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Vol.68 HISASHI WEBインタビュー

王道のTAKUROメロディを
メンバーが待っていたということは、
ファンの皆さんも待っていたはず。
GLAYはいつも誰かのための曲を歌ってきた自負がある

2017.12.11

「あなたといきてゆく」を最初に聴いた時の感想から教えて下さい。

HISASHI
こういう曲をメンバーが待っていたということは、ファンの皆さんも待っていたんじゃないかなというくらい、かなり優等生というかGLAYのフォーマットに則ったTAKUROのメロディだなと思いました。最近はTAKURO以外のメンバーがシングル曲を書いたりしていたので、GLAYの王道メロディを聴きたいなというリクエストは、僕の中でありましたし、そろそろそういうタイミングなんじゃないかなという話はメンバーにしました。

春の『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』(※1)からすでに披露していましたが、お客さんの反応をどういうふうに感じていましたか?

HISASHI
やっぱり落ち着くんじゃないですかね。ソロも含めてTAKUROのロックンロール時代が到来していたので、そういう曲がある中で「あなたといきてゆく」(※2)のような曲は、やっぱり安心すると思います。今まで王道以外の曲を聴かされていたリスナーの方は、若干不安に思っていたのではないでしょうか(笑)。

頭の<年が明けたら結婚しようよ>という歌詞が強烈ですが、詞に関してはHISASHIさんどういうふうに思いました?

HISASHI
10代の頃に「ずっと2人で…」という曲を作って、これはTERUのお姉さんの結婚式に向けて書いて、その後に、友達に息子が生まれたということを聞いて「グロリアス」(※3)を書いたり、その世代によって常に誰かのために曲を書いているなという気持ちはあります。その集大成のような、40代半ばで書く歌詞としては、非常にすんなりと入ってきました。人生を背負いながらバンドをやってきた結果、GLAYの曲を結婚式で使いたいと言ってくれる人も多いですし、今ライヴに三世代で来てくれる人とか、若い人もたくさん聴いてくれているという話を聞いて、我々の世代も親になってくるという事で、自然とこういうメッセージが生まれるのではないかなと。もう孫ができていますよ、「グロリアス」が生まれるきっかけになった子は(笑)。

デビューして23年、時間が経ちました。

HISASHI
結成して30年近いですし、しかもその間ほとんど活動休止することもなくやってきたので、本当にその時々の歌をリリースし続けてきて、それはファンの方も同じだと思います。例えばパートナーと出会って別れて結婚してとか、そういうバックグラウンドにGLAYの音楽が流れていると、すごく嬉しいですよね。

それぞれの時代の様々なシーンにGLAYの曲は寄り添っているということですよね。

HISASHI
しかも音楽の伝わり方はかなり変わってきたと思うし、配信やサブスクリプションが始まってデジタル化してきて、ミュージシャン的には面白いくらい色々なことがありました。その中で僕たちは面白がりながら、自分たちの活動を飽きることなくやってこれたというのは、すごく幸せだなと思います。ライヴでもレコーディングでも、刺激的な日々を送ることができています。

『SUMMERDELICS』(※4)がまさにそうですよね。

HISASHI
今の環境がさらにGLAYを自由にさせてくれているような気がして、無理なくのびのびとやっています。

『SUMMERDELICS』を聴くと、HISASHIさんの頭の中を覗きたくなるくらい、トリッキーで、惹きつけられる曲が多いですよね。同時に、聴き終わるとやっぱりGLAYなんだという安定感も感じることができます。

HISASHI
最終的にTERUが歌うことが前提にあるので、どれだけ冒険してもTERUというフィルターを通すことによって、随分と間口が広くなります。曲に説得力を与えてくれるし、どんなに自由なことをやっても、毎回魔法のようにそうやって仕上げてくれるので信頼しています。

それぞれが強力に信頼し合っていて、それぞれの役割分担がしっかりあって、でも一つの核があって、芯が通っているのがGLAYですよね。

HISASHI
そうですね、たぶん僕がアルバムの中で、真ん中から外していくポイントは、信頼されているからこそできる部分と、本当に気をつけて挑んでいかなければいけない部分とがあるので、そういう意味では僕自身がストッパーにはなっているんですよね。

HISASHIさんがキーマンとなっている今回のアルバムですが、実際にライヴでやってみて、感じ方はどう変わってきましたか?

HISASHI
僕らはすごく純粋にやっていたつもりですが、リリース前はどういうふうに受け止められるんだろうという不安がありました。でもお客さんはみなさんライヴを楽しむのがうまいですよね。自分なりに解釈して、自分なりに楽しんでいるところが。「あなたといきてゆく」というGLAYの王道曲があるのはもちろん承知の上で、それプラス、メンバーの遊びという部分に付き合ってくれている感じがします。アリーナ向けに作ってたんじゃないかっていうくらい、一曲一曲の会場適応能力は意外と高かったですね。これは確かにライヴはもちろんだけど、商業的要素も音楽の中に含まれているのかなっていうくらい、そういうところって作るのが難しいと思いますが、それが大きなアリーナのスペースに相応しい楽曲に仕上がっている感じがします。

GLAYらしさも感じさせてくれつつ、斬新で新鮮、このキャリアでこういうアルバムを作りあげるのはすごいなと、GLAYの底力を見せつけてくれました。

HISASHI
デビューして23年も経つと、ベテラン感が出てもおかしくないですが、常に音楽的な挑戦や冒険心を持って活動しています。レコーディングとライヴを天秤にかけた時、やっぱり僕はレコーディングの方が好きなんですよ。新しいものがそこから生まれていくという意味では。でもやっぱりレコーディングだけでなく、ライヴで音が初めて空気と混ざる瞬間であって、そこで初めてお客さんが体感するということになると、ライヴもレコーディングに近い、新しいものを生み出す瞬間なんだなと、今考え方が変わってきています。

圧倒的なライヴの面白さも、GLAYの強さのひとつです。

HISASHI
やっぱりメンバー全員が音楽ファンであり、リスナーであり、お客さんを楽しませたいし、自分も楽しみたいという気持ちが強いのだと思います。それぞれが面白いと思っていることが、音楽を作ることだけではなく、エンターテイメントとして披露し続けてきたことが、今に繋がっているのかなと。僕は舞台をよく観に行くのですが、ライヴの技術とは全く違うアイディアがたくさんあって、ヒントがいっぱいあります。照明とか特効もそうですが、それ以外のアイディアがライヴにおけるひとつの要素として、すごく大事になってきていて、舞台に影響を受けたりすることはあります。

今回のアルバム、ライヴを通して、その斬新さに戸惑いを感じている人もいるのでは、とTAKUROさん言っていましたが、HISASHIさんの中ではどう感じていますか?

HISASHI
そうですね、今回は結構奇抜なアイディアが多くて、新しいことをやるときは犠牲がつきものだと思うので、そこからまた新たなGLAYのスタイルが生まれてくると思っていて、そういうった犠牲は僕は恐れないようにしています。

HISASHIさんの世界観が、今のGLAYにいい差し色になっていますよね。

HISASHI
僕は新しい機材もそうですし、SNSのような時代のツールも、結構躊躇することなく早い時期から使っていて、だからそれまで出会うことがなかったジャンルの方と知り合って仕事ができるので、それをGLAYの音楽に反映できたらといつも考えています。

HISASHIさんの中で、新しいものを取り入れたり取り組んだりする時は、GLAYとしてはこれ以上は、とか、ここまで、ということはやはり考えるのでしょうか?

HISASHI
それは考えますね。でもそれによって面白さや楽しさが半減しないように気をつけていて。伝わり方が人それぞれ違うので、今回のライヴでも、映像で今までは見せてこなかったセクシャルな部分とか、そういうアプローチをしたいなと思って、でもそのさじ加減がすごく難しくて。やり過ぎてもダメだし、逆にやらなさ過ぎてもダメだしというところで、映像素材の選び方も考えに考えて、幼稚になったり、過激になったり、絶妙なバランスのところを探しましたね。やっぱりそのさじ加減が一番大事で、お客さんの評価が、全てにGLAYに向かってきます。意外とここまでやってもいいんだと思ったり、これはダメだったかという事もあり、毎回アップグレードしながらやっています。今回もセットリストはJIROが考えてくれ、序盤のプロックは僕のカラーが強くなっていて、こんなことできるのかなっていうことも、映像のスタッフと今までないくらいこだわって作り上げました。最終的に最後の曲が終わった時には、この20年間で作ったGLAYの世界観が残っていて、結局何も変わっていないんだねって(笑)。毎回そうなんですけど温かい雰囲気で終わるという。

それがGLAYのバンドとしての強さで、新鮮さを上乗せし続けている、更新していっているということですよね。

HISASHI
そうですね、更新という表現が近いと思います。最近のアリーナツアーでは、かなりメンバーのアイディアによるところが多く、音プラス演出で、さらにその曲の伝わり方や魅力が膨らむと思うので、リハーサルでは演出のことを常に考えています。逆に全く演出がいらない曲もあったり、それはそれでひとつの見せ場にもなると思うし。今回のツアーほどこだわったツアーは今までなかったかもしれません。

そのツアーも後半戦に突入しました。

HISASHI
リハーサルの時間を十分にもらえたし、映像のアイディアをしっかりつめることができたので、実は初日から割と完成度が高くて。僕らが今やりたいことはこれですという意志表示が、初日にしっかりできたという自負があります。

TAKUROさんは『SUMMERDELICS』を第二のデビューアルバムと言っていましたが、発売から少し時間が経って、ライヴでも何度も演奏して、改めてこのアルバムはHISASHIさんにとってどんな存在でしょうか?

HISASHI
たぶんみんなが肌で感じているのは、20周年を終えての次のGLAYの展望というか、また新たなスタートラインに立てたということだと思います。それは僕もすごく感じています。10年、20年というのは確かにただの数字かもしれないけれど、僕らの中では大きな区切りになっていて、20年続けてきて、これから30年、40年とどういう風にバンドを運営していこうということを考えるきっかけの一枚にはなりました。GLAYって結構計画的なバンドで、10年ぶりの東京ドームや、20周年で色々な場所に行ったり、そういうことが計画的に行えていたので、今後はどういう態勢で挑めばいいのかが、このアルバムではできていると思います。でもまだまだやり残したこともあるので、次にやりたいことリストはもうすでにかなりあります(笑)。

TAKUROさんだけではなく、メンバー全員がシングルを手がけることも増えていますが、これからも多くなりそうですか?

HISASHI
必要に応じてだと思います。でもシングル曲を作りたいとはメンバーは思っていないと思う。もしそのシーンに合う曲を作れたら協力したいな、というスタンスだと思います。むしろ90年代よりもシングルという定義が甘くなってきていて、今回の「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」もそうですが、ギフトに近い感覚だと思います。リスナーにいち早く聴いてもらうために作る曲というか。リード曲があったら、おまけもたくさんつけてという感じで、最近のシングルにはすごくギフト感を感じます。

「あなたといきてゆく」は、どこか郷愁感が漂うというか、どうしても函館の風景をイメージしてしまいます。

HISASHI
やっぱりそうですよね。海外でいうとアイルランドとか、メンバーから滲み出る冬感っていうのはありますね。

曇りなんですが、時々日が差しこんでくるイメージが、GLAYの曲は多い気がします。

HISASHI
函館は本当に曇りの日が多かったので、低い雲の感じはたぶんメンバーの意識の中にありますよね、秋から冬にかけての寒くて淋しい感じとか。

斬新なアルバムを引っ提げてのツアー中に、いわゆる王道ソングをリリースするのもGLAYらしいファンへのサービスという感じがします。しかもアルバムに収録されるはずだった曲です。

HISASHI
そうなんですよ。曲として完成度が高い優等生の曲は、意外とアルバムには混ざらないんだなというのが今回わかりました(笑)。でもウエイトもかなり重い方なので、夏よりは冬に出せた方がよかったと思います。

これからのHISASHIさんは、プレイヤーとしてもソングライターとしても、色々な人と組んでやりたいという気持ちが強くなっていますか?

HISASHI
そんなに強くはないんですけど、いい出会いがあってそこでの化学反応、摩擦という、そういう熱は信じたいですね。

GLAYのメンバー全員のロックへの熱も、今回のアルバムもそうですが、どんどん熱くなっている気がします。

HISASHI
ロックンロールにずっと憧れてきて、それは今も続いていて、まだロックに騙されている感じは続けたい(笑)。騙されているのは知っているけど続けるよ僕らは、という感じだと思います。お利口さんにならないで、でっかいロックンロールショーを観にきてよ、どうせならミュージシャン目指してよと、純粋に思える世代になりましたね。ロックンロールのバカらしくてでもカッコイイ、そういう幻想にずっと憧れています。

最初にも出ましたが、強力な信頼関係は、本当に仲がいいからこそですよね。そこが最大の武器です。

HISASHI
GLAYありきなところがあって、GLAYというバンドがあるから音楽をやっているんじゃないかなって。これを大事にしなくて何を大事にするのか、という気持ちはますます強くなっています。
※1:『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』
2017年4月14日(金)島根県芸術文化センター「グラントワ」から5月25日(木)石川・金沢歌劇座で行われた追加公演まで、全10都市14公演(振替公演も含む)で開催されたホールツアー。
※2:「あなたといきてゆく」
2017年11月22日リリースのシングル「WINETRDELICS.EP~あなたといきてゆく~」収録の表題曲。TAKURO作詞・作曲による壮大なバラード。
※3:「グロリアス」
1996年1月17日リリースの8thシングル。ヴィクトリアのCMソングに起用され、シングルとしては初のオリコントップ10入りを果たした初期の代表曲。
※4:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。CD Only盤、CD+2DVD盤、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition)の3つのバージョンが発売された。

Vol.67 TERU WEBインタビュー

最初から「あなた」は平仮名ではない不思議な感覚があって、歌い方を変えた。
結婚式のイメージが広がり、“家族”の画が見えて、優しい結婚ソングにしたかった

2017.12.08

「あなたといきてゆく」(※1)は、当初はアルバム『SUMMERDELICS』(※2)に収録される予定だったそうですね。

TERU
そうなんです。『SUMMERDELICS』というタイトルになったのは「あなたといきてゆく」が外れた時に、夏を楽しもうという雰囲気になったからだと思います。<年が明 けたら結婚しようよ>って夏に歌われてもなって(笑)。

最初にこの曲を聴いた時はどんな感想を持ちました?

TERU
随分シンプルな曲を書いてきたなって思ったのと、いつもはいわゆるコンポーザーとしてのテクニックをどこかしらに入れ込んでくるのですが、今回はそういうものを入れずに、本当にギター一本で歌えるシンプルなバラードを作ってきたなという印象でした。

最初に聴いた感じと、レコーディングで歌った時の感じは違いましたか?

TERU
最初に歌詞をもらった時は「あなた」の部分が全部平仮名でした。完成した時はそれぞれの「あなた」が漢字になっていましたが、その時にそういう事を歌っているんだって気づきました。

TAKUROさんはTERUさんの歌を聴いて、こういう曲にしなければいけないんだと気づいたと言っていました。

TERU
それが不思議で、僕もなぜあんなに優しく歌ったかというと、平仮名の「あなた」が第一印象ではなかったからなんです。普通だったらファルセットにしているところを地声で歌ったり、キーの高さ的には大丈夫だったのにファルセットを使いたくなったり。「あなた」が全部平仮名だったので、自分の中で「あなた」という人達を探して歌ったりして。僕の場合、ステージで歌うというのが大前提としてあるので、レコーディングの時、ライヴの景色が見えてきたり、誰に歌おうって探すんです。で、今回はファンの人達、それから結婚するファンの人がいたら、この曲を聴いて結婚式で使いたいと思ってくれたり、そういう曲になってくれたらいいなと思って歌いました。結婚式、披露宴にはお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんがいると思うので、優しい歌が欲しいな、優しく包み込むような歌にしたいなと思ったのは、やっぱり結婚式場の雰囲気が出てきたのかもしれないですね。

「ずっと2人で…」(※3)に続く名ウェディングソングの誕生ですね。

TERU
うちの姉の結婚式ですよね……でも「ずっと2人で…」は意識していませんでしたが、結果的に影響されているのかもしれないですね。やっぱり<年が明けたら結婚しようよ>というひと言が頭にあるので、どうしても結婚式を思い浮かべますよね。

「ずっと2人で…」は95年の作品ですが、この時のTERUさんのボーカルはいい意味で粗削りで初々しかったですよね。

TERU
当時の僕は粗削りというよりも、あれが精一杯でした(笑)。そうなんですよ、でもそこがいいんですよね、今聴くと。「HOWEVER」(※4)もそうなんですけど、いまあの歌をあの感じで歌えと言われても歌えないんですよ。ガムシャラに歌えないというか。

アルバム『SUMMERDELICS』についてのインタビューの時も、TERUさんは「ガムシャラに音楽に向き合えるかどうかが、自分にとって大きな問題だ」と言っていました。

TERU
そういうのもあって、『SUMMERDELICS』は、ガムシャラに頑張りました(笑)。若い人達に負けたくないという思いのガムシャラ(笑)。いい大人がなかなかガムシャラになれないというか、全部取っ払ってやるという意識を持ってやらないとそこに向かえないので、「聖者のいない町」(※5)でのハイトーン部分だったり、逆に狙って自分の限界ギリギリのところに自分を追い込んでいかないと、そういうのが出ないので、わざと自分を追い込んでああいう声を出しました。自分を追い込むガムシャラです(笑)。

「あなたといきてゆく」は春に行った『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』(※6)で、すでに披露していましたが、ファンの反応はいかがでしたか?

TERU
曲に入る前のMCで、結婚の事をほのめかしたり、愛情についての話をして歌い始めていたので、お客さんはそういう曲、新しいバラードが聴けるんだと思っていたと思います。

いわゆるGLAYらしいというか強くて優しいバラードで、ファンの方はこういう曲を聴きたいと思っているんだろうなと思います。

TERU
2月にレコーディングして、本当は歌い直す予定だったのですが、結局やっていなくて、でもこのテイクがすごくよくて。ツアーを回りながら、ファンの人達の顔を見ながら歌っていると、これ以上のものないなと思って。一番最初に「あなた」っていう言葉を勘違いして歌っている事が全てで、その後、歌詞は変わっていますが、変わった歌詞で歌っていたらまた違う感じになっていると思いました。

『SUMMERDELICS』というアルバムをライヴで披露して、改めてこの作品について、今回のツアーについて、思うところはありますか?

TERU
半分くらいはシングルとしてリリースしている事もあって、聴き込んで来てくれる人もいますし、「SUMMERDELICS」や「シン・ゾンビ」(※7)に関しては、演出が多すぎて(笑)。シンプルに楽曲を聴いてもらうというよりはアレンジ、構成の面白さや、HISASHIがいきなり色々な事を始めたり演出が面白いので、CDに感じていた感覚とは変わりましたね。映像もアニメとコラボして、より楽しく曲をみんなで共有できるようになったり、ちょっとしたフリができるようになったり、会場全体が楽しい雰囲気になっています。

アルバムに詰まっている楽しさやHISASHIさんワールドが、このライヴではしっかり表現できていますよね。

TERU
ライヴで今後成長するだろうなって思ったのは「聖者のいない町」ですね。あれはCDよりも、ライヴの方が圧倒的にいいです。想定外のスケール感でしたね。70年代のロックを彷彿させるマニアックな感じの曲なので、渋い感じで終わるのかなと思っていたのですが、映像監督の感性で、サイケデリックな世界にどんどん持っていかれて、僕らの衣装もその世界に引っ張られて 不思議な世界になりましたね。

GLAYらしさも斬新さも感じる『SUMMERDELICS』というアルバムを発売して、やはりバンドとしてさらに前に進むことができた実感はありますか?

TERU
よく考える事なんですけど、4人がそれぞれの役割で、GLAYというものの調理方法を知っているだなと思いました。塩加減、胡椒の加減、砂糖の加減みたいなものをちゃんとわかっていて、ちょっと濃すぎる料理には スパイスを入れれば美味しいよねっていうHISASHIのスパイスの塩梅があったり、そういうさじ加減をみんなわかってきているんだなと思います。

それがまさに武器であり、強みですよね。

TERU
そうですね。「聖者のいない町」とかは、洋楽っぽくしようと思ったらもっと洋楽テイストになっていたけど、でも4人のアプローチの仕方がそれぞれ違うのでそうならなかった。70年代を意識しているのはTAKUROで、ギターソロもそうですけど、同じギターでもHISASHIはそのフレーズを違うコードに当てたら、サイケというよりもEDM系の曲になってもおかしくないくらいのアプローチでやっているし。JIROのベースに関してもすごくロックではあるけれども、70年代の香りはしないし、それぞれの個性が絶妙のバランスで折り合って、GLAYになっているんですよね。

アルバムのインタビューの時「シン・ゾンビ」は「一体何を歌っているのかいまだにわからない」とおっしゃっていましたが、改めてライヴで歌ってみて、いかがですか?

TERU
あの曲はやっと理解できました(笑)。HISASHIが何を言いたいのか、やっとわかってきましたね。時代に物申すじゃないですけど、何かに対してのアンチテーゼとして受け止めています。

どちからいうとトリッキーなアルバムを出して、そのツアーをやっている時に“王道”といわれるシングルを発売するというのは、やはりファンの事を考えての事なのでしょうか?

TERU
そういうところはやっぱりTAKUROがすごいなと思うところです。安心感というものをこのタイミングで提供していくことによって、「GLAYどこ行くんだろう」って不安になっている人達に対して、GLAYはどこにも行きませんよ、これ聴いてください、ちゃんとわかってますよ、というアプローチができる凄さ。TAKUROも言っていましたけど、HISASHのシングルがきて、JIROのシングルがきて、僕のシングルがあって、そこで久々にTAKUROのメロディがくると、手作りの温かいおにぎりとお味噌汁ってやっぱり美味しいよねって感じですよね(笑)。

TAKUROさんのメロディを長年歌っていると、TERUさんの中ではやはり“安心”する部分が大きいですか?

TERU
そこはやっぱり他の2人の楽曲を歌ってみて気づくことなんですけど、HISASHIとJIROはコードに対して、どちらかというと洋楽のアプローチで作っていく傾向がありますが、TAKUROの場合はJポップのラインを取っていくんです。そこはすごくわかりやすくて。だからTAKUROの曲は初めて聴く曲も、コードの行き先が大体想像できるので安心できるというか、シンプルな塩おにぎりとシンプルなお味噌汁みたいな感じ(笑)。エスニックでもなければイタリアンでもない(笑)。

ツアーも後半戦に突入して、来年は台湾公演(※8)もありますが、TERUさんはライヴで「GLAYは来年も止まらない」って言っていました。来年は何を見せてくれるのでしょうか?

TERU
まだ詳細は言えませんが、やる事が決まっているうえでの発言です。もう場所も押さえています(笑)。

昔からファンの前で言ったことはちゃんと守る律儀なバンドです。

TERU
目標はバンド内だけで抱えるよりも、ファンの人達と共有した方が楽しいと思っています。2013年にやった地元・函館の野外でライヴ『GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1」(※9)の時、2日目が豪雨でファンの人につらい思いをさせてしまったので、そのリベンジもいつかやりたいとずっと思っています。

今回のツアーのラスト2公演は12/23・24“HAKODATE WINTTERDELICS”(※10)として函館アリーナで行われますね。

TERU
今は函館アリーナという会場もできたので、天候を心配しなくてもよくなりました。函館を盛り上げるという気持ちも強いのですが、それ以前に野外でも屋内でも、自分たちが生まれ育った場所でやりたいというシンプルな思いです。

「あなたといきてゆく」も、函館の風景を思い出してしまいます。

TERU
やっぱりそういうところにかえるというか、バラードに関しては余計そうかもしれません。20代は函館にあまり帰らなくても気にもならなかったのですが、30代、そして40代になって、自分の両親が年を取ってきたからという事もあると思いますが、少しでも一緒にいてあげたいなと思ったり。両親が函館が大好きなので、函館で過ごすことで幼少時代の思い出が蘇ってきたり、この年になって父親と2人きりで釣りに行ったり、そういう経験をすることで、またそれが音楽に返ってくるんじゃないかと思っています。ファンの人達が、函館はGLAYの聖地だと言ってくれて、ライヴ以外でも遊びに行って、その景色を観ながらGLAYの曲を聴くという事をやってくれているみたいなんです。僕達の原風景というか、函館の景色の中で「Winter,again」(※11)を聴いた時のしっくり感とか、「ずっと2人で…」も「あなたといきてゆく」もそうですけど、バラードは函館の景色を観ながら聴くと、より一層深く歌詞を理解してもらえると思います。

さて『SUMMERDELICS』の次、GLAYはどこに行くのでしょうか?

TERU
まだ次のアルバムが全然想像できないですね。HISASHIがいくとこまでいっちゃったので(笑)、若いミュージシャンから「音楽って自由なんだってあれで思いました」って言われました(笑)。だから「そうだろ、自由なんだよ。誰が「太鼓の達人」入れちゃダメだって言った?」って返しました。 HISASHIすげえなぁって盛り上がりました(笑)。

これからのGLAYがますます楽しみになりました。

TERU
自由になってきましたからね。それと時代がすごく面白くなってきているのかもしれないですね。カテゴリーを作らないというか、これやっちゃいけないというのが、どんどんなくなってきている気がします。音楽業界も何かが変わろうとしている感じがしています。
※1:「あなたといきてゆく」
2017年11月22日リリースのシングル「WINETRDELICS.EP~あなたといきてゆく~」収録の表題曲。TAKURO作詞・作曲による壮大なバラード。
※2:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。CD Only盤、CD+2DVD盤、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition)の3つのバージョンが発売された。
※3:「ずっと2人で…」
TERUの姉の結婚式のためにTAKUROが書き下ろしたバラード。1995年3月1日発売の1stアルバム「SPEED POP」収録。同年5月、5thシングル「ずっと2人で…/GONE WITH THE WIND」としてリリースされた。
※4:「HOWEVER」
1997年8月6日リリース、12thシングルにしてGLAYにとっては初のミリオンセラーとなった代表曲。
※5:「聖者のいない町」
2017年7月12日リリースのアルバム『SUMMERDELICS』収録のロックゴスペルナンバー。BSテレビ局・Dlife(ディーライフ)にて放送される『マクガイバー』エンディング曲。
※6:『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』
2017年4月14日(金)島根県芸術文化センター「グラントワ」から5月25日(木)石川・金沢歌劇座で行われた追加公演まで、全10都市14公演(振替公演も含む)で開催されたホールツアー。
※7:「SUMMERDELICS」や「シン・ゾンビ」
ともにアルバム『SUMMERDELICS』収録。アリーナツアー「SUMMERDELICS」でも演奏されている。
※8:台湾公演
2018年3月17日、台北アリーナで開催される「GLAY ARENA TOUR 2018 “SPRINGDELICS” in Taipei」のこと。
※9:『GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1』
函館・緑の島野外特設ステージで2013年7月27日・28日に開催された函館史上最大規模の野外ライブ。2日目はライブ途中から豪雨となった。
※10:“HAKODATE WINTTERDELICS”
アリーナツアー「SUMMERDELICS」の後、2017年12月23日・24日に函館アリーナ2daysで開催される。
※11:「Winter,again」
1999年2月3日リリース、GLAYの16thシングル。GLAY史上最大のヒット(165万枚)を記録した第41回日本レコード大賞受賞作品。

Vol.66 JIRO WEBインタビュー

近年最も実験的要素が強いツアーなので、
みんなのキョトンは想像できた。
でも俺達はその違和感を楽しんでいて、
新しいGLAYのスタイルに自信を持って臨んでいる

2017.12.06

『GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”』(※1)も後半戦に突入しました。ツアーで実際にアルバムの音を出してから、自分の中でのアルバムの捉え方というのは変わってきましたか?

JIRO
妙に緊張する場面もなくて、それはすごく自由に、リラックスして作ったアルバムだからかもしれません。レコーディングすることも自然な事だし、ライヴはやっぱり特別ですが、そんなに気合を入れすぎていないというか、自然な形で生活していく中で、テンションの高低差があまりない、安定した感じでできている気がします。「聖者のいない町」(※2)とか「あなたといきてゆく」(※3)とかナーバスな曲は、今までだったら緊張しまくって、間違ったらどうしようっていう感じでやっていたと思いますが、今はもっとリラックスして演奏できています。

アルバムの世界観をライヴで初めて披露した初日は、どんな手応えでしたか?

JIRO
これだけ盛りだくさんの内容で、僕らの中でも実験的要素が近年の中でも一番あったツアーなので、たぶんみんなキョトンとするんだろうなというのはあって。それが良くても悪くても、今までと違ったから嫌だったということだと思うんですよ。今までと同じ事をやっていて嫌だったって言われたら考えものですけど、今までやった事がなかったことをやって、嫌だったって言われたら、それはその人に合わなかっただけかもしれないし。俺たちがアクションを起こさないと、何も変わらないと思うので。僕は直接聞いていませんが、色々な方からもう少しこうした方がいい、ああした方がいいんじゃないかという意見があるみたいですが、その意見ももちろん参考にはさせていただきますが、俺たちはその違和感を楽しんでいるんです。そうハッキリ言えるくらい、今自信を持ってスタートしているので、新しいGLAYのスタイルを見せる事ができれば、このツアーは大成功だと思っています。

ツアーが終わると、年の瀬の空気が一気にやってきそうですが、今年はアルバムの発売も含め、いつも以上に動いたという感じがしますか?

JIRO
そうですね、色々なタイプのライヴをやりましたね。お台場でのフリーライブもそうですし、「レッドブル」のイベント(※4)、BREAKERSと対バン(※5)をやったり。春先にやったホールツアーも片ひじ張らず自分達らしくできたし、アリーナでやっても自分達らしいスタイルがどんどんできあがってきていると思います。カッコつけている部分ももちろんあると思いますが、カッコつけていることに無理していなというか、TERUならTERUのキャラ、僕なら僕のキャラ、TAKURO、HISASHのキャラというものが、無理せず出ている気がしています。

本当に自由に、やりたいことをブレずにやっているカッコよさがあります。

JIRO
今回僕がセットリストを作って、HISASHの曲が『SUMMERDELICS』(※6)の中でも個性が強いので、だったら前半にHISASHの曲を固めて構成してみようと思って。映像も大型ビジョンにスタッフは本当はメンバーを映したかったかもしれませんが、それじゃつまらないと思って、背景がステージセットみたいな感じでどんどん変わっていくライヴにしました。例えば古代ローマ、ハワイの浜辺だったり、全部作り映像にしたのは、曲によって世界観が変わっていって、それと共に曲の振り幅が広がって欲しいと思ったからです。そうしたらHISASHが「だったらこんなことやりたい」、TERUも「こんなことやりたい」というアイディアが出てきて、どんどん世界観が広がっていったというか。

今回のツアーのセットリスト、構成も含めての構想は、アルバムを制作期間にはもう頭の中にあったんですか?

JIRO
いえ、今回は春のホールツアーの合間に、移動時間とか前乗りした時に時間があったのでそこで考えて、5月中旬頃にはできていました。夏休みを挟んでから曲出しをすると、みんな練習するのも大変なので、その前にプレゼンをしておいて、スタッフにもある程度アイディアを話しました。僕は終演後に皆さんに書いてもらったアンケートを全部読んでいるのですが、それを参考にしたり、聴きたい曲ランキングみたいなのものがあって、それを毎回チェックするのが好きなので、過去のデータも色々出してもらって、実際この曲をやったらどんなリアクションがあるかなとか、色々想像しながら構成を考えました。

『SUMMERDELICS』というトリッキーなアルバム、そしてそのツアーの期間中にいわゆるGLAYらしさ満載の「WINTTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」がリリースされますが。

JIRO
HISASHIが「太鼓の達人」(※7)のサウンドを取り込んだ「シン・ゾンビ」(※8)を作ってきた事によって、相当トリッキーなアルバムになったと思います。そういう事もあって、「あなたといきてゆく」は、このアルバムではないよねっていう判断を、TAKUROがしたと思います。サイケデリックなアルバムがあって、それでワーって夏休み盛り上がって、ひと段落したところでじっくり聴いて欲しいという気持ちがたぶんあったのだと思います。

「あなたといきてゆく」は冬の匂いがして、冒頭の<年が明けたら結婚しようよ>というひと言が強烈で印象的で、結婚ソングとしては「ずっと2人で…」という名曲がありますが、レコーディングでは「ずっと2人で…」の雰囲気に引っ張れるという事はありましたか?

JIRO
ベースというパートは、レコーディングする時、あまりビジョンが決まっていない状態でもまずは作ってしまわなければいけないので、歌詞に引っ張られたり、過去曲のノリに引っ張られたりという事は、昔も今もあまりないですね。その曲のなんとなくのイメージとかメロディの良さ、キーワードとして引っかかってくる言葉がいいなとか、そういう感覚で作り上げていくしかないんですよね。冬の匂いみたいなものってこんな感じだよねっていうのは、メンバーの中では共通している部分だと思います。

この曲をライヴで演奏している時の、お客さんの反応はいかがですか?

JIRO
この曲はベースのフレーズがちょっと派手なので、正直お客さんを見ている余裕はないんですよね(笑)。ただ終演後のアンケートを読んでいると、本当にこの曲の人気は高いですね。待ってました、これこそTAKUROメロディ、みたいな感じで。やっぱり『SUMMERDELICS』でワンクッションあったからこそ、TAKUROの曲が聴きたかったという感じはありますね。

来年のGLAYはどうなりそうですか?

JIRO
3月の台湾ライヴは決まっていますが、そのほかは今練っている最中ですが、動きは止まらないと思います。この2年くらいかけて、ホールツアーを3ツアーにわけてやって、それぞれ約20本くらいで、期間に余裕を持ってそういうツアーをやっていると、あっという間に2年が過ぎていきました。でもそういうツアーをやりたいんですよ。アリーナツアーとか、大型ライヴばかりではなくて、ちゃんと自分たちの方から、今まで行った事がない街や、なかなか行けない場所に足を運んだり、そういう事がすごく大切だと思っていて。そういうツアーがあって、僕自身も「lifetime」(※9)という曲が生まれたし、色々な事に気づかされます。この前、このツアーと並行してやっているホールツアー『AUTUMNDELICS』(※10)で福島県(とうほう・みんなの文化センター)に行きましたが、ものすごい盛り上がりでした。本当にとんでもない大きさのアンコールの声で、本当にありがたかったです。

GLAYの事は知っているし、曲も聴いたことがあるけど、まだライヴを見たことがないという人もまだまだたくさんいますよね。そういう人達にこちらから会いに行くというのは、すごく大切な事ですよね。

JIRO
僕らは活動を止めることなく、その活動の軸足はライヴなので、どこへでも行きたいと思っています。移動とホテル生活は苦手ですが(笑)。でも最近は若いファンが来てくれるようになって、ファンの幅が広がるのはすごく嬉しい事です。だから、よりいいライヴを観せたいという気持ちがますます強くなっていて、極端な事をいうと、今ツアー中ですが、楽しい事っていうのを、ライヴの2時間半だけに集中させたいなと思っていて。それ以外、平日とかはとにかく力を溜めておいて、それをライヴで一気に爆発させるという感じ。それができたらすごくいいなと思っていて。さっき出た福島も、仙台もそうでしたが、最近のライヴが本当に一番自分のテンションが高いなと思っていて、それを継続していきたいですね。
※1:『GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”』
2017年9月から12月にかけて全国23公演が開催されているアリーナツアー。12月23日・24日で『GLAY ARENA TOUR 2017 “HAKODATE WINTERDELICS”』も開催される。
※2:「聖者のいない町」
2017年7月12日リリースのアルバム『SUMMERDELICS』収録のロックゴスペルナンバー。BSテレビ局・Dlife(ディーライフ)にて放送される『マクガイバー』エンディング曲。
※3:「あなたといきてゆく」
2017年11月22日リリースのシングル「WINETRDELICS.EP~あなたといきてゆく~」収録の表題曲。TAKURO作詞・作曲による壮大なバラード。
※4:「レッドブル」のイベント
2017年6月2日、Red Bull Air Race Chiba 2017大会会場(千葉県立幕張海浜公園)内特設ステージ(LIVE DAM STADIUM)で開催されたGLAYのライブ。『SUMMERDELICS』収録曲「XYZ」はRed Bull Air Race Chiba 2017テーマソング。
※5:BREAKERSと対バン
2017年4月29日、Zepp DiverCityで開催された「BREAKERZ 10周年 10番勝負 -VS-」にGLAYが出演。
※6:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。CD Only盤、CD+2DVD盤、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition)の3つのバージョンが発売された。
※7:「太鼓の達人」
バンダイナムコから発売されているゲーム。
※8:「シン・ゾンビ」
『G4・IV』収録のHISASHI作詞・作曲の楽曲「彼女はゾンビ」をもとにアップデートされた。14thアルバム『SUMMERDELICS』収録。ゲーム「太鼓の達人」タイアップソングで、ドンちゃんの声優ならはしみきも参加している。
※9:「lifetime」
JIRO作詞・作曲による楽曲。『SUMMERDELICS』収録。
※10:ホールツアー『AUTUMNDELICS』
『GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”』の合間に開催されたホールツアー3公演。

Vol.65 TAKURO WEBインタビュー

TERUの歌が導いてくれた「あなたといきてゆく」。
「あなた」は「あなた」だけではないと、
今なら説得力を纏わせ、伝えることができると思った

7月12日に発売し、オリコンアルバムランキングの1位を獲得した14thアルバム『SUMMERDELICS』(※1)を引っ提げての同名のアリーナツアーを敢行中の4人。そんな中11月22日にシングル「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」(※2)を発売。夏をテーマにしたアルバムを、ライヴでファンに届けているうちに季節は秋に変わり、冬へと突入し、熱さから今度は温かさが恋しくなってきた今、4人からのプレゼントだ。『SUMMERDELICS』はライヴでどう変化したのか、そして極上のバラード「あなたといきてゆく」について、さらに今回のアリーナツアーについて、4人に語ってもらった。4人が考える“GLAYの現在地”とは?

2017.12.01

「あなたといきてゆく」は、当初『SUMMERDELICS』に収録される予定でした。

TAKURO
ギリギリになって外しました。夏がテーマのアルバムという事と、この曲を入れてバランスを取ろうとするとブレるなと思ったので。先行シングルという話もあったし、もちろんアルバムに入れる可能性もあったし、来年出そうかという話も出ました。でもライヴで演奏した時、『SUMMERDELICS』を聴いてファンになってくれた新しいお客さんには、GLAYってこういうバンドなんだと思ってもらえて、90年代からのファンの人は「王道だよね」と感じてもらえて、すごくバランスが良かったんです。だから、音源は瑞々しいうちに出したほうがいいと思い、イレギュラーだけど11月に出そうという事になりました。もちろん、春の『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 “Supernova”』(※3)から演奏していたので、ある意味手応えもありました。もちろんカップリングのバラードたちも、この季節にはぴったりで、なかなかいいEPになったんじゃないかなと。

夏には夏のアルバムを、そして冬には冬の温かいバラードをと、季節感大切にしているんですね。

TAKURO
そうですね、昔はシーン全体がもっとそういう感じでしたよね。このツアーも国内のラスト2公演は函館でやろうというアイディアが出てきて、この曲を函館で聴いてもらうと、GLAYというバンドを一番理解してもらえるのでは、と思いました。東京で長年曲を書いていて、ある時それは自分にとってのベストではないなと思い始めて、函館に仕事場を作りました。詞を書く時とか、着想を得る時は、割と函館に戻って作業しています。やっぱり四季がはっきりした環境で育ったからこそのメロディ、歌詞だと思うので。そういう意味では曲作りがより楽しくなったというか、より心弾む作業になったというか。東京に出てきて20年近く経ち、函館で過ごした時間よりも長くなりましたが、俺のモノ作りの原点は、あの町にあるんだなあと改めて強く感じています。「あなたといきてゆく」も、そういう想いの中で作っていったものなので、メンバーもしっくりきていると思うし、自然に演奏できたんじゃないかなと。

確かに「あなたといきてゆく」を聴いていると、個人的に何度か行った事がある函館の風景を思い出します。

TAKURO
4人で盛り上がる共通の話題といえば、やっぱり函館時代の話ということもあって、それが曲にも出てくるのかもしれません。今回のレコーディングでTERUの歌を聴いていて、詞にもある、「秋の黄昏」の向こうに見えるものは、函館の風景だったし、思えば人生の黄昏時は、俺にとっては「秋の黄昏」の風景に重なる部分があって。俺は生まれた時にはもうおじいちゃんはいなかったけれど、周りの人たちからは亡くなった人達を星に例えて子供の頃教えてくれた事を思い出しました。おじいちゃん、もっと前の祖先、父親から自分は色々と引き継ぎ、受け継いだ上で生きているんだなと思うと、元々「あなたといきてゆく」は「私」と「あなた」の物語だったのが、TERUの歌を聴いて、この「あなた」というのは「あなた」と「私」だけではないんだなあ、上の世代、下の世代も含めた色々な人、「あなた」なんだと思いました。それで俺はこれを表現したかったんだと気づいて、「あなた」に祖父、祖母、母、父という漢字を当てていきました。それはTERUも同じ気持ちだったのかもしれません。

導かれるように書いた曲ともいえますね。

TAKURO
20年くらい前から「冬のプロポーズ」というタイトルであった曲です。

20年前というと、結婚ソングの名曲「ずっと2人で…」(※4)も95年の作品です。

TAKURO
 「ずっと2人で…」は17歳の時書いた曲で、厳密にいうとTERUのお姉さんの結婚式のために書いた曲です。

有名なエピソードですよね(笑)。

TAKURO
当然、その後この曲を聴いてくれる多くの人の事を想像できる器もなく、「あなたといきてゆく」に関しても、それこそ「HOWEVER」(※5)などの、ライバルのようなメロディ達がたくさんある中、いつも「出すのは今じゃないな」とか、<年が明けたら結婚しようよ>という強烈なひと言から始まってしまうので、これを歌うにはバンドとしての相当の覚悟がないと伝わらないと思っていました。もう少し距離が狭いバラードというか、「あなた」と「私」の物語に終始している方が、世の中との親和性が高いんじゃないかとか、まだビジュアル然としていたロックバンドが、自分の父母の世代までの事を歌うためには説得力をどう持たせるのかが、自分達の中での命題だったので、まだだなと思い、なかなかリリースできませんでした。自分も家族を持って、充分にその覚悟は備わったなと思って、一年くらい前に最後にBメロを足して完成させました。本当に長く寝かせたなと思います。

TAKUROさんの中でそういうメロディの欠片、言葉の欠片は今もたくさんあるんですか?

TAKURO
ありますよ。今でも寝る前に10分くらいは必ず曲を書くようにしています。この習慣はもう何十年も続いていて、もちろん酔っ払っている時は歌詞一行という時もあるし、ノッている時は4小節くらいできる事もあるし。いつか曲が書けなくなる日が来るのは怖いなと思って始めましたが、どうやらこの仕事が向いてるみたいで(笑)、今のところ曲を書く事に困ったことがないです。この曲がイコール自分そのままかと言われると、俺は答えを持っていなくて。でも間違いなく80年代、青春時代を北海道という場所で過ごして、そこで色々な音楽に出会って、夢を追い求めて東京に行って、また東京で色々な人に出会い、そんなバンドだからこその歌だという感じがしています。それが自分達らしいというか、自分達にしかできない作品というか商品というか。例えば90年代は「生きてく強さ」(※6)「グロリアス」(※7)などから始まって、コード練習本の最初にあるようなメジャーなコードでたくさん曲を作って、そのある種の到達点が「HOWEVER」で、その後は自分の気に入ったコード進行で、自分のメロディをどこまで高められるかという事を、10年間くらい模索して。90年代 と00年代のコード進行の果てみたいなものを探していて見つけたのが、「あなたといきてゆく」のような気がします。イントロのコード進行の♭9を入れるのも、前だったら絶対に入れなかったし、もっと耳障りの良いものを入れたと思うし、でも40代半ばになって人生色々割り切れないもの、憤るものを含めて生きていくんだなと思った事が、そういうところにも表れてきていると思います。

美しいメロディとダイナミックな構成のバラードが、GLAYのひとつの代名詞になっていて、ファンの人が「待っていた」曲を提示してきた感じがします。

TAKURO
ここ10年くらい自分の仕事のひとつとして、GLAYとしてHISASHIの才能の面白さを世の中に正しく伝えるという大命題がありました。それができないなら、この10年TAKUROのマンネリメロディでどこまで勝負できるのかが自分でも疑問だったし、自分としてその作品には一点の曇りもないけど、受け取る側としてはどうだろうという思いがずっとありました。それがあってGLAYはもっと面白いバンドなんだという事を主張したくて、G4プロジェクトをスタートさせました。5年くらい前からはHISASHIの興味があるネットやサブカルの世界といった、ある意味ダークな世界を、少しずつGLAYに反映させてもらいながら、そこでの親和性を高めて、GLAYの王道メロディは50枚目のシングル「BLEEZE~G4・III~」(※8)くらいからTERUに任せて。俺としては「百花繚乱」(51thシングル)(※9)に代表されるような、ギターが面白い、ギターバンドとしてのアイデンティティの最高潮じゃないけれど、そっちの方に力を注いでいました。結果『G4・IV』(※10)がランキングの1位を獲る事ができて手応えを感じ、バンドが今やりたいことが世の中に伝わったかなと。それもあって、今回のツアーのHISASHI色の強さたるや……。

武道館公演を観させていただきましたが、アルバム同様HISASHIさんワールドが炸裂していました。

TAKURO
もっていくなぁあいつ、みたいな(笑)。皆さんに書いていただいたアンケートでもそういうコメントが多かったし、バンドとしては狙ったところに球が当たった、してやったり感がすごくある。でもそんな中で、やっぱり日本全国を回ってもう何十年もになりますけど、それを良しとする人ばかりでもないなと感じていて。もちろん保守的な人達が多い土地もあるし、HISASHIのトリッキーなセンスに喜びを見出せる人たちが、その中にはたしてどれくらいいるのかわからないので、このタイミングでいわゆる王道と呼ばれているタイプの「あなたといきてゆく」を出せた事はよかったと思う。メンバー全員がここまで早く『SUMMERDELICS』にシフトでき世界観を構築できたことで、もう一回自分のメロディを世に出しても、『SUMMERDELICS』が醸し出す感じは失われないだろうと思って、11月にリリースしようと決めました。

今回のアルバムで、また確実に前に進めたという手応えがあったからこその「あなたといきてゆく」という感覚でしょうか。

TAKURO
そうですね、メンバーの才能にちゃんと注目することで、メンバーも自分自身も含めて、責任感とか覚悟がますます出てきたと思うし。それが備わったとき、バンドはより強くなると思うので、例えばコンピュータの同期を減らしたり、ピアノに頼らないで音を作るのはどうしたらいいかとか、4人で顔を突き合わせて考えるという、バンド本来の姿を取り戻したかった。そこを失くしかけていたという感じではないけれど、やっぱりどこか誰かに頼っていた部分も否めないし、でも世の中がメンバー一人ひとりの才能に注目する事で、それぞれの中にまた新たな規律と責任感が生まれるだろうし、個人のビルドアップがバンドとして一番必要なものです。TERUが「あと10年、20年やるのであれば全員がGLAYの看板の背負う、自分がGLAYの名前を背負うんだ」という気持ちが必要だとここ10年位言っていて、そういう意味ではHISASHIは充分に果たしてくれたと思うし、少しやりすぎかなと思うし、今となっては(笑)。

伝統と革新性がしっかりかみ合っている印象があります。

TAKURO
もちろんGLAY自体が劇的な変化を遂げているわけではなく、ただアングルを変えただけかもしれないけど、世の中的な動きの速さに、どこまで付き合っていくのかはどのアーティストも悩みどころだと思います。でもGLAYはありがたいことにもう10年後をイメージしながら、活動の枠組を組み立てられていて、ひいてはそれぞれの人生を、自分が思った通りにデザインして欲しいと常々思っていて、それが叶う稀有なバンドだと思っています。もちろん一年一年が勝負で、10年経って振り返ったときに、2017年はこうだったと強烈な記憶として残していかないと、何となくツアーやったねとか、ベスト的な内容だったねというライヴを続けていても、バンドは前に進めないです。

改めて、ツアー初日、あの曲達、世界観を初めて人前に示した時の反応はいかがでしたか?

TAKURO
もちろん喜びと戸惑い両方だったけど、そうでなければいけないし。さっきもちょっと出ましたけど、文化の交流が激しい都市だと、これを面白がるけれども、そうでない地方、場所に関しては、「前のGLAYがよかった」という声が大きいと思うので、どう今の自分達の志を理解してもらうかが、次の課題になるだろうなという予感がしたツアー前半戦でした。映像に関しても、本当にある意味そこまで深くえぐるかという感じで、これに関してもHISASHIは、世の中ってこういったグロいもの、エロい世界もある、ナンセンスなものもあるんだ、でもそこに意味を見つけるのは、受け手側のあなた達なんだという、彼なりの世の中に問う姿勢を強烈に示していて。なんだかんだでこいつが一番ロックかもしれないなと思う。それはどこかいつもギリギリでやりたいことを優先するというか、自分の生き様を世に問うというか、それで否定されても構いません、わかってくれる人だけわかってくれればいいんだという覚悟がある。ミュージシャンが一番言ってはいけないセリフを、彼はいつも懐に隠している。俺だったら、自分のやりたいことも全部やって、相手のやりたいことも全部飲み込んでこそ、という考え方が強いかもしれないけど、それは俺が知っているロック的な姿勢ではないし、彼の方が断然俺の憧れるロックの姿勢を持っています。

長く支持されてきたバンド、アーティストは、変わらない強さと変わる勇気が必要だと思いますが、HISASHIさんが実はそこを一番実践している感じでしょうか?

TAKURO
HISASHIは「最終的にはI don’t careと言えるかどうか」ってよく言うしね(笑)。どうでもいい、知らないって。自分がいいと思ったものをやりたい、それはとっても頼もしいですよね。実はGLAYはそういう反応をずっと欲しがっていた気もするし、TAKUROメロディ主導の時は、特にその感じが顕著だったのではないでしょうか。それは実は自分の中ではひとつの焦りでもあったし。I don’t careも言えない、だけど世の中の望むものもわかった試しもない、かといって変化球すぎるものを書いてコケたときの恥ずかしさたるや、というのを経験しているし。だからこそ、「シン・ゾンビ」(※11)のような、ああいう彼の初期衝動に忠実な音楽を聴くと、彼は名作と思っていないみたいですが、俺にとっては本当にここ何年かで一番グサッときた曲なんです。俺たち本当は高校時代こんな感じだったよなって、いつからか変わっていたんだなというのを気づかせてくれました。

TAKUROさんにとっても非常に影響を受けたアルバムでもあるし、今ツアー中ですが、ずっと影響を受け続けているという感じですか?

TAKURO
そうですね、JIROが書いた「SUMMERDELICS」があったからこその、このタイトル、ライヴの世界だから。実際ライヴでやっていて一番楽しくて、手応えを感じているのは「SUMMERDELICS」だし、そのセッション感とか、世の中にある音楽の定石でない展開はワクワクします。

改めてGLAYというバンドは絶妙なバランスというか、役割分担が明確、的確だなと思います。

TAKURO
そうなんです。だからデビュー以来自分はGLAYで何で貢献できるのか、GLAYという場所でどう輝けるかを、4人が4人とも模索しているのだと思います。当然俺はHISASHIのようにギター弾けないし、TERUも言っていましたけど、自分はGLAYのボーカルという以外何ができるんだろうという事を、しばらく悩んだという話をしていて、歌を歌う事でいいんじゃないのって思うんだけれど、それは他の人が思うことであり、本人としては歌を歌うの当然、俺らがギター弾くのは当然みたいな感覚みたいで。だけどプラスαで何ができるのかという事を考え続けたという話をしていました。それも結局相手がやらないことを勉強して、自分のジャンルとして確立しようという意識がデビュー以来ずっとあったのだと思います、特にボーカル以外の3人は。

前回、アルバム『SUMMERDELICS』についてのインタビューの時、TAKUROさんの「GLAYを始めた時の楽しさが、今も続いている」という言葉が印象的でしたが、今回のライヴではコピーをやったり、まさに楽しんでますよね。

TAKURO
ロックバンドって、ギターが歪んでいるとかヘビーだとか、歌詞がどれくらい攻撃的かというよりは、バンドを組んだ時の衝動をどれくらいの純度を持ってキープし続けられるか、という事しかないと思う。曲が円熟味を増すとかプレイがどうとかって、ロックバンドに関してはどうでもよくて、演奏が下手くそでも、曲が幼稚でも構わないけれども、時代を貫く何かがあるとしたら、それはバンドをやろうと思った時の初期衝動しかないと思う。それが70歳超えても続いているローリングストーンズ(※12)はやっぱりすごいなと。あんまりものわかりよくやっていてもダメなんだと、世の中のGLAYのイメージを背負ってやるという事は、実はというか、本当に自分の心からの衝動を持ってやらないと、逆に聴き手に失礼だしマナー違反なんだなと、『SUMMERDELICS』をリリースして以降強く感じます。

メンバーが楽しみながら作って、楽しそうにライヴをやっている姿を観るのが、ファンは一番嬉しいですよね。

TAKURO
今回のツアーはX JAPAN(※13)やBOØWY(※14)のコピーもやっていて、なんで俺1万人の前でX JAPANのコピーバンドやっているんだろうと思うんだけど(笑)、でもやっぱり面白いですよね。 自分には到底思いつかないBOØWYの「マリオネット」のリフを、HISASHIが布袋寅泰さんとして弾いているのを聴いて、やっぱりこれなんだよなロックバンドのエネルギーの源はって思いました。「俺達GLAYだよ、こんなキャリアのあるバンドが、人のコピーとかやめようぜ!」っていうやつが、メンバーに誰もいないのが不思議で仕方ない(笑)。しかもTERUはちゃんとTOSHIさんと氷室京介さんに寄せていくみたいな(笑)。みんなでスタジオで、自分達の曲より一生懸命練習しました(笑)。

GLAYの初期衝動がより鮮明に表れているという意味で、TAKUROさんは『SUMMERDELICS』というアルバムを“第二のデビューアルバム”のようだとおっしゃっていましたが、ツアーが始まって、その想いはさらに強くなっている感じですか?

TAKURO
そうですね。本来自分が理想とするバンドは、4人4様のキャラクターがあって、それぞれが自分の人生を思いっきり謳歌している時に、その思いがちゃんと乗ったメロディや詞を飲み込めるバンドでありたいと思っていたので、まさに今回のアルバムが理想のバランスを持つデビューアルバムという感じです。いくつになっても、もっとうまくなりたい、前に進み続けたいという気持ちを全員が持っているからこそ、このアルバムができたのだと思います。

結成30年で、第二のデビューアルバムだと言えるものを作る事ができる底力を感じました。

TAKURO
実は自分も驚いていて、まさか高校時代、隣のクラスをのぞきに行くと、ポツンと一人で座っていたHISASHI 少年が、まさか『関ジャム 完全燃SHOW』(※15)に一人で堂々と出るようになるとは(笑)。俺なら関ジャニの前でギター弾けないですもん(笑)。あれを観て、これは自分の人生を賭けてでも世の中に伝える才能だなと改めて思いました。

さて今がまさに充実の時を迎えているGLAYですが、来年は何をやってくれるのでしょうか?

TAKURO
3月に台湾を始めとするアジアツアーを考えている事と、まだ全然決まっていないんですけど、夏に単発だけど野外ライヴを日本各地でやりたいなと。TERUもこの前MCで「来年もGLAYは休みません」って言っていましたが、25周年の事はなんとなく決まってきていますが、それまでのGLAYの動きがまだつかみきれず、でもいつ何を言い出すかわからないので、スタッフはいつでも対応できるよう、準備を始めていますね(笑)。
※1:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。CD Only盤(¥3000+税)、CD+2DVD盤(¥5000+税)、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition ¥22,963+税)の3つのバージョンが発売された。
※2:「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」
GLAY 55thシングル。2017年11月22日(水)発売。CD Only盤(¥1200+税)、CD+DVD盤(¥2000+税)の2つのバージョンが発売された。リード曲「あなたといきてゆく」はTAKURO作詞・作曲のバラード曲で、テレビ東京系列金曜8時のドラマ『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』主題歌。
※3:『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 “Supernova”』
2016年1月28日(木)大阪・オリックス劇場~4月24日(日)日本武道館の期間で行われたホールツアー。
※4:「ずっと2人で…」
TERUの姉の結婚式のためにTAKUROが書き下ろしたバラード。1995年3月1日発売の1stアルバム「SPEED POP」収録。同年5月、5thシングル「ずっと2人で…/GONE WITH THE WIND」としてリリースされた。
※5:「HOWEVER」
1997年8月6日リリース、12thシングルにしてGLAYにとっては初のミリオンセラーとなった代表曲。
※6:「生きてく強さ」
1995年11月8日リリースの7thシングル。力強い歌詞で、ライブでも演奏される機会が多く、観客とともにシンガロングするTERUの姿が印象的。
※7:「グロリアス」
1996年1月17日リリースの8thシングル。ヴィクトリアのCMソングに起用され、シングルとしては初のオリコントップ10入りを果たした初期の代表曲。
※8:「BLEEZE~G4・III~」
デビュー20周年記念となる2014年にリリースした50thシングル。メンバー4人それぞれが書き下ろした楽曲を収録。「BLEEZE」(TERU)、「外灘SAPPHIRE」(TAKURO)、「黒く塗れ!」(HISASHI)、「YOU」(JIRO)を収録。
※9:「百花繚乱」
デビュー20周年記念第2弾となる51thシングル。「百花繚乱」はTAKURO作詞・作曲。
※10:『G4・Ⅳ』
2016年1月26日リリースの53thシングル。メンバーがそれぞれ楽曲を書き下ろすG4シリーズ第4弾。「彼女はゾンビ」(HISASHI)、「Scoop」(TAKURO作詞・JIRO作曲)、「Supernova Express 2016」(TAKURO)、「空が青空であるために」(TERU)収録。
※11:「シン・ゾンビ」
『G4・IV』収録のHISASHI作詞・作曲の楽曲「彼女はゾンビ」をもとにアップデートされた。14thアルバム『SUMMERDELICS』収録。ゲーム「太鼓の達人」タイアップソングで、ドンちゃんの声優ならはしみきも参加している。
※12:ローリングストーンズ
ロックの代名詞とも言える世界的バンド。1962年にイギリス・ロンドンで結成され、以来、半世紀以上にわたって、一度も解散することなく活動を続ける。
※13:X JAPAN
YOSHIKI(Drum・Piano)、Toshl(Vocal)、PATA(Guitar)、HEATH(Bass)、SUGIZO(Guitar・Violin)、HIDE(Guitar・故)、TAIJI(Bass・故)からなるヴィジュアル系ロックバンド。1989年にXとしてメジャーデビューし、1992年にX JAPANに改名。1997年9月22日に解散を発表し、同年12月31日にラストステージで活動を終了。2007年10月22日に再結成。
※14:BOØWY
氷室京介(Vocal)、 布袋寅泰(Guitar) 松井恒松(Bass) 高橋まこと(Drum)からなる日本のロックバンド。1981年結成、1987年解散を発表。2006年8月2日にGLAY feat. KYOSUKE HIMUROとしてシングル「ANSWER」をリリース。
※15:『関ジャム 完全燃SHOW』
関ジャニ∞の音楽バラエティ番組。関ジャニ∞が毎回様々なアーティストをゲストに迎え、一夜限りのジャムセッションやトークを繰り広げる音楽バラエティー番組。HISASHIは2017年6月11日、佐橋佳幸、MIYAVIとともに出演。

アリーナツアー開幕直前 WEBインタビュー

9月23日(土・祝)に朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターで幕を開ける【GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”】(※1)。リハーサルの折り返し地点を迎えた9月某日、衣装合わせのため通常より早くスタジオに集まったメンバーを順に直撃。以下3つの共通質問を投げ掛け、それぞれの視点で語られたコメントから、アリーナツアーの行方を探る!


①リハーサル中盤ですが、雰囲気・仕上がりは現状いかがですか?
②“GLAY史上、最も〇〇なツアーになる!”  その理由は?
③観に来られる方々へ向けて、一言メッセージをお願いします。

2017.9.22

TERU
①リハーサルはもう中盤になるので、今ステージに立っても通しでちゃんとできる仕上がり具合だと思います。久々に歌う曲もありますけど体に染み込んでいるみたいで、2、3回合わせるともう全部蘇ってくる、というか。だから、頭に入らないのはむしろ新曲のほうですね。「彼女はゾンビ」(※2)をずっと歌ってきているので、一回ゼロに戻して「シン・ゾンビ」(※3)にするのが大変です(笑)。演出上、自分たちが動いてどうこうする、という決めごとは今回ないので、その立ち位置を意識してリハする、というのも全くなくて。今回は映像をいかにして皆に楽しんでもらうか?というのが、新たに挑戦するGLAYのエンターテインメント。協力してくれる映像チームの人たちともガッチリお互いの意志をぶつけ合い、やり取りをしながら今準備を進めているので、本番には間に合うと思います。

②“GLAY史上、最もハチャメチャなツアー”になるんじゃないですかね? オープニングからエンディングまで、世界観が全く違うんですよ。映像の雰囲気もその都度違うし、メンバーそれぞれの個性が出たものになるんじゃないかな? これまで、HISASHIが自分の曲に入る前の映像を自分の世界観でつくる、という形はあったんですけど、今回は、HISASHIの持っている僕らにはない感性をGLAY全体に活かすことのできる演出・映像が多いので、僕としても楽しみです。僕は今回、「センターステージで、一人で歌いたい」という要望を今までになく伝えたんですよ。YUKI(※4)ちゃんのライヴを函館で観て影響を受けたところがあったからなんですけど、それがどういう形でどう皆さんに楽しんでもらえるかは、ライヴに来てからのお楽しみ…ということで!
今回はGLAYの4人がこのアリーナツアーに対してすごく強く想いを寄せてるなぁと感じますね。久々のアリーナツアーだし、その間にいろいろなものを吸収してきたんだろうな、というのが皆の言動から窺えるんです。20周年を無事に終えられて、ちょっとした心の余裕ができたのもあるでしょうね。「じゃあ、今度は自分たちが楽しめることをやっていこう」みたいな。いろんな人たちに受け入れられるものをつくるには、やっぱり客観的に見てもらって、その分野を専門とするトップの方たちの意見を聞くのが大事だと思っていましたけど、今後30周年に向かう時に、より自分たちが楽しめて、飽きずに「もう一度やりたい!」と思えるような…そんな空間をつくっていかなければいけない、と思うんです。今回のアリーナツアーは、そういう意味ですごくいいスタートを切れている気がします。

③It's a small world(※5)という言葉がありますけども、今回のツアーはIt's a HISASHI world(笑)。何が飛び出すか分からないですが、HISASHIの世界観を楽しんでほしいですね。まぁ、きっといろんな意見が出てくるとは思うんですけど(笑)、それも楽しんでいきたいな、と。ネタバレに気を付けて、ファンクラブの会報などに感想を送ってくれたらうれしいです!


TAKURO
①メンバーからのアイディアがたくさん出ていて、それを一つずつ磨く1週間だったかな。TERUは日々イヤモニ(※6)と格闘してますよ。実は、ある曲の歌メロが違ってるんだけど、いつ言おう、いつ言おう…と思ってもう1週間(笑)。曲に入る前に「1回だけ聴いていい?」(TERU)というのを最初2曲ぐらい許したんだけど、待つのが嫌で3曲目からは「ダメ!」と(笑)。そこも含め、彼はきっと本番でうまく調整するんじゃないですかね? JIROはアレンジ面でもいろいろとアイディアをたくさん出してきて、本当にすごいですよ。HISASHIについては、アイツのやることは本番まで内容を知らないことがこれまでもあったんだけど、今回はそれがすげぇある(笑)。「お前、それいつ録ったんだ?」っていう効果音がいきなり入っていたり。演奏はロボ級に完璧だけどね。
演出面で言えば、それぞれが今まで「次のアリーナツアーではこれをやろう」と溜めてたのかな?と思うほど、各界の才能ある人たちとの連携を含め、たくさん準備していたみたいで。この段階で、俺もまだ観たことのない映像モノがいっぱいあるよ(笑)。もう、「好きにして!」しか言わないね。2日間公演で5、6曲変わるから、トータル30曲以上あるので、リハがGLAYには珍しく夕方6時近くなるんだよね。久しぶりに大鉈を振るうというか、大物、重鎮の曲たちが今回ちょっと顔を出すんですよ。‘90年代の曲は長いから自ずとライヴが長くなるし、前後の余韻も含めると結構ボリュームあるかな。でも、そういうのをちょっと今回はやりたかった。ホールツアーを経て、その前がアルバム『MUSIC LIFE』(※7)を引っ提げた『Miracle Music Hunt』(※8)で、エンターテインメント寄りだったし。今回はもう少しメッセージ優先の方向性で行きたかったんだよね。

②“GLAY史上、最もHISASHIの才能が渋滞してるツアー”なんじゃないかな? 今のNY並みの大渋滞! たかが10ブロック進むのに30分ぐらい掛かった。異常だよね…と、NY帰りの俺らしい表現をしてみましたが。通常ならば事前に「こんな感じ」とだいたいイメージはつくんだけど、HISASHIさんの演出においては、「お客さんはどう思うだろう?」というのが読めない。俺たちはデビューして20年経って、周りから「ずっと聴いてました」とか言われる、ある意味ベテランのバンドじゃない? そんなバンドがなんで今〇〇(先輩バンド)の「★★(曲名)」の替え歌をしなきゃいけないんだ!?みたいな(笑)。もし△△(〇〇のVo)さんの耳に入ったらどうしよう!? 謝るのは俺かな…(笑)。「なるほど、面白いこと考えるなぁ」と思うけどね。昔好きだったバンドが魅力を失っていく様を思い出したよ。たぶん、「こんな感じが聴きたいんでしょ?」というところに妥協点を見出だし、自分のイメージに捉われて、やりたいことをやらなくなるんだろうね。GLAYに至っては「落ち着かないなあ、お前ら」と。それでいいと思うしね。今回もキーボードがいないんだけど、「いや、今回はなんか工夫で」みたいな(笑)。工夫してもやっぱり、全然違うフレーズになるわけだよね。大人の立ち振る舞いとしてはファンの皆の思い出に寄り添っていくものかもしれないけど、ことGLAYの人たちは…。そういうのが全くメンバー誰一人として見受けられない。とある曲について、俺は「ギターソロはお客さんも期待してるだろうから、ちゃんとあったほうがいいんじゃないかな?」とHISASHIに言ったら、「やりたくねー!」って譲らないんだもん。ま、アイツが「絶対大丈夫」と言うなら、いいんじゃない? 心の底からやりたいことがあるなら、やればいいと思う。それがロックを目指したもののマナーだよね。そこにスピリットと愛があれば何でもいいんだよ。俺が毎朝スタジオへ行きたくなる理由も分かるよね。「今日は何が起こるんだろう?」ってドキドキするもん。もしかしたら“GLAY史上最も不評だった”とか、“最も意味が伝わりづらかった”と言われるツアーになるかもしれないけど、そういうのがないとバンドってダメよね。

③アリーナならではのスケールの大きさとか、ホールやライヴハウスとは全く違ったものがやっぱりあるから、例えばディズニーランドやユニバーサルスタジオといったアミューズメントパークの入り口をくぐった時のような、空間としての大きさを感じてもらえれば、と思います。今回は俺以外の3人が演出家。NYのブロードウェイでやっても絶対ウケないけど、GLAYファンの前でやったら絶対ウケるだろう、という演出がいっぱいあるよ。絶妙のピンポイント感だよね。今回は特に、各映像クリエイターたちとのコラボレーションが面白いんじゃないかな? 映像企画のために、HISASHIがリハの途中も俺らにカメラ向けるんだよ。アリーナツアーの出し映像をアーティスト自ら撮って編集するって、聞いたことないよね(笑)。今夜の飲み会も撮られる予定です(笑)。


HISASHI
①準備期間のうちに各自のアプローチを詰めることができていて、初日から全曲通すことができたのは、アリーナツアーへの意識の高さが垣間見えたと思います。今回は久々にやる曲もあるんですけど、不思議なぐらい体が覚えてるんですよ。自分では忘れてるつもりのフレーズをすんなり弾けたりして、「あ、そうだ。こうやって弾いてたんだ」と気付いて。「じゃあ、その曲のDメロを弾いてみて」と言われたらできないんだけど、1曲通して弾くとちゃんと弾けちゃうんです。リハーサルは折り返し地点ですけども、ここで映像が来て、ここで着替えて…というブロックごとの段取りとかも含め、もうゲネプロに近い形でできるんじゃないかな? SEや映像も徐々に出来てきているので、本番さながらのスタイルになると思いますね。

②人がどう思うか分からないけど、自分的にはかなりスタンダードなアリーナツアーだとは思ってます。でも一つ言えるとしたら、今回の『SUMMERDELICS』というアルバムにはメンバーの個性が色濃く出ているので、“より一層そのメンバーの個性が豊かな楽曲に仕上るツアー”になるんじゃないかな?という望みはありますよね。コンサートはやはり曲だけではなく演出や映像というプラスαの部分でいろいろな表現ができるので、そこが楽しみです。
今回初めて空間のプロデュースみたいなこともできたんですよ。わりとシュールな演出になるんじゃないかな? ホラーですよ、かなり(笑)。ホラーというか、サスペンスかな。そういう緊張感のあるものにしたいな、と。映像ディレクターの方だったり、あとはモデルさんだったりとのコラボレーションで今つくっているんですけれども。「あのくだりは何だったんだろう?」とか「あの伏線はいつ回収されるんだろう?」とか、そういう難解な部分や不完全なところ、というか。帰り道でちょっとイヤーな気持ちになるような(笑)。「あー、楽しかった!」では帰さない、“含み”のようなものを一つフックとしてつくれればな、と。最近はデヴィッド・リンチ(※9)の『ツイン・ピークス』(※10)がWOWOWで放送されていますけど、ああいった「なんだろう、この気持ち悪い感じ…?」と思わせる世界が好きなんです。クローネンバーグ監督(※11)もそうだし。スプラッターなグロテスクさというよりは、後味の悪い感じが好き、というのが根源にあるんですよね。それもエンターテインメントであり、喜怒哀楽の一つに残る記憶でもあると思うから。

③GLAYのコンサートに久々に来る人もいるのかな? どうなんだろう? 俺は別に無理やりノッてほしいわけでもなくて、もちろん帰ってほしいわけではないんだけど、本当にそれぞれの楽しみ方でいいと思っているんですよ。その期待を損なわないような完成度には仕上げていると思います。最新のGLAYというバンドが何を思っているか? どのぐらい楽しくふざけられるか? 何を目指してるのか?を見られるツアーになると思いますよ。20年以上楽しんでやっているバンドの姿を、優しい目で見つめていただければ(笑)、こちらとしてもやりやすいので。まぁ、皆さんファンのプロなので、何が起きても大丈夫だと思いますが。かなりやんちゃな部分もありますので、楽しめると思います。


JIRO
①個人的なことを言うと、悪くはない仕上がりだと思います。もうあと4、5回ぐらいしかないんだけど、リハーサルの直前が夏休みだったのもあり、もっと早目の7月ぐらいから練習し始めていたので、気が緩まなければ本番までになんとかなる気がする。先週リハーサルが始まって、4、5日休みを挟んだので、その間に自分でリハーサル音源を聴いて「ここはもうちょっとこうしたほうがいいな」とか、自分なりにアレンジし直したものを提案したり。前半戦・後半戦にリハーサル期間を分けるのは前回ぐらいから始めたスタイルなんだけど、その間の4、5日の時間的余裕が大事なんだよね。ただこなしていくだけだと、演奏は上手くなっていくかもしれないけど、細かいことを見つめ直すタイミングがないから。
リハーサルのムードはいつも通り和気藹々とはしてるんだけど、演奏しなければいけない曲がいつものライヴよりも多いので、ものすごく長時間になるんですよ。今までだったら皆で雑談してワーッと盛り上がったりもしていたんだけど、今回は終わると疲れ切って、「…帰るかぁ」みたいな感じになってます(笑)。

②自分のラジオでも言ったんですが、盛沢山過ぎて、“かつ丼とカレーライスのセットみたいなてんこ盛りのツアー”だなと思っていて(笑)。曲もそうだし演出面においても、今俺たちがやりたいことを詰め込んでみたらこんな感じになりました、という“引き算の余地なしのツアー”。だから、見どころはたくさんあるんじゃないでしょうか? 今回のアルバムに対する皆の熱量が高い分、今までのライヴとはちょっと違う気がします。2年ぶりのアリーナツアーだというのもあるし、ここのところシンプルな構成でホールツアーを行ってきてたので、たぶん皆やりたいことがいっぱいあって、気合が入ってるんじゃないかな? セットリストに関しては、「あれ聴きたかった・これ聴きたかった」という要望を俺はわりと聞くほうなんですよ。アンケートやラジオに寄せてくれるメッセージを読んで、そこから汲み取っています。あとは、バンドの中のムードとか、現実的なスケジュールとかも併せて組み立てるんだけど、今回は5月ぐらいの時点でセットリストはもう考えていて。それだけ長い時間があれば「覚えるのが大変だ」とは言っていられないと思うから、久々のナンバーが多いですね。でも、アリーナツアーなので、初めて観に来てくれるお客さんたちのこともないがしろにはできないので、ヒットソングも盛り込んでいます。

③この何年かはキーボードなしのバンドアレンジにこだわっていて、今回もキーボードは入らないんです。キーボードがあればサウンド的に華やかにはなるけど、俺たちの本質はそこではないから。やっぱりギターで構築していく音づくりをアマチュアの時からずっとしていて、今そこに原点回帰しようとしていて。それでもやっぱりキーボードの音がないと寂しい、というところから試行錯誤を重ねて、前のツアーに比べてバンドアレンジでカバーする部分をより一層増やしています。演出のほうが派手なのでそちらに目が行くとは思うんだけど、そういった音楽的な充実も是非感じてほしいですね。本来だったらキーボードとヴォーカルだけで展開していく曲のバンドアレンジで、ギター2人のアレンジだったところへ、さらに俺のベースを加えている曲もありますよ。「あ、キーボードの時とはアレンジが違うな」とちゃんと分かるような聴かせ方をしたいな、と思って。「キーボードがないと寂しい」と言われるのがやっぱりすごく悔しいので、「キーボードがなくても安心して聴けるな」と思ってもらえるような、そんな“2017年ヴァージョン”のアレンジを楽しんでほしいですね。


取材・文/大前多恵


※1:【GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”】
2017年9月23日に開幕する23公演23万人動員のアリーナツアー。新潟、大阪、宮城、広島、東京、北海道、神奈川、大阪、福岡、埼玉、愛知で開催。
※2:「彼女はゾンビ」
2016年1月27日リリース『G4・IV』収録。HISASHI作詞・作曲。「シン・ゾンビ」のもとになった曲。
※3:「シン・ゾンビ」
2017年7月12日リリース『SUMMERDELICS』収録。HISASHI作詞・作曲。「彼女はゾンビ」をもとに人気アーケードゲーム『太鼓の達人』とコラボした曲。
※4:YUKI
1993年にJUDY AND MARYのボーカルとしてデビュー、2002年にソロデビュー。GLAYと同郷の函館出身。
※5:It's a small world
東京ディズニーランドのアトラクション。戦争のない平和な世界をテーマとしており、世界中の子供たちが各国の民族衣装で「小さな世界」を歌う。
※6:イヤモニ
イヤーモニターの略。バンドの演奏を演者自身が聞くために用いるイヤフォンの一種。モニタースピーカーと併用する場合もある。
※7:『MUSIC LIFE』
2014年11月5日リリースの13th ALBUM。デビュー20周年となるGLAYの歩みを象徴するタイトルがつけられた。「DARK RIVER」(NHKドラマ10「激流」主題歌)、「BLEEZE」(コンタクトのアイシティーCMタイアップ曲)、「百花繚乱」(テレビ東京系番組「ヨソで言わんとい亭」エンディングテーマ)、「疾走れ!ミライ」(テレビ東京系アニメ「ダイヤのA」オープニングテーマ)などバラエティに富んだ楽曲を収録。
※8:『Miracle Music Hunt』
2014年11月29日から2015年2月22日にかけて開催されたGLAYのアリーナツアー。
※9:デヴィッド・リンチ
1946年1月20日、米国生まれの映画監督。代表作に『エレファント・マン』『ブルーベルベット』『ツイン・ピークス』『マルホランド・ドライブ』などがある。非常に作家性の強い作風で、カルト的な人気を誇る。
※10:『ツイン・ピークス』
1990年~1991年にデヴィッド・リンチが監督したテレビドラマシリーズ。1992年に映画が公開された。2017年にテレビドラマ『ツインピークス The Return』が放送開始。
※11:クローネンバーグ監督
1943年3月15日、カナダ出身の映画監督・脚本家。『ヴィデオドローム』、『ザ・フライ』、『裸のランチ』など。アンディ・ウォーホールなどから高い評価を受け人気を博す。

Vol.63 TAKURO WEBインタビュー

いよいよその姿を現そうとしているニュー・アルバム『SUMMERDELICS』(※1)。その前段階として、今回はTAKUROにバンドの現在についてインタビューした(取材日は6月中旬)。
今年の彼は序盤にソロ作『Journey without a map』(※2)のツアーがあり、そのあとにGLAYの『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 –Never Ending Supernova-』(※3)があり、そしてGLAYのアルバム制作~完成と、息継ぐ間もなかったように思える。
しかもGLAYのホール・ツアーではJIROの体調不良のために4月25日の金沢公演が延期される事態も起きた。
ただ、5月に組まれたその振替公演とは別に、当初の公演日にもJIRO抜きでライヴを敢行したことはGLAYのファン以外にも大きな話題となった。
ここではそうしたGLAYの近況全般について話してくれたTAKUROだが、その発言にはバンドや自分自身の現在と過去、そして未来を見据えたものが多く、随所に深みが感じられる内容になったと思う。

2017.6.26

今、忙しい最中ですよね?

TAKURO
いや、そうでもないですよ。ツアーが終わって、ようやくひと段落できてる最中ですね。取材も週に2日ぐらいしか入ってないんで、精神的には大丈夫です(笑)。

そうですか。ただ、こちらからしてみると、まずTAKUROさんはソロ・プロジェクトが続いてたじゃないですか。

TAKURO
旅はしてましたね。2月からずっと……GLAYのツアーが終わる5月まで。

そのGLAYのツアーが始まるまではソロ・モードだったんでしょうか?

TAKURO
ソロ・モードね……でも思い返すと、2月のソロ・ツアーの前には10月から11月に(GLAYでの)被災地ツアーもあったし。だから、ほぼ両輪でもうグルグル回ってる感じでしたね。ソロ・ツアー中にGLAYのレコーディングもあったし、そのツアーの最後のZepp(Tokyo)の翌々日ぐらいからGLAYのツアーのリハーサルの準備に入ってたんで。だからずっと並行してる状態で、スイッチ切り替えたという感覚は、あんまりないです(笑)。でも……俺よく言いますけど、「カウント鳴ったらギターを弾くんです」というところでは、あまり変わらないですね。ただ、当たり前ですけど、GLAYに戻ったら責任が4分の1になって、気持ち的には相当楽になりました。やっぱりソロでは自分でメロを弾いて、そのあとのギター・ソロも自分で弾いて、ってやってたし。一番の違いは、ソロはインプロ(※4)が主だったので、その日どういうような曲になるか、まったく読めないままステージに立つけど。GLAYはカウントが始まれば必ず形があるから、(それを演奏するうちに)終わるじゃないですか。あれがすっごく楽でした!

(笑)そういうふうに感じてたんですね。

TAKURO
もう、自分が昔作ったフレーズに今の気持ちを乗っけて、丁寧に弾くという、それはとっても楽でした(笑)。インプロやる時は、その場その場で作曲しなきゃいけないようなしんどさもあったんで。だからGLAYの「歌舞伎で言うところの型みたいなものを大切にしながら次(の展開)につなげればいい」という演奏は、苦しくもあるんですけど、ソロに比べれば非常に楽しいものでしたね。

その意味では、やはりソロは修業の場であったわけですか?

TAKURO
修業であり、ほんとにその日のライヴがどうなるか、予想もつかないものでしたね。もちろん「いいものに」「質の高いものに」とは思ってるんだけど。それがGLAYの場合はもっとそうじゃないところで勝負してるからね。落語にたとえるなら「きっちりとできた昔からの話をいかに今日また新鮮な気持ちでお客さんに届けるか」っていう。その難しさは毎回変わらないんですけど、そういった歌舞伎とか落語とか、古典芸能に近いなぁと思いながらやってましたね。この間のツアーは。

そこで再確認したことってあります? 「GLAYってこうだな」「自分ってこうなんだな」と何か思ったことというか。

TAKURO
思いましたね。とくにギターのアンサンブルに関しては、ソロの時も「ギターに唄わせる」っていうこと。あと、これはあちこちのインタビューで言いましたけど、「一小節に情報量を詰めすぎない」ということをテーマにやってきて。で、そこからGLAYに帰ってきた時に、かつての自分が弾いてたフレーズの行儀の悪さみたいなものをあちこち見つけたんですよ。たとえば誰かが話してるのに、そこにかぶせるようなね。だからGLAYのツアーでは、誰かがおいしいコードを弾いてる時は……究極言えば弾かない、とか。おいしい音域を弾いてる時は邪魔にならない音域でサポートする、とか。そういうことに気づけるようになりました。

ええ、実はそれに近いことをこの前のGLAYのツアーを観て、感じたんです。今まではギターでどう火花を散らすかというところも大きかったと思うんですけど、今回のツアーでは「受け」や「引き」の感覚がありましたよね? で、突っ込む時は思い切り突っ込む!みたいな。

TAKURO
そうです。そのメリハリは……今回のアルバムの中に、去年のツアーや一昨年のライヴの音源とか、いろいろ入ってるんですけど。やっぱり一番近々のGLAYのツアーと比べると、自分にとっても、いつもと印象が違いますね。

そうでしょうね。あと、ツアーのギター・プレイでもうひとつ、セオリー通りの絡みをあまりしていませんでしたよね? 「エイトビートならこう弾いたら気持ちいいよな」というフレーズをそのまんま弾いてない気がしたんですよ。

TAKURO
弾いてない。そうですね。

ちょっと外してましたよね。そこはHISASHIさんのトリッキーさとはまた違った、イレギュラーな感覚をあえて盛ってるなと思ったんです。

TAKURO
それは……自分では出すまいと思っていた、ソロの時のジャズの影響かもしれないですね。もともと好きでジャズやブルースを聴いてたし、弾いてたしね。で、これはソロをやった理由でもあるんだけど……もし今後、たとえばHISASHIが「時間を長らくとって、また新たなスタイルを追求したい」ということになった時に、バンドが止まらないように、プランB、C、D、Eが必要だなと思ったんです。だから自分はソロを始めたんですね。ギター・バンドとしてのクオリティやアイデンティティを失わないように、という意味で。

ええ。ソロ活動自体がGLAYのためのものだと言ってましたもんね。

TAKURO
そう。で……今のところ俺は心配してないし、昔からGLAYのイントロのシグネチャー・ギターは絶対HISASHIのトーンだと思ってるし、今後もそうしてほしいんだけども。もし彼が今後「時間をとって考えたいんだ」っていうことになったら、「あ、じゃあこういったアプローチもあるよ」というのを出そうと、俺は思ってたんです。GLAYの中でも(演奏を)やりすぎて、ちょっとたるみそうな曲の時に「この音をぶつけてみようかな」とか「アプローチを変えてみようかな」ってやってみると、その曲の表情がガラッと変わったりするし。まあギターと音楽を突き詰めていくと、こっちの思い一発ですべてのNOがYESになることもあるからね。音楽用語で言うならアボイドノート(※5)みたいなもので……音楽的理論で言うとダメとされているけども、あえてそれを当てていくのも自分の今の思いなんだ、と。そこに自信さえあれば、原則的に考えれば、外れた音というのはなくなってしまうからね。そうしてやってみる中で、「あ、俺はもしかしたらこの曲のこと、何も知らなかったのかもしれない」「こんな表情もあるんだ!」という発見は、この短いツアーの……追加もあったから13本くらいに増えたのかな? その間にそういった発見は、たくさんありました。

ふむふむ、そうですか。だからギター・プレイについては、ある程度は意識しながらチャレンジをしてるなと思ったんですよ。

TAKURO
そうですね。でもほんとに2月のソロ・ツアーは、自分の人生の中であれほど濃密にギターと向き合えた日々はなかったので。もう……今回GLAYに帰ってきた時、一番は仲間がいる安心感があったんだけど、その仲間たちもいろいろとトライしているから、自分も思いっきりGLAYの中でトライしようと。で、それが許される雰囲気、土壌を「これはかけがえないものだな」と思いながら、やってましたね。

そうだったんですね。ではツアー全体としてはどうでした? 短い間にいろいろあったツアーだったと思いますけど。

TAKURO
今回は……よく謝ったし、よく謝られた旅でしたね(笑)。今までやった全ツアーの中でも、このツアーはなかなか忘れられないだろうな。とくにその金沢のライヴですよね。でもこれは自分がGLAYのリーダーをやっていて、前々から思ってたことなんだけど……「もしメンバーの体調が悪くなって、ステージに立てなかったらどうしよう?」ということは、どのバンドにとっても大きな課題なんですね。で、そこで俺は……「もうJIROがいなければGLAYじゃないよ、ありえない!」っていうファンの子がいるのも重々承知だけども。でもたとえば、たまたま誰かに連れられて来ていたとか、「気分転換でたまにはロックのコンサートでも行こうか」と思ったとか、あるいはお子さんがいる人だったら何とかやりくりして実家に預けて来たとか、アルバイトのシフトをやりくりしたとか……「そうやって来てくれた人たちの楽しみを奪うのも、またGLAYらしくないな」って思ったんです。

ああー。そこまで考えたんですね。

TAKURO
もちろん振替公演はやる。これは当然、責任の取り方としてやるんだけども。不完全ながら、その日GLAYはそこにいるわけだし。で、「GLAYのメンバーはTERUぐらいしか知らないよ」という人たちがいることも、スタッフと共有してる事実だからね。「<HOWEVER>(※6)さえ聴ければ俺は満足なのに、何でキャンセルなんだよ?」っていう声があるとしたら、それもまた真実だなぁって。これは俺がどのバンドにも、いつも感じてることだけどね。だから「これはやるべきだ」っていうふうに……判断したんですけど。まあ一番の理由は「自分のせいでGLAYのライヴそのものがなくなる」っていうことを、たぶんJIROが……というか、メンバーが望まないですよね。なるべくだったらなんとかして、フォローしたい。俺がケガをして、病気になっても、たぶんほかの3人はそうしてくれると思うんで。

はい。GLAYなら、そう思うでしょうね。みんなが。

TAKURO
うん。これはやっぱり、バンドの……責任、という以前に、それぞれが人との関係の中で築いた、自分たちなりのひとつの生き方なんですよね。

そうですね。生き方ですね、これは。

TAKURO
うん。まあ実際、なかなか楽しい夜になりましたよ(笑)。俺たち、ほんとピンチになればなるほど盛り上がるんで。しまいには「楽しそうだね」なんて言われましたもんね(笑)。JIROの立て看板作って、ツアー初日にたまたまチェック用に録ってたJIROのベースを聴いて、「ああ、これだったら目つぶればJIROいないこと、わかんないんじゃないか?」「2階の後ろの席だったら、ね?」とか考えながら(笑)。その一連の過程の中で、今後のリスクヘッジじゃないですけど、そういうものもたくさん見えてきたし。で……まあ、お客さんに対しての誠意の表し方はバンドそれぞれあるだろうけども。GLAYの生き方の雛形みたいなものはちょっとできたかな、っていう。

わかります。で、世間からは「GLAY、神対応!」みたいにも言われてましたけど。

TAKURO
そうですね……そう言ってくれるのはありがたいけれど。まあ、ほかの人も同じようにできるわけではないし、また次に俺たちが同じことをできるかと言ったら、これは疑問なんです。たまたまほんとに(ベースラインの)データがあったとか、JIROからのSOSが2日前ぐらいからあったから考える時間もあって、いろんな……振替公演も含めた調整もできたわけだったりもするから。ね? あんまり期待値上げられても(笑)。

そうですか。今回はこうできた、というところなんですね。

TAKURO
いや、というか、やっぱ4人いたほうがいいですよ(笑)。気づかなかったですけど、俺、すごく楽しくやるみたいで。で、お客さんも俺たちの気持ちを汲んでくれて、すごく応援してくれる。そんなライヴだったんですけど……終わったら、全員がもうグッタリ疲れちゃって。つまり4人で受け止めてるから今まで耐えられたんですね。もし3人で受け止めるのが2回3回続いたら、俺らが倒れるわ!っていう。そのぐらい、人の「気」みたいなのをものすごいスピードで毎秒ごとにやり取りしてるんだっていうのがわかりました。これは4人だからいいバランスでできてるけど、その4人分を3人で受け止めるとしんどいっていう(笑)。

そこまでのものだったとわかったんですね。で、JIROくんはその後のライヴで「GLAYがバンドとしてあることが決して当たり前なことではないと思うようになった」ということをステージで言ってましたよね。

TAKURO
言ってたね。うん。

それはきっとメンバーみんなが思ったことじゃないかと思うんです。TERUさんも「このツアーは、この4人が集まる奇跡を感じながらやってきました」と言ってました。

TAKURO
そうですね。まあ……俺、いま戦国ブームなんですけど、戦国時代なら一生は50年ですからね(笑)。そういう意味では、あとどれぐらいバンドができるか、わからないけども。やっぱり誰かがそう願うように、美しいエンディングというものに対しては、あの一件以来、もう日々考えていなければならないことのひとつとして、そこにある問題として感じるようになりましたね。

ああ、そこまで感じたんですか?

TAKURO
TERUがいつまでも一番高いトップノートを出せるとは限らないし。それこそギタリストやベーシストは、いわゆる普通の暮らしの中では到底しない動きを2時間の間ずーっとしてるわけだから、そういったコンディションのこととかも考えないとな、と思ったんですよ。あと俺、ここ5年ぐらい(ローリング・)ストーンズ(※7)の再発ものが活発だから、そのたびに買ってて。こないだ『ハバナ』(=映画『ハバナ・ムーン:ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』)(※8)も観たし、「70過ぎても、やっぱりいいなあストーンズ!」と思ったんですけど。90年の東京ドームのライヴ(映像作品『フロム・ザ・ヴォルト・エキストラ~ライヴ・イン・ジャパン - トーキョー・ドーム 1990.2.24』(※9))観て、そのキレッキレぶりに、「なんか今(のストーンズは)、ヘタだなあ」って……(笑)。

(笑)それはわかります。

TAKURO
「これは味じゃねえだろう? 老化ってあるんだな」っていう。まあ、それはそうですよ。30代40代のパフォーマンスがいかにキレキレかっていうのは、70代という比べるものがあるからこそのことで。今を生きてる俺たちには、今の状態というのは、わかんないですもんね。どこが山のてっぺんで、どこからが下り坂なのかは、わからないけども……。でも少しずつ下り坂になりつつあるということを、メンバーみんなが意識したのかもしれないですね。

あ、今回の一件によってですか?

TAKURO
それがほんとであるか、ほんとでないかは、もう20年後の俺たちと比べてみないと、わかんないことだけども……だから今度は、その時々のGLAYをどううまくコントロールしていくか。俺たちが今回の『SUMMERDELICS』を作って一番感じたことは、美しいメロディだの、よくできた詞だのっていうことは、ロック・バンドにおいてはさほど重要ではないな、と。一番はロック・バンドを始めた時のあの衝動が今も同じだけあるかどうか? これがもう、ここからの勝負のすべてだな、と。

今、そういうふうに感じてるんですね。

TAKURO
だって考えてみたら、作詞作曲して間もない19、20歳の連中の曲が1000年も聴かれる名曲になりうるわけじゃないですか? だけどバンドを長くやっていくと、「15枚目のアルバムのあの曲が1000年も聴かれるか?」というと、ちょっと疑問だもんね。キャリアはあるはずなのに。経験も積んで、曲作りやいろんなことがどんどんうまくなるのに、それでもデビュー・アルバムがやっぱり最高だなという……その秘密は何だろう?と。そう思うと、(若い頃は)未来に対する希望と絶望があったり、そのバンドを始めてまだ時間が経ってなかったり、あと人間としてもエネルギーに満ちていてね。それがすべて詰まってたのがニルヴァーナの1枚目だと思うんですよね。まあ、もうカート(・コバーン)(※10)はいないけど……ジョン・レノン(※11)もあれ以降いないから、今も生きてたらどうなってるのか、わからないけども。(ビートルズの)「ツイスト&シャウト」のあのシャウトが、50の時に同じ熱量でできるかどうかがロックンロールのほんとにすべてなんじゃないか?って今は思うようになりましたね。

はい、はい。若い時の刹那の感覚だけではなくて、大人になっても。

TAKURO
そうですね。まだファンもそんなにいなくて、小さなライヴハウスで、自分たちの将来はどんなものかもわからない時の……見えない未来に向かってシャウトしてる、あの感じと。たとえばGLAYだったら10年後の話をステージでするTERUがいるわけだから、少なくとも10年間は何かしら続けてなきゃいけないという……それはロックの持ってる破壊性とか衝動みたいなものとは真逆の約束事ですよね。そこでいかにしてちゃんと情熱を絶やすことなく、かつ、約束を守るか、っていうことなんです。

約束ね。GLAYは約束をたくさんしてきましたよね。今でももちろん。

TAKURO
だから今までのバンドになかった、相反するものを抱きしめながら、ガソリンをかぶって火事場に行く、みたいなところはありますよね。でも「それがGLAYのGLAYたるゆえんなんだろうな」って思ってるんですよ。ただ、そこで俺が一番メンバーに確認したかったのは、仕事ということを抜きにしても、どれだけの情熱でもって曲を書けるか? スタジオに来てプレイができるか?っていうことなんです。たとえば俺がクライアントに「BELOVED」(※12)とか「HOWEVER」みたいな曲を求められて、相手がきっちりと納得するような形で書いて出してきていたら、もうメンバーには愛想尽かされてるでしょうね、きっと。たぶん彼らはそこに情熱を見出さないと思う。

なるほど……。今回のツアーを観てても、過去のGLAYを回想するような場面もあったけど、大切なのはそれを未来に向かってどう生かしていくのか?というところにポイントがあった気がしました。

TAKURO
うん。だって朝が来たら、ラッキーなことに目が覚めちゃうじゃないですか? ポックリ死ぬわけじゃないし。で、自分たちが過去にやってきたことがあって、そしてそれを頼りにしながら生きてる人たちがいる。今は「その人たちの思いを汲んでやろう」というぐらい、人間の器としては広がりが出ましたよね。もう40代も半ばになって。だからバンド内では「やりたいからやる! やりたくないからやんない!」というレベルでの会話はもうしてないと思う。だけど、じゃあ過去にやったその曲を思い出再生装置のごとくお客さんの目の前で披露するというのは、たぶんGLAYにとっては違うんでしょうね。そこに今の……2017年らしい何かをきっちりと乗せて、お客さんに向ける。それが正しく曲を成長させることなんだろうな、と。JIROなんかとよく話しますけど、ヒット曲、有名曲みたいなライヴをやると、いっときパーッと「懐かしい!」とかで盛り上がるんだけども……やっぱそれを2回も続けるのは違うと思うし。そうすると新しい曲や埋もれていた曲にチャンスを与える機会がなくなってしまうからね。だから「そういうのは何周年とかのデッカいライヴ以外はやめない?」っていうのがメンバー全員一致の見解としてあるんです。今は「25歳のあの頃に表現できなかったあの曲、今だったらできる!」みたいな再発見の仕方をたくさん持ってるんですよ。「俺はあの時、人間的な器もテクニックもなかったから、この曲にはボロしか着せてあげられなかったけど、ほんとはもっと違うタイム感でやるべきだったな」とか。「GLAYの一番の魅力はTERUのあの一小節伸びるシャウトなんだから、そこでちょこんと弾くのはやめよう」とか。そういう人間としての成熟が、曲にとてもいい作用を及ぼしてるのは感じますから。だから毎回ツアーやってて、楽しいんですね。

はい。だからツアーでは、そうした昔作った曲やアルバムの中の曲もやってましたよね。「May Fair」(※13)とか「WORLD’S END」(※14)とか。

TAKURO
そうですね、現代の解釈としてね。それは一度も停滞せず、解散もせず活動をしてきたバンドの矜持というか……やっぱり地続きであるということに対しての重みというものを感じてますね。それはファンの人たちに対しての緊張感もそうだと思うし。

わかりました。で、あと訊きたいのは、今度のアルバムの豪華BOX SET版についてなんです。これには『SUMMERDELICS』に加えてライヴ音源やドキュメンタリー映像もたくさん入っていて、この数年のGLAYがどう音楽に向かってきたかがわかるものになってるようですね。

TAKURO
はい。あのー……この話は最終的にBOX SETのことにつながるんですけど。俺は今みたいに音楽が無料になるということ自体、ずいぶん前から感じていたし、YouTube最強説を唱えてからも久しいんですけど。

ええ。今の音楽全般に言える、親しまれ方についての話ですね。

TAKURO
その中でこの10年、俺が一番力を注いできたことは「音楽は絶対に人生を超えてはいけないんだ」ということなんです。やっぱり人生の主役は人間であって、その中に音楽があって、いろんな悩みや喜びみたいなものが繰り返していく。で、このBOX SETでやらなきゃいけなかったことは、何でこの曲がこうできたのか? 何で『SUMMERDELICS』の曲たちができたのか?ということをファンの人たちにきっちり知ってもらうためなんですよ。そうじゃないと、流行歌として……2017年に出たロックのアルバムの1枚として、「今」は絶えず消え去ってしまうから。今ほど曲(の存在)が軽くなってしまう時代はないと思うんです。そのぶん、あらゆる曲にはふるさとがあり、産みの親があり、そしてその産みの親にはいろんな歴史があって、出会いがあって、曲が生み出されたんだ……っていうことをちゃんと共有しないといけないんですね。今の時代は、音楽をタダで聴ける。20年前なんかよりもよっぽどたやすく、どこぞのレア盤も、撮影もOKだったりするから地球の裏側のロック・バンドのライヴのあの曲もたやすく手に入るけども。俺がひとつ確認したかったのは、汗水垂らして働いて手にしたお金でね……「身銭を切る」って言葉があるけども、その痛みを伴った音楽は聴こえ方がちょっと違うんじゃないか?というのがあって。

それはリスナーがお金を払っただけの思いを持って作品に向かうから、ですよね。

TAKURO
俺はこのBOX SETに関しての企画が出てきた時に、OKだと思ったの。このBOX SETでほんとに今必要なプロセスを踏めるな、と。90年代のGLAYの印象が強い人はTAKUROメロディ以外はGLAYとして認めない傾向にあるんだけども、何で「デストピア」(※15)が、何で「HEROES」(※16)が生まれたか? それはタイアップが決まったからではないんだ、長いことGLAYをやってきて、いろんなストーリーがあった上でできたんだ、って。そういうことをこのBOX SETによって感じてもらえれば、俺たちはまだまだやれると思うんですね。

なるほど。そこには背景と過程があると。

TAKURO
背景と過程があるんです。「音楽なんて、聴いて良ければいいだろ」って人がいるけど、「いや、俺はその意見とは違うな」と。やっぱり、どんな物語があって最後にその結末に行き着いたのかなんですよ。映画でも「犯人は彼です」「殺したのは彼です」じゃ物語がないですよね。たとえば「誰なんだろう?」っていう推理小説ならではのワクワクがあって、その中に犯罪を犯してしまうまでのプロセスがあって。それに共鳴できる人はできる、共感できない人はできない。そういうのがあってこそのアートだとするならば、俺は『SUMMERDELICS』に至るまでの過程をこのBOX SETで、少なくとも「そのGLAYの考えに一票!」って言ってくれる人たちには誠実に示したいなと。それからこのアルバムに行き着いてほしいというね。それが俺たちが今、この手軽な音楽全盛の中でここまで手をかけてやるということの意味みたいなものです。

このアルバムに至った理由があるということですね。で、この中には、先ほどのJIROくん抜きでやった金沢のライヴのドキュメンタリーも入ってるんですよね。

TAKURO
はい。あとベネチアでのTERUの<ひとり『情熱大陸』>も入ります(笑)。

(笑)そうした、いろいろな表情のGLAYが楽しめると。

TAKURO
そうそうそう! それがあって『SUMMERDELICS』になったっていう。まあ「音楽だけでいいんだ」って人は、それはそれでいろんな聴き方があると思うけど。GLAYというバンドそのものに興味がある人は、ぜひ手にとっていただきたい逸品でございます(笑)。

でも最近はこのアルバム制作と、それにソロから今回のツアーもあったことで、GLAYというバンドの捉え直しができてるような気がしますね。TAKUROさんの中で。

TAKURO
そうですね。だから……みんな、それぞれにずーっと優秀なミュージシャンであったことは間違いないんだけども。とくに3人はね。だけど俺としては、彼らのありあまる才能みたいなものをこうして世の中にきっちりと伝わるような形で出せる状況をずっと待ってたところがあります。それまでは、その力が当人にはあっても、たとえば事務所としての機能がまだ至ってなかったとか、「その早すぎるアイディアを翻訳しないで今の世の中に問うても、たぶんポカーンとされるだけだ」っていう状態だったから。だから『G4』(※17)を始めたんだけど、その<IV>を作った時に「あ、これはもう、いよいよ前夜だぞ」っていう気がしたんです。とくにHISASHIに関しては、世の中のネット環境も整い、人々が手軽にいろんな情報を手に入れられるようになった時、彼の才能は爆発するんじゃないかと思ってた。で、今まではサブカルだとか、いわゆるギークなところで「GLAYにそういう人、ひとりいるよね」と認識されてたんだけど、そこからきっちりとHISASHIという名前を持ってして、作品の評価として世の中とちゃんと戦える状況になった。「そういう時代をマネージメントが作んなきゃな」というのがこの5年の課題でしたけど、それは(時代状況との)歯車が合うとかどうとかっていうレベルじゃないんですね。もう仕事の熱量としては。GLAYが90年代を駆け抜けたんだとしたら、そこには時代の後押しがあった。今はそういったものがもっと多様化して、自分たちの立ち位置を見失いがちになるけども。少なくともこの10年は、GLAYという個性豊かな人間たちの集まりというものを、もう1回世の中に再解釈してほしかった。そこが俺の一番の興味でしたね。詞を書くよりも、曲を書くよりも。

なるほど……そういうふうに考えてたんですね。この時代の中でのGLAYのあり方について。

TAKURO
それがようやく『G4』からこの『SUMMERDELICS』の何年間かで結びついたというか、入り口に立ったという気がします。だって昨日俺、『関ジャム』(※18)観て感動したもんね! HISASHI、大したもんだなあ!って思った。言葉が足りないところもなく、言いすぎてるところもなく。きっちりと自分のやりたいままに、求められるがままにいい仕事をして、黙って帰る。侍のようだ!と思ったもん。それはMIYAVI(※19)くんもそうだし、佐橋(佳幸)(※20)さんは言うに及ばずだけど、HISASHIは素晴らしい仕事をしたなって思いました。

そうでしたね(笑)。で、さっき「入り口に立った気がする」と言われましたけど、これからまた新しいGLAYが出てくるだろうということですね?

TAKURO
そうですね、もちろん。俺も3人に負けてられないんで、頑張んなきゃいけないです。

はい、それを楽しみにしています。今回はこんなところで……どうもありがとうございました。

TAKURO
はい! 楽しかったです。話の切り口がちょっと違ってて。ありがとうございました!
※1:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。メンバー全員が作詞・作曲を手掛けタイアップ曲も多数。CD Only盤(¥3000+税)、CD+2DVD盤(¥5000+税)、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition ¥22,963+税)の3つのバージョンが発売される。
※2:『Journey without a map』
GLAYのギタリストであり、メインコンポーザーを務め、リーダーでもあるTAKUROによる1stソロアルバム。B'z松本孝弘氏をプロデューサーに迎え、ブルースやジャズを基調としながらTAKUROの繊細かつ叙情的なギターサウンドで奏でられたインストゥルメンタル・アルバム。
※3:『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 –Never Ending Supernova-』
2017年4月14日(金)島根県芸術文化センター「グラントワ」から5月25日(木)石川・金沢歌劇座で行われた追加公演まで、全10都市14公演(振替公演も含む)で開催されたホールツアー。4月25日(火)の金沢公演をJIROが体調不良によるドクターストップで欠席となった。TAKUROは「ボーカルのTERUやギターのHISASHI、そしてコンサート制作スタッフと何度も協議を重ねた結果、中止という選択はとらず、楽しみにしていてくれたファンの皆様へできる限りのことをしたいと思いステージに立つ所存であります。ご迷惑をおかけしますが、これからもよろしくお願いいたします」とコメントを発表。さらに、5月24日(水)に同会場での振替公演の開催と、振替公演に来られないファンへの払い戻しを発表した。
※4:インプロ
インプロビゼーションの略。即興による演奏。
※5:アボイドノート
響きが悪くなってしまうので音楽理論上、原則的には避けるべきとされている音の組み合わせ。
※6:<HOWEVER>
1997年8月にリリースされたGLAY 12枚目のシングル。GLAY初のミリオンセラーを記録した代表曲。
※7:(ローリング・)ストーンズ
ロックの代名詞とも言える世界的バンド。1962年にイギリス・ロンドンで結成され、以来、半世紀以上にわたって、一度も解散することなく活動を続ける。
※8:『ハバナ』(=映画『ハバナ・ムーン:ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』)
2016年にキューバの首都ハバナで開催されたローリング・ストーンズのフリーコンサートの模様を収録したドキュメンタリー映画。
※9:『フロム・ザ・ヴォルト・エキストラ~ライヴ・イン・ジャパン - トーキョー・ドーム 1990.2.24』
1990年2月24日に東京ドームで開催されたローリング・ストーンズのライブ映像を収録したDVD/Blue-ray。2017年3月31日に日本限定で発売された。1990年2月14日から27日にかけて東京ドームで全10公演が行われたうちの8公演目を収録している。
※10:カート(・コバーン)
バンド「ニルヴァーナ」のボーカル・ギター。1989年に1stアルバム「ブリーチ」を発表。1991年の2ndアルバム「ネヴァー・マインド」が大ヒットを記録し、グランジ・ミュージックが世界的なムーブメントとなる。かねてから患っていたうつ病と薬物過剰摂取が引き金となり1994年に自ら命を断った。享年27歳。
※11:ジョン・レノン
世界で最も有名なロックバンド・ビートルズのメンバーであり、主にボーカル・ギターを担当。ソロでも数々の名曲を遺した。1980年12月8日、ファンを名乗る男性に射殺された。享年40歳。
※12:「BELOVED」
1996年8月発売、GLAY9枚目のシングル。TAKUROが作詞・作曲したGLAYを代表するラブソング。
※13:「May Fair」
1998年5月発売の4thアルバム「pure love」に収録された楽曲。シングルカットはされていないが非常に人気が高い。
※14:「WORLD’S END」
2007年1月発売の9thアルバム「LOVE IS BEAUTIFUL」に収録された楽曲。作詞・作曲はHISASHI。
※15:「デストピア」
「SUMMERDELICS」の7曲目に収録。作詞・作曲はHISASHI。TVアニメ「クロムクロ」第1クールオープニングテーマ。ダークな世界観の歌詞ロックンロールナンバー。
※16:「HEROES」
「SUMMERDELICS」の8曲目に収録。作詞・作曲はTERU。テレビ東京系アニメ『ダイヤのA -SECOND SEASON-』オープニングテーマ、テレビ神奈川 第97回全国高等学校野球選手権神奈川大会中継テーマソング。爽やかな歌詞と疾走感あふれる演奏で、アッパーな仕上がりとなっている。
※17:『G4』
2006年7月発売GLAY33枚目のシングル。TAKURO作詞・作曲「ROCK'N'ROLL SWINDLE」「誰かの為に生きる」「恋」「LAYLA」収録。2011年10月発売の『G4・II -THE RED MOON-』以降はメンバー全員が1曲ずつ作詞・作曲を担当している。現在は『G4・IV』まで発売されている。
※18:『関ジャム』
『関ジャム 完全燃SHOW』は関ジャニ∞と古田新太が毎回様々なアーティストをゲストに迎え、一夜限りのジャムセッションやトークを繰り広げる音楽バラエティー番組。テレビ朝日で放送中。2017年6月11日放送回には、佐橋佳幸、MIYAVIとともにHISASHIが出演してギタートークを繰り広げた。
※19:MIYAVI
日本のロックミュージシャン。バンド活動を経てソロデビュー。独特なスラップ奏法で世界的な人気を誇り、「サムライギタリスト」の異名を持つ。ワールドツアーで海外進出も積極的に行なう他、アンジェリーナ・ジョリー監督作品『不屈の男 アンブロークン』で映画にも出演。
※20:佐橋(佳幸)さん
ギタリスト・音楽プロデューサー。1983年にバンド「UGUISS」のメンバーとしてデビュー。解散後はセッションギタリストとして活動。作詞・作曲・プロデュースも行ない、さまざまなミュージシャンとも活動を行っている。

取材・文/青木 優

Vol.62 WEBインタビュー

『SUMMERDELICS』をGLAYのメンバーと共に作り上げたプロデューサー・亀田誠治氏は、「ロックの新しい扉を開けた一枚」と、同アルバムをGLAYにとってもロックシーンにとっても非常に重要な位置づけになると絶賛した。そんな亀田氏に、アルバム完成までの、4人との濃密な時間を振り返ってもらい、作品について、改めてGLAYというバンド、そしてメンバー一人ひとりについて語ってもらった。

2017.5.22

亀田さん(※1)とGLAYのタッグがスタートしたのは2013年のシングル曲「DARK RIVER(※2)」からですよね。

亀田
そうです。TAKURO君から電話があって。それまでGLAYには佐久間正英さん(※3)という素晴らしいプロデューサーがついていらっしゃって、僕も一音楽ファンとして、GLAYのことをずっと注目していました。僕は1988年頃から音楽の仕事を始めて、GLAYが94年にデビューして、90年代後半に大ヒットを飛ばして、このバンドは一体……と僕の中でバンドの概念を破ってくれました。バンドなのにしっかりとしたメロディと歌詞がきちんと存在して、そしてメンバー全員にカリスマ性があって。ボーカルのTERU君とソングライターのTAKURO君は、例えていうならビートルズのジョン・レノン&ポール・マッカートニー(※4)、U2のボノとエッジ(※5)、BOØWYの氷室さんと布袋さん(※6)、それくらいの強い2TOP感があって、何十年かに1組出てくる超大型アーティストというイメージでした。

いつかは一緒にやりたいなとずっと思っていました?

亀田
またえげつないこと聞きますね(笑)。いつか一緒にできるといいなと思っていましたね。

クリエイティブ魂がそそられるというか、煽られるとういうか、そういう感じですか?

亀田
いつか一緒にやりたいと思う気持ちって、やっぱり僕らの仕事にはすごく必要で、ここから相思相愛が始まるんですね。僕は下は10代、上は60代くらいまで色々なジャンルの色々なアーティストを手掛けていますが、やっぱり基本にあるのは相思相愛の関係なんです。それは飲みに行って仲良くなったからとか、そういう事ではなく、お互いの作品やパフォーマンスを見て、純粋に音楽から共有できるリスペクト、相思相愛の気持ちから始まっているというのがポイントです。なので、この人と仕事がしたいと思った時は、営業をかけるのではなく、まずは念力をかける。いつか一緒にやりたいなって。そういう強い思いを持っていると、僕の場合は必ずつながります。

TAKUROさんから初めて連絡を貰った時のことは覚えていますか?

亀田
覚えています。その2年くらい前の「ap bank fes(※7)」でご一緒して。その時にホテルで、ミスチルのJEN(※8)の部屋でみんなで飲みました。みんなむちゃくちゃ酔っ払っていて、その時にTAKURO君かTERU君どちらかが「亀田さんもいつかGLAYのプロデュースしてくださいよ」と言ってくれて。その時に僕が返した言葉というのは……

伝説になっている「いい曲書いてきたらやってやるよ」って言ったという話ですよね(笑)。

亀田
そう。僕はそんなことはひと言も言ってなくて(笑)、一緒にできる曲があったら、是非やりましょう、という感じで全然上からではなくて。僕とGLAYのバイブスが合う曲があったら、きっといつかはそういうチャンスが来ると思うって言ったのに「まずはいい曲持って来いよ」って僕が言ったという話が広がって(笑)。そんな事絶対言ってないのに(笑)。

亀田さんはそういう事を言いそうにないです(笑)。

亀田
僕本当にそういう人じゃないですから(笑)。その後しばらくしてTAKURO君から電話をいただいたという感じです。なので初対面というわけでもなかったし、とにかく僕はGLAYの活躍をずっとリスペクトしていたし、GLAYのメンバーも僕のプロデュースワークを外から見ていてくれていました。

まずはシングル「DARK RIVER」で一緒にやって、その後オリジナルアルバム『MUSIC LIFE(※9)』(2014年)で再びガップリ四つに組んで制作しました。

亀田
実際に一緒に現場に入って、まずは人に惚れました。人に惚れるというのは、普通僕らは何枚か一緒に作って時間を重ねていく中で、惚れていくものですが、GLAYの場合はもうメンバーとの顔合わせの時に、それぞれの人柄と、4人の絆に感動しました。こんなに人と人がお互い尊重し合って、しかもなあなあではなくて、そんなバンド他にいないと僕は色々な人によく言っています。これが90年代、2000年代の日本の音楽シーンを支えて牽引してきたトップバンドの素顔なんだなと改めて感動して、4人のためなら自分が持ってるもの、全ての経験、スキル、ネットワークを使って、彼らの音楽を次の世代、時代に残していきたいと「DARK RIVER」の時に思いました。曲の素晴らしさはもちろん、僕がアーティストと接していく中での出会いの時のスパークの大きさといったら、もうこんな出会いはなかなかないという手応えでした。人柄もそうですが、4人から出ているエネルギー、熱量がすごいと思う。普通バンドが、全員エネルギーを発し合うと、それがぶつかり合っておかしなことになったりするのに、GLAYの場合はそれがちゃんとひとつの方向に走り出して、本当に4つの車輪で、それが綺麗に回っていて。

『MUSIC LIFE』の発売イベントで、亀田さんとメンバーが登壇して「最高傑作ができました」とおっしゃっていました。今回の『SUMMERDELICS(※10)』を聴くと、“最高”をまた更新したような仕上がりです。

亀田
もちろん最高傑作が完成しました。僕らは前の作品を超えるために音楽を作っています。その超えるという事がGLAYの場合は、自分たちの基準を超えるということなんです。人からの評価、数字だけでなく、その前にまず自分たちがこれは面白い、これはすごい、これは良い曲、新しいGLAYになれているのか、懐かしいGLAYをちゃんと見つめているのか、色々な基準があると思いますが、その自分たち超えという感覚を、メンバーと僕、スタッフのみなさんと共有できているということが、すごく大きいと思います。僕も自分超えをしたということだと思います。

外からの評価基準よりも、ある意味遥かに厳しい自分達の基準を、毎回超えているからこそ、20年以上トップランナーとして走り続ける事ができているんですね。

亀田
一人一人の自分超えということでいうと、もちろん曲や歌詞を書く事で自分を超えるという事も大切ですが、4人はミュージシャンとして本当に一人一人が自分に厳しい基準で音楽に向かっていると思います。例えばベースのJIRO君は、必ずプリプロまでに自分のベースラインを固めてきますし、ギターのHISASHI君はみんなで音を出すときは、サラッと弾く感じなのに、2,3日経った頃、家でカッチリ作り込んだ音のデータを送ってきてくれたり。「俺は究極のニートギタリストだ」とか言いながら、きちんと送ってきて(笑)。TERU君は、今回のアルバムから本歌を歌う前に、家のスタジオで自分の歌を一回シュミレートしてくるようになって。で、「亀田さんこういう歌い方でいいかな?」とか相談してきてくれて。TAKURO君も前回はこうしたから、今回はこうしたいとハッキリとした意見を言ってくれて。TAKURO君は並行して自分のソロプロジェクトをやっていたので、そこで掴んだ何かがあると、「あの曲のギターソロだけもう一回やりたい」と、自分のジャズプロジェクトをやっていく中で面白いことをやってみたい、実験したいという思いが出てきたみたいで。メンバーそれぞれが定点にとどまっていないというか。それぞれが次の自分を目指しているので、だからGLAYは年を取らないんですよ。逆に若返っています。本当に真摯に音楽に向き合っていて、かといってただの音楽バカではなく、ちゃんと自分の時間も大切にしています。人生が注ぎ込まれてスケールアップしていく、そこがGLAYの知られざる魅力だと思います。

亀田さんはありとあらゆるアーティストを手がけていらっしゃいますが、プロデュースするうえで、一番大切にしている事はなんですか?

亀田
音楽第一主義、アーティスト第一主義という事はずっと貫いていますが、一番大切にしているのはアーティストが100人いたら100通りのやり方でやらないと、いい作品はできないという事です。僕は例えばバンドものだとGLAYと並行してスピッツもやっていますが、スピッツでうまくいったことをGLAYでやろうとしても、絶対うまくいきません。その逆も然りで、それはバンドといっても人の集まり、個の集合体だから。それぞれの人の集合体に対して、僕はさらに1対1の関係で作っていかなければ、いいものはでき上がってこないと思っているので、そこだけは肝に銘じています。

TAKUROさんが「亀田さんが心地よく仕事をさせてくれるので、毎日早くスタジオに行きたかった」と言っていました。

亀田
真剣にやる必要はありますが、煮詰まる必要はないですからね。険悪になる必要もないし。ひとつひとつを認めてあげたいし、認めた上でここがダメ、うまくいかないねということで納得すれば次に進めるという事を、瞬間瞬間を判断していくのが僕の仕事だと思っていて。それには厳しい口調になる必要もないですし、和気あいあいとした中でも進められることなんです。

今回の『SUMMERDELICS』も、メンバーが作った曲を全部亀田さんに渡して、亀田さんにチョイスしてもらったとおっしゃっていましたが、『MUSIC LIFE』の時と今回のレコーディングとでは、2枚目という事で、雰囲気は大分違っていましたか?

亀田
レコーディングの雰囲気は最高でした。『MUSIC LIFE』を作って、「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary(※11)」も観に行かせてもらって、飲み交わした酒の量もありますし(笑)、そういった意味では僕とメンバーと、エンジニアの工藤(雅史)さんも含めて共同制作者という感じでやっていますが、みんなの距離感がいい意味で近づいていると思います。でもそれは決してなあなあになったという事ではなく、距離が近づいた部分だけ、より厳しくなった部分もありますし、コミュニケーションスピードが上がって、雰囲気はどんどんよくなっています。

制作期間はどれくらいかかったのでしょうか?

亀田
去年の6~7月くらいに、全員の曲が集まって、それをいただいて、夏頃からちょくちょく作業をやり始めました。なので制作期間でいうと約1年ですが、その間にシングルもあったので、それを入れると2年くらいかかった事になります。

『SUMMERDELICS』はメンバー全員が作品を手がけ、それぞれの個性が溢れ出ていますが、それぞれの作品に対する亀田さんの評価を聞かせていただけますでしょうか。まず今回はなんといっても「シン・ゾンビ」他、HISASHIさんの曲に注目が集まっていますが。

亀田
HISASHI君は自分の事を「ニートギタリスト」と言っていますが、やっぱりロックミュージックを非常にグラマラスな形でデジタルに変換するんですよね。

HISASHIさん、ネットシーンでもヒーローです。

亀田
それは音楽上だけでやっていないというのがHISASHI君の強みだと思います。メディアの使い方も関わってくるので、なんと言えばいいんですかね、このカテゴリーを。オタクでもないし……。

ハイパーメディアアーティスト?とかですかね。でもそう名乗っている人、他にいましたよね(笑)。

亀田
確かにハイパーメディアの領域に入ってきていますね。ネットから発信されたボカロ的なものや、ダンスミュージック的ものにHISASHI君は、そのグラマラスなロックのスパイスをかけて全部をひとつにしました。そこをさらにグラマラスにというか、ロックで体現できるのがTERU君というボーカリストです。だからHISASHI君は筆が進むのだと思います、このGLAYの現場では。普通だったらここはアニソン的な女性ボーカルやボカロ的な声が乗ってきたほうが親和性が高いところに、うちにはTERUという看板ボーカルがいて、彼を躍らせることができるというのを、確信犯で作っていると思います。だから「微熱Ⓐgirlサマー」のような遊びもできるし、「シン・ゾンビ」なんて、CDショップの試聴機で聴いた人は、誰もGLAYだと思わないと思う。

それはTAKUROさんもおっしゃっていました。

亀田
今までのGLAYを知っている人はびっくりするかもしれませんが、今回のアルバムを作るにあたってTAKURO君が言っていたのは、GLAYはキャリア20年を超えて、僕らももう45歳で、でも自分達が本気で楽しんでいる姿をみんなに見てもらいたい、というところから今回は始まっています。もちろんメンバーとTAKURO君はじっくり話をしていると思いますが、僕とTAKURO君でもこの話はよくしていて。HISASHI楽曲を次のシングルにしたいとか、そういう話もどんどん出てきていて、大人、45歳の俺たちが本気で楽しめるのは何かということを追求したいと。例えば「「XYZ」は俺達の得意な感じの曲ですぐできちゃう。でもね亀田さん「シン・ゾンビ」は演るの大変だよ。でも俺たちはこの曲をテレビで歌いたい」とTAKURO君は言っていて。この覚悟は並々ならぬものだと思います。例えば欧米のバンドも転換期ではそういう思い切ったことをやっていて、GLAYは常に挑戦しているバンドですが、今回のアルバムは本当に次へ飛ぶために、全速力で滑走路を走り、空を飛ぶ立つ瞬間のものだと思います。言ってみればこのために『MUSIC LIFE』もあったし、それ以前に本当に素晴らしい音楽を残してきていますが、僕と作った『MUSIC LIFE』は、エンジンを回して、滑走路を走り始めた段階のもので、今回の作品ではまさに飛ぶ瞬間のもので、この先にあるものを見てくれという意志表示の作品、これが『SUMMERDELICS』だと思います。

オープニングナンバーがHISASHIさんの新曲という、ものすごいインパクトです。

亀田
インパクトどころじゃない気がします(笑)。大変なことだと思います(笑)。

TERUさんも「手こずった」と言っていました。

亀田
大変だけど、やっていて楽しい挑戦をやりたいという事は強調していました。

覚悟が違うんでしょうね。

亀田
僕はプロデュースする時に必ずメンバーと一緒にプリプロをするか、一緒にスタジオに入るか、もしくはみんなとスタジオに入る前に、僕がこういうアレンジはどう?というデモテープを作るんです。TAKURO君がある日「亀田さんのアレンジは最高です。本当にロックしているしキャッチ―だし、大好きだけど、この頃メンバーが亀田さんのアレンジを『MUSIC LIFE』を経て、ちょっとなぞり始めている」と言ってきて。「なぞることは悪くないけれど、僕はそのムードを一回取り払いたいので、一緒にゼロからスタジオで作ってみたい」と言ってきてくれて、彼は正真正銘のリーダーですよね。逆にいうと「シン・ゾンビ」のようなアプローチは、あの元になっている「彼女はゾンビ」という曲には僕もかなり関わっていますが、HISASHI君がキャンバスに塗り替えたというか、設計図を書き替えた、構築し直した作品で、そういう一人一人のクリエイティビティを尊重して、TAKURO君は滑走路を飛び立つための準備というか、オイルの補給みたいなことを、今回やっていたと思います。

素晴らしいリーダーであり、プロデューサーですよね。

亀田
本当にプロデューサーです。僕とTAKURO君は基本的にはface to faceのコミュニケーションが好きなので、たいてい会って話すか、電話ですが、LINEも駆使して、その会話の量、時間たるや相当なものですよ。

HISASHIさんの新曲、「微熱Ⓐgirlサマー」だけでなく、「デストピア」「超音速デスティニー」(※12)と本当に色々な表情の曲を書いています。

亀田
陰と陽の使い分けも上手ですよね。サウンドの中にいわゆるデスメタルのような暗黒の要素も入れてくるし、能天気な要素も入れてくるし、やっぱりHISASHI君はパソコンと向き合うことによって、本当にたくさんのカードを手に入れて、持っている状態だと思います。多分、今自分でやっている活動が楽しくて仕方ないんだと思います。

ギタリストとして、プレイヤーとしてのHISASHIさんの亀田さん評を教えて下さい。

亀田
天才です。フレーズの方向、なんでこんなアプローチができるのだろうと感心しています。そして基礎的なプレイはもちろんうまいのですが、それに対してコンピュータを使った現代の音作りに対して非常にオープンなので、聴いた事もないようなフレーズや音が飛び出してくる。普通こんな音にいかないだろうというフレーズが出てくる。今回はどの曲もそうです。一方でGLAYの中での伝統的なHISASHIサウンドのようなものがあったり、いわゆるヘビーメタル、ビジュアル系のツボも押さえたギターなので、ギタリストが憧れてしまうようなプレイもできるという。

二人の全く色が違うギターの存在がGLAYの武器でもありますよね。

亀田
HISASHI君とTAKURO君のアプローチが全く違って、その曲のレコーディングで、どっちが先に弾くかによって勝敗が決まるようなところがあって(笑)。TAKURO君が「HISASHIこうきちゃいましたよ。俺はどう弾けばいいでしょうね」とか、よくスタジオで話しています。2人がお互いの音を聴きながら、GLAYのサウンドってコードネームでは表せないような、耳から判断していくものなので、ギターとギターのコラボを聴いていると、面白いサウンドになっています。

ソロツアーを経てのTAKUROさんのプレイはいかがでしたか?

亀田
ソロツアーが始まる前にTAKURO君とB’zの松本(孝弘)さんと3人で食事をする機会があって、その時に松本さんという大先輩から色々アドバイスというか、優しい訓示というか、甘いダメだしみたいなのをTAKURO君はもらって(笑)。TAKURO君と松本さんの間には師弟関係のようなものが見えて、影響も受けていると思います。例えばHISASHI君がデジタル大歓迎というプレイヤーだとしたら、TAKURO君は本当に59年型レスポールの音や、マーシャルのヘッドアンプにこだわったり、楽器の生音、タッチ、そしてひずみの香ばしさとか、そういうプレーンなスタイル、自分の体、指とギターとで出す音にこだわったプレイで勝負してくる。しかも今回は全部が生音の楽器、シンクとかない環境の中でレコーディングをし、ジャズスタイルのライブツアーをやって、それを経て、より“音は人なり”という部分を大事にしている感じが強くなってきたと思います。そういう意味で僕が言うのもおこがましいのですが、表現力という意味でTAKURO君のギターが上手くなってきていて、元々うまいのに表現力の幅がとにかく広がってきてます。本人もそこを大事にしようとしていて、ロックは勢いとかパワーとか、そういったものを超越したところに今きている気がします。

Mr.GLAY、TAKUROさんが手がけた今回の作品の中で、亀田さん的に注目している作品はどれですか?

亀田
例えば「聖者のいない町」には、僕とTAKURO君の共通言語がたくさん入っています。ある意味ビートルズの組曲的なアプローチで、そういう古き良きロックをこの2017年に変換していったらどうなるんだろうというアプローチです。ウイングスの「007死ぬのは奴らだ(※13)」(1973年)のようなオーケストレーションで、これまでには考えられないような迫力にしてほしいとTAKURO君からリクエストがありました。

曲頭がシンプルなので、迫力をより感じますし、メリハリがすごくカッコいいですよね。

亀田
「ジョージ・マーティンならぬ、亀田マーティンになって」と、わかりやすい指示がTAKURO君からあって(笑)。「SUMMERDELICS」は、1970年にカナダで行われた、ジャニス・ジョプリンやグレイトフル・デッドらが、列車に乗ってカナダ各地でライヴをやる「フェスティバル・エクスプレス」というフェスがあって、そのドキュメント映画があるのでそれ観て欲しいとTAKURO君に言われて。列車の中でミュージシャンは酒やドラッグに浸りながら音楽をとことん楽しむという内容で、そういう音楽旅団的なストーリーの曲にしたいよねと。今回のアルバムは遊び心、40代になった彼らが持つ遊び心という意味では、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967年)のようなストーリー性があってもいいよねという話をしました。「ロングラン」は典型的なTAKUROメロディで、言葉数が多くて、最初はTERU君がブルーになっていました(笑)。この曲は、ある程度素材はあったのですが、面白い作り方をしました。みんなが帰った後、TAKURO君だけが残って、僕も残って、TAKURO君がギターをつま弾きながら、鼻歌でサビを作ったりするので僕も一緒に聴いていて、ここはこうしたほうがいいねという話をしながら、一曲デモを作ったりして。そうやってできあがったのが「ロングラン」です。「XYZ」も音を流しながらみんなでメロディを作っていったり。やっぱりTAKURO君の許容力の広さはすごいです。こういうメロディでも気持ちよければいいじゃん、という感じでした。

スタジオ中でのメンバーの役割分担のようなものがあるとお聞きしたのですが、メンバーはJIROさんの意見にはみんな一目置いているとおっしゃっていました。

亀田
JIRO君はやっぱりベーシストというか、客観的なんですよね。客観的かつピュアなミュージシャン目線で、TAKURO君はどこか総合プロデューサー的目線。TERU君は何でも直観で言ってしまうタイプ。スーパー感覚派です。でもそこがいいところなんです。JIRO君は、ここはこういう音のほうが気持ちいいんじゃないかということとかを、しっかり言葉にして説明してくれたり、2番のここではパターンを変えたほうがいいんじゃないかとか、具体的かつ的確なんです。全体を見渡せている感じです。JIRO君もスタジオ入る前に必ず、自分はこういうベースラインにしたいというスケッチを送ってくれます。もしこれがOKなら、プリプロの時OKテイクを出しますと、そういう気迫で臨んできてくれました。だからGLAYのレコーディングがオンタイムで進むのは、本当にJIRO君のベースが一番最初に仕上がっているからだと思います。あのベースがあるからこそ、TAKURO君もHISASHI君も自由に泳げるし、ドラムとベースが先に完成してるので、先が見通せるんです。後からここは差し替えたいとも言わないし、本当に潔ぎいいプレイヤーです。

ソングライターとしてのJIROさんは、ご自身でコード3つくらいで曲を作っているとおっしゃっていましたが、メロディが豊かですよね。

亀田
シンプルだけど豊かで、どこかUKっぽい。いい意味で、日照時間が短い感じ。僕は大好きなんですよ、カリフォルニアの日差しとは真逆のあの感じが。僕もアレンジというか、サウンドメイキングしている時に燃えるし、どこまででも深い世界を表現していけたり、逆に典型的なUKのロックや、いわゆるロッククラシックから何かを引用してきても親和性があるというか。素晴らしいソングライターです。シンプルな分だけ、いい意味で歌謡性がなくて、洋楽のメロディに近い。歌謡メロはTERU君、TAKURO君、HISASHI君も書けるので、本当にJIRO君の曲はいいスパイスになります。JIRO君の曲が並ぶと本当に威力があります。一曲だけポンッと入るとスパイスという感じになりますが、2曲並ぶとそのアルバムのカラーを決定づけるような、それくらい曲に発言力があるというか。

プレイヤーとしてのJIROさんはいかがですか?

亀田
本当にうまい。多分いい意味で僕と対決しにきてくれているというか。アイディアを提供しますが、僕もJIRO君のプレイに感化されるところがあるし。とにかく考えて作るベースです。ベースだからルートがいいというわけではなくて、ルートがいいという場合はルートしか弾かないし、歌ったほうがいい時はとことん歌うベースです。

今回はどの曲も本当にベースの音が気持ちいいですよね。

亀田
ピッキングが佐久間さん仕込みで、上手で。ピッキング教えてとJIRO君に言っていて。JIRO君が弾くと、音がすごくきれいに粒が揃っていい感じになって、どうやって弾いてるのか教えてといつも言っていました。JIRO君が薄いピックを使っていると聞いて、僕も厚さ変えました。JIRO君からかなり影響を受けています。

直観力が豊かなTERUさんのソングライターとして、そして改めてボーカリストとしての魅力を教えて下さい。

亀田
ソングライティングという部分では、TERU君曰く「BLEEZE」(2014年)(※14)」が書けたことで何か掴めたと。自分の役割がわかったというようなことを言っていました。TERU君の書くメロディはすごく特徴あります。

風景が見えてきますよね。

亀田
そうなんです。TAKURO君が書くメロディも日本の原風景が見えてきて、TERU君の曲もそう。

どこか“情緒”を感じます。

亀田
そうなんですよ。「空が青空であるために」もそうだけど、明るいメロディにも関わらず、何か侘びさびが見えてくるというか。それと、やっぱりボーカリストが作る曲は、自分の声の使いどころをよくわかっています。しかもTERU君は本当にファルセット、ミックス、ミドル、色々な声を使い分けることができていて、最高のスキルを持ったボーカリストです。その自分のボーカルの声のトーンを使いながら、メロディをどう表現すればいいのかというのを、他の人の曲でもそれは応用してやっていますが、自分の曲の場合は、曲を作る時からそれができていると思います。そういった意味でTERU君はある意味シンガー・ソングライター的な存在で、TAKURO君はやっぱり真のソングライターなんですよね。TERU君の場合は、そこに自分の素晴らしいボーカルという発信源が見えているので、そこを踏まえて書かれているメロディは、一筆書きでいける良さがある。それは自分の意志で作っているから。

直観というところと繋がってきます。

亀田
繋がりますね。一筆書きのメロディですね。

今回はいつにも増して色々なタイプの曲を、TERUさんはまさに“歌い切っている”という感じです。

亀田
ボーカルに対しては非常に真面目で、レコーディングも6~7テイクで、絶対に1時間であげてくれます。1時に始まって、コーラスまで入れて6時には必ず終わります。例えばHISASHI君の曲を歌う時は、言葉のはまり方で手こずったりして、6時半ころまでかかってしまう事もありましたが、そうすると「あー今日は残業しちゃった。HISASHI、残業代」って言っていました(笑)。僕はTERU君と一緒にいて、話をしているだけで幸せな気持ちになるし、歌入れが楽しいです。彼の歌を録っていると、自分が浄化されるのがわかります。決して癒し系のソフトな歌ではないのですが、でも彼の歌と向き合うことによって、僕自身が浄化されます。素晴らしいボーカリストはそういうものです。そのかわり、例えばTERU君の歌を1日1時間で1曲歌えるからといって、2曲録れと言われたら無理です。浄化されますが、僕もエネルギーを相当使っているので。

エネルギーとエネルギーの果し合いのような感じですね。

亀田
本当にそうです。歌のセレクトも全部任せてくれますし、もちろん自分で聴いて、ここはほかのテイクがないかという場合もありますが、完全に信頼してくれていますので、非常にやりやすいです。

全曲通して聴いてみて、非常に新鮮で、GLAYの底力を見せつけられましたが、このアルバムをひと言で表すとしたら、どんなアルバムだと言えますか?

亀田
次の時代の扉を開くアルバムじゃないですかね。レコーディングテクニック的にも最新の技術が注ぎ込まれています。次の扉というのはGLAYのという意味だけではなくて。あえていうなら、ロックの新しい扉といいたい。そうか、ロックの扉を開くのかって聴いてみるといきなり「♪ゾンビの達人」(「シン・ゾンビ」)って始まりますけどね(笑)。そこがGLAYなんです。GLAYのLがRじゃないところです。その精神を感じながら、いつも僕はやっています。「SUMMERDELICS」という名のGLAYジェットが今、飛び立ちます。
※1:亀田さん
ベーシスト・アレンジャー・音楽プロデューサーの亀田誠治。1964年6月3日、ニューヨーク生まれ。 椎名林檎・スピッツ・平井堅など、数多くのプロデュース・アレンジで知られる。
※2:DARK RIVER
2013年7月24日発売48thシングル「DARK RIVER/Eternally/時計」表題曲
※3:佐久間正英
ロックバンド、四人囃子の元メンバーで、プロデューサーとしてBOØWYやザ・ブルーハーツ、GLAY、JUDY AND MARYらを手がけた。
※4:ビートルズのジョン・レノン&ポール・マッカートニー
ジョン・レノン、ポール・マッカートニーがメンバーのザ・ビートルズ (The Beatles) はイギリス・リヴァプール出身のロックバンド。
※5:U2のボノとエッジ
U2とは、アイルランド・ダブリンで結成された4人組ロック・バンド。ボノ(Bono)はボーカル、ジ・エッジ(The Edge)は主にギターを担当する。
※6:BOØWYの氷室さんと布袋
BOØWY(ボウイ)は、日本のロックバンド。1980年代に活躍。1981年結成、1988年解散。氷室京介:ボーカル、布袋寅泰:ギター・コーラス
※7:ap bank fes
静岡県掛川市のつま恋多目的広場で開催された野外フェスティバル。GLAYはap bank fes '08に出演
※8:ミスチルのJEN
日本のバンド・Mr.Childrenのドラマー鈴木 英哉の愛称
※9:MUSIC LIFE
2014年11月5日に発売された13thアルバムのタイトル
※10:SUMMERDELICS
発売予定の14thアルバムのタイトル
※11:GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary
東北史上最多となる55000人を動員し10年振りに開催されたGLAY EXPO 2014 TOHOKU。
※12:「デストピア」「超音速デスティニー」
2016年8月3日発売54thシングル「DEATHTOPIA」収録楽曲
※13:ウイングスの「007死ぬのは奴らだ」(1973年)
元ビートルズのポール・マッカートニーを中心に構成されたロックバンド。ウイングスが発表した楽曲。映画『007 死ぬのは奴らだ』の主題歌
※14:「BLEEZE」(2014年)
2014年7月9日発売GLAY 20th Anniversary 50thシングル「BLEEZE」表題曲

Vol.61 TAKURO WEBインタビュー

TAKUROが“修行”として自らに課した、ソロツアー『Journey without a map 2017』(※1)が2月28日、Zepp Tokyoにて幕を閉じた。2月2日の品川ステラボール公演を皮切りに、全国9か所15公演を完走。2月3日にはHISASHIが、そしてこのインタヴュー前夜のツアーセミファイナルにはSUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)がサプライズでゲスト参加したほか、各地でゲストを迎え入れつつ、二度とない特別な夜を積み重ねていく旅だった。1stアルバム『Journey without a map』(※2)に収められたジャズやブルースを基調としたインストゥルメンタルの楽曲群をツアーの中で育みながら、TAKUROは何を思っていたのか? ソロプロジェクトを振り返り、得たもの、GLAYに持ち帰るものを探る。

2017.3.06

SUGIZOさんがゲスト出演なさった昨夜(2月27日 Zepp Tokyo)の余韻、未だ冷めやりませんね。

TAKURO
めちゃくちゃ二日酔いだよ(笑)。自分の曲を自分の憧れのギターヒーローが弾くという、ある種の変態プレイ(笑)。野望を叶えたよね。

アンコール2曲へのゲスト参加で時間にすれば短く、SUGIZOさんは一言もお話なさいませんでしたが、お二人の信頼関係は充分に伝わってきました。

TAKURO
それはあるよ。20年以上の付き合いだし、大人になってからの親友と呼べる人だろうね、松本(孝弘/B’z)さん、SUGIZOさんは。昨日もいろいろと話しながら改めて思ったけど、SUGIZOさんは心から世界の平和を願ってるんじゃないかな。それはTERUに通じるものがあるよね。家事すら一切やらなそうなのに、困っている人がいたら(東日本大)震災後には被災地に乗り込んで、一生懸命がれき除去に身を投じる、とか。それは俺にはできなかったことだし、やらなかったことだけども。そういう姿や、あとはX JAPANの引き受け方とかも含め、この20年見て来て「信頼できる男だなぁ」と。その苦悩を近くで見ていると、俺といる時ぐらいは馬鹿話で気を抜いて、気楽に楽しんでほしいという気持ちはあるけれど。

SUGIZOさんを招き入れられる時のMCでTAKUROさんは、「自分のためだけでなく行動する、という姿勢をこの人から学びました」と紹介なさっていましたね。

TAKURO
献身的な男ですよ、地球に対して。いや、宇宙に対してかもしれないね。デヴィッド・ボウイみたいだね(笑)。そういう意味では「Northern Life」(※3)も「Journey witout a map」(※3)も、自分にとって特に思い入れの強い曲だったから、SUGIZOさんと一緒にやるにはピッタリだったんじゃないですかね?

お二人のギタリストとして“色”が拮抗し合っている、と感じました。

TAKURO
ツアーの頭じゃなくて良かったよね。やっぱり、ちゃんとここまでホストとしてお迎えできるのは、1か月のツアーを経てこそだと思う。

アルバム『Journey without a map』制作に先立つ2016年のインストツアーを振り返ると、TAKUROさんがご自身の内面を掘り進め、孤独と向き合うプロジェクトとして立ち上がったという印象でした。それが、2017年のツアーでは、様々なゲスト参加を含め、最終的には“仲間とともに”という空気感になって行って……2月3日の品川ステラボール公演を拝見しましたが、ツアー序盤とファイナルのZepp Tokyoとでも、随分見せ方が変わっていましたよね?

TAKURO
うん、イメージの微調整は日々繰り返しあったから。モバイルミーティングでも言ったんだけど、本来お客さんとは対等だし、淡々といい曲を聴いてもらってステージ上の熱量を感じてもらっておしまい、というのが、理想としてはあるわけ。品川の時は当初の理想を優先させたんじゃない? でもそれが仲間にとってもお客さんにとってもちょっと窮屈そうだな、と気付いたから微調整をして。お客さんにも緊張を強いるし、自分も緊張してるわけだから、それが倍増してライヴというよりは鑑賞会に近いものになってしまったかな、と。他のメンバーがいいプレイをした時に、声を出したくてもその“型”が分からないから、というのもあっただろうし。『Journey~』の曲をそのままやるだけだと、厳格で近付き難いものになりうるじゃない? 「ちょっと距離感つめ過ぎだな、急ぎ過ぎてるな」という気もしたから、じゃあ、あまりにも緊張している会場であれば、例えば(GLAYの)メンバーの話をなるべく多くして親和性を持たせて、少しは温かい空気を入れてみたり。俺にとってもそっちのほうがホームだし、いわゆるGLAY的なほんわかムードなら、いくつかの必殺技みたいなものもあるわけで。MCでどれぐらい砕けるか? 逆に、当初の『Journey~』のコンセプトに対して忠実であるか? ……そのバランスを考えたよね。いずれは、くだけたMCがなくても、誰かがいいプレイをした時にはスタンディングオベーションを含めた熱狂的な声援を引き出せるようになりたいし、そういうチームではありたいな。それは最終的な目標だよね。昨日のSUGIZOさんの来てくれた場面では、SUGIZOさんの佇まいとか、本人がステージで目指すところもよく分かるから、あそこは馬鹿話する場所ではなかったし。HISASHIが出た時はやっぱりGLAY色を出したほうがいいだろう、とか。そういう意味で、『Journey~』のライヴをつくり上げる上ではやっぱり、フロントマンは大変だなぁと思ったよね。その苦悩と孤独。物語を引っ張る“筆力”もいるだろうし、歌わなきゃいけないし、ギターソロの間もボーッとしてるわけにもいかないし。勉強になったね。

TERUさんの大変さを感じられたりも……?。

TAKURO
TERUの大変さとか、ヴォーカルという意味に限った大変さではないんだけども。大勢のオーディエンスに向かって一人で背負おう人たち、全般だよね。

川村ケン(ピアノ)さんが、ツアー前のインタヴューで、「もっと楽なやり方もあるのに、こんなにずっと真ん中でギターを弾くスタイルを引き受けようとしているのはすごい」と、感心なさっていたんです。

TAKURO
だって、自分で「修行したい」と言って始めたのに、楽しちゃダメだよね(笑)。自分の能力で補えるギリギリのところでいつも挑んでいかないと。そうでないと、「この体験をGLAYに持ち帰って、何かに貢献したい」という最終的な目標を達成できないわけだから。音色一つとってもそうだし、ギターのポジション(※4)選びにしても会場ごとに変わって行って、それをどうカバーするか?というのも学べたし。まぁ、インストというある意味“ポップではないもの”で、よくもまぁここまでやりきったな、という想いはあるよ。

インストの世界には馴染みのない方も多いでしょうしね。

TAKURO
そうだね。俺、今回のツアーで思ったことがあって。ファンレターをたくさん読んだんだけれども、「こういう世界に興味があっても、どう接していいか分からなかった」という人たちがこんなにもいるのであれば、俺のソロプロジェクトの目標とはまた別に、「こういう場所をもっとつくりたいな」って。せっかくいい音楽があるのに気付かないのであれば、架け橋になれたらな、と。日々ライヴハウスの数だけセッションが行われていても、“一見さんお断り”の寿司屋みたいなところがあるじゃない?

たしかに、敷居の高さはあるかもしれません。

TAKURO
そういう意味では、インストというのは分かっていても、「TAKUROのライヴなら行ってみよう」という人がいるのであれば、今回のツアーが一つのモデルケースとなっていろいろと可能性を広げられる、という手応えはすごく感じたかな。

バンドメンバーの皆さんとは今回初の組み合わせでしたが、ライヴを重ねるごとにグルーヴがどんどん育っていったようにと思います。改めて、メンバーへの想いを聞かせてください。

TAKURO
永井(利光)さんが「いい」と言って薦めてくれたメンバーだし、心配なんてハナからしてなかったけどね。一回音を出してみて、それぞれの技量・力量を「間違いない」と思ったし。でも俺、実はどっちでも良かったんだよ。プレイがダメでも良くても、性格がひん曲がってても真っ直ぐでも。だって、それがそのまんまドキュメンタリーだから。今回のように奇跡的に気の合うメンバーで、かつプレイが素晴らしければ、「それをどう磨くか?」ということが次の一つの課題になるけれども、そうじゃなかったとしても、それはそれで面白いじゃない? GLAYで起こりうることが起きても面白くないし、起こりえないことこそを求めていたわけで。それが俺にとっての、GLAYに貢献できる一つの研究課題なわけだから。対・人間という意味では、どんな人でも飲み込む自信もあるしね。

「自分がやりやすい人を集めてほしい」というリクエストでは決してなかった、と。

TAKURO
打ち上げがつまんないからオジサンは嫌だ、女の子を!とは言ったけど(笑)。

(笑)。2人も女性メンバーが加わったことには驚きました。前田サラ(Sax)さん(※5)も岩永真奈(Bass)さん(※6)も、若くして海外へ飛び出したりセッション経験が膨大だったり、インディペンデントに活躍されている実力派ですよね。

TAKURO
そうだね、すごい才能だと思う。彼女たちやケンさん(※7)は、言うなれば映画『セッション』(※8)のような厳しい、でもとんでもなくやりがいもある世界を知っていて、そういう話をツアー中にいろいろと聞いたんだよね。「あぁ、自分はデビューして20何年も、ある偏った世界しか見てなかったんだな」とも思い知らされた。これは俺のライヴを観てセッションに興味を持った人たちにも知ってほしいんだけれども、思っている以上に音楽って身近にあるものなんだよ。特に生演奏はね。ある種の知識と技術がある人たちは、毎晩何も決めずにその世界に飛び込んで、その日しかできないセッションを繰り広げている。そう思うとワクワクするよね。いつか、自分がもしその世界に興味があったら飛び込んでいきたいな、という気もするし。

GLAYのTAKURO”さんとしてだけでなく、一音楽家としての楽しみですよね。90歳前後まで毎週にライヴ活動を続けていたレス・ポール氏(※9)を「羨ましく思った」というお話を1年前にされていたのも思い出します。

TAKURO
そうそう。職業としてその技術をお金に換えるというのは、プレイそのものとはまた別の能力だから。いわゆるショービジネスではない世界の音楽には、その音楽にしかない一瞬の火花みたいなのがあるんだよね。だから今回も、「収録しますか?」と持ち掛けられたけれども、記録として残すことにあまり興味が湧かなかった。だって、実際に1日経ったらもう別に何とも思わないもん。「いいライヴだったな」とは思っても、演奏自体に説明がつかないし、「そういう夜でした」としか言いようがない。そこがだんだん分かってきたかな。絶対に目の前で、生で観ないとつまんないだろうな、とも思うしね。永井さんの延々と続くドラムソロのあの情熱は、きっと画面だけじゃ分からないと思う。ギターのエンディング・ソロを延々と弾くのもそうで、そこに至る空気感みたいなものが伝わらないとね。一番の基準として、「自分自身がもう観ないだろうな」というのがあるし(笑)。それが奇跡の一夜で奇跡のスーパープレイだとしてもね。思い出としては素晴らしくても、準備に準備を重ねた究極の芸術品をつくる、という挑み方とはちょっと違う。今これを読んでいる皆さんに、「料理の写真と花火の動画はやめとけ!」とお伝えしたい(笑)。分かるよね?

名古屋ではヴィンテージギター店主・Nancy岸田さん、広島ではサックス奏者の“あにやん”こと清水末寿さん、札幌ではthe pillowsの真鍋吉明さんがゲストとして登場。どんな想いでお声掛けなさったのですか?

TAKURO
特に理由はないんだけど、俺がセッションしたい人たちを誘った、という感じかな。岸田さんは、ヴィンテージというものの素晴らしさを一から教えてくれた師匠のような存在だし。Peeちゃん(真鍋氏)は、ギタリストとしての佇まいを見ていて、あとは、彼自身のソロアルバムも聴いていて、「いつかギターに特化して何か一緒にやりたいね」という話は、the pillowsのライヴの打ち上げで以前していたので、今回は誘った。あにやんは、「難しそう」とか「入りづらそう」と思われがちなジャズの世界のドアを“優しさ”で以って開けてくれるような人。その人間の大きさで広島のジャズシーンを支えているしね。閃雷の連中も仙台公演に来てくれて、何なら飛び入りしてくれても構わなかったしね。

ハプニングも含め、そこで起きた生のできごとを楽しむ、というスタンスなんですね。

TAKURO
そう。「太鼓持ってたら入って来ればいいのに」「いや、持ってはいたんですけどねぇ~」みたいなやり取りがあって、「じゃあ次ね」という話になったし。『Journey~』の曲たちはあらゆるジャンルを何でも飲み込める気もするからね。もともとあれは“TAKURO”以外の何物でもないし。ジャズ、ブルース、ギターインスト、ポップ、どれに括るのも違う気がするしね。あの空間がもし楽しかったとすれば、バンドが醸し出す雰囲気や俺のMCも全部、その魅力に含まれるだろうから。結局、“TAKUROショー”としか言えないもんね(笑)。

このソロプロジェクトは定期的にして行かれるのでしょうか?

TAKURO
うん、定期的にやりたい。精神的、技術的スキルアップの最たるものだからね。家でも練習するしいろんな研究もするし、ギターに向き合うことはいろいろやっても、やっぱりステージ以上に学べる場所はないからなぁ……。だから、時間があったらそれを繰り返していくことで、10年後に「函館日和」(※3)がどんなフレーズになっているか?というのを見てみたい。もっと『Journey~』の曲たちが自分たちの中でスタンダードになって、リハーサルはライヴの前にちょっとやってすぐステージ、というのが可能になるのが理想だよね。そのライヴのヒリヒリするような掛け合いの中で何か大きなお土産を掴むことができたら、それを持ってGLAYに帰りたい、という気もするし。このチームでようやく乗って来た、というのもあるから、皆のスケジュールが空いてたらまたやりたいよ。

新たな曲も生まれそうですか?

TAKURO
そうだね。2、3年に1回ぐらいはアルバムつくりたいよね。松本さんにも「これ1枚で終わらせずにコンスタントに続けたほうがいい。そこで見えるものがある」と聞いていて、本人がそれを実行しているわけだから。

去年のツアーでは、即興で曲が生まれていましたもんね。

TAKURO
うん。またスケジュールがちゃんと固まったら一気にまとめ上げるんだろうけど、本当に1つ、2つの耳馴染みのいいテーマだけがあって、あとはプレイを、音色そのものを聴かせる、というか。そういう魅力もまた、今回知ってしまったので。8小節ロングトーン(※10)一発の味わい深いギターの音、とかね。それがゆくゆくはスタンダードになりうるような……昔のミュージカル音楽や映画音楽みたいなものになっていけばいいな。でも、あくまでもギターにはこだわりたいけどね。曲をつくってストリングスがなぞる、とかじゃなくて。なぜかというと、繰り返しになるけど、そういった技術的な向上、精神の向上をGLAYに持って帰るのが何よりの目標なので。

GLAYのニュー・アルバムも完成目前だとか。4月14日からは早くもホールツアーも始まります。

TAKURO
すぐだねぇ。リハーサルの前の日まで、俺はたぶん海外だから、向こうで練習するしかない(笑)。明日からの休み1週間で覚えないと。

音色やポジション選びなど細部へのこだわりが深まったことで、これまでのGLAYの楽曲をプレイする際にも変化がありそうですか?

TAKURO
あるだろうね。歪んでいない音でこれだけ一個一個確かめるようにギターを弾いた経験がなかったから。GLAYに戻った時に、「お客さんが盛り上がってればいいじゃん?」というようなモードに果たしてなるのか、それともプレイ1個1個に対してすごくこだわって、パフォーマンス重視でなくなるのか……どうなんだろうね? やってみないと分かんない。でも、パフォーマンスを優先してプレイアビリティーが落ちたら、ちょっと「あーあ……」とは思うかもしれないね。ソロでこれだけ繊細なことをやって来たので。

何かしらの変化は起きそうですね。

TAKURO
うん、きっとね。一音一音に対して、その影響はあると思う。
※1:ソロツアー『Journey without a map 2017』
2017年2月より開催した全国8ヶ所15公演のTAKUROのソロツアー。2月27・28日のZepp Tokyo 2DAYSにてツアーファイナルを迎えた
※2:1stアルバム『Journey without a map』
2016年12月14日(水)に発売となったTAKUROソロ1stインストアルバム。
B'zの松本孝弘氏をプロデューサーに迎え入れ、ロサンゼルス在住のTOPミュージシャンとレコーディングを敢行した意欲作。
TAKURO所有の3台のビンテージレスポールを使用した深みのあるギターサウンドに、ジャズ、ブルースを基調とした音作りで、1音1音こだわり抜いて制作された。GLAYとは一線を画す、ギタリストTAKUROとしての魅力が詰まった珠玉の1枚
※3:「Northern Life」、「Journey witout a map」、「函館日和」
「Journey without a map」の収録曲。
※4:ギターのポジション
ギターの弦を押さえる位置。ギターは異なる弦を異なる位置で押さえても同じ音階を奏でることができる。
※5:前田サラ(Sax)
ゴスペルをルーツに持つサックス奏者。
2015年にビクターからデビューソロアルバム「From My Soul」をリリース。
自身率いる前田サラBANDの他、the day<仲井戸麗市 ,中村達也 ,KenKen ,蔦谷好位置>、ドラマー山口美代子率いる女性インストファンクバンドBimBamBoom、ギタリスト竹内朋康主催のMagic Numberなど、幅広く活動中。
※6:岩永真奈(Bass)
1989年12月23日生まれ。
清竜人、清竜人25、ももいろクローバーZ、FIRE HORNS、楠田亜衣奈、40mP、杏子、Aice5、Sword Of The Far East、サムライロックオーケストラ、ミュージカルバイオハザードなどのライブ、ミュージカル、レコーディングに多数参加。
ベースマガジンにて随時連載や特集を担当。教則DVD「ゼッタイ弾ける!ベースラインフレーズ集」を出版。
宮藤官九郎監督「Too Young To Die!?若くして死ぬ?」にてベース邪子への指導、演奏にて参加。
※7:ケンさん
川村ケン
1968年11月25日生 東京都出身
182㎝、67kg AB型。ピアニスト、キーボーディスト、コンポーザー、アレンジャー。23歳でSHADY DOLLSでデビュー。
以降、安全地帯、玉置浩二、安室奈美恵、絢香、GLAY、ゆず、KEIKO(globe)、清木場俊介(exEXILE)、KinKiKids、椎名へきる、宇都宮隆、ZIGGY、ダイヤモンド☆ユカイ、高橋克典、他多数のアーティストのツアー、レコーディングに参加。東京音楽大学ソングライティングコース客員教授(2017年4月より)、洗足学園音楽大学非常勤講師兼アカデミックアドバイザー、日本工学院八王子専門学校ミュージックカレッジ非常勤講師。
著書「思いどおりに作曲ができる本(リットーミュージック)」はベストセラー理論書となり現在七刷。プライベートレッスン「緑ちゃん倶楽部」主催
※8:映画『セッション』
原題: Whiplash。2014年にアメリカ合衆国で製作されたドラマ映画。
※9:レス・ポール氏
Les Paul、本名はLester William Polsfuss、1915年6月9日 - 2009年8月13日。アメリカのギタリストでかつ発明家。ソリッドボディーのエレクトリック・ギター、「ギブソン・レスポール」の生みの親。
※10:ロングトーン
一つの音をピッキングせずに鳴らす奏法。

取材・文/大前多恵

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