューサーの力が大きいなと思います。「この曲エグいな、誰が作ってるんだろう」って思うと、やっぱりすごいプロデューサーが手がけたりするので、そういうのを紐解いていくと面白いです。アイドルってみんな、その人推しとかがあるじゃないですか。でも俺はそのアイドルが好きだから好きになるのではなくて、曲とか雰囲気とか、完成度の高さに興味があって好きになるので、色々聴いています。

今はアイドルも楽曲の部分で、HISASHIさんを始めとして、色々な作家陣に発注して、他との差別化を図ろうとしていますよね。

HISASHI
そうですね。それこそ秋元康先生(※8)のところは、やっぱり毎回コンペで決まっていると思いますが、常に新しいところにいっているなと、もう感心しかないですね。誰よりも攻めてるんじゃないかなと思いますし、その分賛否もあると思うし、でも日本のエンターテイメントとして、すごく高いところにあるなと思います。

他のアーティストから楽曲提供の依頼が来た時は、そのレコード会社のディレクターやマネージャーと、綿密な打ち合わせをするんですか?

HISASHI
アニメの曲を書く時はしますね。テーマと全く別角度の曲を当てるというのもアリだと思いますが、僕がアニソン世代というか、身近に感じていたので、やっぱりその世界観を壊さない曲を作りたいという気持ちが強いです。

打ち合わせの時は、そこで色々なキーワードが飛び交った方が、想像力が湧きますか?

HISASHI
やりやすいですね。TVアニメ『クロムクロ』(※9)の時は、まさにここ(事務所会議室)で打合わせをしていて、話している間に曲ができあがるというか、テンポと明るさ、言葉のチョイスとか、どれくらい深い世界観かとか、そういうことは話しをしていく中でどんどんできていきます。

依頼された曲と、GLAY曲とでは、曲ができあがる早さには差がありますか?

HISASHI
バラバラなんですよね。「彼女はゾンビ」(※10)はすぐできました。変拍子も必然的に最初からあったし、シリアスをコミカルにというか、そうやってGLAYはやってきたなというのが自分の中にあったので、それを音や言葉にしたのは、久しぶりかもしれないですね。

やっぱりGLAYと並行して、興味があるアーティストへの楽曲提供というのは、これからも積極的にやっていきたいですか?

HISASHI
そうですね。ずっとGLAYばっかり見ていると、同じ影しか残さないというか。違うアーティストに参加すると、光の当たり方が違うんですよね。そうすると自分の影の落ち方も違ってきて、こういう手法や面があるんだって気づかされます。

キャリアが長くなれば長くなるほど、そういう思考は必要だと思いますか?

HISASHI
必要になってくると思います。やっぱり固定概念みたいなものが、邪魔をしていると思います。だから僕やJIRO、TERUがシングル曲を書くのもアリだし、その固定概念が定着してしまう事を、メンバーが一番嫌っています。

成功体験は大切ですが、それにこだわるのも、良し悪しですよね?

HISASHI
でもそこも大事なんですよね。GLAYの魅力というのは、メンバーの仲の良さや雰囲気だと思うし、そういうものを敢えて排除する必要もないし。だからやっぱり僕らの代表曲である「HOWEVER」(※11)とか「BELOVED」(※12)のような曲も、年齢に応じてトライしていきたいという気持ちはあります。あれを超えたいというか、今の年齢でああいうメッセージを歌いたい。GLAYというバンドは、元々ハードな曲とミディアムバラード両方ができるという事は、高校生の頃から変わっていません。90年代は、ミディアムバラードの印象が強くなりましたが、常に尖った手法やメッセージを伝えるということと、この二つが必要な要素なんですよね。

HISASHIさんはあまりテレビに出ないGLAYのメンバーの中でも、テレビで引っ張りだこですが、これも“役割”なんでしょうか?HISASHIさん自身はテレビ出演を楽しんでいるのでしょうか?

HISASHI
プレッシャーですね(笑)。呼んでいただいてありがたいなという気持ち、プラス役にハマっていたかな、求められていることについて、自分の佇まいが正解であったかな、というのは毎回心配です。

地上波で視聴者と対峙するのと、ネット民と向き合うのとは違う感覚ですか?

HISASHI
違いますね。テレビは気がついたらついているという感じの存在なので、プロフェッショナルな世界のイメージです。俺は楽器を持っていないと太刀打ちできないので、色々調べてから臨みます。でもお昼の情報番組とかではないし、トリッキーなテーマで話すことは得意なので、これからも呼ばれたら出たいなと思います。テレビが情報源、テレビ基準という人も多いと思うし、僕らも北海道の片田舎で、情報源といえばテレビでした。大きなメディアなので、そこから少しでもGLAYに興味を持ってくれる方がいる可能性があるのであれば、これからもやっていきたい。

ネット界もざわつかせて、テレビでもざわつかせるHISASHIさんは、やはりGLAYの中では特異な存在ですよね?

HISASHI
好きなことや面白いことをやっているのだけなので、手法が増えただけだと思います。テレビの人が僕を選んだりとか、動画サイトが身近になったり、パソコンの普及も大きかったかもしれません。僕が近づいたというよりは、周りの人が近づいてきてくれたというイメージです(笑)。

『SUMMERDELICS』でHISASHIワールドが炸裂した感はありますが、考えてみるとHISASHIさんが曲を書き始めたのは「Cynical」(※13)(1995年)からで、もうデジタル色を前面に出して、その存在感を残していました。

HISASHI
90年代はメンバーのカラーを出すというよりは、バンドの印象を強く打ち出していたので、僕の曲はカップリングやアルバムで、GLAYにない面を作っていました。僕らはプロデューサーの佐久間正英さん(※14)と一緒にやってきたので、コンピュータベースのレコーディングは、割と早く取り入れた方だと思います。『SUMMERDELICS』のコンサート演出のアイディアも、前半三曲はやらせてもらって、ああいうことも実は初めてやりました。

結構ショッキングな映像が使われていました。

HISASHI
結局バランスなんですよね。これはいいけどこれはダメみたいな、そういう感覚が自分の中でちゃんとあって。だからメンバーも任せてくれたのだと思う。オープニングからホラーやサスペンスを連想させる映像を使って、大きな空間の中で行われるショーなので、そういうスリリングで、意味ありげなオープニングは結構好きですね。

今まで見た事ないGLAYの世界に、一瞬で引き込まれました。

HISASHI
GLAYって昔からU2(※15)みたいだなって思っていて。U2ってアルバムを出す度にテーマが違っていて、コンサートのオープニングで、今回のU2は違うと思っても、最後はいつもの感じのU2になっていて、GLAYもそんな感じなんですよね。『HEAVY GAUGE』(※16)とか結構重厚なアルバムを出しても、最後はみんなで歌おうみたいな感じになったり。僕らはコンサートの最初に、“今のGLAY”はこんな感じです、というのを観てもらうだけでもいいかもしれない。最後までそれを引きずって、無理矢理ホラーで終わるのも全然違うと思うし、最後はいつのようにみんなで『I’m in Love』(※17)を歌って終わるみたいな。

オープニングが遠い過去だった、みたいな。

HISASHI
そうなんですよね。印象って結構最後の方のものが残ると思うので。僕がコンサートで一番好きなのは、オープニングでメンバーが出てくるシーンなんです。一瞬で空気が変わるというか、だから結構オープニングSEも今までたくさん作っていて、作品化されていないのもたくさんあります。

HISASHIさんの中で、自分の世界観を表現するためには、言葉とメロディと、映像も欠かせないものですか?

HISASHI
そうですね。俺が使う映像はギミックというか、そういう感じのものが多くて。雰囲気ものの、美しい映像も使ったりもしますけど、そうじゃないちょっとエグいものとかそういうのが好きで、割と物議をかもすくらいのものをやりたいなと思っています(笑)。
『微熱Ⓐgirlサマー』(※18)は、青春のラブソングみたいな曲なので、あの頃の甘酸っぱさをちょっとだけエロティックなものに置き換えたら、GLAYのファンの方はどこまで許してくれるのかとか考えたり。あまり許してくれなかったけど(笑)。爬虫類を使ったものとかは評判が良くなったです(笑)。

やっぱり評判は気にするんですか?

HISASHI
でも終わった事ですからね。俺的には今回かなり踏み込んだなという達成感はあります。ファンの方は、もうあるものとして楽しむというか、観る側としてもすごくプロフェッショナルだと思います。本当にみんな楽しんでるなっていうか。

観ている方もプロ、というのはいい関係ですね。

HISASHI
一緒に育っている感じですね。でもそういう甘やかされた環境というのはよくないとも思っていて、アメリカでコンサートをやった時とかは、反応がバラバラだったので、もっともっと頑張らなければという気持ちになりました。

これからますますHISASHIワークスは増えていきそうな感じですね。

HISASHI
そうですね。この前『hide TRIBUTE IMPULSE』(※19)(6月6日発売)の作業が終わったのですが、こういうプロジェクトに単独で参加すると、意外な発見があったりして。これはGLAYに持っていける要素だなって思ったり。

やはり何をやっていても、GLAYに持って帰ったら面白いかも、という感覚があるんですね。

HISASHI
そうですね。バンドの中では、世界の面白いものを紹介するようなキャラクターだと思っているので。例えばダブステップ(※20)みたいな音楽を入れたらカッコいいよ、とか。GLAYに合う合わないはあると思うけど、そういう役割なんだなと思っています。

文・田中久勝
※1:アルバム『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)リリース。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。
※2:『関ジャム』
関ジャニ∞の音楽バラエティ番組。関ジャニ∞が毎回様々なアーティストをゲストに迎え、一夜限りのジャムセッションやトークを繰り広げる音楽バラエティー番組。HISASHIは2017年6月11日、佐橋佳幸、MIYAVIとともに出演。
※3:『タモリ倶楽部』
1982年放送開始の長寿番組。すべてロケで行なわれる「流浪の番組」。さまざまな社会現象をタモリとゲストで掘り下げる。番組内のコーナー『空耳アワー』も人気。HISASHIは2018年4月6日放送回に出演。
※4:デアゴスティーニ
HISASHIは毎週少しずつパーツが届く「週刊バック・トゥ・ザ・フューチャー デロリアン」に取り組んでいることを公言している。『タモリ倶楽部』のディアゴスティーニ特集に出演した。
※5:「BORN TO BE IDOL」
2018年5月9日リリースのバンドじゃないもん!のダブルAサイドシングル。往年の斉藤由貴を彷彿とさせる王道アイドルソング。
※6:「恋する完全犯罪」
2018年5月9日リリースのバンドじゃないもん!のダブルAサイドシングル。HISASHIは「今回の話を頂き数日でサラリと書き上げた」という。
※7:遠藤ゆりかさん・「モノクローム・オーバー・ドライブ」
歌手・声優。2014年リリースの「モノクローム・オーバー・ドライブ」をHISASHIが作詞・作曲・プロデュースを手がけた。テレビ東京系アニメ『Z/X IGNITION(ゼクス・イグニッション)』のエンディングテーマ。
※8:秋元康先生
日本を代表する作詞家。AKB48グループや坂道シリーズのプロデューサーを務める。
※9:TVアニメ『クロムクロ』
2016年4月~9月放送。HISASHI作詞・作曲の楽曲「デストピア」「超音速ディスティニー」が主題歌。
※10:「彼女はゾンビ」
2016年1月27日リリース『G4・IV』収録。HISASHI作詞・作曲。「シン・ゾンビ」のもとになった曲。
※11:「HOWEVER」
1997年8月6日リリース、12thシングルにしてGLAYにとっては初のミリオンセラーとなった代表曲。
※12:「BELOVED」
1996年8月リリース、GLAY9枚目のシングル。TAKUROが作詞・作曲したGLAYを代表するラブソング。
※13:「Cynical」
1995年11月リリース、GLAY7枚目のシングル「生きてく強さ」収録曲。
※14:佐久間正英さん
ロックバンド、四人囃子の元メンバーで、プロデューサーとしてBOØWYやザ・ブルーハーツ、GLAY、JUDY AND MARYらを手がけた。
※15:U2
1980年デビューのアイルランドのロックバンド。売上も観客動員も世界最大規模の成功を収めるロックバンド。グラミー賞の獲得数22作品は“ロック・バンド史上最多”。音楽性を変化させながらメッセージ性の強いコンセプチュアルな作品を発表する一方、スタジアム級の大規模会場で映像や演出を多用したワールドツアーを成功させている。
※16:『HEAVY GAUGE』
GLAY、メジャー5作目のアルバム。1999年10月リリース。「GLAY EXPO '99 SURVIVAL」の前後に収録されたこともあり重厚な作風が際立ったアルバム。売上枚数は235万枚でGLAYのアルバムでは歴代2位。
※17:『I’m in Love』
GLAY、メジャー4作目のアルバム『pure soul』収録曲。1998年7月リリース。オセロ、長島三奈、鈴木紗理奈、山本シュウ、中山加奈子、富田京子、せがわきりなどがコーラスで参加。ライブでもラストナンバーとして演奏されることが多い。
※18:『微熱Ⓐgirlサマー』
2015年5月25日発売のシングル「HEROES/微熱Ⓐgirlサマー/つづれ織り~so far and yet so close~」収録曲。HISASHIが作詞・作曲を手掛け、コンタクトのアイシティ夏のキャンペーンCMソングにも起用された。
※19:『hide TRIBUTE IMPULSE』
X JAPANのギタリスト hideの没後20年のトリビュートアルバム。HISASHI×YOW-ROW「DOUBT」を収録。
※20:ダブステップ
イギリス産のダンスミュージック。レゲエから派生したダブの手法と、90年代に生まれた2ステップ等のダンスミュージックを組み合わせたジャンル。アーティストではスクリレックスが世界的な人気を獲得している。

Vol.71 JIRO WEBインタビュー

台湾、そして香港でのライヴが目前に迫ったGLAY。昨年末からはメンバー個々の活動に移っていたので、2018年のGLAYはこのアジア・ツアーからお目見えという形になる。今回はそれに当たってJIROに単独インタビューを敢行。彼は2月上旬まではTHE PREDATORS(※1)で全国ツアーを廻っており、その楽しそうな姿を見たファンも多いだろう。取材を行ったのはそのアジア公演のためのリハーサル・スタジオのロビー。TAKUROをはじめメンバーが「おはようございまーす」と徐々に集まってくるそばで、今の心境をニュートラルに語ってくれたJIROだった。

2018.3.16

JIROくんは2月にTHE PREDATORSのツアーを終えたわけですが、去年の年末まではGLAYのアリーナ・ツアーがありました。このところ、そうしてライヴと制作が交互に連なっている状態がずっと続いているんですが、それはいかがですか?

JIRO
そうですね。でも、そのペースで気持ち的に落ち着いてるところがあります。今はTHE PREDATORSが終わって、主にアジア・ツアーに向けての個人練習の時間に当てています。で、今回演奏するのが『SUMMERDELICS』のツアー(※2)でやってきた曲が大半なので、「2ヵ月空いてるので忘れてるかな?」と覚悟してたんですけど、意外と覚えてました。それがわかったら一気に気が抜けて、もう何にもしたくなくなって(笑)……今は家で音楽聴いたり映画観たり、のんびりしてますね。

(笑)そういう時間も必要でしょう。で、それだけ曲が身体に入り込んでたわけですね。

JIRO
そうですね。(『SUMMERDELICS』(※3)収録曲の)フレーズは難しかったんですけど、そのぶん集中してやっていたからなのか、けっこう覚えていました。間にTHE PREDATORSのツアーが入ってたから、絶対忘れてるかなと思ってたんですけど、意外と……別腹じゃないですけど(笑)、こっちはこっちで残ってましたね。バンド演奏という、基本的には同じことをやっているとはいえ、(ふたつのバンドでは)ちょっとテイストが違うというか。

そう、そこをあらためて聞いておきたいんですけど。「これからライヴをやります」という段階だとして、GLAYとTHE PREDATORSの感覚は、どのぐらい同じで、どのぐらい違うものなんですか?

JIRO
けっこう違いますね。GLAYの場合は、身体が緊張して指が攣ったりしないように、ライヴ前に時間を作って楽屋でトレーニングをしたりします。そうして軽い筋トレをして、身体の緊張をほぐしてからヘアメイクして本番に臨む、みたいな感じなんですけど。THE PREDATORSの場合は……本番前にはストレッチぐらいですね(笑)。これはいい意味で言うんですけど、ライヴハウスのほうはお客さんが勝手に楽しんでくれるというか。だから「こっちはただ演奏するだけでいいかな」という感じなんですよ。それがGLAYだと……会場がアリーナとかなら、ほんとに後ろのほうのお客さんには「なーんだ、この席だと楽しめるのか、わかんないな」みたいな人たちもいっぱいいると思うんです。でもライヴをやる以上、そういう人たちも納得させないといけない。そのためには(意識として)より遠くに届けようとするので……気持ち的には疲れるんでしょうね。

なるほど。会場がアリーナのように大きな規模だと、演出や仕込みのことを意識しないといけないのもあるんじゃないですか?

JIRO
まあ、そうですね。ただ、演出に任せておけばいいかといえば、そうでもないんです。GLAYに関しては、(自分たちの)後ろで面白い映像が流れてても、俺たちのほうを見てるファンの人たちにアピールしなきゃいけない!という気持ちがあるんですね。セットや映像があるので俺たちはただ黙々と弾きますよ、みたいなバンドじゃないので。だから「一瞬たりとも気を抜けないな」というのはあります。

ああ、演出の段取りとかよりも、やっぱり演奏への集中力のほうが大事だと。そうですね、GLAYの時のJIROくんは、ほんとに魂で弾いてるように見えるんですよ。で、それに対してTHE PREDATORSではもっとこう、気持ち良さのほうが伝わってくるというか。

JIRO
(笑)それは今回、自分でもあらためて思いました。THE PREDATORSは、それこそ遊びなんですよ。だから、とにかく気楽に演奏できるなって。まあお客さんには同じようにチケットを買ってもらって、来てもらってるんですけど……THE PREDATORSは「お金払ってくれてるけど、俺たちの趣味的な遊びを見たいんだよね? だから俺たちは好き勝手やるよ。それでも見たいんなら、どうぞ!」みたいな(笑)。そういうのに近いかもしれないですね。

そうそう。すごくわかります。

JIRO
それが今はより濃くなったなと思います。だからTHE PREDATORSは、やるべきことをやる、それで楽しんでるものを見てもらう、という感じですね。GLAYの時は「こんなのもありますけど、どうですか?」「みなさん、楽しんでる?」という気遣いがあるかもしれないです。

今回、THE PREDATORSはツアーファイナルのZepp DiverCityを見せてもらったんですけど、その「楽しんでやってるな」と思った瞬間のひとつが、アンコールで缶ビールを飲んでる姿を見た時でした。ああいうの、GLAYではやらないですよね?

JIRO
うーんと、昔はやりましたけどね……90年代後半とか、ライヴハウスでやってる頃とかですけど。あれはピロウズが毎回やってるんですよね。アンコールで出てきて、みんなでトークを回しながら飲む。(山中)さわおさん(※4)はそのスタイルをTHE PREDATORSに取り入れたんです。で、ピロウズの場合は、基本的にさわおさんがしゃべって、誰かが面白い話をしたらさわおさんが突っ込んで、みたいな感じなんですけど。俺たちの場合は、ほんとに全員自由で(笑)。高橋(宏貴)くん(※5)も自由だから突然何を言い出すかわからないというのも含めて、面白かったですね。

だってDiverCityの時の2回目のアンコールなんて、出てきてからのMCが15分もあって、そのあとの最後の曲は2分ちょっとでしたからね。

JIRO
そうそう! そうなんですよ(笑)。あのDiverCityの時のMCは相当面白かったですね。俺もあらためてオフライン(=編集の映像)のチェックをするために家で観てて、爆笑しましたから(笑)。

で、THE PREDATORSはそのツアーのDVDが出ることになっていて、楽しいライヴの模様が収録されていると思うのですが。これに収録される特典映像について、高橋くんがブログで「ふたりに騙された」みたいなことを書いてましたよね。

JIRO
(笑)そうなんですよ。まず高橋くんには「ある曲のミュージックビデオを撮ります」という企画を伝えておいたんですけど、ほんとのことは内緒にしといて……その場でいきなり曲を作ってもらったんです。実はツアー中からさわおさんが高橋くんに「お前は今回(のEP)でも1曲採用されてるけど、俺にプレゼンする時に2曲しか作ってこなかったよな? しかも前回初めて作った時は、まさかの1曲しか書いてこなかった。JIROくんを見てみろよ! 毎回4曲も5曲も作って俺にプレゼンしてくるんだぞ? お前はどんだけ偉いんだ!」みたいな話をしていたんですよ。いじりみたいな感じで。で、「今後もまだ作りたいのか?」「はい、もちろんです」みたいな振りがあって、「そんなに曲が作りたいなら今から作ってみろ! 1時間やるから曲作れ!」って。「それで俺が歌詞書いて、バンド・アレンジして、今日すぐレコーディングしよう!」みたいな。それをやったんですよ。だから新曲ができたんです(笑)。

(笑)それはどういう映像になっているのか、楽しみですね。それからTHE PREDATORSは4月にARABAKI ROCK FEST.(※6)に出ることが決まってますね。

JIRO
8年ぶりらしいんですよね。その時は緊張していないようで、けっこう緊張していた記憶があります。僕自身、フェスって特別な空気感だなと感じてるところがあって……気持ちがちょっと浮ついてるんだけど、バシッときめないとな、みたいな。そういうヘンな緊張感があったような気がします。でも今回はツアー明けだし、今の俺だったらあんまり気負わずに、普通に楽しめるんじゃないかな。フェスに来てる人たちも、めったに観れるバンドじゃないし、曲が単純で乗りやすいと思うので、観たい人は来てほしいですね。なので、自分としては前回とはちょっと違う感じでやれそうです。まあ……間違えても何でも、俺たちが楽しけりゃいいや、みたいなところもありますけど。遊びのバンドなので(笑)。

(笑)始まりから、そうでしたからね。そしてGLAYのほうはアジア・ツアーがもうすぐなんですが、今どんな気持ちで向かっていますか?

JIRO
気持ち的には、まだ現実味がないですね。というのも今回はリハーサルが短くて、4日だけなんです。ただ、去年の6月に「金曲奨」(※7)という台湾の音楽祭に行って、実際に僕らがライヴをやる台北アリーナでパフォーマンスさせてもらったんですけど、そこがとんでもなく広いんですよ。日本だと、さいたまスーパーアリーナぐらいかな? すごくぜいたくな造りの会場で、若干ビビってたんです。だけどその後GLAYでアリーナ・ツアーやって、THE PREDATORSでまた「やっぱり音楽って楽しいな」みたいなお気楽ムードもちょっと味わえたので(笑)、今はプレッシャーはあまり感じてないですね。

はい。それこそ、これだけライヴをやってきてますからね。

JIRO
うん。それに最近だんだん開き直ってきてて、「どんなに練習しても、間違える時は間違える」みたいなところもあるんですよ(笑)。これは表現的にはあまり良くないかもしれないけど、(演奏のミスは)交通事故みたいなものだと思ってるんです。「何で今まで弾いてたものが突然スコーンって抜けたりするんだろうな?」って思うんですね。べつに気を抜いてるわけじゃないのに。でも「そういうことって普通に起こりうるな、だからそれに関してはしょうがないな」って。「そこで落ち込むよりは、これ以上の失敗はないだろうから、逆に楽しんでやろう!」と思ったほうがいいかなって思ってます。

JIROくんは、台湾や香港という土地には、どんな思い出や印象を持っています?

JIRO
台湾には2001年のEXPO(※8)の時から仲良くしてる地元のバンドがいて、僕らが台湾に行く時には応援に駆け付けてくれるので、いろいろと思い入れがありますね。香港は前回アリーナをやるまで、俺たちが(香港について)とくに何かを語ったことはなかったけど、でもライヴをやってみたらGLAYを知ってくれてる人たちがすごくいてくれたことに、まずビックリしました。90年代の後半ぐらいに「GLAYが現地ではすごく人気があるよ」って言われてたのを聞いたことがあったんですけど、それから10何年も経っているわけだし、自分たちからは何のアクションも起こしてなかったし、「やってみたところで、もしかしたら閑散としてるのかもしれないな」なんて思ってたんですけど、そんなことはなかったです。それはかなり自信になりましたね。まあ、どちらも楽しんでやれたらと思います。

ライヴをする上で、日本と違う感じってあるんですか?

JIRO
全然違いますね。自分たちと同じような顔つきをしてても、やっぱり外国なので……それこそステージからでも日本語で唄ってくれてる人たちがいっぱい見えるので、それには純粋に感動しますね。それに今、GLAYで日本国内でライヴやってても「香港」とか「台湾」とか書いたプレートを持って遠慮がちにアピールしてくれてる人がいますけど、そういうのを見ると、うれしいですね。

いわば、音楽が国境を超えている瞬間ですものね。

JIRO
そうですね。日本の人たちでも「GLAYのチケット取れない」って言ってるファンがいるのに、海外から僕たちを観るためにお金もかけて手間暇もかけて来てくれてるわけだから……それはうれしいですね。

この2公演のセットリストはどんなものになりますか?

JIRO
『SUMMERDELICS』のツアーからは3分の1くらい変えて、メジャーな曲を入れてます。とはいえ、アルバムのツアーのひとつで行く感じではありますけど。あと、その去年6月の金曲奨でTERUが唄いながら客席を見渡した時に、すごい焦ってたらしいんですよ。「ほんとに入るのかな、これ?」みたいに。で、台湾でライヴをやることが発表になったのが前回のアリーナ・ツアーの最中だったんですけど、TERUが福岡の時に「福岡と台湾、近いんでしょ? みんな来ちゃいなよ!」みたいなことをMCで言ってて(笑)。そのおかげもあって、日本からもたくさん観に来てくれるみたいです。そうなると「何度も演奏してるようなメジャーな曲ばかりじゃ、まずいんじゃないかな?」というのもあるので、うまいこと何曲かレア曲を入れてみたりしようと思います。

ということは、ツアーの特別版みたいな内容になりそうですね。向こうはこちらよりも暖かいでしょうし、いいコンディションでできるといいですね。

JIRO
うん、大丈夫じゃないですかね。メンバーとも話してたんですけど、海外といっても地理的には近いので、国内を移動するような感覚でやれたらいいなと思います。「アジア・ツアーです!」みたいな感じでやるよりは、日本と同じような感覚で行けたらいいなって。

では、その成功を祈ってます。

JIRO
はい! ありがとうございます!
文・青木優
※1:THE PREDATORS
2005年結成。the pillowsの山中さわお、GLAYのJIRO、ストレイテナーのナカヤマシンペイで結成。ナカヤマは2010年3月に脱退。ELLEGARDEN、Scars Boroughの高橋宏貴が加入。いままでにアルバム5枚、DVD3枚をリリース。今年1月に会場販売と通信販売限定シングル「Arabian dance」をリリース。約2年半ぶりの全国ツアー「Arabian Dance Tour」も開催。
※2:『SUMMERDELICS』のツアー
2017年9月23日(土・祝)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターから12月17日(日)愛知・日本ガイシホールまで23公演で開催されたアリーナツアー。
※3:『SUMMERDELICS』(アルバム)
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。
※4:ピロウズ・さわおさん
1968年12月7日、北海道出身。1989年結成のthe pillowsでVo.&Gを務める。JIROと意気投合してTHE PREDATORSを結成。
※5:高橋(宏貴)くん
ドラマー。1998年にELLEGARDEN 結成を結成。2008年、Scars Borough を結成。2010年にTHE PREDATORSに加入。
※6:ARABAKI ROCK FEST.
2001年から仙台近郊で開催されているロックフェスティバル。THE PREDATORSは今年、2010年以来8年ぶりの出演となる。
※7:「金曲奨」
台湾のグラミー賞とも呼ばれる音楽に関する賞。台湾の3大娯楽賞の一つ。2017年6月24日(土)に開催された第28回金曲奨でGLAYは特別パフォーマンスを行なった。
※8:2001年のEXPO
GLAY EXPO 2001 "GLOBAL COMMUNICATION"、東京スタジアム(現・味の素スタジアム)、北海道・石狩市青葉公園特設ステージ、北九州マリナクロス新門司ステージで開催された。九州公演には紫雨林(韓国)、DOME(タイ)、ニコラス・ツェー(香港)、メイデイ(台湾)、The d.e.p (ビビアン・スー、佐久間正英、土屋昌巳、ミック・カーン、屋敷豪太による日台英混合バンド)が出演した。

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