閉じる

LANGUAGE

LOGIN

HAPPY SWING

公式ファンクラブHAPPY SWING

GLAY MOBILE

GLAY MOBILE

G-Direct

GLAY OFFICIAL STOREG-Direct

Vol.72 HISASHI WEBインタビュー

昨年リリースしたアルバム『SUMMERDELICS』(※1)についてTAKUROにインタビューした時に、アルバムの大きな柱のひとつとして挙げたのが「HISASHIが持っている非常にニッチな世界や、ダークな世界を、今度はGLAYとしてきちんとフォーカスして世の中に伝えていく」事だった。確かに『SUMMERDELICS』とそれを引っ提げたツアーでは、HISASHIワールド全開で、GLAYが今在るべき姿、次に進むべきステージをファンに提示した。そんなHISASHIはGLAYの活動と並行して、これまで声優アーティストやアニソンシンガーへの楽曲提供やプロデュースを積極的に行ってきた。またネット界隈でも一目置かれる存在でもあり、さらには『関ジャム』(※2)のギタリスト特集に何度も呼ばれたり、先日も『タモリ倶楽部』(※3)の『デアゴスティーニ(※4)特集』に出演したりと、テレビ界でも注目されている。そんなHISASHIという“才能”の頭の中を、改めてのぞいてみたいという衝動に駆られ、インタビューした。

2018.3.16

今日は“HISASHI脳”を明らかにする、解体新書的なインタビューです。まずGLAYの曲を書く時と、他のアーティストに楽曲提供する時は、使う感性は全く違うのでしょうか?

HISASHI
全く違いますね。GLAYの曲を書く時は、自分たちのことだったり、取り巻く環境だったり、流れ行く世相を吐き出せる場所という感覚でやっています。他の方に書く時は、やっぱり俺が作るという事には意味があると思っていて。例えばアニメの主題歌や、ツアーのタイトルソングを書く時は、すでに“側”が決まっているので、そのフィールドの中での制作なので、非常にやりやすいです。逆に「好きに作ってください」と言われると困ります。自分が思っている事や過去のこと、これからのこと、そういうものを言葉にするのは難しいなっていう。相手が決まっている場合は、その人の持つ雰囲気を音にすればいいと考えています。

例えばバンドじゃないもん!の曲を書くとなると、彼女たちのことを想像するとHISASHIさんの頭の中で、何となく曲が響いてくる感じですか?

HISASHI
時代の中での、彼女たちの生き生きとしたキャラクターというか、そういうものは音になりやすいです。それが今度書いた「BORN TO BE IDOL」(※5)(5月9日発売)で、その真逆の感じの曲が「恋する完全犯罪」(※6)です。先日彼女達のコンサートを観に行きました。飽きずに最後まで楽しめるんですよ。どれもリード曲のような感じで、やはり作家陣に恵まれているなと思いました。みんなに観て欲しいコンサートだなって思いました。やっぱりバンドサウンドは気持ちいいですね。

「BORN TO BE IDOL」と「恋する完全犯罪」は両A面シングルですけど、確かに全く雰囲気が違う2曲ですね。

HISASHI
最初に「恋する~」方を書いて、明るく見えるけど、実は秘めた狂気を持っているんじゃないかなとか、無邪気な女の子同士のイタズラが犯罪に繋がっちゃったみたいな、そういうテーマで歌ったら、雰囲気が違っていいんじゃないかと思いました。

「恋する完全犯罪」、名曲だと思います。

HISASHI
やっぱり俺が聴いて育ったポップスとか歌謡曲の影響は、すごく大きいなと再認識しました。

HISASHIさんがはじめて手がけたアニソン、遠藤ゆりかさんの「モノクローム・オーバー・ドライブ」(※7)(2014年)も名曲だなと思いますが、「恋する完全犯罪」もいいですよね。今おっしゃったように歌謡曲、ポップスのフレーバーがふんだんに使われていて、疾走感があってたまらないですよね。海外の人にもウケそうです。

HISASHI
そうですね。ヨーロッパ的なマイナーメロディアスみたいな感じが好きだったんですよね。

アイドルシーンは気になりますか?

HISASHI
アイドルは最近携わることがよくあって、好きなグループもいますし、色々と掘り下げたりしますけど、やっぱりプロデューサーの力が大きいなと思います。「この曲エグいな、誰が作ってるんだろう」って思うと、やっぱりすごいプロデューサーが手がけたりするので、そういうのを紐解いていくと面白いです。アイドルってみんな、その人推しとかがあるじゃないですか。でも俺はそのアイドルが好きだから好きになるのではなくて、曲とか雰囲気とか、完成度の高さに興味があって好きになるので、色々聴いています。

今はアイドルも楽曲の部分で、HISASHIさんを始めとして、色々な作家陣に発注して、他との差別化を図ろうとしていますよね。

HISASHI
そうですね。それこそ秋元康先生(※8)のところは、やっぱり毎回コンペで決まっていると思いますが、常に新しいところにいっているなと、もう感心しかないですね。誰よりも攻めてるんじゃないかなと思いますし、その分賛否もあると思うし、でも日本のエンターテイメントとして、すごく高いところにあるなと思います。

他のアーティストから楽曲提供の依頼が来た時は、そのレコード会社のディレクターやマネージャーと、綿密な打ち合わせをするんですか?

HISASHI
アニメの曲を書く時はしますね。テーマと全く別角度の曲を当てるというのもアリだと思いますが、僕がアニソン世代というか、身近に感じていたので、やっぱりその世界観を壊さない曲を作りたいという気持ちが強いです。

打ち合わせの時は、そこで色々なキーワードが飛び交った方が、想像力が湧きますか?

HISASHI
やりやすいですね。TVアニメ『クロムクロ』(※9)の時は、まさにここ(事務所会議室)で打合わせをしていて、話している間に曲ができあがるというか、テンポと明るさ、言葉のチョイスとか、どれくらい深い世界観かとか、そういうことは話しをしていく中でどんどんできていきます。

依頼された曲と、GLAY曲とでは、曲ができあがる早さには差がありますか?

HISASHI
バラバラなんですよね。「彼女はゾンビ」(※10)はすぐできました。変拍子も必然的に最初からあったし、シリアスをコミカルにというか、そうやってGLAYはやってきたなというのが自分の中にあったので、それを音や言葉にしたのは、久しぶりかもしれないですね。

やっぱりGLAYと並行して、興味があるアーティストへの楽曲提供というのは、これからも積極的にやっていきたいですか?

HISASHI
そうですね。ずっとGLAYばっかり見ていると、同じ影しか残さないというか。違うアーティストに参加すると、光の当たり方が違うんですよね。そうすると自分の影の落ち方も違ってきて、こういう手法や面があるんだって気づかされます。

キャリアが長くなれば長くなるほど、そういう思考は必要だと思いますか?

HISASHI
必要になってくると思います。やっぱり固定概念みたいなものが、邪魔をしていると思います。だから僕やJIRO、TERUがシングル曲を書くのもアリだし、その固定概念が定着してしまう事を、メンバーが一番嫌っています。

成功体験は大切ですが、それにこだわるのも、良し悪しですよね?

HISASHI
でもそこも大事なんですよね。GLAYの魅力というのは、メンバーの仲の良さや雰囲気だと思うし、そういうものを敢えて排除する必要もないし。だからやっぱり僕らの代表曲である「HOWEVER」(※11)とか「BELOVED」(※12)のような曲も、年齢に応じてトライしていきたいという気持ちはあります。あれを超えたいというか、今の年齢でああいうメッセージを歌いたい。GLAYというバンドは、元々ハードな曲とミディアムバラード両方ができるという事は、高校生の頃から変わっていません。90年代は、ミディアムバラードの印象が強くなりましたが、常に尖った手法やメッセージを伝えるということと、この二つが必要な要素なんですよね。

HISASHIさんはあまりテレビに出ないGLAYのメンバーの中でも、テレビで引っ張りだこですが、これも“役割”なんでしょうか?HISASHIさん自身はテレビ出演を楽しんでいるのでしょうか?

HISASHI
プレッシャーですね(笑)。呼んでいただいてありがたいなという気持ち、プラス役にハマっていたかな、求められていることについて、自分の佇まいが正解であったかな、というのは毎回心配です。

地上波で視聴者と対峙するのと、ネット民と向き合うのとは違う感覚ですか?

HISASHI
違いますね。テレビは気がついたらついているという感じの存在なので、プロフェッショナルな世界のイメージです。俺は楽器を持っていないと太刀打ちできないので、色々調べてから臨みます。でもお昼の情報番組とかではないし、トリッキーなテーマで話すことは得意なので、これからも呼ばれたら出たいなと思います。テレビが情報源、テレビ基準という人も多いと思うし、僕らも北海道の片田舎で、情報源といえばテレビでした。大きなメディアなので、そこから少しでもGLAYに興味を持ってくれる方がいる可能性があるのであれば、これからもやっていきたい。

ネット界もざわつかせて、テレビでもざわつかせるHISASHIさんは、やはりGLAYの中では特異な存在ですよね?

HISASHI
好きなことや面白いことをやっているのだけなので、手法が増えただけだと思います。テレビの人が僕を選んだりとか、動画サイトが身近になったり、パソコンの普及も大きかったかもしれません。僕が近づいたというよりは、周りの人が近づいてきてくれたというイメージです(笑)。

『SUMMERDELICS』でHISASHIワールドが炸裂した感はありますが、考えてみるとHISASHIさんが曲を書き始めたのは「Cynical」(※13)(1995年)からで、もうデジタル色を前面に出して、その存在感を残していました。

HISASHI
90年代はメンバーのカラーを出すというよりは、バンドの印象を強く打ち出していたので、僕の曲はカップリングやアルバムで、GLAYにない面を作っていました。僕らはプロデューサーの佐久間正英さん(※14)と一緒にやってきたので、コンピュータベースのレコーディングは、割と早く取り入れた方だと思います。『SUMMERDELICS』のコンサート演出のアイディアも、前半三曲はやらせてもらって、ああいうことも実は初めてやりました。

結構ショッキングな映像が使われていました。

HISASHI
結局バランスなんですよね。これはいいけどこれはダメみたいな、そういう感覚が自分の中でちゃんとあって。だからメンバーも任せてくれたのだと思う。オープニングからホラーやサスペンスを連想させる映像を使って、大きな空間の中で行われるショーなので、そういうスリリングで、意味ありげなオープニングは結構好きですね。

今まで見た事ないGLAYの世界に、一瞬で引き込まれました。

HISASHI
GLAYって昔からU2(※15)みたいだなって思っていて。U2ってアルバムを出す度にテーマが違っていて、コンサートのオープニングで、今回のU2は違うと思っても、最後はいつもの感じのU2になっていて、GLAYもそんな感じなんですよね。『HEAVY GAUGE』(※16)とか結構重厚なアルバムを出しても、最後はみんなで歌おうみたいな感じになったり。僕らはコンサートの最初に、“今のGLAY”はこんな感じです、というのを観てもらうだけでもいいかもしれない。最後までそれを引きずって、無理矢理ホラーで終わるのも全然違うと思うし、最後はいつのようにみんなで『I’m in Love』(※17)を歌って終わるみたいな。

オープニングが遠い過去だった、みたいな。

HISASHI
そうなんですよね。印象って結構最後の方のものが残ると思うので。僕がコンサートで一番好きなのは、オープニングでメンバーが出てくるシーンなんです。一瞬で空気が変わるというか、だから結構オープニングSEも今までたくさん作っていて、作品化されていないのもたくさんあります。

HISASHIさんの中で、自分の世界観を表現するためには、言葉とメロディと、映像も欠かせないものですか?

HISASHI
そうですね。俺が使う映像はギミックというか、そういう感じのものが多くて。雰囲気ものの、美しい映像も使ったりもしますけど、そうじゃないちょっとエグいものとかそういうのが好きで、割と物議をかもすくらいのものをやりたいなと思っています(笑)。
『微熱Ⓐgirlサマー』(※18)は、青春のラブソングみたいな曲なので、あの頃の甘酸っぱさをちょっとだけエロティックなものに置き換えたら、GLAYのファンの方はどこまで許してくれるのかとか考えたり。あまり許してくれなかったけど(笑)。爬虫類を使ったものとかは評判が良くなったです(笑)。

やっぱり評判は気にするんですか?

HISASHI
でも終わった事ですからね。俺的には今回かなり踏み込んだなという達成感はあります。ファンの方は、もうあるものとして楽しむというか、観る側としてもすごくプロフェッショナルだと思います。本当にみんな楽しんでるなっていうか。

観ている方もプロ、というのはいい関係ですね。

HISASHI
一緒に育っている感じですね。でもそういう甘やかされた環境というのはよくないとも思っていて、アメリカでコンサートをやった時とかは、反応がバラバラだったので、もっともっと頑張らなければという気持ちになりました。

これからますますHISASHIワークスは増えていきそうな感じですね。

HISASHI
そうですね。この前『hide TRIBUTE IMPULSE』(※19)(6月6日発売)の作業が終わったのですが、こういうプロジェクトに単独で参加すると、意外な発見があったりして。これはGLAYに持っていける要素だなって思ったり。

やはり何をやっていても、GLAYに持って帰ったら面白いかも、という感覚があるんですね。

HISASHI
そうですね。バンドの中では、世界の面白いものを紹介するようなキャラクターだと思っているので。例えばダブステップ(※20)みたいな音楽を入れたらカッコいいよ、とか。GLAYに合う合わないはあると思うけど、そういう役割なんだなと思っています。

文・田中久勝
※1:アルバム『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)リリース。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。
※2:『関ジャム』
関ジャニ∞の音楽バラエティ番組。関ジャニ∞が毎回様々なアーティストをゲストに迎え、一夜限りのジャムセッションやトークを繰り広げる音楽バラエティー番組。HISASHIは2017年6月11日、佐橋佳幸、MIYAVIとともに出演。
※3:『タモリ倶楽部』
1982年放送開始の長寿番組。すべてロケで行なわれる「流浪の番組」。さまざまな社会現象をタモリとゲストで掘り下げる。番組内のコーナー『空耳アワー』も人気。HISASHIは2018年4月6日放送回に出演。
※4:デアゴスティーニ
HISASHIは毎週少しずつパーツが届く「週刊バック・トゥ・ザ・フューチャー デロリアン」に取り組んでいることを公言している。『タモリ倶楽部』のディアゴスティーニ特集に出演した。
※5:「BORN TO BE IDOL」
2018年5月9日リリースのバンドじゃないもん!のダブルAサイドシングル。往年の斉藤由貴を彷彿とさせる王道アイドルソング。
※6:「恋する完全犯罪」
2018年5月9日リリースのバンドじゃないもん!のダブルAサイドシングル。HISASHIは「今回の話を頂き数日でサラリと書き上げた」という。
※7:遠藤ゆりかさん・「モノクローム・オーバー・ドライブ」
歌手・声優。2014年リリースの「モノクローム・オーバー・ドライブ」をHISASHIが作詞・作曲・プロデュースを手がけた。テレビ東京系アニメ『Z/X IGNITION(ゼクス・イグニッション)』のエンディングテーマ。
※8:秋元康先生
日本を代表する作詞家。AKB48グループや坂道シリーズのプロデューサーを務める。
※9:TVアニメ『クロムクロ』
2016年4月~9月放送。HISASHI作詞・作曲の楽曲「デストピア」「超音速ディスティニー」が主題歌。
※10:「彼女はゾンビ」
2016年1月27日リリース『G4・IV』収録。HISASHI作詞・作曲。「シン・ゾンビ」のもとになった曲。
※11:「HOWEVER」
1997年8月6日リリース、12thシングルにしてGLAYにとっては初のミリオンセラーとなった代表曲。
※12:「BELOVED」
1996年8月リリース、GLAY9枚目のシングル。TAKUROが作詞・作曲したGLAYを代表するラブソング。
※13:「Cynical」
1995年11月リリース、GLAY7枚目のシングル「生きてく強さ」収録曲。
※14:佐久間正英さん
ロックバンド、四人囃子の元メンバーで、プロデューサーとしてBOØWYやザ・ブルーハーツ、GLAY、JUDY AND MARYらを手がけた。
※15:U2
1980年デビューのアイルランドのロックバンド。売上も観客動員も世界最大規模の成功を収めるロックバンド。グラミー賞の獲得数22作品は“ロック・バンド史上最多”。音楽性を変化させながらメッセージ性の強いコンセプチュアルな作品を発表する一方、スタジアム級の大規模会場で映像や演出を多用したワールドツアーを成功させている。
※16:『HEAVY GAUGE』
GLAY、メジャー5作目のアルバム。1999年10月リリース。「GLAY EXPO '99 SURVIVAL」の前後に収録されたこともあり重厚な作風が際立ったアルバム。売上枚数は235万枚でGLAYのアルバムでは歴代2位。
※17:『I’m in Love』
GLAY、メジャー4作目のアルバム『pure soul』収録曲。1998年7月リリース。オセロ、長島三奈、鈴木紗理奈、山本シュウ、中山加奈子、富田京子、せがわきりなどがコーラスで参加。ライブでもラストナンバーとして演奏されることが多い。
※18:『微熱Ⓐgirlサマー』
2015年5月25日発売のシングル「HEROES/微熱Ⓐgirlサマー/つづれ織り~so far and yet so close~」収録曲。HISASHIが作詞・作曲を手掛け、コンタクトのアイシティ夏のキャンペーンCMソングにも起用された。
※19:『hide TRIBUTE IMPULSE』
X JAPANのギタリスト hideの没後20年のトリビュートアルバム。HISASHI×YOW-ROW「DOUBT」を収録。
※20:ダブステップ
イギリス産のダンスミュージック。レゲエから派生したダブの手法と、90年代に生まれた2ステップ等のダンスミュージックを組み合わせたジャンル。アーティストではスクリレックスが世界的な人気を獲得している。

Vol.71 JIRO WEBインタビュー

台湾、そして香港でのライヴが目前に迫ったGLAY。昨年末からはメンバー個々の活動に移っていたので、2018年のGLAYはこのアジア・ツアーからお目見えという形になる。今回はそれに当たってJIROに単独インタビューを敢行。彼は2月上旬まではTHE PREDATORS(※1)で全国ツアーを廻っており、その楽しそうな姿を見たファンも多いだろう。取材を行ったのはそのアジア公演のためのリハーサル・スタジオのロビー。TAKUROをはじめメンバーが「おはようございまーす」と徐々に集まってくるそばで、今の心境をニュートラルに語ってくれたJIROだった。

2018.3.16

JIROくんは2月にTHE PREDATORSのツアーを終えたわけですが、去年の年末まではGLAYのアリーナ・ツアーがありました。このところ、そうしてライヴと制作が交互に連なっている状態がずっと続いているんですが、それはいかがですか?

JIRO
そうですね。でも、そのペースで気持ち的に落ち着いてるところがあります。今はTHE PREDATORSが終わって、主にアジア・ツアーに向けての個人練習の時間に当てています。で、今回演奏するのが『SUMMERDELICS』のツアー(※2)でやってきた曲が大半なので、「2ヵ月空いてるので忘れてるかな?」と覚悟してたんですけど、意外と覚えてました。それがわかったら一気に気が抜けて、もう何にもしたくなくなって(笑)……今は家で音楽聴いたり映画観たり、のんびりしてますね。

(笑)そういう時間も必要でしょう。で、それだけ曲が身体に入り込んでたわけですね。

JIRO
そうですね。(『SUMMERDELICS』(※3)収録曲の)フレーズは難しかったんですけど、そのぶん集中してやっていたからなのか、けっこう覚えていました。間にTHE PREDATORSのツアーが入ってたから、絶対忘れてるかなと思ってたんですけど、意外と……別腹じゃないですけど(笑)、こっちはこっちで残ってましたね。バンド演奏という、基本的には同じことをやっているとはいえ、(ふたつのバンドでは)ちょっとテイストが違うというか。

そう、そこをあらためて聞いておきたいんですけど。「これからライヴをやります」という段階だとして、GLAYとTHE PREDATORSの感覚は、どのぐらい同じで、どのぐらい違うものなんですか?

JIRO
けっこう違いますね。GLAYの場合は、身体が緊張して指が攣ったりしないように、ライヴ前に時間を作って楽屋でトレーニングをしたりします。そうして軽い筋トレをして、身体の緊張をほぐしてからヘアメイクして本番に臨む、みたいな感じなんですけど。THE PREDATORSの場合は……本番前にはストレッチぐらいですね(笑)。これはいい意味で言うんですけど、ライヴハウスのほうはお客さんが勝手に楽しんでくれるというか。だから「こっちはただ演奏するだけでいいかな」という感じなんですよ。それがGLAYだと……会場がアリーナとかなら、ほんとに後ろのほうのお客さんには「なーんだ、この席だと楽しめるのか、わかんないな」みたいな人たちもいっぱいいると思うんです。でもライヴをやる以上、そういう人たちも納得させないといけない。そのためには(意識として)より遠くに届けようとするので……気持ち的には疲れるんでしょうね。

なるほど。会場がアリーナのように大きな規模だと、演出や仕込みのことを意識しないといけないのもあるんじゃないですか?

JIRO
まあ、そうですね。ただ、演出に任せておけばいいかといえば、そうでもないんです。GLAYに関しては、(自分たちの)後ろで面白い映像が流れてても、俺たちのほうを見てるファンの人たちにアピールしなきゃいけない!という気持ちがあるんですね。セットや映像があるので俺たちはただ黙々と弾きますよ、みたいなバンドじゃないので。だから「一瞬たりとも気を抜けないな」というのはあります。

ああ、演出の段取りとかよりも、やっぱり演奏への集中力のほうが大事だと。そうですね、GLAYの時のJIROくんは、ほんとに魂で弾いてるように見えるんですよ。で、それに対してTHE PREDATORSではもっとこう、気持ち良さのほうが伝わってくるというか。

JIRO
(笑)それは今回、自分でもあらためて思いました。THE PREDATORSは、それこそ遊びなんですよ。だから、とにかく気楽に演奏できるなって。まあお客さんには同じようにチケットを買ってもらって、来てもらってるんですけど……THE PREDATORSは「お金払ってくれてるけど、俺たちの趣味的な遊びを見たいんだよね? だから俺たちは好き勝手やるよ。それでも見たいんなら、どうぞ!」みたいな(笑)。そういうのに近いかもしれないですね。

そうそう。すごくわかります。

JIRO
それが今はより濃くなったなと思います。だからTHE PREDATORSは、やるべきことをやる、それで楽しんでるものを見てもらう、という感じですね。GLAYの時は「こんなのもありますけど、どうですか?」「みなさん、楽しんでる?」という気遣いがあるかもしれないです。

今回、THE PREDATORSはツアーファイナルのZepp DiverCityを見せてもらったんですけど、その「楽しんでやってるな」と思った瞬間のひとつが、アンコールで缶ビールを飲んでる姿を見た時でした。ああいうの、GLAYではやらないですよね?

JIRO
うーんと、昔はやりましたけどね……90年代後半とか、ライヴハウスでやってる頃とかですけど。あれはピロウズが毎回やってるんですよね。アンコールで出てきて、みんなでトークを回しながら飲む。(山中)さわおさん(※4)はそのスタイルをTHE PREDATORSに取り入れたんです。で、ピロウズの場合は、基本的にさわおさんがしゃべって、誰かが面白い話をしたらさわおさんが突っ込んで、みたいな感じなんですけど。俺たちの場合は、ほんとに全員自由で(笑)。高橋(宏貴)くん(※5)も自由だから突然何を言い出すかわからないというのも含めて、面白かったですね。

だってDiverCityの時の2回目のアンコールなんて、出てきてからのMCが15分もあって、そのあとの最後の曲は2分ちょっとでしたからね。

JIRO
そうそう! そうなんですよ(笑)。あのDiverCityの時のMCは相当面白かったですね。俺もあらためてオフライン(=編集の映像)のチェックをするために家で観てて、爆笑しましたから(笑)。

で、THE PREDATORSはそのツアーのDVDが出ることになっていて、楽しいライヴの模様が収録されていると思うのですが。これに収録される特典映像について、高橋くんがブログで「ふたりに騙された」みたいなことを書いてましたよね。

JIRO
(笑)そうなんですよ。まず高橋くんには「ある曲のミュージックビデオを撮ります」という企画を伝えておいたんですけど、ほんとのことは内緒にしといて……その場でいきなり曲を作ってもらったんです。実はツアー中からさわおさんが高橋くんに「お前は今回(のEP)でも1曲採用されてるけど、俺にプレゼンする時に2曲しか作ってこなかったよな? しかも前回初めて作った時は、まさかの1曲しか書いてこなかった。JIROくんを見てみろよ! 毎回4曲も5曲も作って俺にプレゼンしてくるんだぞ? お前はどんだけ偉いんだ!」みたいな話をしていたんですよ。いじりみたいな感じで。で、「今後もまだ作りたいのか?」「はい、もちろんです」みたいな振りがあって、「そんなに曲が作りたいなら今から作ってみろ! 1時間やるから曲作れ!」って。「それで俺が歌詞書いて、バンド・アレンジして、今日すぐレコーディングしよう!」みたいな。それをやったんですよ。だから新曲ができたんです(笑)。

(笑)それはどういう映像になっているのか、楽しみですね。それからTHE PREDATORSは4月にARABAKI ROCK FEST.(※6)に出ることが決まってますね。

JIRO
8年ぶりらしいんですよね。その時は緊張していないようで、けっこう緊張していた記憶があります。僕自身、フェスって特別な空気感だなと感じてるところがあって……気持ちがちょっと浮ついてるんだけど、バシッときめないとな、みたいな。そういうヘンな緊張感があったような気がします。でも今回はツアー明けだし、今の俺だったらあんまり気負わずに、普通に楽しめるんじゃないかな。フェスに来てる人たちも、めったに観れるバンドじゃないし、曲が単純で乗りやすいと思うので、観たい人は来てほしいですね。なので、自分としては前回とはちょっと違う感じでやれそうです。まあ……間違えても何でも、俺たちが楽しけりゃいいや、みたいなところもありますけど。遊びのバンドなので(笑)。

(笑)始まりから、そうでしたからね。そしてGLAYのほうはアジア・ツアーがもうすぐなんですが、今どんな気持ちで向かっていますか?

JIRO
気持ち的には、まだ現実味がないですね。というのも今回はリハーサルが短くて、4日だけなんです。ただ、去年の6月に「金曲奨」(※7)という台湾の音楽祭に行って、実際に僕らがライヴをやる台北アリーナでパフォーマンスさせてもらったんですけど、そこがとんでもなく広いんですよ。日本だと、さいたまスーパーアリーナぐらいかな? すごくぜいたくな造りの会場で、若干ビビってたんです。だけどその後GLAYでアリーナ・ツアーやって、THE PREDATORSでまた「やっぱり音楽って楽しいな」みたいなお気楽ムードもちょっと味わえたので(笑)、今はプレッシャーはあまり感じてないですね。

はい。それこそ、これだけライヴをやってきてますからね。

JIRO
うん。それに最近だんだん開き直ってきてて、「どんなに練習しても、間違える時は間違える」みたいなところもあるんですよ(笑)。これは表現的にはあまり良くないかもしれないけど、(演奏のミスは)交通事故みたいなものだと思ってるんです。「何で今まで弾いてたものが突然スコーンって抜けたりするんだろうな?」って思うんですね。べつに気を抜いてるわけじゃないのに。でも「そういうことって普通に起こりうるな、だからそれに関してはしょうがないな」って。「そこで落ち込むよりは、これ以上の失敗はないだろうから、逆に楽しんでやろう!」と思ったほうがいいかなって思ってます。

JIROくんは、台湾や香港という土地には、どんな思い出や印象を持っています?

JIRO
台湾には2001年のEXPO(※8)の時から仲良くしてる地元のバンドがいて、僕らが台湾に行く時には応援に駆け付けてくれるので、いろいろと思い入れがありますね。香港は前回アリーナをやるまで、俺たちが(香港について)とくに何かを語ったことはなかったけど、でもライヴをやってみたらGLAYを知ってくれてる人たちがすごくいてくれたことに、まずビックリしました。90年代の後半ぐらいに「GLAYが現地ではすごく人気があるよ」って言われてたのを聞いたことがあったんですけど、それから10何年も経っているわけだし、自分たちからは何のアクションも起こしてなかったし、「やってみたところで、もしかしたら閑散としてるのかもしれないな」なんて思ってたんですけど、そんなことはなかったです。それはかなり自信になりましたね。まあ、どちらも楽しんでやれたらと思います。

ライヴをする上で、日本と違う感じってあるんですか?

JIRO
全然違いますね。自分たちと同じような顔つきをしてても、やっぱり外国なので……それこそステージからでも日本語で唄ってくれてる人たちがいっぱい見えるので、それには純粋に感動しますね。それに今、GLAYで日本国内でライヴやってても「香港」とか「台湾」とか書いたプレートを持って遠慮がちにアピールしてくれてる人がいますけど、そういうのを見ると、うれしいですね。

いわば、音楽が国境を超えている瞬間ですものね。

JIRO
そうですね。日本の人たちでも「GLAYのチケット取れない」って言ってるファンがいるのに、海外から僕たちを観るためにお金もかけて手間暇もかけて来てくれてるわけだから……それはうれしいですね。

この2公演のセットリストはどんなものになりますか?

JIRO
『SUMMERDELICS』のツアーからは3分の1くらい変えて、メジャーな曲を入れてます。とはいえ、アルバムのツアーのひとつで行く感じではありますけど。あと、その去年6月の金曲奨でTERUが唄いながら客席を見渡した時に、すごい焦ってたらしいんですよ。「ほんとに入るのかな、これ?」みたいに。で、台湾でライヴをやることが発表になったのが前回のアリーナ・ツアーの最中だったんですけど、TERUが福岡の時に「福岡と台湾、近いんでしょ? みんな来ちゃいなよ!」みたいなことをMCで言ってて(笑)。そのおかげもあって、日本からもたくさん観に来てくれるみたいです。そうなると「何度も演奏してるようなメジャーな曲ばかりじゃ、まずいんじゃないかな?」というのもあるので、うまいこと何曲かレア曲を入れてみたりしようと思います。

ということは、ツアーの特別版みたいな内容になりそうですね。向こうはこちらよりも暖かいでしょうし、いいコンディションでできるといいですね。

JIRO
うん、大丈夫じゃないですかね。メンバーとも話してたんですけど、海外といっても地理的には近いので、国内を移動するような感覚でやれたらいいなと思います。「アジア・ツアーです!」みたいな感じでやるよりは、日本と同じような感覚で行けたらいいなって。

では、その成功を祈ってます。

JIRO
はい! ありがとうございます!
文・青木優
※1:THE PREDATORS
2005年結成。the pillowsの山中さわお、GLAYのJIRO、ストレイテナーのナカヤマシンペイで結成。ナカヤマは2010年3月に脱退。ELLEGARDEN、Scars Boroughの高橋宏貴が加入。いままでにアルバム5枚、DVD3枚をリリース。今年1月に会場販売と通信販売限定シングル「Arabian dance」をリリース。約2年半ぶりの全国ツアー「Arabian Dance Tour」も開催。
※2:『SUMMERDELICS』のツアー
2017年9月23日(土・祝)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターから12月17日(日)愛知・日本ガイシホールまで23公演で開催されたアリーナツアー。
※3:『SUMMERDELICS』(アルバム)
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。
※4:ピロウズ・さわおさん
1968年12月7日、北海道出身。1989年結成のthe pillowsでVo.&Gを務める。JIROと意気投合してTHE PREDATORSを結成。
※5:高橋(宏貴)くん
ドラマー。1998年にELLEGARDEN 結成を結成。2008年、Scars Borough を結成。2010年にTHE PREDATORSに加入。
※6:ARABAKI ROCK FEST.
2001年から仙台近郊で開催されているロックフェスティバル。THE PREDATORSは今年、2010年以来8年ぶりの出演となる。
※7:「金曲奨」
台湾のグラミー賞とも呼ばれる音楽に関する賞。台湾の3大娯楽賞の一つ。2017年6月24日(土)に開催された第28回金曲奨でGLAYは特別パフォーマンスを行なった。
※8:2001年のEXPO
GLAY EXPO 2001 "GLOBAL COMMUNICATION"、東京スタジアム(現・味の素スタジアム)、北海道・石狩市青葉公園特設ステージ、北九州マリナクロス新門司ステージで開催された。九州公演には紫雨林(韓国)、DOME(タイ)、ニコラス・ツェー(香港)、メイデイ(台湾)、The d.e.p (ビビアン・スー、佐久間正英、土屋昌巳、ミック・カーン、屋敷豪太による日台英混合バンド)が出演した。

RECENTLY NEWS